思いついたら長くなるかもしれません
仁との交流を済ませた翌日、学郎は目の前の光景に驚愕した。
先日、本当につい昨日あれだけ破壊された教室は元通りになっており、自分の前で幻妖に腕を飛ばされた同級生まで何事もなかったかのようにケロッとしていたからだ。
「あ、夜島くんおはよー。ジュース買ってきてよー」
このように平然とまた夜島をパシリに使おうとする始末だ。
「あ、う、うん。ジュースね…」
「お、買い出しか? 俺も付き合おう」
「あ、篠澤…くん。おはよ…!?」
後ろから声をかけてきた声に学郎は反応する。
しかし、その方向を向いた時彼は声の主の様子に驚愕した。
何故なら昨日知り合った人物である篠澤仁が、声の元気さとは裏腹にボロボロの状態で登校してきたからだ。
「どうしたの篠澤くん、そのケガ…!?」
学郎の声にクラスの目が向けられる。
「歩きながら話すよ。早く行こうぜ」
「え、あ、う、うん…」
だがすぐさま仁が学郎を連れ出して視線を他所に歩き出した。
「それでどうしたのそのケガ? もしかして幻妖に…!?」
「あ~、ある意味で幻妖よりも厄介かもしれん…」
「?」
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そんな会話を繰り広げる少し前―――。
仁は通学路を歩きながら腕を組んでいた。
「(う~ん、分からん。昨日から何かを忘れてるしその何かをこのまま放置するとヤバいと俺の勘が告げているんだが……昨日は学郎や鵺さんの事で頭もいっぱいいっぱいだったし。……そういえば鵺さんといえばあの事を聞くの忘れてたな)」
そう彼の頭に残るのは、鵺が彼と会った時にしたあの行動。
何故彼女は初対面の自分を抱きかかえたのか、という事だ。
「(いい匂いだったな、幻妖なのに……ああいやいやそうじゃなく、あの時の俺は怪我こそしてたけど、特別倒れそうとかでは無かったはずだし、でも学郎の件もあるから悪い人には見えないから先輩に相談するのもなんかな~……ん、先輩? あ!)」
仁はそこでようやく昨日自分が置き去りにした人物の事を思い出した。
そして、彼が思い出したと同時に、目の前にザっという音を立てて1人の人物が立ち塞がる。
「やあやあそこ行く少年、ちょ~っとお姉さんとお話ししないかい?」
「あ、やっべ…」
晴れやかな笑顔のはずが逆光のせいか顔に影を落としている周防七咲がそこに居た。
「昨日は大変だったんだってね~、
段々と語気が強くなる七咲を前に仁は唾を飲み、一歩後ずさる。
「ん? どうした篠澤? こっち来いよ、なでなでしてあげるから」
「ハッハッハ、北高の人気者である先輩のなでなでなんて、そりゃ男冥利に尽きるってものですね」
「いやぁ~、照れるな」
「でも先輩、
仁に近づく七咲と、七咲から遠ざかる仁。
「そりゃあね、可愛いかわいい後輩が命も省みずに単身でレベル2相手に向かったって言うんだからさ。心配したわけだよ、これはホントだからね」
先ほどまでの殺気を消して七咲が言う。
それだけで仁も言葉には嘘は無いと察せられた。
「だけど心配させた罰として一発はアリかなと」
「以後気を付けるので逃げます…!」
その後、七咲に捕まった仁は逃げた罰という事また殴られた。
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「……というある先輩とのやり取りがあった訳よ」
「なんか、色々大変なんだね篠澤くん…」
「おう、今度紹介する」
「怖い人なら勘弁願いたいかな…」
「受け給えよ学郎」
そんな男子2人の会話へさも当然と言わんばかりに混ざる声。
仁たちがそこに目をやると、廊下の壁に背を預けた鵺が制服姿で立っていた。
「鵺さん!? どうして外に!?」
「これは分体。君のおかげで、君が学校に居る間は私も学校という敷地内だけだけど自由に動けるんだ。それよりも、せっかく青春の方からお誘いが来たというのにそこで尻込みしてどうするんだ」
「その青春は血生臭過ぎませんか?」
「何を言うんだ。男児たるもの高校生のうちは河川敷でクロスカウンターくらい決める物だろう」
「「(発想が古い…!)」」
鵺の言葉に、2人は心の中でまったく同じツッコミを入れた。
「……あ、もしかして教室やみんなを元に戻したのって鵺さんですか?」
「ん? ああ違うよ。あれは陰陽師の仕事だね」
「陰陽師…って昨日話してくれた。この町限定の自警団みたいな人達ですよね。それの仕事?」
「その件については、そちらに居る君の友人が知っているはずだ。そうだね、仁」
鵺と学郎の視線が仁に向けられる。
「はいって言ってあげたいところですが、俺も陰陽師になったばかりなんで認識ふわふわですよ」
「まあ今はそんな感じでいいさ。それより2人とも、部屋で遊ぼうよ!」
「え…あ、すいません俺は今―――」
パシリに使われている事を伝えようとして学郎は言い留まる。
「ちなみに拒否権は?」
「ある。けど断ったら君の噂をある事ない事言いふらしてしまうかもしれないね。何せ60年ぶりにあそこを出たんだ。つい気持ちが昂って口が滑ってしまう事もあるよ」
「それを世間一般では脅迫って言うんです、分かりました行きますよ。美人のお誘いなんでね」
「うん。嬉しい事を言ってくれてありがとう。それにその顔に傷を増やさず済んで良かったよ」
「(何、俺の顔は女が殴りたくなる術でも付いてんのか)」
「さあでは行こうか2人とも、今日はカードゲームとかやってみたいんだよねー、今まで相手居なかったし」
「友達の幻妖が居るのでは?」
「その子にもその子の時間があるのさ」
「あの、鵺さん…俺自分で歩くんで、手を放してもらって…」
他愛無い談笑をしながら道を行く3人を、2人の人影が見つめていた。
先にお伝えすると、この作品における学郎ハーレムは健在で行こうかと思っております