転生ミクのSV最初からの旅路   作:イエッサム

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前向きな歌姫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視点は変わる。

 この戦い、配信によって多くの人の目に映る。

 直で見た感想は。

()りたい……!」

「ダメですよネモさん。今は公式戦の最中です」

 パルデア最強のトレーナーが、トップに制止を受けるほどリミッターが外れかけていた。

 実っていくのかと最初は思っていた。

 未熟な歌姫。歌で笑顔を周りに振りまくそっくりさん。

 バトルは凡人と言っていたのに。

 とんだ怪物が目の前に居る。

 化けた。徐々に実っていたんじゃない。

 最初から彼女は自分を気付かず偽装していたんだ。

 才能があるとは思ってた。

 でもそれは彼女の見当違いだった。

 確かに最初から面倒を見ていたが、突然消え去って何やら大がかりな計画をオモダカが立てていたのは聞いた。

 その過程でこれ程成長するとは。

 コルサの後押しで完全に卑下から吹っ切れた様子。

 間違いない、もう確定だ。

「ミクはアカデミーの代表に相応しいですよトップ! 間違いないです! 知名度、あの咄嗟の機転……。何か自信無さそうだったのに、もう吹っ切れたみたいですし! 足りないのは本当に経験値だけです!」

「……ネモさんの興奮も分かります。恐ろしい程の他者とのコミュニケーション能力ですね……。コルサさんに激励されたとはいえ、これすら通じて己を高めるのですか。糧に出来るのですか。その上知名度ならば、ナンジャモさんと同等。ええ、間違いないです。我が校の顔でしょう」

 コルサの最後のエース、ウソッキーが出て来た。

 コノヨザルは佇んでいる。十分に怒り狂って。

 本人は最後の切り札、テラスタルを使うと言うが、ミクは笑って言う。

 理に適ったテラスタル。なら、草だ。

 岩と草。互いに相性保管の良いテラスタルなら、変化後でも対応は可能。

 弱点の多いタイプをカバーするならそうだろう。

 だが、ミクはテラスタルは使わないと言った。

 コルサには申し訳ないが、こっちはもう十分ヒートアップしている。

 ウソッキーでは芸術で理詰めのテラスタル。

 コノヨザルの状態を見て分かると思うが。

「今、私もコノヨザルも最高にハイです。ウソッキーでタイプを切り替えたとて。一撃で落ちる状況を、回避できますか?」

 最初のビビり具合から想像できないぐらい開き直っている。

 コルサも笑って肯定する。コノヨザル。

 パルデアで見つかった新たな追記進化。

 多くの追記進化がパルデアで見つかったが。

 その中でも、ドドゲザン並みのスペックを持つ。

 このポケモンこそ、オモダカの切り札であり、トップの栄光を守る悪の総大将。

 リーグのトップの栄光を悪の総大将が防衛するのはいかがなものかと言われるが、殿にどのポケモンを使うかは自由だ。

 これでも全世界において、チャンピオンを名乗れる人物の該当はパルデアが一番多い。

 余所と違ってチャンピオンが複数居るのが当たり前の地方だから当然だが。

 それを差し引いても、ミクはこの旅路で劇的に成長した。

 最初はそっくりさんの物真似を動画で上げたらバズった。

 そこから宝探しで、不良の更生に名乗り出て、大物の主を連携で倒し、凶暴なポケモンと相互理解し、配信者として応援されながら初のジムリーダーに挑んで、叱咤と鼓舞を受けて吹っ切って。

 ネモの言う完全に実った。

 実力は伴わない癖に未熟から成熟を素っ飛ばして完熟に。

 完全に言動は色々引っくるめてトレーナーとして、完成した。

 謙虚だろう。それでいて常に相手とのコミュニケーションを忘れない。

 歌姫の真似事が、何時しか別の才を開花させていた。

 ファンアートの自負を持ち、周囲に感謝を示す歌姫。

 配信者の新人の立場。

 それが、人々との繋がりという才能。

 ネモですら、強者故に持てなかった武器。

「ミクにもっと色々見せてあげたい……! 歌で皆を笑顔にするなら、私がミクを笑顔にしたい……!」

 ネモは興奮して試合開始を見ている。

 コルサは即座にテラスタルを使う。

 だがその性質上、タイムラグがどうしても発生する。

「コルサさんの芸術……嘘から出た実。すみません、無作法ですが、私は真っ正面から破壊します」

 テラスタルのタイムラグ、発動直後にもう仕掛けた。

 憤怒の拳が飛来する。草分けで回避するも、間に合わない。

 そもそもウソッキーは鈍足で物理的に固いポケモン。

 言うなれば典型的岩タイプ。

 それを真正面から粉砕する。

 一撃で沈んだ。コルサも分かりきっていた。

 テラスタルは非常に攻防において重要なファクター。

 だがコノヨザルのような純粋な暴力には追いつかない。

 変更しようが一撃で沈める超火力。

 熟知した上で続投したなら、こうなるのは目に見えていた。

 笑ってコルサは上機嫌で言った。

「遂に咲いたな、パルデアの歌姫! 貴様の勝ちだ!」

「ありがとうございます」

 丁寧にお辞儀をして、試合終了。

 エースのウソッキーは出落ちだった。

 気の毒だが相手が悪い。コノヨザルはそういうポケモンだ。

 ナンジャモが熱狂する配信を盛り上げて、コートの上で握手する二人を映す。

 バッジ一個目、手に入れた。

 その後ミクは、配信で応援ありがとうと言って笑顔で終了する。

 最初のビビり具合から一気に殻を破ってミクは振る舞うようになった。

 全ては自分の望んだことだと知ったから。

 ギャラリーも喝采で終了した。

 メロコ達がワラワラと群がって、ナンジャモとミクを囲う。

 それを遠目で見るネモとオモダカ。

 尚、最高にハイになったのはコルサも同じで、バッジを渡すやアトリエに籠もりたいとの事で早々に去って行った。

 次作の作品に歌と希望を取り入れる方針のようだ。

 終わったら話を聞かせろと言うのにガン無視のコルサに頭痛のするオモダカ。

 パルデアのジムリーダーは何でこう、アレな人物が多いのか。有能だから後でも良いけど。

 気の済むまでやったらレポートを提出するように一報を入れておく。

 その輪に交じりたいのかソワソワするネモにオモダカが言う。

 ネモも宝探しで暇なのならミクについて行くといい。

 さっき言った、ミクを笑顔にしたいなら。

 経験を導く先輩になりたいなら。

 彼女はきっと、全てを成し遂げる。

 だってこんなにも、周囲に恵まれているのだから。

「ミクー! 私も混ぜてー!」

 ネモも輪に加わった。

 最強のチャンピオンが突然来て皆がギョッとする。

 ネモが彼是提案する。バックアップにスター団以外にも、ネモというお嬢様がついた。

「ねえねえミク! いっぱいやることあるのは分かるけどさ、私も一緒に行くよ! ポケモンの捕獲とか、増えた手持ちの管理とか代わりにやって応援するから!」

「おおっとー!? ネモ氏、ミク氏にバックアップ!? オモダカ氏に許可貰ったのなら良いけども……」

 ナンジャモがこれ以上無いほどの戦力に歓迎するが。

 ミクも良いと言った。ネモはもう、目的が無い。

 新たな目的がミクなら、先輩として頼ろう。

「おいおい、生徒会長まで来るのかよ。随分と俺らも大所帯になったなぁ」

 メロコがぼやく。

 暇なら常にバトルするネモに一般の生徒はこういう反応するのが何時ものことだ。

 煙たい対応。強いのに絡んでくる相手。

「ネモが居るなら、どんな相手でも心配ないね」

 ミクは安心したように言う。

 事実最強のチャンピオンが味方で、負ける訳が無い。

 保護者ナンジャモ、リスナースター団、先輩ネモ。

 最高の布陣だとミクは言った。

 オモダカの配慮に感謝。

 オモダカも寄ってきた。

「ミクさん、お疲れさまでした」

「はい。ありがとうございます」

 配信を終えたナンジャモが竦み上がるが気にしない。

 オモダカは随分と激励が効いたと問う。

「そうですね……。私は、結局重荷から逃げていただけだったんですよ。それを含めての私なのに。それを、コルサさんが認めてくれたんです」

「良い指導者ですね、我がジムリーダー達は」

 サラッとナンジャモも指導者扱いにビクッと反応する本人。

 この際、思い切り楽しんでこいと改めて理事長として、彼女は言う。

 パルデアには色々ある。全部巡って、抱える問題を解決しながら楽しむのが一番だと。

 助力にこれだけの助っ人がいるんだから。

「分かってます。私なら、皆さんと一緒に出来る。もう、出来ないとか無理だとか言いたくない。応援って、こんなに有り難いんですね」

「……立派です。プレッシャーや自分への重圧に潰れる生徒もいるのに、貴女は何処までも前向きになりましたね」

「ビビってても、自分が自分でしかないなら楽しい方が良いと思うので」

 このジムリーダー戦でメンタルが強化されたミク。

 もうビビっても怖くは無い。

 応援がある。繋がっている。

 これ程の状況なら、万難だって超えて行けそう。

「フフッ……。本当に、お強いですね。これなら新たなチャンピオンが誕生しそうです」

「すみません、海外にもっと太いパイプがあれば良かったんですけど……」

 ミクはせめてお礼に出来ることをしたい。

 だが現状維持で十分だとオモダカは告げる。

 これだけ有名になったアカデミー。

 実は編入生の申請が急増していたりする。

 入試試験に落っこちる受験生が多いが、それでも宝探しの最中編入した生徒も多数いる。

 それに、姉妹校の方からも良い反応が来ている。

 林間学校にミクを推薦して貰えないか。

 交流を持ちたいという生徒が増えている。

 ゆくゆくは交換留学もミクに。

 広告塔としても、アカデミーに貢献している。

 本家も相変わらず盛り上がっているし悪いことは無い。

 その上で、ミクに気になることは無いかオモダカは問う。

 ザッとパルデアの観光地、歴史的背景などを説明すると。

「えっ?」

 ミクは不意に、ある伝承を聞いて反応した。

 それは遠い昔強大な力を持つポケモンが居て、それを恐れた人々が封印したとされる遺跡があるという伝承。

 ミクは聞いた。その伝承、本来は余所の伝承では? と。

 オモダカも知っている。

 似たような伝承は余所の地方でもある。

 またパルデアにも満月の夜に舞うポケモンや、新月に悪夢を見せるポケモンの伝承もあるのだが。

 ミクは驚いていた。偶然なのか、思惟にふけるミク。

 兎も角、この後どうするかはミクが決めていい。

 旅路はゆっくりと進めるだけの余裕はある。

 これだけの助っ人。皆で手を取れば困難を乗り越える事が出来るだろう。

 順調だ。オモダカも思惑もある。

 ミクには是非ともチャンピオンになって貰いたい。

 パルデアにいるアイドルのチャンピオン。

 これは慢性人手不足のリーグに人を呼ぶ良いチャンスだ。

 才能さえあれば、アカデミーでも四天王でも何処でも雇う。まあ、オモダカに勝てれば……だが。

 悪癖で手抜きの出来ない自分のせいで、多忙が終わらない。

 四天王とジムリーダーの兼任をさせるほど、本当に人手不足なので、新しい人員は大歓迎である。

 その知ってもらう広報にミクはうってつけ。

 って言うかミクは周囲のトレーナーをも引き寄せて切磋琢磨させる。

 もう吸引でもしてるのか、と疑いたくなるオモダカ。

 熱烈ファンがパルデアに来ているのは知っている。

 ドンドン盛り上がっている。それも良し。

 ミクは取りあえずわかったと言って、皆と共に戻る。

 ゾロゾロ引き連れた大所帯。差し詰めガラルに居たというエール団か。

 応援団と言うのは迷惑にならないなら積極的に動いた方がより潤滑に、活性化する。

 もっと人を呼び込む。そう言う意味でミクは逸材だ。

 そっくりさんでも本家初音ミクにはこの強さは無い。

 純粋にミクの才だとオモダカは判断した。

 皆を明るく、笑顔にする歌姫。

 十分、彼女は多くの人を笑顔にしている。

 自信ももったなら、後は経験だけ。

 と、なれば。

(私の指導者としての、教育者としての手腕が問われる。ミクさんにチャンピオンになって頂くための準備。そして、アカデミーとリーグを活性化させる。フフッ……ミクさん。貴女は私にとっても、ネモさんにとっても、願ってもない存在なのです。どうか、思うがまま、存分に探して下さい。自分だけの煌めきを……)

 ああ、本当に幸運。

 こんな人材がオモダカの近くに居る。僥倖だ。

 今までの経験をフル活用して振るって見せよう。

 大人げなくとも良い。ミクの舞台を整えるため。

 それだけでここまで世界を歌声と微笑みで、癒していく。

 こっちがお膳立てするのにも、怒らない。

 逃げもしない。前向きに礼を言う。

 だったら。だったら応えるのが大人の義務。

 本人が望む環境を整備するのがオモダカの仕事。

 生徒相手にスマートなビジネスとは言わない。

 純に、教育者としてのプライドを賭ける。

 これがオモダカの新たな使命。ミクの裏方。

 此方のために尽くす歌姫を裏切る行為は出来ない。

(この大一番、やってみせましょう。やりがいのある仕事ですね……!)

 然り気無くオモダカもミクに感化されて去り際に笑ってしまった。

 やりがい。久々にやる気が出て来た。

 燃えてきた。気合いが違う。依怙贔屓は自覚するが、だって彼女はこんなにも健気で一途。

 応えねば教育者が聞いて呆れる。

 大人として、生徒に見せる手本として。

 率先して行動する彼女達の手伝いが出来れば。

 打算を超えて、価値がある。

 ミクの歌と言動には、ずっと前向きで未来が明るい。

 皆が波及して前向きになれば、もっと良い。

 彼女は、もうミクという一人の存在。

 強い個性を持つ、立派な生徒だ。

(この明るさ、ジムリーダー達にもきっと良い風が吹く。……問題はアオキですね)

 まあ強いて懸念材料を言うなら、強かで立ち回りの上手いダメな大人、アオキか。

 眩しいとか言って手抜きしそう。

 圧かけてもけんもほろろの世渡り上手。

 ミクに悪い影響を与えるかも。

 明るく前向きに生きるミク。

 適当に楽に生きるアオキ。対照的だ。

(……いいえ、オモダカ。此処は逆転の発想。そうです。ミクさんの所でアオキの更生も試みてみましょう。アレほどの強烈な推進力、アオキの惰性も少しは直るかもしれない。ミクさんのコミュニケーション能力なら、怠惰なアオキも牽引出来るでしょう)

 どんな時でも前向きにゆくミクなら。

 一番大事な兼用のアオキの性根を浄化できるかも。

 せめてやる気が出て来るくらいには。

 早速部下を扱き使うオモダカ。

 食が唯一の楽しみとか言っている草臥れたサラリーマンに、最高の歌声を上司から送ってやろう。

 これがのちのアオキの不幸であり、ミクの処世術の基盤になる。

 ミクが前向き過ぎて、アオキが己を姑息とか言い出す始末になるのは、次回のことであった……。

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