転生ミクのSV最初からの旅路   作:イエッサム

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初配信

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 破壊者、トドロクツキはミクの破滅的な音楽に聴き惚れた。

 他者には容赦なく威嚇、攻撃するのにミクには従う……というより、認めてあった。

 この本質を歌声は肯定する。

 獣であっても、彼女は良いと言ったのだ。

 ならば獣らしく、猛威を振るい認めた相手には共に行こう。

「バハムート、ちょっと良い?」

 バハムートと名付けた最強の龍、最初から不思議なことにアイテムを持っていた。

 暴れた際に落としたようで、瓦礫の山から埋もれていたのを拾ったのだが。

 カプセルみたいな物体。これは……。

(ブーストエナジー……)

 パラドックスポケモンの能力を底上げするブーストエナジー。

 何故かバハムートは持ってた。

 バハムートはアラモードとは違う。

 獰猛で、凶暴だ。沸点も低く、暴れる事を好む。

 しかも滾ると唸って出せとせがむ。

 根っからの暴れん坊。

 熱くなりやすい上に、知性こそあれど理性は無い。

 アカデミーで暴走するわけだ。

 殆どのトレーナーは、猛獣の面倒など見たくも無い。

 ミクは観客故に、歌っただけだ。

 望まれたら、須く応じるのが歌姫だから。

 その歌声を聞いていると、バハムートは沈黙する。

 聞き入って判断しているようで、歌い終えると満足げにふんぞり返る。

 どうにも、暴れることとミクの歌声を聞くのは同義で、感情的にも鬱憤を晴らせる良い時間のようだ。

 手持ちのポケモンとはバハムートは仲良く……ともいかない。

 そもそもバハムートは他のポケモンを打破すべきかどうかで基準らしく、全員興味を示さない。

 どうでも良い。敵対するなら蹂躙するだけ。

 敵にすら値しない。そう振る舞う。

 アラモードはヤドランやタイカイデン、リザードンやニャイキングとは普通に接している。

 アラモード本人は。

 他のメンツはあの絶望的なシャウトがダメみたいで、露骨に耳を塞ぐ。

 退廃的な音楽もミクが嗜むようになった。

 荒廃的で破滅的な音楽。聞いててゾクゾクする。

(凄いジャンルが良い。万人受けはしないだろうけど……バハムートやアラモードが好きなわけだ。壊れるって、歌うとこんなに面白いことなんだね)

 表現として、破壊、絶望、破滅。

 今日も部室で歌い上げていくと聞いてる軽音部の先輩が言う。

「ミク、前より昏い意味の感情とかの表現力が上がってる。ホラーとかの音楽も飲み込んだね。やっぱりあのパンクロック、良かった?」

「それもですけど。昏い曲も、ヘビメタも聴いてると……病みつきになりました」

 この表現、歌っているときの狂熱が、胸を焦がす。

 奈落に落ちる歌。絶望を誘う歌。

 希望を否定する歌。夢をぶち壊す歌。

 全部、新しい味がする。心がヒビ割れていって。

 苦痛という刺激。失望という虚無。

 空虚感が、歌に乗せる感情を食らう。

 なのに乗っかる感情は、何と言えば良い?

「雑食っていうより、貪欲だね……。 絶望の味を知った歌い手は、リアルでも破滅するから気をつけな。それは、歌っているミクも酔いしれる麻薬だよ」

「フフフッ……はい」

 楽しい。この感情、とても好き。

 明るい歌だけ歌ってきたミクが、アラモードとバハムートをキッカケに新たなジャンルに覚醒させた。

 ホラーも歌うし、何ならパンクロックもヘビメタも。

 多様性という意味で、偏食は良くないと思う。

 歌えるモノは歌おう。知ることも大切だ。

 二匹のパラドックスを任されたミクは暫く授業を受けて驚く。

 パルデアのジムリーダーはテラスタル以外にもメガシンカを持つ人物がいるらしい。

 テラスタルは常用する。だが私用ではメガシンカを持つ面々もいると。

 オモダカですら公式戦でテラスタルとメガシンカを使う。

 ただ対象が被ることが多いので、オモダカは二匹の切り札を持つわけだ。

(要するにジムリーダーが原作より強くなってる訳ね……)

 一応授業を受けて、テラスタルオーブは正式に受け取った。

 後は、バハムートの育成。

 こいつの対応したテラスタルを調べる。

 嫌がらない。恐々やっているが大人しく待っている。

 この間の荷物の時に貰った技マシンを受け取っておいて良かった。

 テラスタルタイプは飛行か。おや、と思う。

 これ、ゲームで出来たあの戦術出来るか?

 ブーストエナジー消費して攻撃上げて、テラスタルでアクロバット。

 誰が呼んだか疑似ボーマンダ。

 ブーストエナジーは消費しても、何でか消えない。

 バトルが終わるとまた戻っている。

 つまり戦闘中のみの消費アイテム。

 不思議なことにこのブーストエナジー、専用アイテムとして使った方が良さそうだ。

 ここで、全体的にポケモンの能力を把握して、ちゃんと組み立てる良い機会。

 ヤドランは兎も角、他のメンツも強化した方が良さそうだ。

 丁度その頃、野外授業で戻ってきたクラスメイトが何やら怯えた様子でミクに相談を持ちかけた。

 話を聞いたら、手持ちの長い付き合いのポケモンが進化したという。

 良かったと言ったら良くないらしい。

 トレーナー本人が、怖いのである。

 自分のポケモンのビジュアルが。

 言わば、殺意の波動に目覚めたような静かなる殺意の権現。

 荘厳に佇むだけで、然し確実に纏うは殺気の拳。

 こんなポケモン、無理だと。ビビって命令できない。

 進化前はただ暴れていただけのバハムートみたいな奴で手を焼いていたのもありもう苦労もしたから頃合い。

 付き合いきれない。こんなポケモンになるくらいなら、もっと怖くないポケモンと交換できないか聞かれた。

 また手持ちの交換か。これ以上は勘弁願いたい。

 そろそろ旅のメンツは固定にしたいのに、どうしてもと言われて渋々応じる。

 タイカイデンが欲しいと言われた。

 確かにこの子も送られた一匹だが、タイカイデンはミクの最近の趣味に少し嫌気がしている様子だった。

 パンクロックなどよりも、タイカイデンはポップスの方が好きだがミクがそういうのを嗜むなら、ちょっと考える。

 タイカイデンを出して、多様性の歌はダメか聞いたらタイカイデンは好き嫌いがハッキリしている。

 ミクの歌う一定のジャンルが好きであって、此方の歌は聞きたくない。

 特にアラモードの絶叫を聞いてるので、首を振る。

 遠くで配信していくであろう、好きなジャンルの歌の動画を見ることにする。ファンだとも。

 でも雑食になったミクの歌声はあまり好めない。

 歌い手は何を歌っても良いが、ファンと言えども選ぶ権利はある。

 音楽性の違いが出た。好きな音楽を聞きたいタイカイデンは、申し訳ないが遠慮するようにミクの提案を否定した。

「分かった。じゃあ、これからも応援よろしくね?」

 よく話し合って、タイカイデンは遠くで見守るファンとして離脱。

 代わりに交換したのは……。

「……」

 ……怖いわ。納得するミク。

 こりゃ、普通の感性で言えば怖い。

 無言で佇むだけで無意識に萎縮させる雰囲気のポケモン。

 コノヨザル。目付きが血走っている。

 静寂の憤怒の化身。そう言われるだけの事はあった。

 クラスメイトは、タイカイデンのお礼に野外授業で手に入れたお土産をくれた。

 素朴な甘い味のする真っ白なお餅。

 礼を言って、教室の隅で新たなメンバー含めてお餅を配った。

 バハムートがコノヨザルに反応する。

 横目で見て、ミクを見る。戦って良いかと。

 ダメと言っておく。教室が廃墟になる。

 コノヨザルはバハムートの意識にも静寂を保つ。

 餅を受け取り、静かに食らう。

 その他、沢山の色のついた餅を貰ったので皆で一服しながら食べる。

 ……これが、通常とは異なるドーピングアイテムなどすっかり忘れていたミク。

 美味しい餅を、お茶を配って交流として開いた。

 コノヨザルは、殺気こそ纏うがバハムートと違ってとても落ち着いている。

 ご機嫌に鼻歌を歌うミクがニャイキングとヤドランに共に餅を食っていると。

 不意に、コノヨザルはミクに拳を握って突き出す。

「ん? なに、どうかした?」

 コノヨザルは感情の起伏が無いのか、沈黙している。

 ただ、この拳の意味を見てミクは判断する。

 ……仲間に入りたいのか? 和解の証か? 

 漫画で見たことのある、拳を拳でぶつけ合うコミュニケーション。

 やってみた。合わせる。

 コノヨザルは憤怒のまま、静かに腕を降ろした。

 これで良いのか。聞いとくと頷いた。

 仲間として、互いに高めようという意思。

 コノヨザルはオスと聞く。彼なりの表現。

 バハムートが益々疼いているが、コノヨザルは気にしない。

 その過程は過ぎたように悟っている。

 怖いけど落ち着いている。寡黙な戦士のように。

「よろしくね」

 再度、頷いた。これがコノヨザル。

 歌い手として、何でも歌うけど五月蠅いからそこは了承して欲しいとも言う。

 手で制するコノヨザル。

 音楽とは多様性。多様性とは、幾星霜。

 どう受け止めるかは、本人次第。

 コノヨザルは、気にしない。どのような歌であろうとも、それがミクの歌声である限りは、聞こう。

 そんな風な言動で、彼は黙する。

 静かなる憤怒の戦士。

 コノヨザルはそう言えば良いのか。

 静かな怒りって怖いんだよなと思いながら技マシンを取り出して皆に使う。

 特にアラモードは火力が無い。元々サポートポケモン。

 これを本人の歌いたいように扱うには、遠距離が最適解か。

 幾つか使う。怒らないどころか、アラモードは笑みで雄叫びを上げようとするのでストップ。

 お茶の時間に騒ぐのはマナー違反だ。

 バハムートは、荒々しい接近戦。というか、素でのスペックがメガシンカに匹敵していてテラスタルの切り札になりそう。

 リザードンはバランス。

 Xの接近戦や遠距離を一つ持てば良い。

 ニャイキングはメタルクローに代わって念願のアイアンヘッドの技マシンを入手できた。授業で借りられたので、使わせて貰う。

 ヤドランは今のままで良い。

 コノヨザルは既に育成済み。

 自分には必要ないとまた手で制する。

 持ち物もそれぞれ持たせた。

 これで準備万端。

 ……では、初のアカデミーからの単独配信しようと思う。

 衣装は着ている。もう常用で。

 着替えるの面倒臭いので、アカデミーから許可を貰っている故。

 自分のチャンネルをスマホで開く。

 アカデミーの関係やナンジャモの関係で流れてきたそこそこ登録者はいる。

 そこの数はどうでも良いけど。

 別に収益化しているわけでもない。

 ライブ配信の準備は出来た。ナンジャモに一応連絡。

 やり方は事前に聞いているので多分大丈夫。

 でも単独ライブ、初挑戦するけどどうする?

 今はアカデミーにいる。

 今回はアカデミーの施設の紹介とこれからの目的を説明する初回にしようと思うが。

 直ぐに返事が来た。こっちでも同時視聴で繋げてサポートするから少し待て。

 合いの手あった方が楽だろう。盛り上げは任せろ。

 そう言うと、ナンジャモの方でゲリラでライブ配信が始まった。

 先に枠を立てるから、その後やれという。誘導はこっちでやる。

 ワラワラと群がるリスナー勢。

 お決まりの挨拶と決めセリフを言ってから、ナンジャモのほうが事を進める。

 オッケーが来たので、こっちもライブ配信開始。

「ご視聴の皆さん初めまして、こんにちはー! 初音ミクです! ……と言うのはご存じの通り冗談です。この度、紆余曲折あって配信者を始めました、アカデミーの歌い手、ミクと申します! パルデア地方のアカデミーからお送りします、初ライブでーす! 今回はよろしくお願いします!」

 笑顔で、分かりやすく。

 新規さんにも丁寧に。

 ナンジャモの枠とくっ付けてお互いの顔を繋げる。

『皆の者、前に言ってるから聞いてるなー! ボクの新しい長期企画、ナンジャモが駆け出しのそっくりさんをプロデュースしてみた! 彼女がそのそっくりさん、アカデミーのミク氏だぞい! 皆の者、さぁ崇めろ! 初音ミクがパルデア地方に来たー!』

「来てないですナンジャモ氏。あと崇めろって言うほどの凄腕トレーナーでもないです。マジで新米トレーナーです」

『律儀にボクに突っ込み入れてる! ……んん? ミク氏、髪飾りになんかついてない?』

 気付かれた。髪飾りのメガストーン。

 こう言うとき、リアクションで正しいのは……。

「ナンジャモ氏に秘密で入手したメガストーンでございます。はい、駆け出しながら事前告知で知られた私のリスナー勢からのプレゼントです。つまり駆け出しでメガシンカも周囲から期待されております! 胃痛がします! 胃薬プリーズ!」

 巫山戯て乗る方が良いかなと思うので、巫山戯てみる。

『ワッツ!? ミク氏のところの皆の者、期待値高くない!? ミク氏にメガシンカとな!? ……ちなみにテラスタルは?』

「バッチリ駆け込みで受け取りました! あ、皆さんに説明しますとうちのアカデミーではテラスタルオーブは授業を受けて認可されてから降りる備品なので貸し出しなんですよ。紛失したら世にも恐ろしい相手が笑いながら迫ってきますのでご注意を。此方に来た際はテラスタルをしたい場合、アカデミーに入学すればパルデアなら何処でも出来ますよ! 年齢制限はありませんので、勉学に来たい方はどうぞ本校をよろしくお願いします!」

『おっとミク氏、笑って宣伝は良いけど地雷の上でタップダンスは止めよう。それ以上はいけない』

 オモダカの事地雷って言うと不味いのでは。

 ほら、こっちのコメントにヤバいのが流れている。

(ナンジャモ氏、理事長地雷とか言っててオワタw)

(ミク氏の通うアカデミー、興味があるなー)

 ……一瞬で意味の分かるリスナーがいる。

 これ、見てる本人じゃないか?

「では初めての皆さんに、我が校を案内したいと思います! ナンジャモ氏、補足説明頼みますよ?」

『おっふ……やっべー、踏み抜いたァ……!』

 冷や汗ダラダラで聞いてねえのでもう一度言っとく。

 落ち着けと言いたいが生放送なので控えた。

 我に返ったナンジャモが即座に取り繕う。

『オッケーミク氏! 不肖ナンジャモ、これでもリーグの人間ですので、わからないことがあったらミク氏より寧ろボクに聞け皆の者! ミク氏は当事者、ボクは関係者!』

「歴史あるアカデミーの魅力、少しでも知って貰えれば幸いです!」

 こうして初配信を始めるミクとナンジャモ。

 紹介をしながら全校を回るそんな有り触れた初配信。

 上々の反応だったと、後でミクは聞くのだった。

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