俺はカビ猫と生きていく!~魔法の世界で、猫型カラクリと歩く~   作:ねこねこてんちゃん

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エピローグ

 *

 【ヴェス視点】

 

「ヴェスの旦那。めぼしいもんはあったか?」

 

 ヤンベ周辺で、美術品を収集していた魔物ブロカード。

 誰に見られるでもない死蔵された物の中には、我々の求める品。アーティファクトが混ざっている可能性があった。

 

「一点だけな。『聖女の模造鐘』は確保した。思ったよりも見当たらないな」

「そうかい。あれこれ変なもんが多かったが、見込み違いか」

 

 先ほどから私に話しかけてくる部下の大男、ガルタは鐘を強く打ち鳴らす。

 この音には、人々を毒や病から救う力があるとされる。立派な収穫だ。

 

「そう言うな。もしかしたらメーニンが何か見つけてくるやもしれんぞ」

「はっ。この奥に飾ってるもんより、入り口側にアーティファクトがあるってのかね」

 

 気持ちはわからんでもない。実際、可能性は低いだろう。

 一通り入り口から見てきたが、この場所に置かれた美術品はまさに『美術価値』だけを求められていた。

 

「気色の悪いネズミを吸い上げる装置と言い、面白い場所じゃねぇなぁ。ブロカードをぶっ飛ばした奴らのが、よっぽど見てみてぇよ」

 

 そうガルタはボヤき、その場に座り込む。

 この地を監視していた部下から、ブロカードが討たれたといった報告を聞いた時には驚いた。

 国の討伐隊も、ギルドの連中も敵わない魔物だ。よほど腕の立つ人間が打ち破ったのだ。

 

 しかし、その連中はアーティファクトらしきものを持たずに出ていったらしい。少なくとも見てくれの上では。

 

「ヴェス様。ただいま戻りました」

「メーニン。どうだった」

「アーティファクトに該当する物はなにも」

 

 ふむ。そんなものか。

 

「君は、あの“ネズミが昇る装置”は見たか?」

「はい。見ました。気色が悪い……としか思えませんでしたが」

 

 メーニンは背筋を伸ばしたまま、私の意図を察し、感想を述べる。

 彼女は真面目で実直だ。ガルタもな。

 故に、必要以上には見出さない。

 

「そうか。その通りだな。ガルタもそう言ってたぞ」

「はっ。俺と同じセンスだと、さ」

「なっ……! 勝手にヴェス様の意をくみ取って、一緒にするな!」

 

 いい騒がしさだ。彼らを連れて行くと、遠出も退屈しない。

 私は先に部屋の出口へ向かう。ここに長居する理由はない。

 

「ヴェス様! 残りの展示物はいかがなさいますか? 回収すれば金にはなるかと」

「置いておこう。目的物ではない。あと、出てくるときは出入り口を塞いでおいてくれ」

「はっ。かしこまりました」

 

 恐らく、今ここは仮置きの場所なのだ。目的は不明だが。

 無駄に荒せば追われることになる。腕の立つ相手にな。

 

 長い廊下を歩くと、また先ほどのネズミが目に入る。

 同じ音だけを繰り返し鳴らすピアノは、始まりを意味する。

 

「これはお前の原点、なのだろう」

 

 世には、生物の姿を変えるアーティファクトもあると聞く。

 願ったのだ。自らも“その姿になりたい”と。

 

「ヴェス様。追加の報告があります」

 

 建物を出ると、メーニンの部下である男に呼び掛けられた。

 緊急事態ではなさそうだ。

 

「……どうした?」

「ブロカードの監視者からより詳細な情報が。打ち倒した人物は、『棺を背負った、金髪の少年』とのことでした」

 

 ……ほう。そうか。

 ハヴィーの少年は、あの棺を動かす術を知っていたのだな。

 

「現在はヤンベに滞在しているとのこと。追いますか?」

「いや、いい。不要だ。我々も帰るとしよう」

 

 少年たちが、鐘を回収しなかったのは幸いだな。

 ヤンベで動くとなると、一苦労だ。

 

「は……。よろしいのですか? アーティファクトを持つ可能性がありますが……」

「ああ。彼らもまた、適確に扱える資質を見込める人物だ」

 

 私は、また歩みを再開する。

 この澄み渡った青空のように、世界の歪みが消える日は近づいている。

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