転生ミクのSV最初からの旅路   作:イエッサム

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象徴よりも実用性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブラストバーン。究極の大技。

 本来ならば、遠距離は火炎放射が常用するつもりだった。

 だがリザードンがこれを覚えていたと知ったときに思った。

 火炎放射に書き換えて良いのか。

 切り札の大技を、使い勝手の良い技に。

 リザードンは構わないように振る舞う。

 何故覚えていたのか。理由は分からない。

 でも、一度は使ってみるのも良し。そう判断した。

 結論、非常に火力こそ高いがやはり反動で動けない。

 火柱が燃え尽きた極炎の焦土。

 そこには、力尽きたメガニウムと立ち続けるリザードンがいた。

 黒龍は振り返り、強気に笑った。

 勝ったぞ。そう、見るように。

 そうだ。勝ったのだ。切り札同士の交流。

 メガシンカを制したのは、ミクだった。

「素晴らしい……。ブラストバーンとは、貴様とんでもない隠し球を持っていたな」

 拍手喝采でコルサは褒めた。

 周囲も驚く。

 ブラストバーン……究極の絆を、最初から?

 だが、逆にミクはコルサに伝える。

「ありがとうございます。……でも、やはりですね」

「ん? どうした? これで二勝だ。何か問題でもあったか」

 引っ込めるメガニウムに、コルサが問う。

 ミクは、ブラストバーンをとっておきとする。

 だが思ったことは。

「いえ、私のやり方にブラストバーンが合わないと思ったんです。常用できる遠距離を保持したいんですが、ブラストバーンは大技過ぎて、常用できません。コルサさんの言うとおり本来私はリザードンを遠近双方に対応したポケモンにしたい。ですがご覧の通りブラストバーンは至近距離、尚且つ隙だらけの大技。到達までのタイムラグも然り。案の定、思っていたよりも使い勝手が悪いので。今回のコルサさんのような場面でも無い限り、ほぼ腐る。聞こえは良いでしょう。この技の意味合いも大事です。でも結局、私とリザードンのスタイルに合わないなら意味が無い」

「……究極の大技を随分と理詰めに見るな。これは象徴、言わば浪漫だ」

 コルサも芸術に理屈を持ち込まれるのは嫌いだ。

 それこそ、情緒という物を理屈は理解しない。

「リザードン。ブラストバーン、一回使ったけどどうだった?」

 本人に問うと、満足げにドヤ顔で戻ってくる。

 悪くは無い。そう言う顔だが。

 ミクはブラストバーンという究極の大技をどう見るか。

 リザードンはミクに任せる。

 結局象徴と言われても彼等に拘りは無い。

 本人も、スタイルに合わないなら大技を切っても良い。

「ブラストバーンは必要?」

 聞けば首を振る。もっと実用的な技の方がリザードンは良い。戦いやすくなる。

「ブラストバーンを手に入れるのに苦労したのでは無いのか」

「いえ、ブラストバーンは最初から彼は使えました。実はリザードン、譲渡されたポケモンなんです。つまり、努力などしていない他の誰かの絆だったんです」

「なるほど……」

 譲渡されたポケモン。なのにもう打ち解けた。

 言うことを聞かない訳でも無く、仲を保てる。

 大した物だがブラストバーンを切るとミクは言った。

 メガシンカ状態のまま、スマホを取り出して何やら調整。

 即座に技の変更を行う。

「やっぱり火炎放射だよね。リザードンはそっちの方が使いやすいでしょ」

 あれこれ問答を繰り返すミクは、呆気なく究極の大技を捨てた。

 人によっては修行をしてでも会得したい切り札を。

 不相応。と、言うよりはもっと現実的な視点。

 重たい武器。速度で翻弄したいリザードンに大技は重武装。火力よりも使い勝手だ。

「割り切りが良いな。執着という物が無いのか」

「私は自分の戦術の最適な行動を取りたいだけです。この技は象徴であろうとも、合わないというなら切るほか無いので。そもそも、貰い物の大技を自分のモノにしたくはないんです」

 尤もな言い分だった。

 他人から受け取った意味合いも寄るが、これは見るに単なる譲渡。

 託されたわけでは無い。

 つまり、引き継ぐ理由が無いのだ。

「良いぞ、ミク。そうやってトレーナーは己のスタイルを調整していく。象徴よりも実用性ならば、それも自由だ。アートは自由から生まれるモノ。貴様の好きにやってみるといい」

 尊重するコルサに礼を言って、ミクは言う。

 調整は終わった。このままリザードンで行く。

「消耗はしていません。リザードンで、畳みかけます」

「フッ……だろうな。今の分析なら、妥当な所だ」

 試合続行。メガシンカ状態のリザードンが続投。

 オモダカも見ている。

 呆気なく切ってしまうミクに、やはり借り物や貰い物の大技は相応しくないと思うのだろうか、と感じる。

 大技を切って、火炎放射に切り替えた。

 コルサは再びキマワリを出す。

 起点を作る気か。でも、リザードンなら突破できる。

 試合、再開。

 キマワリは初手から日本晴れで日照りを起動。

 だが今回はリザードンの炎が強化される。

 主砲は効かず届かず、有効打の大地の力を試みるも、エンジンのついたリザードンのニトロチャージには追いつけない。

 空振りして、突撃を受けて簡単に撃破。

 呆気なく、キマワリも倒される。

「火のついたリザードンには敵わんか」

「一気に攻めます。メガシンカを使った以上、一つは切ったわけですから」

 そう言うと、次に出て来たのは……。

「では攻め手を変化球で行くか。ゆくぞトロピウス!」

 また日照りの塊のようなポケモン、トロピウス。

 全部の特性が日照りの関係にあるポケモン。

 リザードンに出してくると言うことは、今度はサンパワーでは無い。

 葉緑素にしてはリザードン相手には遅すぎる。なら……。

「リザードン、ドンドン攻めるよ!」

 嫌な予感がする。攻めきらないと不味い。

 バトル開始。

 そう判断するや、一気にリザードンで突っ込む。

 だが、ニヤリとコルサは笑う。

「貴様の予想は正しい。攻めきらないと逆転される。分かっているとも。だが、トロピウスはこう言うことも出来るぞ。宿り木の種!」

 長い首を大きく振るって種をフィールドに撒いた。

 宿り木の種。やっぱり耐久型。

 直接で無くとも効果があるのか。

 そして空を飛ぶで舞い上がり、空戦になる。

 舞い上がるトロピウスと追随するリザードン。

 空中でニトロチャージで突進を受けても、日照りの状態でも堪える。

 フィールドに植えた宿り木の種から養分を貰って常時回復する。

 更に削ったらもしゃもしゃ木の実食ってる。

 空を飛ぶでニトロチャージに対してカウンターでタックルで反撃しつつ。

 それも何度も何度も。

(収穫だ……! 日照りの時は絶対に木の実が復活する)

 特性収穫。木の実を持っていると、食ったら確率で復活する。日照りの時は即座に何度でも。

 ニトロチャージで上がりきった速度で、空戦で巨体同士でぶつかり合う。

 上書きした火炎放射で遠距離で攻撃。

 向こうも燃やされるの前提で種爆弾で応戦。

 火炎放射が種爆弾の弾幕で威力を殺がれる。

 届かない。ならば接近戦のドラゴンクローで削る。

 肉弾戦だ。ドラゴンクローで殴るリザードンと、空を飛ぶでカウンターで体当たりしてくるトロピウス。

 常時もしゃもしゃ木の実食い続けて、地上からは常に養分を吸い取る。体力が削れない。

 こっちだけがカウンターで貰う攻撃で体力が減る。

「どうだ? これが粘るという戦術だ、歌姫」

「回復量が多すぎる……! 抜群何発も食らってもその前に回復されるんじゃジリ貧……!」

 次第に追い込まれるリザードン。

 有限の体力と伸びた制限時間ありきの無限治癒では分が悪い。

 でも空戦出来るポケモンがもう一匹しか居ない。

 今、交代で切り替えたらメガシンカ状態が解けて不利になる。

 だったら……!

 此処は、リザードンで時間を削る。

 日照りが終わるまで、ひたすら愚直に攻める。

 向こうも火炎放射を種爆弾の弾幕で防ぎ、ドラゴンクローには空を飛ぶで体当たりしてくる攻防。

 数分間、戦った。日照りが終わったが、同時に。

 リザードンが遂に落ちた。

 限界らしく、メガシンカが解けて力尽き着地する。

「やるな。日照りが終わるまでそちらも粘ったか」

 降りてくるトロピウスにコルサは言う。

 収穫と宿り木の種で異常に回復する持久戦。

 体力の限界と見たミクはこっちはリザードンが戦闘不能だと告げた。

 一匹、倒れた。

「お疲れさま。ありがとうリザードン」

 精一杯頑張った。礼を言うと、振り返る彼が後を託すように戻る。

 さて、トロピウスか。

 収穫とは、もしやこのトロピウス。

「コルサさんのトロピウス、通常の個体じゃ無いですよね」

「気付いたか」

 褒めちぎるコルサは自慢のように言う。

 アイテムを使って、特性を変更し新たな芸術を求めた彼の試作戦術。

 通常特性じゃない。所謂、夢特性。

 日照りが終わるまで、木の実は即座に復活する。

 オボンを持たせてフィールドに撒いた宿り木の種で養分を吸い取る事で、多数の弱点を無理矢理カバーする。

 耐久型。これが現実的なやり方か。

「トロピウスはオージャの湖で捕獲したのだ。何分、この辺には居なくてな。かなり苦労したぞ。こいつの周りにゴルダックが群れでいたり、ストライクが襲ってきたりして、挙げ句に湖に妙な巨大な魚影も見かけた。知ったことでは無いが」

 序盤のジムリーダーがサラッと主のいる湖に行くのか。

 それを剰え使い出す。

 然し、オージャの湖で捕獲したというが。

 良く無事だったと思う。危険地帯なのに。

「それを持ち出すのは、貴様とのアートで良いインスピレーションが生まれる予感があったからだ。事実、まさかリザードンの猛攻を堪えるとは。貴様の評価はどうだ?」

「まるで自己再生とまとわりつくを繰り返すドヒドイデを相手している気分です」

 正直言うと持久戦は初めてで対処をどうするか、思考している。

 リザードンでコートの宿り木の種を焼き払っておけば良いがそれだと大火事になる。

「フハハッ!! そうか、さぞ手強いと言うセリフで満足だ。ちなみに知っていると思うが……」

「日照りが無くとも五分で木の実は復活するんで、結局このフィールドにある宿り木を撤去しない限り、トロピウスは何処までも踏ん張れる」

 そういう事だ。

 高速スピン、アイススピナーがあれば撤去できるが。

 序盤で覚えるポケモンが居ない。

「どうする? この植物の生命力を貴様は打破できるか」

「……」

 グラスフィールドなら互いに回復する持久戦になった。

 だが宿り木の種は一方的に大地から養分を吸い取る。

 だからリザードンに宿り木を撃たなかった。

 こっちの方が盤石だから。

 ……成る程。

「そうですね。じゃ、トロピウスには少し……骨の髄までぶち抜く憤怒を叩き込みましょうか」

 対処は幾つかあるが、持久戦ならこっちも出来る。

「行こう、コノヨザル」

 そう言って繰り出す、静寂の戦士。

 コノヨザル。殺気が一気にフィールドに緊迫を張る。

「そう来たか。トロピウス、警戒しろ。奴は普通のポケモンではない」

 コルサが気付く。一発で、仕留める気だ。

 コノヨザルはそれで有名なポケモン。

 下手に刺激すると、手痛い反撃で壊滅する。

 遠い地方では、都に現れた巨大なコノヨザルが多くの救世主たる観光客を血祭りにしたらしい。

「準備は良いね?」

 コノヨザルは佇む。空気が、冷える気がした。

 ナンジャモが配信しているがビビる。空気が重い。

 あのポケモンは最終形態のポケモンだが、何故かあのコノヨザル、妙に落ち着いている。

 憤怒のポケモンだと良く聞くが。

 ピリピリする空気というか、自然と緊張する空気。

 冷たく、重たい。コノヨザルの放つ雰囲気が、怖い。

「行こうか」

 ミクが歩を進め、再開する。

 トロピウスは早速飛翔するが、コノヨザルはそれを黙って見上げていた。

 ビルドアップ。準備運動に、全身に力を込める。

 トロピウスの攻撃。急降下して体当たり。

 効果は抜群。然し、コノヨザルは動じない。

 何と、トロピウスのタックルを両腕で受け止めた。

「ほぉ!?」

 あの巨体の自重を持ち上げて、地面に叩きつける。

 コルサが驚く。攻撃を受け止めて、墜落させるか。

「一回目」

 ミクが不意に言う。

 トロピウスが起き上がって佇むコノヨザルに種爆弾で爆撃して距離を離す。

「二回目」

 ミクのカウントが増える。

 純粋に叩きつけるだけなら大したダメージは入らない。

 種爆弾で体力を削る、一気にやらないとコノヨザルは不味い。

 またビルドアップ。力を込める。

 警戒してケアをすべく羽休めで回復するトロピウス。

 ゆっくり、コノヨザルが歩き出す。

 近寄る前に空に逃げる。

「岩石封じ」

 コノヨザルが巨石を生み出し、上に放り投げる。

 上昇するトロピウスに下からの対空砲火でぶち当たった。

「ちぃ!?」

 岩石封じ、追加効果で速度が鈍る。

 コルサの対策、対空で届かない範囲から種爆弾で吹き飛ぶつもりが、強引に引っ張ってくる。

 落ちる前に身を翻す。種爆弾で爆撃。

「三回目」

 また増えたカウント。

 分かっているとも、コルサだって。

 あのカウントが増えれば増えるだけ、危険度は増す。

 それでも攻撃せねば倒せない。空を飛ぶで制空権を取っても、岩石封じで撃ち落とす。

 二度ほど逃げたが、鈍った回避では間に合わない。

 反撃の度に、一回ずつカウントが増える。

 羽休めで着地する。

 常に養分を吸い取る事で体力の管理は優勢。

 なのに、冷や汗を流すコルサ。

 七回。攻撃を仕掛けて回数。

 ビルドアップで踏ん張っているから、倒れないコノヨザル。

「もう良いかな」

 ミクは頃合いだと、コノヨザルに告げる。

 十分、ボルテージは上がっている。

 すぅ……と、右腕を構えるコノヨザル。

 いよいよ来た。コルサも身構える。

「トロピウス、全力で躱せ――」

 回避を言うが、鈍った状態では遅すぎた。

 溜まった憤怒が、拳に宿った。

「憤怒の拳」

 最低限必要なモーションで、振るう。

 轟ッ! と空を切って、実体化した影の拳が飛来した。

 トロピウスの脳天に拳が直撃。

 体力最大の状態で、一撃で粉砕。

 トロピウス、一撃で撃沈。倒れた。

 憤怒の拳。

 受けたダメージだけ威力が上がるコノヨザルの技。

 七回という多い攻撃を堪えて放った、渾身の一撃。

 重すぎる回数を踏ん張った。

 トロピウスは回復以前にワンパンされて、ノックアウト。

 皆、コノヨザルに戦慄する。

 凄まじい覇気だった。

 殺気を纏うのに、余計な怒りは感じない。

 ただ、相手を粉砕するのに躊躇いも無い。

「お疲れさま」

 ミクも分かっているのか、労って落ち着いている。

「削りきる前に倒されたか……」

「トロピウスの自力じゃ、コノヨザルは倒すには足りなかった。コルサさんも手数の危険性は知ってたから躱せと言う。それをさせないための岩石封じですので」

 ミクの言うとおり、動きを鈍らせて、攻撃を出来るだけ受けて反撃する。

 それがコノヨザル。鉄板の動き。

「王道は対策は用意だが、自力が足りんのでは意味が無い。トロピウス、ご苦労だったな」

 よくやったと戻すコルサ。

 さて、残りは一匹。ラストだ。

 ミクもコノヨザルを続投するという。

 コルサ、最後のポケモンを繰り出す。

 エースの登場であった。

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