迎えに来たピーニャ達一向に紛れて、アカデミーを脱出。
一同、モトトカゲをライドポケモンに持っていた。
気性も大人しいし、パルデア地方ではモトトカゲは人と共存する事を選んだポケモン。
一匹わざわざ捕まえてくれたらしく、譲渡されてスタメンに加わった。
「アギャッス!」
元気よく鳴くモトトカゲに挨拶すると、そう返事をする。人慣れているのは種族的に近い歴史があるから。
ミライドンがいない代わりに現代のこいつが相棒か。
(益々私、
ミライドンは特別なポケモン。
普通ならモトトカゲが当たり前。
これでいいのだ。これしか無いのだ。
一行は移動を開始する。
「君にして欲しいのは、主に皆の纏め役かな」
「それは先輩がやってるんじゃ?」
ミクが問うとピーニャは、ボスという天辺で統率している部分は良い、だが目の届かない範囲をミクが纏めて皆で過激派を追い出す役目という。
要するに特攻隊長。現場の指揮官。
「私にそんなこと出来るかな……」
スター団は集団戦を得意とする。
ただまあ、一部の連中は基本的に嫌がらせ、強引な勧誘など言ってもいないことを勝手にのし上がるリーダー格が命じてノルマを作り、実行させている。
だから内戦。内輪揉め。
膿を出す意味で、切除しようと言うこと。
慣れてないミクは不安である。
結局外部からの襲撃に皆で対抗し、逆に叩き潰すのに失敗したのが原作だ。
袋叩きにしても尚、意味不明な主人公補正で突破されて潰される。
現実的に考えて、ピーニャが原作で言ったケンカを売るのは命知らずというのは概ね正しい。
数の暴力を、一蓮托生でやってくるのがスター団だ。
ZAはミクは知らないが、あのカラスバ率いる連中よりも下手すると人員は多いのでは無かろうか。
結束力ならあのヤクザを超えている気も知る。
そもそもどんないじめだったんだろう。
明らかに規模が大きすぎる。
アカデミーの先輩は触れるなと警告し、傍観していたであろう連中は口を閉ざす。
つまり、ミクのメタ知識と現状を鑑みるに。
「先輩」
「ん? 何?」
ハッキリ聞こう。
「スター団、アカデミーで去年何かやってますよね。私は転校生ですから知りませんけど、余所の先輩達が去年のことを聞くと一斉に黙るんです。聞いたら退学になるって言われました」
「……そこまで響いてるのか、参ったな」
見聞の事実を語ると、頭を抱えるピーニャ。
悪評はアカデミー全体に広がって、スター団は最早不良集団を通り越している。
教師から見れば警告に応じない学校の恥、汚点だ。
オモダカが本気になれば、全員一致で速やかに首が飛ぶ。
大人を怒らせる前に急がないといけない。
「理事長がキレたら、スター団は大人に負けます。良いんですか、それでも」
「分かってる。一年以上不登校を抱えているアカデミーから最終通告が来てるのも。だから僕達はスター団を存続するために、アカデミーの様子をここ最近ずっと見ていた。もう、一般の生徒からも嫌煙されてる事実は仕方ない。五人でそれぞれグループがあるんだけど、そこからあぶれた連中がスター団を名乗って、乱痴気騒ぎを起こしているのもね。良い迷惑だよ」
ピーニャは移動しながら説明する。
結論から言えば、ピーニャ達はスター団は継続できるなら復学も視野に入れている。
前向きに検討はしていたらしい。
なのにその一部のバカが言うことを聞かずに自分らは天下のスター団だと名乗って悪さをする。
それが二年以降の普通の生徒に抱いている恐怖を助長させ、溝を深くしている。
そこで目をつけたのがミクだ。
明るく、前向きな可愛らしい歌姫、のそっくりさん。
スター団は校則違反かも知れないが、皆の思う不良じゃない。
そのイメージを払拭する。
スター団の名誉回復。
戦い歌えるミクとして、協力して欲しい。
「僕は言ってしまえば元々穏健派。まぁ、他のボス……特にメロコは置いといて。彼女に頼むと直ぐに暴力で解決するから。ま、君のサポートに確実にメロコはつくよ。相当キレてる。看板に泥を塗られてお冠だからね」
メロコ……何でも屋という部署のチームだったか。
バックアップは主にメロコが行うという。
何せ各自チームから目を掻い潜りあぶれた連中が纏まって違う勢力を作って暴れている状態だ。
出してもいない指示を中間で出して端末が動く。
その状態が今のスター団。
「……私、一回その連中に負けてるんですよ。弱いのは、分かってるんですが」
苦い思い出。ネモに強引にテラスタルオーブを渡されて流れで使って嫌われた。
それをピーニャは知っていた。
「あの生徒会長、僕から言うとちょっと天才過ぎるんだよね。凡人の苦労が分からないんじゃない? あ、僕もこう見えて前は生徒会長なんだ。……ま、良かれと思って規律が厳しくしたら反感を買ったんだけど」
「教えて下さい。参加する前に、先輩達は信用できるのか。私は歌声だけが取り柄の素人。お役に立てる保証は、偶像ぐらいしか無いんですよ?」
歌声だけで、初音ミクという唯一の武器でその過激派を排除できる保証は無い。
結局そっくりさんの凡人だ。
経験も無いし、人徳も無い。
駆け出しに、何が出来る。
「だよね。理由も聞かずにオッケーしてくれたのも、事情を察していたからってさ、思ってたよ。分かった、説明しようか」
そう言って語られる、スター団の全貌。
経緯は概ね原作通り。
ただ規模が全校範囲、かつ集団というのに加えて現実でもあるような差別や偏見で追い立てられたりしていた生徒が大勢いた。
それを教師が見て見ぬ振りで放置していた、長年。
……思っていたとおりの、事情に嫌悪するミク。
あの口を閉ざす傍観していたであろう連中は、自分達は関係ないと、知ったことでは無いと無視していた。
終わったあとも見てたことを責められるのが嫌で皆がそういう空気になっている。
触れられたくない。関係ないと、言い切りたい。
その場に居ただけで無関係。
ああ、反吐が出る。嫌気がする。
これがスター団の決死の覚悟で反撃してやった結果か。
惨いというか、保身的な人間臭い身勝手に気持ち悪さを感じる。
それでいて、環境が良くなって安堵したらスター団の行為を逆手に、威張れるという理由で流れ込むバカ共。
そいつらの排除が、ピーニャ達の目的。
「君はまだ一年生。転校してアカデミーで授業を受けただけの素人だよ。でも相手は一年以上不登校とはいえ、アカデミーにいる先輩だ。負けてもおかしくはない」
「勝算は?」
「十分ある。メロコと一緒に突撃すれば一掃できる範囲の数だ。メロコはバトルに慣れてる。君は戦意高揚の歌姫だね。後方支援って言えば分かる? お題目は、メロコと君がそいつらにケンカを売る。それでいい。スター団を名乗るなら、絶対に買うんだ。そうしないと違反したら皆から出て行けって言われる。スター団の掟は、重いんだ」
そうピーニャは説明する。
応戦しないなら名乗れない。
戦えばメロコが潰す。追い払う。
というか、脱退させる。
「……なるほど。私は矢面には立たないと?」
「そうだね。君は居るだけでいい。一種のイメージアップだよ。スター団は好き勝手やってるのは本意じゃない。一部のバカが勝手にやってただけだって、転校生の君がアピールするんだ。……ちなみに、スター団の格好はしちゃダメだよ? 君はあくまで、校則を守って僕らを更生に来たっていう風に見えないと意味が無い」
ミクは要は、スター団にも影響力のあるアイドルだ。
迷惑行為は止めなさい! と正々堂々と注意しに来たと装う。
そこでメロコが一緒に行動することで、スター団は一枚岩ではないと露呈する。
メロコ達は改心した状態で、アカデミーにも戻る気でいる。
そう語れる第三者が必要なのだ。
後に、ミクはアカデミーに交渉もしてもらう。
見てきたら、皆はそろそろ戻るって言ってます。
そう実際見て、共に行動して、教師達にも説得力を確保する。
「まるでマッチポンプ……」
「趣味は悪いけど、内戦ってこういうもんだよ。無論、皆にはこの作戦は通してある。名付けて、スターダスト大作戦」
ここで出るか原作の名前。
まさかのピーニャが立案者か。
スター団を維持しつつ、余計な部分を切り落とす。
折衷案のような状況になった。
……そういえばミクはボタンと接点ないし、出会ってもいない。
負けた騒動も別の生徒だったし。
だからだろうか。
「分かりました。私はあくまで、自分の意思でスター団の更生に来たっていう建前ですね?」
「イエス。君、現生徒会長ともパイプあるでしょ。多分向こうも君の動向気にしてる。君が関われば、最強の生徒会長がこの騒動に介入する可能性もワンチャン来るんだ。これは作戦には組み込んでないけど、生徒会長なら風紀を乱す生徒への指導っていう理由もある。こうなったら勝ちも同然。僕らは直接、生徒会長に存続を直談判出来るし、邪魔な過激派を排除するのに純粋に戦力が増える」
「凄い計算だ……!」
ここまでよく考える。
ミクには出来ない芸当だった。
「これは運が絡む博打だよ。確実なら、なるべく人目の多い場所が好ましいね。算段はこうだよ。迷惑行為を正す為に先ず君が注意する。勿論言うことは聞かないから、メロコ達が君のサポートで登場する。そこから場所を選んでバトルする。乱戦だろうね。だけどメロコ達は慣れてるから、圧勝すると思う。向こうは良くて成り上がりの中間のリーダー格。こっちは大勢を率いるボスだ。文字通りレベルが違う」
「はいはい……」
移動中、彼是順序を聞いていく。
一時間ほど移動した頃。先頭が、急停止した。
何事かピーニャが問うと。
「で、デカいポケモンです! デカいポケモンが、道路で暴れています!!」
先頭の集団が慌てて報告。ミク達は後方にいた。
こっちは、アジトにはまだ遠いのに。
何か聞くと、巨大なポケモンが暴れている。
アカデミーの生徒達らしき影が、道路のど真ん中で応戦している。
(レイド戦……!?)
ミクは方角をスマホで見た。
ここ、そういえば……!
「通行は!?」
「無理です!! デカいポケモンが居座って通れません!」
ピーニャが舌打ちする。
計算外。何か無関係の揉め事のようだ。
巨大なポケモン。出てくる答えは一つ。
恐らくはペパーのストーリーの主ポケモン。
レジェンドルートの第一の主。
ミクは咄嗟に言う。
「先輩、皆で加勢しましょう!」
「ミク!?」
ピーニャが驚く。何故助ける。
簡単なことだ。
「私が真っ先に突撃します! 困った人を助ける行為は、どう転がっても悪い印象にはなりません!」
「……そういう事! 君も結構機転が効くね!」
イメージアップなら、人助けは近道だ。
同じアカデミーの生徒同士、助け合って何が悪い。
真っ先にミクが突っ込み、助っ人にスター団が登場する。
不良と言われた連中が、困った人を助ける。
鉄板の、最高のシチュエーションだろう?
そう言うと、ニヤッと笑うピーニャ。
「分かった、乗ろう! ミク、先に行ってくれ!」
「はいっ!」
ミクの乗るモトトカゲは駆け出し疾走する。
列を抜けて、走って風を切る。
直ぐに見えてきた。アレは……。
『がーにー!!』
巨体のハサミをぶん回して、囲まれているデカいポケモン。
(やっぱり……! 岩壁の主ポケモン、ガケガニ!)
此処いらの主要都市から近場の岩場で陣取るポケモンと言えば、ガケガニ。
野外授業で出かけた生徒達が、危険と判断して応戦しているようだ。
陣形を組んでいるらしき生徒を見つけた。
……って。
「おい、そっちのサイドから攻めるとクラブハンマーで反撃される! 背面から行け! ガケガニの弱点は野生と一緒だ! 巨体に気圧されるな!」
何と、本人であるペパーじゃないか。
必死に、皆に指示を出しながら対応していた。
「……」
彼は彼の物語が、動いている。
主人公がいなくとも。
理由は通行の邪魔だから。これで、良いよね?
ミクは迷ったが、輪に加わる。
「すみません、そこの先輩! 大丈夫ですか!? 私も加勢します!!」
敢えてペパーのいる場所に走って割り込む。
振り返るペパーが、驚いた。
「お前……!? あの軽音部のボーカルの奴か!?」
そういう認識だったか。
何でも良い、手伝うと言って到着する。
何だいきなりと言われたが、通行の邪魔だから退かすの手伝うと言うだけだ。
何か不自然だっただろうか。
「通りがかりで理由もそれで加勢するのか!? どんなお人好しちゃんだよ!」
「私はそんな立派に見えます? 怖いですよ! でも、目的地はこの先なので!」
「迂回すりゃいいだろ! 何で突っ込んでくる!?」
尤もな言い分だろうが、言い返す文句は決めている。
「大変そうな人を見捨てるのが歌姫だと思います!?」
敢えて言う。ミクは、アカデミーの有名人。
その有名人が目の前で一生懸命戦う人を見過ごすと?
「……ったく! とんだ甘ちゃんだな、噂のアカデミーの歌姫さんは!」
ペパーは苦い顔で言うが、退けとは言わない。
猫の手も借りたい状況。
「行くよ、マリルリ!! 手伝って!」
ボールを放ると、マリルリが出て来た。
大勢が薬を噴霧したりして頑張っている。
目の前には巨大な威圧感を放つガケガニ。
言ったけど、怖いとも。それでも。
これが、リアルタイムのレイド戦。
「助かるぜ、歌姫ちゃん! お前も手伝ってくれ!」
「はいっ!」
合流したのを見て、更に増える増援。
「すっごい派手にやってるねぇ!! 僕らも混ぜてよこの騒ぎ!!」
ピーニャ達も加わった。
ノリノリで皆に指示を出して散らせる。
「はぁ!? スター団!? 何でここに!?」
当然こうなるだろう。ペパーは驚く。
不敵に笑うピーニャは、ただミクの加勢とだけ言った。
嫌がらせばかりの不良集団、スター団だと思うなよ。
ミクの追っかけをしている我々スター団こそが、真のあるべきスター団だと。
「何時からスター団はアイドルの追っかけになってんだよ! 意味不明過ぎる!」
「細かいこと気にしない! こう言うときこそ、一致団結! そういう君こそ、良いのかい? 僕らスター団は、大勢だぜ!」
見れば人数が大幅に増えている。
様々なポケモン達がガケガニに襲いかかる。
暴れているガケガニも怒り狂う。
「チッ……! 今は一応感謝しとくよスター団!」
イメージが悪いからそういう言われるけども。
「そういうのは要らないよ! 困ったときこそ、手を繋ぐ! そういうものでしょ、アカデミーってさ!」
ピーニャの言うとおり一気に苦戦から優勢に傾いた。
一気に行くぞとピーニャが言って、団員達が応戦する。
周囲の生徒達も仰天で加勢に困惑するが、敵対する理由など無い。
今は、皆で。
「行きましょう、皆さん! 派手にライブを始めますよー!!」
ミクの号令で、一同戦意高揚どころか一気に意識が湧き上がる。
乗り越えるのは、この巨大なガケガニだ。
ミクの初めてのバトル。レイド戦、開始だ。