大往生したが、記録者と共に異世界で第二の生を歩みます 作:レイギス
洞窟の最奥で出会った、この洞窟を覆い尽くしている気配の正体暴風竜ヴェルドラに対して、最初は身構えていたが、話をしてみると意外にも答えてくれた。
曰く、私はかなり稀な生まれ方をしたということ、自身の知る限り、私のような生まれの転生者には出会ったことがないこと、しかし、それ以外の転生者や異世界人などは存在すること、自身が油断したとはいえ百年前に勇者によって封印されたことなど、様々なことを聞かせてもらった、本人も久しぶりに誰かと話せて嬉しそうではあった…指摘したらそんな訳なかろう!と叫ばれ危うく鼓膜が破れかけたのは記憶に新しい…自己紹介のときは備えていなかったため鼓膜が破れてしまったが、そこは「超速再生」のスキルによってどうにかなった…その後は何故か、ヴェルドラの叫びでも鼓膜が破れなくなったのは私が持っているスキルの「適応者」の影響だろうか。
【さて、我のことは一通り話してやったのだ、今度はお主のことを聞かせよ。】
「それもそうだな、長話になるが、良いか?」
【構わぬよ、時間なら幾らでもあるからな。】
そうして私は、この世界に転生するまでのことをヴェルドラに話した…レコーダーのことはぼかした上でだが…話そうかとも考えたが、同郷の者がいないとも限らないので黙っておくことにした。
「さて、私の話はこんなところだな、満足してもらえたか?」
【うむ!中々に良き話であったぞ!それに良い夢ではないか、この世界の記録と音を回収する…後者の方は良く分からなかったが…】
「それについては、私の個人的な趣味のようなものと思ってくれればいいさ。」
私がそう言うとヴェルドラも一応は納得したようだが、だが生来のものなのか時折こちらを見ている…あれで隠しているつもりなんだろうか…案外初心なのか?
『僕も気になってはいるんだ、どうやってお前の言う音の回収とやらをするのかをな。』
わかったわかった…レコーダーにヴェルドラも気になっているようだし見せてやる
「ヴェルドラ、これから見せる力は、他言無用にしてくれないか?」
【む?構わんぞ?だが、何をするつもりだ?】
「なに、さっき随分とソワソワしているようだから、見せてやろうと思ってな…『音の回収』を、何より、ヴェルドラから響いている音も、回収したいと思っていたんだ…ふふ♪」
私が舌なめずりをしながら言うと、さっきまでワクワクしていたヴェルドラの雰囲気が変わっていた
【待て、何故舌なめずりをしている?その音の回収とやらは、我に害はないのだろうな?】
「ある訳ないだろう…しかし、こうなってくるとこの「無限牢獄」…邪魔だな。」
レコーダー、お前の宝具、使えるかどうか試したいんだが、構わないか?
『ああ、構わないぞ、だからさっさと音の回収とやらをやれ。』
そう急かさなくてもすぐにやるさ、全く…さて、ヴェルドラにも説明しなければな
「ヴェルドラ、今から私のスキルを使って「無限牢獄」を塗り替え私の固有結界に招待したいのだが、構わないか?流石に、その封印を解くことは私には出来そうにないからな。」
【うむ、構わぬぞ、我もこの「無限牢獄」には困り果てていたからな。】
さて、ヴェルドラの了承も得た、レコーダー、いや稗田阿求、始めよう
『ああ、ここまで試そうにも出来なかったからな。』
私は心月を鞘から抜き、地面に突き立て、稗田阿求と共にかの宝具の詠唱を始める。
「『夫れ、混元既に凝りて、氣象未だ效れず。名も無く爲もなし。誰か其の形を知らむ――森羅万象、我が牢記の網の内と知れ。『傀儡遊園(くぐつゆうえん)!』」
その瞬間、私達を中心に強烈な魔素が解き放たれ、ヴェルドラと「無限牢獄」をも飲み込み、宝具が発動された。
「…どうやら、成功したようだな。」
「ああ、漸く、僕も実体を持つことが出来る…それよりも、あそこで興奮しているヴェルドラを放っておいて良いのか?」
レコーダーが、ヴェルドラの居る方を指さすと、そこには。
【おおおおお!!!何なのだこの空間は!!このようなことがあろうとはぁぁぁ!!ええい!我のスキルが使えんのがこれ程までに恨めしく思ったことはない!!「無限牢獄」めえぇ!】
「今声をかけても、答えることはしないだろうからな、あれは自分の世界に入ってしまっている…私自身も、少々興奮してしまっているからな。」
「そのようだな、証拠として、耳や尻尾も動いているしな…ま、悪い気はしない。」
…レコーダーから指摘されて気づいたが、どうやら無意識の内に耳や尻尾が動いていたらしい…顔が熱い…何より、実体を持ったことによって口は見えないが、明らかに笑っているのが分かる…むうぅ…この体になってから感情を抑えるのが難しくなっている気がする…女になった影響なのか?そうして、ヴェルドラが落ち着くのを待つ間、私は両手と足を使って耳と尻尾を抑え、羞恥心に耐えていた…レコーダーめ、いつか絶対仕返ししてやる
「さて、ヴェルドラ落ち着いたか?」
【う、うむ、我も少々取り乱してしまったようだな、しかし、お前の隣にいる者は誰だ?】
「初めましてと言っておこう、暴風竜ヴェルドラよ、僕はレコーダー、こいつのスキルとやらに宿らされた者だ、事情はある程度、アシスタントが説明しているので省かせてもらうぞ。」
【何と、そのようなスキルがあったとは…先程ものすごく稀な生まれ方をしたとは言ったが、ここまで珍しいスキルは我でも見たことがない。】
ヴェルドラもレコーダーに興味津々なようではあるが、私も早いところ音の回収をしたいのだがなぁ…私がジト目で見ていることに気づいた二人は会話を切り上げたくれたようだ
「さて、色々と時間はかかったが、見せてやろう…安心しろ、痛みはない少々力は抜ける感覚を味わうかもしれないがな。」
私はそう言いながら…前世からやっていたことを始めていく…「音奏者」と「収集者」によって遥かにやりやすくなったことを
リィン……
リィン……
リィン……
リィン!!
「回音・収波」
そう言って私は、ヴェルドラの体に触れ、ヴェルドラの魂が奏でている音を「音奏者」によって解析した後「収集者」の力でその音を私の中に納めた
【魔素が減った様子はないが、確かに何かが一部抜かれたような気がするな…それがお主の言っていた音の回収とやらか!】
「ああ、前世からやってきたことがこれだ、言っただろう?害はないと。」
私はそう言いながら、ヴェルドラから離れた、レコーダーはわかっているようだな、この原理が
「ほう、まさか直接魂に触れ、そこから何かを引き抜いていたが、それが音の回収とやらか。」
「ああ、前世ではここまで上手くはいかなかったが、大体は同じものだ。」
感心している様子のレコーダーに私は言いつつ、ヴェルドラの方を見やると、ヴェルドラは
【前世で使えるとは言っていたが…まさかこのようなものであるとは…もしかしたらちょっと凄いやつだったりするのか?】
何やら小声で呟いているようだが、私には丸聞こえ何だがな…まぁ良いか
「さて、傀儡遊園を解除するぞ?」
「ああ、それと、僕を宝具なしでも実体化出来るよう励めよ?お前の中でも記録は出来るが、やはりこちらの方が捗るからな。」
「わかっているよ、だが、戦闘のときは中に戻ってもらうぞ、レコーダー、それと、記録が乱れたからと言って、すぐに取り乱すなよ?」
「ふん。」
私が苦笑しながらレコーダーに言うと彼もわかってはいるのか目を逸らしながら答えた…後になってわかったことだが、傀儡遊園を展開している間、ヴェルドラが消滅していたかのように思われていたらしい、このことを知るのはそれなりに時間がたった後ではあったが
傀儡遊園を解除し、元の光景に戻ってきた
『さて、いい加減、この洞窟の記録にも飽きてきた、さっさと出口に向かうぞ。』
そうして私は出口を探そうと動こうとすると
【む、言ってしまうのか……】
「ああ、私も目的を果たしたいからな……そんな顔をするな、時折帰ってきてやるから。」
【む!?そんな顔とはどういうことだ!別に寂しいとか思ってないんだからね!】
「ふふ、わかったわかった、出口を探す傍ら、話し相手くらいにはなってやるから。」
【む?どういうことだ?】
「私のスキルの「音奏者」「収集者」の力でお前とは何時でも話が出来るということさ、魂の回廊とやらが刻まれたらしくてな。」
【ふ、ふーん、そ.そうまでして、我と話をしたいのだな!我もそこまで暇ではないが、どうしてもと言うなら付き合ってやらなくもないぞ?】
『こいつ、面倒臭い奴だな…ただ話をしたいと言うだけなのにここまで捻れるのか…?』
まぁそう呆れてやるな、レコーダー、私から見たら微笑ましいものだよ…娘達のことを思い出すからな…
『じじ臭いぞ。』
うるさい、元々爺だったよこっちは…
「ああ、どうしてもだ、レコーダーもいるが話し相手はいた方が良いからな。」
微笑みながら言ったが…何故固まっているんだ?
【う、うむ、そうかそうか、ではこの我がお前の旅の話し相手になってやろう!感謝するが良い、クハハハハハハ!!】
『調子が良い奴だな、全く。』
そう言いながら、悪い気は余りしていない癖に
『煩いぞ。』
ふふふ、今世は今世で退屈しない旅が出来そうだな、呵々大笑をしているヴェルドラと不愉快そうに返事をしているがその実、満更でもなさそうなレコーダーの声を聞きながら思うのだった