転生ミクのSV最初からの旅路   作:イエッサム

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岩壁の主(ガケガニ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周囲を囲むガケガニ。

『がーにー!!』

 大きなハサミをぶん回して、威嚇している。

 ピーニャ達が指示を出して、対応に当たる。

 それぞれのポケモン達が一斉に襲いかかった。

 初めてのバトル、レイド戦。

 ミクは先ず、周りを見る。

 ガケガニが誰を狙うのか、誰を支援をするのか。

 即席のチームだ。連携もクソも無いけど。

 ピーニャはキリキザンを繰り出した。

「キリキザン!?」

 原作だと進化前だったのに、普通に中間進化を出してきた。

 驚くミクに、ピーニャもよく言われると言った。

 アカデミーにいない癖に異様に強いスター団幹部。

 そりゃそうで、各々のチームで鍛えているから強いのは当然。

 何かあるはずも無いとは分かるが、こういう不意の事態には丁度良い。

 さて、と既に応戦する皆を見るピーニャ。

 めちゃくちゃだ。自分らで兎に角攻撃して倒そうという無策な戦法。

 アカデミーでもレイド戦の授業は無い。

 故に仕方ないだろうが、スター団の面々は援護に回るように指示を出す。

 フルアタの連中は攻撃さえすれば倒せるだろうと思っている。

 周囲に被害を見ろ。

 整備された道路は穴だらけ、崖の方は崩壊、地形は変わっている。

 これの後始末も視野に入れないと。

 もっとスマートに戦おう。 

 基本戦術。一部のタフなポケモンを使うトレーナーに前に出て攻撃を受けてもらう。

 中距離の単発の援護、遠距離の大技の連携でどうだ。

 マクノシタ、グラエナなどが前衛や中衛をこなす。

 遠距離攻撃のカメールやベイリーフが援護。

 その状態で戦っていると。

 グルッと回るガケガニのハサミで一匹捕縛される。

 慌てて、他のトレーナーが助けに入って、妨害する。

「マリルリ、はらだいこ!」

 ミクも前衛の役目だ。

 余所見をしている隙にボンボン腹を鳴らす。

 体力を削ってフルパワー。

 そしていつも通りの隠し持つ木の実を食う。

「なるほど、そういうなら。キリキザン、剣の舞!」

 こっちはキリキザンが踊るように一回転し準備する。

 剣の舞、リアル解釈だとどうなってるんだ。

 説明には舞を踊ると言うが、リアルタイムでそんな隙だらけの行動できない。

 今ので剣の舞というか、舞とつく技は良いらしい。

(オドリドリじゃないんだし、バトル中にダンスとか馬鹿にしてるよねえ)

 タダでさえ不思議なポケモン。

 例えば、アイテムを持たせる。

 リアルだと普通に手渡すと思うだろう。

 実際、アイテムを渡すとそのアイテムがポケモンは消える。

 授業で習うがポケモンは道具を持つと何処かに仕舞うらしい。

 その何処かは分からず、トレーナー自身も全身何処をみてもわからない。

 例題に出すと、容姿や種族的に絶対に無理な突撃チョッキ。

 これだって誰だろうが、持たせることは出来る。

 何故なら、仕舞い込んでいるから。

 装備枠だと思えば良い。

 例外的なアイテムもあるらしいが、大抵は消えて虚空に仕舞われる。

 マリルリの木の実も勝手に拾ってきて仕舞い込んでいるようだった。

 ミクは持ち物を持たせているがマリルリは知らない。

 ヘイトを稼いで貰っているから余所見をしているガケガニ。

 マリルリのアクアジェットで側面から思い切り突っ込む。

 その威力や、甲羅に当たって巨体を蹌踉めかせて体勢を崩すほど。

 畳みかけるようにアイアンヘッドで突撃するキリキザン。

 ペパーのシェルダーもアクアジェットで追撃。

 甲羅の装甲に弾かれて後退する程でも、威力は十分。

 各自にチャンス到来、一斉に袋叩きにする。

 全身殴打のガケガニがキレるように吠えた。

 途端、地面に足を食い込ませて踏ん張って立ち上がる。

「おっと、怒りの甲羅ときたか。皆、気を張って! 脆くなったけど、攻撃は激しくなるよ!」

 ピーニャが全体に通達。特性が来た。

 怒りの甲羅。脆くなるが速度と火力の上昇。

 一部の甲羅が剥がれ落ちて、軽量化したのか大きくジャンプして向き直る。

 正面を此方に。つまり、ミクのマリルリだ。

 痛恨を与えたせいでヘイトを買った。

 だけど、素早くなっても主体はハサミ。

 巨躯故にガケガニの攻撃は大振りで、トロいマリルリでも回避は出来る。

 振り落ちるクラブハンマー。

 地面に激突してめり込んだ。

 空振りのあとのチャンスにアクアジェットで再び真正面から突っ込んだ。

 だがガケガニの空いたハサミで防御して踏ん張った。

 こっちは仰け反り、空に浮かぶ。

 それを防いだをハサミで掴んで、叩き落とす。

「うわっ!?」

 思わぬ反撃。技を抜きに、普通に動いて反応する。

 そうか、と思う。これがリアルだと。

 技とは、特定の効力を持ったモノののこと。

 単なる殴る蹴るが徒手空拳であるように。

 ガケガニにとってハサミのモーションは技じゃない。

 通常攻撃で、マリルリは墜落した。

 撃墜して陥没。 

 土煙が晴れれば見えたが気絶している。

 ガケガニはその後、助けに入ったキリキザンに前足の一本で蹴り飛ばす。

 足の可動域が思ったより広い。

 蹴り飛ばされて吹っ飛ぶキリキザン。空中で身を翻して飛ぶが着地。

 ダメージを負っても堪えていた。

 痛みで不快そうに睨んでいる。

「なるほどやるじゃん、十万馬力か。クラブハンマー、十万馬力……。野生の個体で不利な相手への弱点の技持ちって事はシザークロスも有り得るな。迂闊に鋼や地面、草を出せば返り討ちでワンパンって事も十分。だったら今の攻撃、そのまま返してやるよ! メタルバースト!」

 ピーニャは嫌味のように言って攻撃させる。

 キリキザンから無数の金属片が飛びてて、ガケガニに飛来する。

 食い込むように刺さってガケガニが苦しむ。

 メタルバースト。確か受けたダメージを多めにして跳ね返す反撃。

「ミク、速く戻しなよ! まだライブは終わっちゃ居ない!」

 ピーニャに言われて慌てて戻して、ニャイキングを繰り出す。

「……」

 ニャイキングの兄貴が巨体の怪物に表情を変わる。

 闘争心剥き出しで爪を出して、ミクが言う前に果敢に挑む。

 命令無視ではない。そもそも言ってない。

 ニャイキングは、ミクにはこの相手はキツいと判断した。

 不慣れな集団戦でミクにヘイトが向いている以上、自分がやるしかない。

「ニャイキング!」

 ミクはそれを背中を見て分かった。

 任せろ、一声でいい。

「皆と一緒に!」

 そう、命令は具体的ではミクの思考がパンクする。

 大雑把で良い。要は託せ、俺に。

 そう言う絆というか、繋がりで信じる。

「へぇ。ポケモンがミクを合わせていくんだ?」

「おい、大丈夫かそれ!?」

 ペパーがシェルダーにいわおとしで攻撃してくるのを回避させながら聞く。

 自立思考で動くのは暴走では無いのか? 

 ペパーの危惧は見当違いとピーニャは否定する。

 全然違う。トレーナーに上下関係などない。

 命令を聞かないのは信頼しないから? 逆だ。

 相棒が未熟だから、出来る自分がやるしかない。

 その背を見て、学べ。自分というポケモンがどういうポケモンかを。共に行く仲間として。

 そのスタイルこそ、駆け出しのミクには必要な工程。

 ニャイキングが信じろと背を任せた。

 なら、トレーナーとして出来ることは。

「そいつの動き、多分大振りで雑だよ! 小回りならニャイキングが勝ってる!」

 こういう見ていて分かる情報の提供。

 ニャイキングは前足の蹴りを華麗に躱して、反撃で爪で薙ぐ。

 近距離のノーリスクはメタルクローぐらいしか有効打は持ってない。

 ニャイキングは爪研ぎ、メタルクロー、じゃれつく、それにインファントという強力な技がある。

 だがインファントを出せばこっちも脆くなる。

 十万馬力を食らえばノックアウトだ。

 じゃれつくには相手がデカすぎる。

 抜群の効果で忌々しいようにギョロッと睨むガケガニ。

 ペパーのシェルダーの氷柱針が連続で発射される。

 ハサミで薙ぎ払って氷柱針を相殺するが、好機と見た援護組が葉っぱカッターやら水の波動やらでどこどこ打ち込む。遠距離の攻撃はガケガニは持ってない。

 瓦礫を挟んで持ち上げて投げるくらい。

 当然散るので当たらない。

 そうこうしている間にキリキザンが再び鈍い動きで近寄り、アイアンヘッドをぶち込む。

 憎たらしいように吠えたガケガニ。

 ハサミは二つしか無いのに相手が多すぎる。

 つまり良くてガケガニの攻撃相手は二匹の前衛。

 中衛、後衛はアウトレンジ。射程外。

「君のシェルダー、近距離か遠距離かで分けてるんだね。でも近距離の氷柱針じゃ、大した効果は無いとみた。水鉄砲ぐらい使える? そこから援護を頼むよ」

 ピーニャがペパーにそう言うと、

「元生徒会長らしい、冷静さだな。あの歌姫ちゃんを中心に反撃する気か?」

 ペパーはその観察眼を認めたくないような皮肉を返す。

 ピーニャが加勢したおかげで、戦線は維持できている。

 元々いた生徒だけでは怒りの甲羅で手痛い反撃を受けて撤退している。 

 手持ちが全滅して、薬の在庫も切れたし悪いが抜けると次々戻って行く。

 そこで新たにバカ騒ぎに気付いたこっちに来ていた生徒は避けるように迂回しているし。

 要するにスター団の面々のおかげで、この主は抑えられている。

「勘違いしてるから言っとくよ、君。僕らスター団は確かに不良と呼ばれても仕方ない。でもそれが全部だと思われるのも心外だな。僕らの中身知ってて言ってる?」

 誤解だと強調する。

 ミクがやったように無謀なことでも皆でやれば勝てる。

 スター団は、決して味方を裏切らない。

「噂程度でも十分だろうが……。だから意外だよ。そんなにあの子が推しとやらか?」

 ペパーからすればアカデミーのそっくりさん。

 歌姫と言われるバズった新たな顔とでも言おうか。

 こっちは忙しくて、気にしていなかったが。

 ピーニャは苦笑いで言っておく。

「何て言うか、ミクは何にも無い普通の子だよ。そっくりさんという強烈な個性と歌声はあるけど、トレーナーとしてはごく普通の駆け出し。でも、その気持ちは真っ直ぐだからさ。汚れてもいない、歪んでもいない。ダメなことはダメと言える、等身大の女の子。まぁ、君みたいな二年生からはすればわからないだろうけど。大体この戦い、無謀も良いところだよ。何か目的があるにしても、一人で出来ると思わない方が良い。こんな規格外のポケモンが、君には邪魔なんだろう? 実力に見合わない願いは、身を滅ぼすと警告しておこう」

「…………分かってるよ」

 歯を食いしばるペパーは呟く。

 向こうではミクを中心に、ニャイキング達が悪足掻きするガケガニを猛攻で追い込んでいた。

 一蓮托生、手を取り合う。

 人は、苦難には皆で乗り越える。

 孤高も良い。だが、一人を極めた所で限界は案外近い。

 所詮は世の中数の暴力。烏合の衆と侮るなかれ。

 これは遠い異国のマフィアも言っていた。

 人は繋がり合うことで、どんな困難も折れずに立ち向かえる。

 その息子は弱者の群れ、孤高で強くなると言って切り捨てたが、その果ては結局、主人公(だれか)と繋がって成長した。

 本当の孤高で強くなれる存在など居ない。

 人は群れる生き物だ。

 繋がって良くも悪くも強くなる。

 スター団は、繋がりで結ばれた集団。

 其処いらの暴走族とは訳が違う。

「僕らから、君に恩着せがましい事を言うことは無い。何せ助けると言ったのはミクだ。真っ先に駆けつけたのも。あの子は困った人を助けるのが悪いことなのかと言ってたよ」

「チッ、とんだ甘ちゃんだぜ。砂糖みたいに甘ったるい……」

 ばつが悪いようにペパーは言う。

 事実、現状スター団はガケガニを押している。

 ニャイキング達が頑張っている。

 それに悪態を言えるほど、スター団を不良と言うほど、ペパーとて腐ってはいない。

「礼を言うよ。嫌味ったらしい態度で悪い。あとどうやらスター団ってのは、結成と去年からして何かあったんだな。去年のアカデミーの空気はおかしいし、加えて教員の総辞職……普通じゃねえ」

 二年のペパーも事情は知らないが、去年から大ごとが起きていたのは知っている。

 察してくれるだけで成果はあった。

「僕らは今じゃ不登校の集まりだけど、今のアカデミーを見たら無駄じゃ無かったと思えてる。見直すぐらいでお礼は良い」

「っつーか、あの歌姫ちゃんスゲえな。俺らが今戦線離脱してるの気付いてねえで全体の中心になってねえ?」

 気付くペパー。話し込んでいて今戦線に加わってないが、傍観しているとミクはニャイキングを通して、中心になって動いていた。

 ガケガニの動きを封殺するようにスター団がミクに合わせて、猛攻撃で畳みかけている。

「元々僕らの真髄は集団戦。こういう大物取りは得意分野さ」

 ピーニャはミクという象徴を全体で支えているだけだと言った。

「マジかよ。伊達に日常茶飯事に勧誘してねえな」

「あぁ、アレは気にしないで。これから止めていく方針だから」

 ガケガニは特攻隊長のニャイキングを絞って攻撃するが、逆効果で狙いが定まれば援護もしやすい。

 ものの見事に自滅していく。

 ニャイキングは決して一人では強くはない。

 ただ、ミクにこの戦いを見せると啖呵を切った。

 だから無様を晒せない。それだけであった。

「向こうはミクのライブだからね。僕ら黒子は後始末の準備だよ。先ずはアカデミーに一報だ。この始末、放置していたらとんでもないことになる」

「あー……実は、こいつら主って言うんだけど。何体も居るんだわ」

 ペパーは眉唾の話をする。

 数年前から巨大化して自由を謳歌する主が何匹も居る。近隣住民の良い迷惑。

 それらを撃退したいのだが、見ての通り彼我の戦力差が絶望的。

 今回は助かったが、まだまだ居るという。

「ふぅん? なるほどね。君はそいつらがどうしても邪魔だって言いたいと」

「まぁ。無謀だろうが……それでも……」

 俯いて悲壮感を纏う彼に、ピーニャは思いつく。

 重たい事情があるとみた。

 そこには兎に角戦力がいる。

 ならば……。

「こりゃ、ミクのパルデア全国ツアーの始まりかな?」

「ん? どういう事だ?」

 見ていれば分かると言って、暫し傍観。

 ミクに視点を戻すと、精一杯努力して情報を集めて伝えて、周りが気付いて支えて全力で戦っていた。

 ミクが矢面の中心だ。ミクを倒れないように支えろ。

 そう団員が認識してサポートしていた。

 初めてのレイド戦、こんなに周りが助けてくれる。

 ただ感謝しつつ、諦めないでバトルして。

 一心同体のように集団という生き物になったスター団に、怪獣ガケガニはとうとう討伐された。

『がーにー!!』

 倒れたガケガニ。

 最後のニャイキングのメタルクローのアッパーカットでひっくり返り、大爆発。

 爆風で囲っていた皆が吹っ飛ぶ。

 ミクもモトトカゲ諸共吹っ飛んで、モトトカゲが宙返りして着地。

 皆も同様だった。風が流れる。

 そこには大穴と近くに洞窟が口を開いて、小さくなったガケガニが目をバッテンにして倒れていた。

「勝った……?」

 ミクが唖然と呟く。ガケガニに、勝てた。

 皆のおかげで、何とかなった。

「お疲れさま、ミク」

 途中で抜けてゴメンね? とピーニャが戻ってきた。

 良い勉強になったと思うのでいいと答えた。

「スゲえ……。結局スター団の勝ちか」

 ペパーも戻ってきた。

 辛勝……とは言わないが、勝利した。

 良かったと笑うミクに、ピーニャは切り出す。

「そういえばミク、宝探しの目的は今の所無いよね?」

 言われてみれば、目標などない。

 スター団の内戦に付き合うつもりだったが。

 ニヤッと悪い笑みを浮かべるピーニャ。

「アカデミーに僕らから通達したよ。多分近場だから、直ぐに教師達が来ると思う。その間に相談だけど。……ミク。本家の初音ミクみたいに、パルデア全国ツアーとかどうかな?」

「えっ」

 ……波乱の起こる気がするミク。

 そのピーニャの、思いつきとは一体……。

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