大往生したが、記録者と共に異世界で第二の生を歩みます 作:レイギス
「それなりに歩いてきたが、全くと言っていい程、魔物と出会わないな…記録と森の音の回収は出来ているとはいえ、これではな…」
『それなら、その垂れ流しになっている魔素を抑えろ、当世風に言うなら、社会の窓を開いたまま歩いているからな…魔物など、寄り付くはずもない。』
………なぜ、それを早く言わなかった……
『言ってやる義理もなかったからな、それに魔物共と下手に戦いたくないからやっていたものと思っていたのもある。』
…そういう意図はなかったが、なるほど……な……「魔力感知」の視点を変えるんじゃなかった…何だこれは…こんな状態では魔物など現れるはずがないじゃないか………顔から火が出そうだ…はぁ…
『いやはや、お前は戦い以外ではどこか抜けている節があると思っていたが、こうも見事なものを見せてくれるとはな…僕は嬉しいぞ?』
…うるさい、好きでやっているんじゃないだよぉ……
そうして、レコーダーに弄られ若干涙目になりながら、流れ出ていた魔素を完全に抑え込み、改めてジュラの大森林の探索に入った
それから数時間後…私は、傷を負った一匹の白い狼に出会っていた
「ふむ、この傷…同族にでもやられたのか?どうしたレコーダー?興味深そうにしているが。」
『ああ、こいつは牙狼族、本来なら個にして全という文言がある程、群れをなしているのが当たり前な種族のようだからな…だが、近くに同胞の死体もなく、それでいて同胞からの傷がある…アルビノ以外に何かあるな、こいつは。』
そうだな、かなりの傷を受け、虫の息にある筈なのに、未だ生への執着を諦めていない…それどころか、私の強さに気づいているのに、私への闘志すら燃やしている……面白い…魂から発せられる音もそうだが、何より、その貪欲なまでの生への執着…丁度良い、名付けでどれ程の魔素を消費するのかも気になっていたし、こいつで試すとしよう
そうして私は、虫の息となっている牙狼族に近寄り、ヒポクテ草から作っていたポーションをかけ、傷を治し、困惑している様子の牙狼族に対し、問いかけた
「虫の息となりながらも私に対して闘志を向ける程の生への執着と…何より、お前の魂から発せられている『音』が気に入った、私の仲間になれ、強さには気づいていたのだ、今さら力を見せなくても分かるだろう?」
「…分かった、今の俺では逆立ちしたって勝てそうにないからな…だが、一つだけ覚えておけ、俺はあんたの下にはつくが、それは俺が『生きる』為だ、あんたでもどうしようもない敵に出会えばあんたを見捨てて俺は逃げる…俺が『生きる』為にな。」
「ああ、構わない、寧ろ我を曲げてまでついてくる気だったなら、切り捨てていた、私はお前のその在り方と魂の音が気に入ったのだから…さて、そろそろ日も暮れる、少し開けた場所に移動するか、それと今後、私のことはレイと呼んでくれ。」
「わかった、レイ。」
そして、少しばかり開けた場所に出た後、「創造者」の力で簡易的な家を創った、その際、ひどく驚かれたが、そこまで驚くか?…あとレコーダー、お前も呆れたようにため息を吐くんじゃない
「さて、漸く腰を据えて話が出来るな。」
「あ、ああ、そうだな…だが、ただ話をするだけなら結界なんて必要ないんじゃないのか?」
「いや、これから話すことは、出来ればお前以外には知られたくないからなその為に張らせてもらった。」
そうして納得してもらったあと、私は自身が転生者であること、封印の洞窟でヴェルドラと出会い、名付けをしてもらったこと、私の目的を大まかに説明した、途中、音の回収とはどのようなことなのかを聞かれたので回収がてら実演してみせ納得してもらった
「と、概ねこんなところか、まだ頭が追いついてはいなさそうだが、大丈夫か?」
「まぁ、大丈夫だ、それに分からなければそのときにでも聞くさ…それと、あんたは食べなくても大丈夫だから良いんだろうが、俺はそうもいかないから、何か、食い物はないか?…ここのところ、水以外でろくに食べれてなくてな……」
「む?ああ、そうか、少し待て…」
私は、「創造者」の力がどこまで通用するのか試すのも兼ねて、適当な食糧を創り出せるか試すことにした…結果、創り出すことは出来たが……出来ればこの方法は、非常時以外使わないことを決めた…食べれなくはないが、殆ど味のないナニかとしか言いようのないものが出来てしまった為だ……これについては、後ほど、更に細かく指定すればどうにかなるのか検証することを人知れず決めた…そうして一悶着あったが(詫びとして、付近にいた魔物を狩り、牙狼族に提供した)、これで本来の目的に戻れる
「……さて、これで本題に入れるな。」
「ん?あの話が本題じゃなかったのか?」
「あれはあくまでついでだ、お前には、ある実験と、名付けをした際、どこまで魔素を失うかの検証に付き合ってもらう。」
「なるほど、俺としては願ってもないことだが…実験っていうのは何をするんだ?」
「そう警戒しなくとも、命の危険があるようなものではない、名付けで消費される魔素に、属性の力を混ぜ、進化先を指定出来ないかと思ってな。」
「…それはまた、随分とぶっ飛んだことを考えるんだな、あんたは。」
「なに、無意識に出ていく魔素を制御し、意識してお前に属性を混ぜた魔素を送るだけだ、さて、始めよう。」
そうして私は、牙狼族の前に立ち、手を翳し、名を告げる
「これよりお前には…ライカン…《フォン・ライカン》の名を与える。」
私がそう告げた瞬間、体から魔素が出ていこうとしていくのを感じ、それを抑え、代わりに氷の属性を混ぜた魔素をライカンに送り始めた…しかし、脳が焼き切れる限界まで思考加速を施し、魔素の制御を高速で処理しなければ、忽ち失敗しているな、これは……
『随分な大言を吐いたじゃないか、レイ、本来名付けによって減る魔素は、本人が気付かぬうちに消費される…それを自力で制御し、剰え指向性を持たせて与えるなど…敢えて言うが、気は確かか?』
…ふん、私はこれ以上ないほど正気だよ、レコーダー、それにこれは、お前を宝具なしでこの世界に実体化させる為の下準備でもある
『ほう?この狂気ともとれる所業と、僕の現界が結びつく、と?』
ああ、そうだ、お前は元々、この世界風に言うなら、高純度の魔素の塊とでも言うべき存在だ、しかも並の魔素程度では実体化など出来はしない…何度かお前を実体化させようとしたが、その全てが失敗したからな…なら、極限まで魔素を凝縮し、濃度を上げた魔素を作り、その魔素でもって、お前を実体化させられないかの試みだ…その前段階として、自身の魔素に指向性を持たせる程度簡単に出来るようにならなければな…さて、流石にここから先は、更に集中させてもらう、お前とのやり取りも一時的に出来なくなるが、許せよ、レコーダー
『ふん、僕と話す程の余裕を持たせておいて、よく言う…が、僕の助力なしで、これを本気で成し遂げる気でいるのは評価してやる…記録の端にでもその所業は書き留めておくさ。』
そうして、私は夜が明けるまでの間、ライカンに氷の属性魔素を送り込み続けた……途中、何度か意識が飛びそうになったり、遂に思考加速に体が耐えきれなかったのか、頭の血管が何本か焼き切れたが、些細な問題だったな…が、超速再生でも一部追いつかないほどになるのは想定外だったが…ライカンはそんな私の姿を見て、もういい!やめろ!!と、涙を浮かべながら叫んでいたような気がするが…途中で止めれば、お前の進化が中途半端になりかねなかったから、耳を貸すことはしなかった…どうにか……終わったが…っぐ……意識……が…………
『全く、まさか本当にやり遂げるとはな…とんだ大馬鹿者だよ、お前は……暫く寝ていろ、その間、体の面倒は僕が見てやる…起きたら、アイツからの説教に耳を傾けてやることだな。』
……あぁ、わか……った……あとは……任せ……
『ふん、さっさと寝ていろ、阿呆が…まぁ、僕も面白いものをみせてもらったんだ…その駄賃代わりだ…だから早く起きろよ、アシスタント、お前以外には、取る予定はないんだからな。』
ここまでお読みいただき誠にありがとうございます( ᴗ ̫ᴗ )
最後に出てきた白い牙狼族もとい、ライカンですが、ゼンレスゾーンゼロのとあるメインストーリーの一部に出ている過去の言動から捏造させていただいたものとなっておりますのでご了承くださいm(_ _)m