転生ミクのSV最初からの旅路   作:イエッサム

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行き先は落ち着いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 策士オモダカの思惑によって、一行に同行する大人が一人増えた。

「どうも、初めまして……」

 全体的に草臥れたサラリーマンに見える男性。

 ボウルタウンに在中し、次に何処に向かうか皆でああだこうだと相談しているときだった。

 施設に尋ねてきたのはサラリーマン。

 ここに居る歌姫の代理責任者として、派遣されたという。

「貴女がミクさんですか。噂は兼々。自分が貴女の責任者になりました、アオキです」

 スーツから名刺を取り出して、呆然とするミクに渡すアオキ。

 まさかアオキが来るとは思ってなかったミク。

 何で来たかというと、上司の矯正のためらしい。

「自分の業務態度が悪いとのことで……ええ、上から貴女の同行を命じられました」

 そうぼやくアオキは、オモダカによって押しつけられたと愚痴る。

 一見するとオモダカのパワハラに見えるだろう。

 だが、生憎とミクは知っている。

「ありがとうございます。思い切りアオキさんの肩を借りたいと思います」

 ニコッと笑って、こっちも容赦なく頼ると言う姿勢を見せた。

 露骨に嫌そうな表情をするアオキ。

「貴女ほどの有名人の責任者……。ナンジャモさんが居るのに、被せる理由が解せませんね……」

「ご自分の胸に聞けば分かると思いますよ。業務態度が悪すぎると言われたんでしょう? そりゃ向上心の欠片も無い、自身の現状維持のためにしか動かないようでは営業も上手くいかないと思いますが」

 思い切り被害者面するなと釘を刺す。

 悪いが、原作知識をもう自重しないと決めた以上、初対面でも容赦なく悪い部分は指摘する。

 そう。アオキの本質は極度の自分の現状維持。

 苦労人に見えるがその実、我が強く自分の現状を優先する保身的姿勢。

 図太く、マイペースな上にやる気が無い。

 自覚して直さない周りを振り回す、オモダカ頭痛の種。

 業務態度の悪いという意味では、当然のオモダカの圧もけんもほろろで逃げる世渡り上手な経験値を持つ大人。

「おや……自分を知っていますか。上から聞いているのですか?」

「オモダカさんからは聞いてませんが何となく見てて分かりますよ。草臥れた雰囲気、如何にも激務をこなしていそうに見えますけど……取り繕いが上手いですね。顔色も悪くない。空気も別に、疲れている人が出す感じじゃ無いです。他の方ならそうでしょうけど、疲れている人はこんな風に取り繕いをする余裕がないんですよ。アオキさんから察するに自分で立ち回って適度なタスクしかしてないのに疲れたような顔をする。違います? それでいて自分の都合の悪い事が起きるとオモダカさんの采配に文句を言う。大人として良くないと思いますが?」

 苦労しているのは寧ろ周りで、見た目ほどアオキは苦労していないだろう。

 知っているから子供の目からも言ってやる。

 ダメな大人の一例、典型的な保身術。

 積極的に動かない受動的な業務態度で、上手くいく訳も無い。本人も分かってて困らないから放置。

 苦労人のフリをしたマイペース。

 業務態度が悪いのは当然だろう。やる気を感じない。

「手厳しいですね……」

 アオキも一発で見抜かれるとは思ってなかったのか、苦い顔をする。子供に正論を言われてぐうの音も出ない。

「丁度良い機会だとオモダカさんから判断されたんでしょう。何かあったらアオキさんのせいにしますね!」

「あ、貴女も上と同じタイプですか……!」

 保身的で言い換えれば自分勝手な現状維持の反省の意味も込めて、思い切りアオキに重大な責任を負わせることにした。 

 それが嫌ならやる気出せ。もっと動け。

「……アオキ氏。ミク氏の言うとおりなのはジムリーダーなら皆知ってるよー? やる気ゼロ、その癖立ち回りで上手く逃げて責任逃れをするって。グルーシャ氏とかがそういうのダサいって言ってるし」

 ナンジャモですら呆れている大人としての意欲の欠落。

 熱のない、気力も無い、自分のタスクさえすれば良いというその認識が、他の人を振り回す。

 なのに嫌なことが起きるとオモダカの愚痴を言う。

 悪びれない図太さ。だからこういう扱いをされる。

「やる気は、無いですよ」

「じゃあ私に何か起きたら全力でアオキさんのせいにします」

「止めて下さい」

 責任者として、同行する多分このメンツで一番年上で役に立たない大人。だから追い込む。

 ナンジャモの重荷の軽減もあるだろう。

 全体の監督と何かあったときの外部の対応。

 サラリーマンなら、出来て当たり前のスキルを抜擢されたんだろう。

 ミクとしては、ここ数日で色々変わった。

 先ず、ネモの参戦。これによって、手持ちの上限が解除された。

 ネモがもっと色々ゲットして育成しようと提案。

 ミクに足りない育成の経験値を稼がせる。

 面倒ならばネモと一緒に見れば良い。

 だからマリルリが戻ってきた。モスノウもそう。

 双方喜ばしい。

 預かりシステムを使って増えても、お嬢様ネモにとっては、家族が増える認識なので大歓迎。

 ミクとしてはボウルタウンから出発してピケタウンに向かう予定。

「ピケタウン……? あそこは労働者の町で、特にジムなどはありませんよ?」

 アオキが営業で良く行くが、学生の行くような場所では無いと指摘する。

 だがそこに丁度狙っているお相手がいる。

 穴を掘る主、ミミズズだ。ピケタウンの近くに居る。

 近隣住民から地響きが酷い、そこら中穴だらけで地盤沈下が起きるなどの報告がある。

 それの退治に向かう。

 そう言うとリーグの業務だと言われているのでウンザリのアオキ。

「あー……ついでにシュウメイのいるアジトにも顔出してくれよ。近くにあるんだ」

 メロコも言うとおり、シュウメイのアジトにも近い。

 顔を出してバカ共を叩き出す仕事もある。

 概要を聞いて、アオキも同情するように言う。

「貴女も大概、多忙ですね。嫌になりませんか?」

「楽しんでいるので、無いです」

「……なんだか、自分が姑息な人間に見えてきました」

 真っ直ぐで前向きなミクにはアオキも自分が矮小な小物に見えてきて居心地が悪い。

 兎に角、道中冒険をしながら先ずはピケタウンを目指す。

 一行は大所帯。これだと移動しにくいので、サポートのメロコの大半の仲間が離脱する。

 取りあえず、シュウメイのアジトに連絡してそこで主の戦力の確保をする。

 常時大量に居ても迷惑になるので最低限に減らした。

 結構な数が抜ける。礼を言うミクに一堂、例の決めポーズをしてから去って行った。

 アカデミーに復帰して復学に向けて準備するという。

「お前のおかげで皆順調だ。サンキュー、ミク」

「スター団あっての活動なので。お使いさまでスター!」

 メロコ達数名を残して、大勢から無数にまで減る。

 行こうとするも、年長者アオキがストップと言う。

 早速提案があるという。

 その主を倒すのは別に良いがもう少しミクはゆっくりと進むべきでは無いか?

 地理的に近いから直行では無く、一度アカデミーに戻って方向を変えて、もう一個ぐらいジムリーダーとの交流を得ても良い。

 大人として、急ぎすぎるのも見ていて損をする。

 余裕だ。ミクはもっと経験を詰むために余裕を持ってスケジュール管理をした方が良い。

「それ、ご自分の都合でのアドバイスですか?」

「……それもあります。自分とてジムリーダーですから、何時かはミクさんとお相手するんです。一個取って勢いでその問題の主を駆除するには、早計かと。ジムリーダーの相手が良い経験になったのは、ミクさんもご存じと思いますが、もう少し待って他で交流を持ち、経験と持ち味を生かす方法もあるという提案です」

「本音は?」

「……アカデミーの街に美味いもんじゃ焼きの店が出店したと聞きました。行きたいので都合つきますか」

 結局自分の都合も踏まえてか。

 食に五月蠅いアオキらしい意見だったが、まあ言い分も分かる。

 呆れるナンジャモやメロコに、悪びれない図太さを見せるアオキ。

 ネモもアカデミーに戻るのは賛成だった。

 丁度、授業もある。受けていくのもありだし。

 アオキ、これで年長者である。責任者である。

 いざという時逃げないか心配だった。

 大丈夫、逃げられないともうアオキも悟っている。

 だからこういう提案を出して、ミクに付き合うのだ。

 ドンドン行こう! で問題起きるの困るから。

 回り道も必要だと。人生の大人が言えること。

 メロコ達も必然的にアカデミーに戻るが、まあどうせ何時かは腹を括るので今からの方が良い。

 様子見を含めて、戻ってみる。

 そもそも溜まった提出物の処理など不登校の支払いもあるので。

 一行、取りあえずアカデミーに戻った。

 次の目的地はセルクルタウン。

 パティシエのジムリーダー、カエデとの戦いだ。

 尚カエデはケーキ屋さんを経営しており、比較的近場でも個人経営なのでアカデミー関係者が買いに行くのは難しいが凄く美味しいらしい。

 ……と、家庭科のサワロ先生が力説する。

 たまたま人手が無く空いている時間を使って部室で練習がてら歌っていたミクに、偶然通りかかったサワロが、ミクの歌声を聞きながら調理するのもどうかと思ったらしく、声を掛けてきた。

 ガタイの良い巨漢だが、物腰は丁寧で紳士的な先生。

「君の歌声を聞いていると手元に集中できるのでね。お礼にワガハイの力作をご馳走しよう」

 バッジ入手の事も知っており、お祝いと言われて振る舞われる。

 何せミクの入手難易度は普通の生徒よりも高いのは教師陣の中でも知り渡っている。

 それでも前向きに進む彼女はまさに歌姫。

 歌で笑顔を振り撒くアカデミーの有名人。

 あと何の因果か保健室の保健師、ミモザも遊びに来た。

 家庭科からする甘い匂いと、ミクの心地良い歌声を聞いて立ち寄ったようだ。

「あ、ラッキー! サワちゃん先生のケーキだぁ! あとミクちゃんもいるってもしかしてついてる?」

「ミモザ先生、あまりワガハイの趣味については……」

「あ、そうだった。ゴメンゴメン」

 そういえば甘党を隠しているんだった。

 ミクは良いらしい。ミクが焼き上がるまで待っている間に適当に歌っているとミモザも上機嫌で聞いている。 

 ミク達がアカデミーにいる間、ナンジャモやアオキは講師としてアカデミーの一画を借りて過ごしている。

 ナンジャモは主に情報処理の授業の手伝い、アオキはオモダカ勅命で経済学の授業の講師をやらされている。

 二人とも圧に怯んで渋々従っている。

 アカデミーではタダ飯はいけないらしい。

 ネモもミクを探していたようで家庭科の教室に来た。

 駄弁っていたミモザとサワロがネモの登場にミクの人脈凄いなと驚く。

「ミク、近場までポケモン探しに行こうよ!」

「明日でも良い? 今はお祝い貰ってるから」

 残念だがお祝いと称するなら、同席するというネモ。

 四人で色々話す。話題は、ミク中心。

「ミクちゃん凄いねえ。また歌ったのバズったんでしょ。あたしも寝る前に聞いてる。何かヒーリング効果でもあるのか熟睡すんの。スリーパーかってぐらい」

 先日戻ってから出した新作の歌ったのが当たり前にようにバズっている。

 何でも歌える歌唱力。桁違いだとミモザは褒める。

「ありがとうございます。今度はアカデミー出る前に歌っていくつもりです」

 いや、そう言って貰えるなら嬉しい。

 焼き上がったケーキを切り分けて、皆に配るサワロ。

 シンプルなスポンジケーキだった。

「今回は敢えて、デコレーションを極力削った地力で勝負してみた。どうだろうか?」

 感想を聞く彼にモグモグ皆で美味しいと言う。

 高級なカステラみたいな感じで、少し甘い。

 本人も食った。妥協点と言う。

「くっ……。やはりムクロジのケーキには中々追いつけないか……」

「えぇー? あたしサワちゃん先生のケーキも美味しいと思うけど?」

 シンプルなスポンジケーキだからこそさじ加減が難しいだろうに、悔しいのかサワロは唸る。

 例のジムリーダーのケーキ屋さんはそんなに美味しいのか。

 ネモも有名でアカデミーでも人気のあるお店だと言った。

 少なくとも校則違反をしてでも買いに行くぐらいには。

 それは確かに凄い。行列は当たり前、完売当然、品薄状態常時。

 個人経営でそれはレベルが違う。 

「お菓子って凄いね……。私には分からないけど」

 美味しいものは皆を笑顔にする。

 カエデはミクと違った方法で笑顔をおすそ分けするプロだと。

 こうやってアカデミーの先生と交流したり。

 近場でネモとポケモン探しに行ったり。

 勿論授業も受ける。

 特に興味があったので、地雷と思いつつも思いきって接触する。

「ほぉ。客など珍しいと思えば。誰かと思ったら例の歌姫か。私のような懐古主義には興味など無かろうに」

「そうでも無いですよ。確認したいことが幾つかありまして」

 歴史担当のレホールだった。

 個人授業を頼みたいと言ったが、何に興味があるのかによると暗につまらないならダメと言われたが。

「……先生は、古代遺跡をご存じですよね。ホウエン、シンオウ、イッシュ、ガラル。何故かパルデアにも。似たような遺跡があること」

「……なるほど? 知っていると言うことは違和感を感じたか、貴様も」

 レホールは職員室の片隅で、窓際に腰掛けて邪悪に笑う。

「はい。おかしいんですよ。突然パルデアに現れた伝承のポケモンと良い、この遺跡と良い」

 そう。災いの祠なら知っているが、古代遺跡などパルデアに無かったはずだ。

 原作知識でも、それ以前の歴史上、もっと古い時代に封印されたことになる。

「で? 貴様の見解は?」

「出したくても知識が足りません。だからこうして聞きに来ました」

 どう見ても変だ。

 大本はシンオウの神話だとは思うが、何故そこら中に点在する。

 分からないから専門家に聞きたい。

「良いな。歌ってばかりかと思っていたが、貴様も中々好奇心旺盛のようだ。歴史に違和感を感じるセンス、悪くない」

「古代遺跡は兎も角、徘徊しているその伝承のポケモンとうっかり出会う、なんてあったら堪ったもんじゃないので」

 そう。現在パルデアには各所のそのポケモンがそこら中に徘徊している。

 ミクには無関係だろうが、出会う確率も無いとも言えない。

「クククッ……そうかそうか。未知への興味もある訳だな? 対策法が知りたいと」

「逃げられます?」

「安心しろ。基本的に奴等は高い自意識……プライドを持つ。寄ってくることは無かろう。現に追いかけている生徒もいるが、見つからないらしい」

 やっぱり早々出会うことは無いか。

 安心する一方で、レホールの講義は始まる。

 古代遺跡の重複。それはある巨人の伝説が根本だが、何故分裂するのか。

 講義を受けて、レホールは言う。

 解放する気か。封印されたそいつらを。

「人間の身勝手で封印されていますからね。彼等の場合は。まぁ、古代遺跡が風化していない限りは私程度じゃ無理でしょう」

「的確だな。祠とは違うとでも言いたいのか?」

 試すように聞くレホールにミクは肩を竦める。

「祠のポケモンは記録にある明確な災い。でも古代遺跡の彼等は当時の人々の恐怖から理不尽の封印された。ここで違いますよ」

「全くだな。保身で封印は正しいが、気になるだろう。その調査……貴様なら最低限の知識はありそうだ。どうだ、一緒に行くか。というか、来い歌姫。見聞を広めるためにも良い機会になろう」

「えぇ……?」

「クククッ。貴様が語った歴史だ。究明に付き合え」

 何と誘われた。強引に。

 曰く、歴史認識に違和感を感じる生徒はいなかった。

 過去の風化した遺跡など観光にもならない。

 なのにミクは異論を唱える。その言動、気に入った。

 秘密で行くので助手でついてこいと言われた。

 ……で。この日の夜に黙ってレホールに渋々ついて行くミク。

 ウキウキで夜遅くにタクシーで古代遺跡に向かう。

 その後、専門家の悪知恵でギミック解いて封印解除。

 出て来たそいつらをレホールは嬉々として相手した。

 ミクは呆れながら応戦して一晩中争った。

 明け方、レホール不在に気付いてクラベルが血相を変えて駆けつけた頃。

「フハハハハッ!! 捕まえたぞ、遂に! 歴史の闇に閉ざされた系譜、レジの名を持つポケモンを!!」

「危うく死ぬかと思った……」

 悪巧みに付き合ったミクと、マジで一般ポケモンで準伝説と知恵で一晩中やり合ったレホールの勝ち。

 全部捕獲した。当然連行された二人だった。

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