転生ミクのSV最初からの旅路   作:イエッサム

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対スグリ 二匹目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、行くべ! オオタチ!」

 二匹目は予想通り、オオタチだった。

 相棒と称されるのはこいつとカミツオロチが原作。

 どっちかと思っていたが、オオタチだったか。

 ふむ、とミクは考える。

 やっぱりこのルール、後攻に有利というか見てから選べるのはやはりどうかと思う。

 多頭持ちのミクからすれば、スマホで持ってきて有利なポケモンを出せる状況にある。

 いや、これはミクの問題であり多分ネモもやらない方法。

 ネモは多頭持ちの筆頭だが、手持ちを予め決めている。

 その限られた枠から、ポケモンを選ぶようにしているみたいだった。

 対してミクは、固定せずに全体を常に見て相手に有利なポケモンを出せる。

 おいこれどうなんだ。武器にはなるが、配信者としてはアウトの後出しジャンケンだろうに。

 ミクには手持ちの概念が無い。

 無意識に数が多すぎてボックスを開いている。

 常にボックス片手に、後攻で有利なポケモンを繰り出す原作でもやれない暴挙であった。

「待った。スグリ、ゴメン。これルールが悪いんじゃない。不利かもしれないけど、私のやり方が間違ってた」

 謝って、気付いたことを言うと、スグリもいかんと言う。

 手持ちを持たずにボックス片手は流石に不公平だ。

 せめて、予め決めておけ。多すぎて選べないに越したことは無いけど、だからって手数の暴力で攻めるのは普通のトレーナーだってやらない。

 さっきもボックスから直接選んだ。

 多頭持ちの基本がミクは出来ていない。

 手持ちの選択が出来ないから、ボックスを常時開放して選ぶ。それは卑怯すぎる。

 頻繁に入れ替えなら分かるが、寧ろこれが普通だが常用するポケモンぐらい決めよう。

 ボックス片手は本当にダメ。

「ミク、もしも何か分からないなら聞いて。その方法はマジモノの反則だべ。マシンガンみたいな手数だからってそれはねえよ」

「だよねえ。うわぁ、ちょっと待ってて。あと三匹、速攻で決めてくる」

 原作でも出来ない、ボックスからの繰り出す行為。

 手持ちのポケモンをそもそも決めるのが普通のトレーナー。

 ミクは増えすぎて感覚が麻痺していた。

 どれにするか当然迷う。

 これが嫌で無意識に避けていた。

 面倒臭いから、直で持ってくるとかいう反則。

 いやいや、ルール以前に最強の後出しジャンケンで良いわけが無い。

 メタはしないと言いながら、都合の良いポケモンを出している時点でメタだ。

 良くない。こういうのは盤上から超えたやり方だ。

 さっさと三匹、スグリに対して使うポケモンを選ぶ。

 これで良い。手持ちの概念を思い出せ。

 一々交換すると言えども道中それが普通で、手抜きで最初から全開のボックスが悪いのである。

 何処の世界にボックスから直接引っこ抜いてくるアホがいる。

 ミクは面倒を見る際に、常用するポケモンを呪詛の王ぐらいで後は固定していなかった。

 原作基準で言う切り替えだが、ボックスの整理で最近タヌキの群れの一部を連れ歩く程度。

 不味い。変な癖がついている。

 そもそも、向こうの学園のポケモンを使おうという発想は良いが、どれにするかその場で決めていては意味が無い。後出しジャンケンで勝てる。

 予め、確りと選んだポケモンで計画を立てていく。

 それが普通なのだが、ミクの流儀は反則過ぎる。

 慌てて、三匹決める。向こうの学園のポケモン、或いはこっちのパルデアのポケモン。

 ……よし、と確りと決める。

 これなら大丈夫。この時点で手遅れだが、ここはもう割り切ろう。

 オッケーと言って、ボールを構える。

 繰り出したのは、ドレディアだった。

 但し、このドレディアは学園で化石から復元された過去の姿。

 所謂ヒスイの姿だった。

「ドレディア……? あれ、こんな見た目だっけ?」

 スグリが先日見た公式戦のドレディアと見た目が違う。

 結局またノーマルにタイプ有利のポケモン。

 ミクも手数が増えて、当たり前の自重しない普通のプレイヤーのように原作のやり方に無意識で行い始めている。

 言ってることがちぐはぐになっているのに気付かない。

 ヒスイの姿は草、格闘の複合。

 その本領は、極めてピーキーで攻撃的。

 行こうか、とミクは言う。

 舞うように回転するドレディア。

 ネモも話を聞いていて、アカデミーで過去への知識があるので、ミクに釘を刺す。

 ちょっとミクはズルい方法で戦おうとしている。

 後出しジャンケンでドレディアを使おうというのは流石に公平とは言い難い。

 今回は許すがちゃんと手持ちという概念を思い出せ。

 これ以降は手持ちの切り替えを禁止にする。

「ごめんなさい、悪い癖ついちゃった」

 参ったようにミクは謝った。

 これからはちゃんと手持ちを固定する。

 ……いや、本来手持ちの固定には王が居るのだが、それを抜きにしたせいで発生した事案か。

 兎に角、始める。

 オオタチはまた先手を打つ。

 とぐろを巻く。器用に丸くなるオオタチ。

 此方は勝利の舞で加速する。一回転でギアを入れる。

 お互いに下準備は出来た。

 オオタチは穴を掘るで地中に逃げる。

 スグリは穴を掘るで回避しながらやるタイプか?

 ドレディアは駆け抜ける。

 走って奇襲に備える。

「お互いに攻撃できないのは分かってるよな」

「でも回避のために不利な技打つのもどうかと思うよ」

 地中では突き進むオオタチが巣穴の要領で空洞を作り、足場を崩そうと画策していた。

 ドレディアはオオタチ以上の速さで走るので、足場を崩されても今は怖くは無い。

 数分間、膠着状態。

 ボコッと地面から顔を出したオオタチ。

 罠のように空洞のエリアを作って誘う。

 発見して追いかけるドレディア。

 で、まんまと空洞のエリアに誘われる。

 重さが乗っかったことで地盤沈下。

 ドレディアもミクもそんな気がしていたので崩れる前に跳躍して、大きく飛び越える。

 同時に地中から飛び出すオオタチが、漸く出て来た。

 初手の穴を掘るは無防備な空中に追い立てて狙ってのこと。

 空中に追いついて、怒りの前歯で齧り付く。

「あんまり有効じゃ無いんだよね、その技!」

 囓られた腕を振り払う。

 ミクの言うとおり耐久型ならまだしもドレディアのようなペラペラの耐久でHPを半分にしても恩恵は薄い。

 反撃の空戦。リーフブレードで切り払う。

 オオタチは斬られて吹っ飛ぶ。

 何と気合いで堪えていた。着地して踏ん張る。

 本来ならドレディアの特性は張り切りと勝利の舞で火力の底上げをしているが、それをとぐろを巻くで防御を上げても気合いで堪えきるとは。

 原作で言う懐きでよく踏ん張る、アレか。

 相棒と言うだけある。

「やたら火力高いのか、オオタチが脆いのか見分けがつかない……!」

 スグリが苦戦する。知らないヒスイのドレディア。

 知識が無いから後でくれというので了解して、追撃。

 かかと落としで上から強襲。空転直下で降ってくるのを余裕でオオタチはひらりと捻って躱す。

 胴長だけあってそもそもこの巨体、二メートル近く柔らかい筒に直下のかかと落としが当たるわけが無い。

 ドカンッ! と地面を空振りのかかと落としで叩き割る。

「やっば!?」

 当たると思っていたミクの判断ミス。

 土煙をあげて、ドレディアは痛そうに足を振るって立っていた。

 外すと自傷ダメージがあるのだが、何とか堪えたか。

 ドレディアの張り切りで命中率が落ちているのを広角レンズで補強こそしているが、柔軟な身体に剛の一撃は通用しない。

 布を殴っているようなモノだ。

 張り詰めていれば当たっても普通は流される。

「捨て身タックル!」

 で、スグリも勝負に出た。

 反動技の捨て身タックル。

 突っ込んでくるオオタチに、ミクの指示で今度こそかかと落としを決めるドレディア。

 その場で大きく足を上げる。

 捨て身タックルで突進を受けるが、同時にかかと落としをブチ込んだ。

 柔らかい筒にもかかと落としがめり込んだ。

 再び轟音。オオタチの背中にかかと落としが直撃し、頭突きで捨て身タックルを食らってドレディアも仰け反った。

 オオタチ、何か執念のような気迫でまだ立ち上がる。

 反動がどうしたと言わんばかりの瀕死一歩手前でガッツの如く。

 堪えきったドレディアは仰天のような仕草でおののく。

 ミクもだった。何この懐き補正。

 効果抜群で殴ってもスグリがいる限りオオタチは倒れることが無いようにゆらりと起き上がりまだ戦おうとする。

「オオタチ、けっぱれ!」

 頑張れと言うエールに強気に笑うオオタチ。

 ドレディアもこの執念には戦慄する。

 ミクに振り返る。これ、勝ち目ある? 的な視線で。

 殴っても殴っても、気合いと根性で勝つまで噛みつく鋼のメンタルに正直ミクもビビる。

 どうなってんだこいつ。精神論で立ち上がっているとかリアルならではだろうが相手すると怖い。

 スグリは諦めていない。だからオオタチも諦めていない。

 連携プレーは良いが、どうしたって気圧される。

 迷う隙にオオタチは遂に大技を出す。

 とっておき。全ての技を使ってから使える高火力。

 星のように輝いて突撃してくる。

 これ受けたら流石に不味い。ミクは咄嗟にアイススピナーで回転して、勢いを殺ぐように言った。

 高速で突っ込むお星様。クルクルと回転して氷を纏うドレディアは、その回転でお星様の直撃を弾く。

 それでも、貫通する。元の威力が違いすぎた。

 競り負けて弾かれ後退するドレディア。

 直撃は避けたが、直進するお星様の勢いは止まらない。

 いっそ、跳躍して空中に逃げた。

 寸前で通り過ぎるとっておき。

 今だ。振り返るドレディアに反撃のチャンス。

 とっておきの最中は機動の変更も出来ないとみた。

 もう一度、かかと落としで上から急降下。

 ストップしたタイミングで棒立ちの一瞬に脳天に叩き込む。

 貰った。完全に直撃した。

 某ゲームで猛威を振るった脳天直撃弾。

 これならどうだ。効果抜群、良い場所に決まった。

 なのに……。

 何と。オオタチは、しぶとく負ける気など毛頭無いようにゆらりと立ち上がる。

 友情補正とかでここまで堪えられるわけがない。

 トレーナーを悲しませない為に頑張るのは原作のポケモンだが、普通効果抜群何発も食らって挙げ句に反動の自滅技使ってそれでもなお仕切り直しのように立つオオタチがいるか。

 持ち物の補正か? だったらこの異様な頑丈さ、どこから来る。

 柔いオオタチが張り切り、勝利の舞で火力増強したかかと落としを何度も堪える持ち物。

 そんなチート、あるわけが……。

「殴っても蹴っても無駄だ。俺達は勝ちを諦めない。ミク、俺達が折れるのを諦めろ」

「どういうカラクリ、こりゃ……?」

 強気の発言をするスグリにフル回転させて思い出す。

 気合いだけでどうこう出来る持ち物……?

「……まさか、気合いのハチマキ!?」

 あるとすれば、マイナー持ち物の気合いのハチマキ。

 タスキと違って満タンの時に一撃で落ちるのを防ぐのと違い、確率でどの体力で受けても確実に堪える博打。

 普通はタスキ優先でこんな確率論の持ち物選ばない。

 ルール上、持ち物の重複は不可能。だとしても。

「いやおかしくない!? 気合いと根性でしがみつくって事!?」

「科学的根拠無いらしいけど、気合いのハチマキはあんまり知られてないんだが、確率が本人達のメンタルが依存するらしいんだ。つまり、俺達が諦めて折れない限り、気合いのハチマキは発動する確率が上昇する」

 ……原作基準なら、本来であれば一割程度の気休めが、リアルだとスグリとオオタチが気張る限り、どんなダメージもハチマキが無効化して仕切り直しのように立ち上がるエンドレスの根性論の出来上がり。

 逆を言えば原作の二つ名、頼れる相棒のような繋がりが前提であり、要はスグリとオオタチの熱い友情補正とハチマキの確率論爆上げ、闘志に燃える限り踏ん張れるメンタルをへし折れと?

「私も手持ちのド忘れも大概だけど、スグリとオオタチおかしくない!? どういう理屈!?」

「ミク。これは、理屈で語るにはちょっと暑苦しいけどよ。俺達は、小さい頃からの付き合いなんだ。それこそ、鬼様に憧れて野山を一緒に乗り込んで鍛え、我武者羅に修行を積み重ねた一番の戦友。その俺達は、今ミクに勝ちてえって言うんだ。お互い精一杯応えるのが、真の相棒……漢の友情ってもんだよ」

「熱血でタイプ有利に食らいつくって少年漫画だよ! ポケモンとの友情って意味じゃ私よりも上行ってる!」

 友情、努力、そして勝利へ。

 この三拍子が揃うとき、ミクの敗北が決定する。

「ま、まだ私だって諦めてないし!」

 気圧されるミク。

 知らなかったスグリの幼少期の熱血ストーリー。

 あの楽しんでいた頃のスグリの長い付き合いの相棒。

 公式からも優遇されているカミツオロチだったら分かるが、残念ながら真の相棒はオオタチにお株を奪われていた。

 ドレディアも何度でもかかと落としで蹴り飛ばしてやると駆けて足を上げ、振り下ろすその前に間合いに入って捨て身タックルでかち合う。

 ハチマキで反動すら根性で無効化。

 向こうは防御も上がっている。

 威力比べなら素で補正込みでかかと落としが勝つ。

 なのに真っ向から回避しない。かかと落としが外れたら自滅するのをスグリは知らない。

 キックなどの跳躍しての飛びの技だと思っている。

 見当違いでこのかかと落としはポケモンの重力が発動しても使える。

 跳び蹴りや飛び膝蹴りは特定の状況下では使えないというのはミクはアカデミーで習った。

 ミクの場合、予備動作が必要なだけだ。

 容赦なくブチ込んだ。倒れるオオタチ。

 なのにフラリと起き上がり、平然ととっておきで突っ込んでくる。

 こうなったらとっておきも蹴り落として叩きつける。

 迎撃してかかと落とし、とっておきの届く前に上から潰す。

 目の前で当たる前にカット。

 荒野に陥没するオオタチ。

「やったかな!?」

「それはどうかな!」

 ミクの負けフラグが立ちました。

 息が上がっているドレディアに、奮闘する修羅オオタチが、鬼神の如く地面を音も無く這い上がる。

「まだ動く!?」

「負けるか……! 俺達は絶対に折れたりしないべ!」

 皆さん知ってるでしょうか。知ってますよね。

 この不倒の闘志を燃やす人、原作だと闇落ちするんですよ。割りと拗らせて。

 なのにメンタルの脱皮したらぐうたらチャンピオンの歯磨き粉もビックリの不屈の炎で奮い立つ。

 オオタチ、序盤ノーマルの種族値の低さも気合いと根性で勝つまで噛みつく修羅の境地なり。

 捨て身タックルで疲弊したドレディアをど突く。

 反射的にカウンターのリーフブレードで切り払うが、此処まで来たら根比べだ。

 最早効いてない。精神で持ち物の確率を凌駕した阿修羅すら超えたオオタチがいるだけ。

 ドレディア、遂に倒れる。ウンザリした表情だった。

「流石に理不尽だ……」

「言ったろ? 俺達が折れるのを諦めろ。こういう事だよ。何時だって相棒との戦いってのは、泥臭いもんだ」

 オオタチ、何が何でも折れず怯まず堪えて踏ん張って戦った。お約束の三拍子は無敵なのである。

 ミクも呆然と引っ込めた。

 知らぬ間にスグリのメンタル、鋼になってた。

 これがシナリオの被害者だったスグリか?

 剰りのクソ強いメンタルに正直、スグリが闇落ちへし折ると執念の怪物になるんだなと、思うミクだった。

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