鵺さんの騒ぎがあった日の夜―――。
俺は学郎と待ち合わせの約束をしたため、学校の前に来ていた。
「よっ、学郎。早いな」
「こ、こんばんは。篠澤くん」
夜中だというのに制服を着た高校生2人が校門前に居るのも不思議なもんだが、それはこの約束の事がある。
「ごめん篠澤くん。無理言っちゃって」
「まったくだ。驚いたぜ、俺の幻妖退治に同行させてほしいなんて言われた時は」
そう俺はあの騒ぎがあった後の放課後、学郎に呼ばれてどうすれば強くなれるのか聞かれのだ。
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「そんなん俺が知りてえよ」
「うぅ…」
俺は学郎にそう言った後、ジュースを一口付ける。
学郎は学郎で俺の返事にうな垂れていた。
「つーか、それに関しては鵺さんにでも聞けばいいじゃねえか。俺なんかよりずっと詳しいはずだろ? お前の力は元々あの人から借りてるものなんだし」
「それは…そうかもしれなんだけど」
学郎もまた同様に買った水を一口飲む。
「今日、俺は何も出来なかったし…」
「それそんな落ち込むことか? 昨日力を貰ったばかりなんだから、動けなくてもおかしくねえだろ」
「でも! それじゃ、ダメだと思う…。鵺さんは強いから、滅多なことじゃ危険はないと思うし、篠澤くんも居てくれる……でもそれに甘えてばかりじゃなく、俺も、すぐ強くならなくちゃいけないんだ」
学郎は決意を込めた目で俺を見てくる。
というか―――
「近いぞ学郎」
「え、あ、ご、ごめん…!」
俺が言うと学郎は慌てて離れた。
まったく、危うく唇がくっつくところだったぜ。
流石の俺でもファーストキスが男子なのは勘弁してほしいからな。
「……ただ、お前の気持ちは分かった。強くなれるかは分からないけど、じゃあ今日、俺の仕事に同行してもらおうかな」
「仕事?」
「仕事と言ってもそこまで深く考える必要はねえ。ただ夜の校舎を見回るだけ、肝試しの延長みたいなもんだ。そこで悪さしそうな幻妖が居たら2人で祓う、分かりやすいだろ?」
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そんなやり取りもあり、俺達は今ここに居る。
「よっと……ってか、この事鵺さんは知ってるのか?」
「…………」
「言ってないのか…」
学郎はバツが悪そうに俺から目を逸らした。
あれ、これもしかしなくてもバレたら俺までお仕置きされる奴では?
「と、とにかく今日は、よろしくお願いします…!」
「おい」
強引に話題を変えようとする学郎に呆れながらも、俺達は校門をよじ登り、校庭を通って校舎の前に来た。
ちなみに、俺はすでに霊衣に換装している。
周防先輩や他の陰陽師なんかは霊衣にならなくても、
というかあの白いオーラが霊衣にならないと出せないのだ。
はあ…、やっぱ俺も才能無いのかも。
「でも、篠澤くん。ここまで来たのはいいけどどうやって学校に侵入するつも…」
「ん?」
困惑する学郎を余所に俺は昼間くすねていた鍵を使ってドアを開けた。
「そ、それ犯罪じゃ…!」
「大丈夫大丈夫、何か盗むわけじゃないし。それに帰る時に返せば問題ねえさ」
「でもドアが開いたままになっちゃうんじゃ…」
「鍵を閉め忘れたって勘違いして終わりだよ」
心配し過ぎだな学郎は、俺はこれが鵺さんにバレた時の事を考えた方が気が気でならんって。
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俺と学郎はしばらく校舎を歩く。
すると、目の前にふよふよ浮いた幻妖が現れる。
「っ!」
「落ち着け学郎……うん、あれは別段悪さをするタイプの幻妖じゃないな」
幻妖を見るや臨戦態勢を取って鵺さんから貰った力を振るおうとするが、俺はそれを制止した。
その言葉を聞いて学郎もすぐに剣を握る手を離した。
「今夜用があるのは体育館だ」
「体育館?」
「ああ、あの後俺も学校内で変わった噂が無いか調査したら、何でも1人の生徒が忘れ物を取りに学校に来た時、体育館の方からボールが跳ねるような音が聞こえてきたんだってさ」
「残って練習してた生徒が居る、とかじゃなくて?」
「夜中だぜ? 居ると思うか?」
俺が言うと学郎は首を横に振った。
そんなやり取りをした後、俺達は体育館の前に着く、その内側からは確かにダムダムという音が聞こえてきている。
「聞こえるな」
「うん」
「まずは中の様子を確認するか」
俺と学郎は少しだけ開いた扉から体育館の中を確認する。
すると、中では数にして30を超える大勢の幻妖が浮きながら右に左にと移動を繰り返している。
しかも、その内の1匹は自分で地面に体を打ちつけながらだ。
幻妖のくせに一丁前にバスケしてんじゃねえよ。
「どうする、篠澤くん?」
「…あの中に居る幻妖は全部祓って良さそうだ。ただ、お互いのチームでリーダーみたいな面してるあの2匹、目の所に印のあるやつは最後に回そう」
「分かった。でもどうしてその2匹だけ?」
「ああいう印付きの奴は、レベル1の中でも厄介なやつでな。倒すと何かしらの呪いをこっちに返してくることが多い。といっても大概は1日2日すれば元通りだけど」
「へー、もしかして、経験あったりするの?」
「……聞かないでくれ」
陰陽師になって1ヶ月くらいの頃、印の付きの幻妖を祓ってその後3日間くらい強烈な腹痛に見舞われたのは学郎に内緒にしておこう。
「その事は良い、とにかく行くぞ」
「うん…!」
学郎は剣を握り、俺と共に体育館へ突入する。
その様子に感付いた幻妖達が一斉に俺達へと襲い掛かってくる。
しかし、多いと言っても所詮はレベル1―――。
俺ですら難なく祓えるのに、あの時、あの教室に現れた奴ですら一撃で消して見せた学郎にとっても敵ではあるまい。
その戦闘の最中、学郎がチラチラと俺を見てくる。
「どうした学郎! 何か質問か!?」
「え、あ、ううん…やっぱり陰陽師なだけあって戦い慣れてるなって」
学郎は剣、俺は拳で幻妖を祓いながら言葉を交わす。
「そんな事はねえ…よ! ただ自分でも分からねえけど、戦いの度に強くなってる気はするんだよな、気のせいかもしれないけど」
そうこうしている内に幻妖の群れは半数を切っていた。
「ハア…ハア…」
「限界そうだな、学郎」
「ハア…まだ、まだぁ…」
学郎は息絶え絶えで言う。
時間を置いてるとはいえ鵺さんにも力を使いすぎるなって言われてたしな。
しかし、それでも学郎は剣を振ることを止めなかった。
そればかりか、ふらつく体であの数の幻妖を祓い除けて見せた。
「すっげえ…」
俺は思わずそう呟く。
これが鵺さんの力なのか、それとも、
どっちみち、俺も負けてられないな…!
俺は全身に力を込めて、残った幻妖の全てを祓った。
「お疲れ」
「う、うん…お疲れ…」
今にも倒れそうな学郎を支えて言う。
「けど、こっからがキツイところだぞ」
「え? ―――あ、あれぇ? なんらか頭がふわふわするよぉ…、篠澤くんも3人になってる…アハハ、面白いねぇ~」
学郎は呂律が回っておらず、目をグルグルと回しながら俺に言う。
成程、学郎の受けた呪いは酩酊する呪いってところか。
すると、俺も鼻筋から何かが滴り落ちるのを感じ、そこに指をやると鼻血が出ていた。
「はは、俺のはこの程度か」
「えへへぇ~…」
ま、
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酔っぱらった学郎を担ぎながら、俺は出口を目指す。
ちなみに学郎は未だに俺の後ろで情けない声を出している。
「しっかし、こんな姿鵺さんにバレなくて良かったぜ」
「ほほう、どうして私にバレなくて良かったのかな?」
「そら勿論、自分が目をかけた人間勝手にこんなんにしたなんて知れたら何されるか……ん?」
俺は何故か成立してしまった会話に悪寒を覚えながら、恐る恐る声の方に顔を向ける。
そこには、懐中電灯で下から顔を照らす笑顔の鵺さんと目が合ってしまった。
「やあ♪」
その声を後ろにしながら俺はたまらず駆け出す。
しかし―――
「何処に行くんだい?」
「ふおおおおおっ!?」
俺は情けない声を出しながら呆気なく捕まってしまった。
その後、令力を使い切り、鵺さんに膝枕で回復してもらっている学郎と目が合った時、何とも言われぬ空気になったのは言うまでもないだろう。
そりゃあそうだよな。
だって俺天井からロープで吊るされて会話してんだもん。
ちなみに仁くんをどのタイミングで強化イベにぶち込むかはもう決めています
まあ、かなり後の事にはなりますが