大往生したが、記録者と共に異世界で第二の生を歩みます 作:レイギス
あれから落ち着いたヴェルドラに、改めて別れを告げようとしたとき、ヴェルドラがあることを提案してきた
【ちょっと待て、そう言えば、お前には名はあるのか?】
「ん?ああ当然…いや、転生したばかりだから、この場合名はまだないのか?」
【それならば、我が名をつけてやろう、名無しであるならば名持ちの魔物の仲間入りが出来るし、我がお前に名付けるのは加護にもなる。】
ふむ、私のような魔物が名を持つと、何かが変わるのか?
『名は付けてもらった良さそうだぞ、召喚されたとき、多少この世界の知識も知ったが、名の有る無しでは力にかなり差があるようだ、何より魔物であるお前は、上位の種族に進化することが出来るかもしれないしな。』
なるほど、なら名はあった方が良いか
「わかった、なら私に名を付けてくれ、ヴェルドラ、だが、付ける名は指定させて貰っても構わないか?」
【構わぬぞ、どのような名を付ける?】
「……《レイ》レイと名を付けてくれ。」
【わかった、ではこれよりお前はレイを名乗るがよい!】
その瞬間、ヴェルドラから大量の魔素が私に流れ込んでいき、私の中の魂の音が変化したのを感じた……恐らく、これが名付けによる効果なのだろう、そうして魔素の流れが安定すると、私の身にも一部変化が現れていた、尻尾数が増えていたのだ…最初は一尾だったのが今では九尾になっている…私の種族は狐にでもなっているのか?
『お前の種族だが、そのような小さな存在などではないぞ、今のお前の種族は半神半妖のようだぞ?最も、神の要素が七で妖の要素が三だが、どのような神なのかはまだ分からんがな。』
…つまり私は、今神に近いと…最悪だ…よりにもよって【停滞者】に近いだなんて……
【む?どうした何故膝をついて項垂れておる?】
「……いや、私の今の種族がわかって少々落ち込んでな…よりにもよって【停滞者】だぞ…」
【停滞者?】
「半神半妖という種族らしくてな、私は完璧、完全、神の如きという言葉が嫌いでな…裏をかえせば、それはこれ以上の進歩がないということだ…最悪にも程がある…」
【別に今のお前は停滞者などではあるまい、何より、まだ転生して間もないのだからな、そう落ち込むでない。】
『ヴェルドラの言う通りだ、お前はお前であり、僕のアシスタントだ、そんな小さなことで一々落ち込まれては困る、何より、お前が進歩する神になってしまえば解決するだろう。』
…!そうか、それは盲点だったな、今まで神とはこれ以上の進化も進歩もない存在と思っていたが、私自身が進化し、進歩していく存在へと新しくなってしまえば良いのか!ありがとうレコーダー!お陰で目が覚めたよ
『礼ならさっさと、この世界の記録をとらせることで返すんだな。』
「もう大丈夫だ、ヴェルドラ、私は私として、進化し進歩していけば良いと思い出せたからな、当たり前のことではあったがいつの間にか忘れていたらしい、感謝するよ。」
【うむ、そのようだな、では行くが良いレイよ!土産に期待しているぞ!】
さて、あれからヴェルドラと別れた後、改めてこの洞窟に生えている草や鉱物などをレコーダー(余り乗り気ではなかったが)と「音奏者」(音の回収の為最初は音奏者だけを使った)と「収集者」を使い解析していると面白いことがわかった
『ほう?このヒポクテ草、元は唯の雑草だったものが、ヴェルドラの魔素によって変質し、魔物にとっては生命の元に、人間達にとっては回復薬にも使えそうなもののようだ、回収しておいて損はないぞ?』
『この魔鉱石とやらは長い年月をかけ、変異した鉱石のようだな、それなりに貴重な石のようだ、お前の持つ心月とやらもそれを使えば強化が出来るのではないか?回収するかは任せる。』
レコーダーと私の解析によって判明したヒポクテ草と魔鉱石の効果を聞いて、私は目に付いたヒポクテ草や魔鉱石を「収集者」の力で納めていくと同時に、回復薬も作成していった魔鉱石も同様に加工し、心月の強化に使えそうな状態へと持っていながら、そうして暫くして、私達はこの洞窟に住む魔物に出会った
「随分と大きな蛇だな、ヴェルドラ、何か知っているか?」
【やつの名は
『ああ、僕も解析してみたが、お前なら遅れはまずとらん程の雑魚だな、最も、唯の人間であれば強敵にはなるだろうが、一応口から吐く毒には気をつけておけ。』
なるほどな、さて、この世界に来て初めての戦闘だな…そう思っていると嵐蛇が口から毒を吐いてきた…が、余りにも遅くないか?
『今のお前は思考加速を使っているからな、そう感じるのも無理はない。』
なるほど、通りで遅いわけだな、そうして止まって見える毒液を避けた後、心月を抜き左斜めに逆袈裟斬りでもって首を断ち切った(断ち切る直前に「音奏者」「収集者」の力で音を回収した)
「さて、この死体の処理だが…ふむ、どうせなら「侵食者」の力を使ってみるか。」
死体となった嵐蛇に向かって手を翳すと黒い霧のようなものが体から現れ、瞬く間に嵐蛇を飲み込み私の体に戻っていった…なるほど、あれが「侵食者」の能力の一部か
『先程お前が喰らった嵐蛇の解析が終わったぞ、それによって、こいつの持っていたスキル「熱源感知」「毒霧吐息」とやらを覚えたようだ、ついでにあの蛇にも擬態出来るようになったようだぞ?』
ふむ、暗闇の中や目が使えない状況では多少は使えるか?それと毒霧吐息は次に会った魔物に対して使ってみよう
その後に出会った甲殻トカゲに対して「毒霧吐息」を放った感想だが、余程のことがない限り、あれは使うまいと決めた…使った後の光景がグロテスクに過ぎるからな…まぁ、音の回収とスキルの調達は問題なく出来たが……ちなみに「身体装甲」という、相手によっては使えるかもしれないスキルであったことを言っておく
その後、エビルムカデからは「麻痺吐息」ブラックスパイダーから「粘糸・鋼糸」を、ジャイアントバットから「吸血・超音波」というスキルを獲得していった
そうして、洞窟内を歩くこと数日後に、漸く出口らしき鉄の扉に辿り着いた
「ふぅ、漸くか……この体が飲まず食わずでも問題なかったのは、不幸中の幸いではあったな…流石に魔物の肉をそのまま食べたくなどなかったし…」
『ふん、僕としてはお前が魔物の肉を喰らった後どのような味だったのかを聞きたかったのだがな。』
…まだ言うかレコーダー、流石に何の処理もされていない生の肉は誰でも食べたくなんてないだろうに…いくら耐性スキルがあるとはいえ、キツいものはキツいわ…
そうして、若干不満気なレコーダーとの念話をしながら扉を開いた先に広がっていたのは、広大な森であった
「…ふぅ、久しぶりの日差しだなぁ…」
それでヴェルドラ、ここがお前が管理していたという森か?
【うむ!今はトレイニーという
…念話ごしとは言え、叫ぶな…耳が痛い…
【う、すまん…】
…まぁいい、一先ずは、この森の散策から始めるか
ヴェルドラ:side
【…しかし、まさか名付けをした瞬間、我の魔素の二割を持っていかれるとは思わなかったな。】
レイ達が去った封印の洞窟の中で、我は一人思案していた…我が最初に名付けをしたレイというものについて
【今まで我が名をつけたものはいなかったが、名付けとはここまで負担がかかるのか?…いや、あやつが特別なのか?うーーむ…そう言えば、名をつけたときに一瞬だが、レコーダー以外にレイの中に何かがいたような気配がしたなぁ…それかぁ?…いや、戻ってきたときにでもレイに聞くとしよう。】
これ以上考えても答えは湧かぬしな、と我は呟きながら、思考を断ち切り、眠りについた…レイに対して、言い知れぬ何かを感じたのを誤魔化すように
同時刻、レコーダー:side
『さて、この世界の記録も多少はとれつつあるな…どういう因果なのか、こうして機会を得ることが出来たんだ、今度こそ、僕の願いを叶えてみせる……だが…』
僕がレイの元に召喚された直後に感じた、あの底知れない気配…八十枉津日神やヴェルドラのようなそれとも異なる、アレは何だったのか…レイにそれとなく聞いてはみたがなんのことか分かっていなかったからな…だが、目覚めさせない方が僕の身のためになりそうだな…あの規格外よりも底知れないなんて、制御など出来る気がしないからな
そうして、思考を切った僕は改めてこの世界の記録にとりかかっていった