転生ミクのSV最初からの旅路   作:イエッサム

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初勝利と魂のシャウト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モルフォンとニャイキング。

 初手はモルフォンだった。

 蝶の舞によって動きながら能力を上げる。

 ニャイキングも駆け出し、爪研ぎで能力を上げる。

 ヒラヒラ舞うモルフォンに爪を振るう接近戦。

 それを阻止すべく、虫のさざめきで攻撃。

 不可視の音波で接近するニャイキングに応戦する。

 後退しつつ、迎撃に接近できないニャイキング。

「見た目的に鋼だよね。虫のさざめきしか使えないけど、色眼鏡で等倍になるからその内……」

 そう呟く相手が、モルフォンに言う。

 接近する前にゴリ押しで倒せ。

 一方、ミクも困った。

 毒と虫の複合。

 有効打はメタルクローのみで、インファントもじゃれつくも半減。

 接近するにも、速度はモルフォンの方が上。

 このままではジリ貧だ。

 決して速度は早くはないニャイキング。

 本人も厄介そうな顔をする。

 原種よりも速度を落として、火力に分配したのがニャイキング。

 交代はルールでありだ。

 このまま行くよりマシだろう。

 ニャイキングを戻す。相手もそれは読んでいた。

 接近できないニャイキングにはこのまま行くとも思えない。

「お願い、ヤドラン!」

 今度はヤドラン。こいつならどうだ。

 同じ接近戦でももっとトロいが、特性が出れば。

 お相手、またしても既知と違う。左腕に噛みつく貝に驚く。

 エスパーは虫には不利だがこっちも毒のため相殺。

 再開するや、

「思念の頭突き!」

 トロいヤドランがボーッとしているかと思いきや、一瞬で姿が消える。

 その動きは、間合いを刹那に詰めてきた高速移動――というより、位置の侵略。

「!?」

 相手が絶句する隙に思念の頭突きを思い切り食らわせる。

 効果抜群。後退するモルフォンに大きなダメージが入った。

「あのヤドラン、物理型か。両刀出来るとは言え、原種は特殊が多いもんな」

 感心したメロコが褒めた。

 メロコ達の仲間がメロコに一瞬の隙で間合いを詰めたが今の何? と聞く。

 説明すると、クイックドロウという特性。

 攻撃の発動が確率で早くなると同時に技の指定の間合いに自動で動く、博打。

 先制の爪の効果と同じで重複する。

 多分持ち物も先制の爪だろう。

 運次第の確率とはいえ、間合いも無視して一瞬で動くトリッキーな育成をしている。

「アクアブレイク!」

 一度でも間合いに入ればこっちのモノ。

 追撃するヤドラン。水を纏ったタックルで仰け反るモルフォンに叩き込む。

 ポケモンの素早さとは、リアルだと二つある。

 一つ、行動速度。これが恐らく本来の素早さのこと。

 もう一つ、攻撃速度。

 大振りな攻撃は先ず当たらない。

 移動速度が遅いポケモンでも、攻撃速度が遅いとは言ってない。

 つまり先制技は極度に攻撃速度が速い技、という解釈だとミクは想像する。

 クイックドロウは攻撃速度の劇的な短縮と間合いの自動修正。速度を備えるとは、そういう意味合い。

 思念の頭突きで抜群を取って、アクアブレイクで追撃し、シェルアームズでもっと攻撃。

 左腕を叩きつけて、毒液を撒き散らして猛攻で追い込む。半減だろうが知ったことか。

 モルフォンも反撃のアシッドボムを吐き出す。

 食らったがヤドランは気にしない。

 元より回避できる速度は持ってない。

 特殊防御がガクッと下がるが、虫のさざめきが通りやすくなる。反撃の音波。

 怯むかと思いきや、そこそこ効いてはいるが、今度はドレインパンチで殴って削れた体力を貰っていく。

「ヤドラン、押して!」

「やぁん!」

 ガンガン攻める。クイックドロウと先制の爪を持たせた以上、やり方は決めていた。

 思念の頭突き連打でも良いが、ヒラヒラ舞うモルフォンに頭突きを当てるには間合いが遠い。

 腕で殴るなどに比べて頭突きはどっかのヒトデのように四肢が頭とか言うインチキが出来ない以上、クイックドロウに頼りにするしかない。

 逃げるモルフォン、然し先制の爪が発動。

 間合いが狭まる。

「ちょ、この動き先制の爪!? でもこの確率おかしいよね!? なら特性!? 聞いたことない……!」

 戸惑う相手に構わず突っ込んだなら思念の頭突き。

 抜群を頂き、モルフォンは咄嗟に地面にヘドロ爆弾で爆撃。

 爆発して砂塵に紛れて逃げるつもりが、クイックドロウ。

 離脱前に眼前に現れるヤドラン。

 思念の頭突きで突撃。直撃する。

「モルフォン!」

 呼びかけるとへなへなと動きが鈍くなり、墜ちるモルフォン。

 逃げる前にフィニッシュに大きく左腕を持ち上げて、

「シェルアームズ!」

 思い切り上からぶっ叩く。

 毒液混じりの痛恨の一撃。

 モルフォン、戦闘不能。

「嘘……。負けちゃった……。私のモルフォン、相棒なのに……」

 戻すお相手、愕然とする。

 相棒、つまりそれなりに強い。

「やったぁ! ヤドラン、ナイス!」

「やぁん」

 頑張ったのに、なぜかキリッとした表情で左腕を相手に向けて鳴く。

 銃と化した左腕にエスパーというタイプ……。

 孤独な(シェル)が動き出したらそれは紛れもなく奴だ。

 止めなさいと言って戻す。

 ヤドランは、攻撃速度が異常に速い博打型。

 移動速度、二つが発動しないと動作の速度はトロいけど、クイックドロウと先制の爪で無理矢理間合いを詰めてぶっ叩くのが戦法だ。

 体感、半々ぐらいの確率でクイックドロウか先制の爪は発動する。

 結構な確率であった。

 尚、メロコの言うとおり両刀……つまり特殊になると途端に遠距離のポケモンとなるヤドラン。

 火炎放射、ハイドロポンプなどはこのサイコな貝の銃口から発射される。

 シェルアームズも場合によっては毒液の早撃ちになり、ガンマンさながらだという。

 お相手、最後は……。

「自信ないけど……いけ、プクリン!」

 風船ポケモンプクリン。

 これは、続投で良さそうだ。

 そのままヤドランで相手するか。

 もう一度出して気の抜けたふにゃふにゃ顔からキリッと引き締めて行く。

「プクリンが貴女のファンでも負けないよ!」

 ミクに向かってお相手は言う。 

 見ればプクリン、笑いながら喜んでいた。

(可愛いなぁプクリン。私も欲しい……。けど方角的に生息地違うんだよね……)

 タイプならマリルリ居るけど。

 フェアリーはオルティガの専門だ。

 それにこの人もしかして出身カントーの人だろうか。

 持ってるのが初代のポケモンばかりだ。

 勝負開始をする。

「瞑想!」

 プクリンが目を閉じて精神統一。

 隙だらけなので、ヤドランが仕掛ける。

 今度は二重も発動せず、ノロノロ近寄って殴ろうとする。

 だが……。

「そのヤドランが毒タイプなら、テラスタルだ! 行くよプクリン!」

 お相手、テラスタルオーブを取り出して踏ん張る。

(テラスタル持ってた!? ヤバい、この流れ……!)

 タイプの変更。毒に対してなら多分……。

 光を吸収して、オーブを放る。

 水晶の柱が足元から何本も生えて直ぐさま砕け散る。

 頭上に瞳の結晶を浮かべたプクリンが、近寄って振り上げたシェルアームズを息を大きく吸って膨らみ、弾力を作ってぼよんと衝撃を逃がす。

 流石風船ポケモン。こんな方法で物理攻撃をいなすか。

 挙げ句にエスパータイプに変更。

 シェルアームズの抜群は取れない。

「テラバースト!」

 エスパータイプのテラバースト。

 念力を送って強制的に思念で攻撃する。

 だが。

「あれ……!? 抜群じゃない!?」

 ヤドランは思念を受けても普通に堪えて、ミクの指示でドレインパンチで半減とは言え殴っている。

 お相手、ヤドランをタイプが毒単体だと思っていたらしい。

 惜しい。複合の毒とエスパーなので、モルフォンの時と同じで等倍だ。

 強引にエスパーに変えても、風船ポケモンとはいえ膨張せねば殴れば通る。

 防御が脆いのはミクでも知っている。

 プクリン、苦しそうに呻いて苦悶しながら殴られる。

「それじゃあ、ハイパーボイス!」

 絶叫の音撃で吹っ飛ばそうとしても、ここでクイックドロウ発動、間合いに自動で侵入。

 シェルアームズでドコっと殴る。

 序でに毒液が通って毒状態になった。

 インチキ過ぎるクイックドロウ。

 ハイパーボイスの動作を痛みで止める。

 シェルアームズに怯む効果はないが、痛みで中断したり鈍ることもあるらしい。

 プクリン、痛みに弱いのか次第に半泣きになってきた。

 ミクがヤドランに言う。一旦ストップ。

 お相手も気付く。プクリンが泣きそうになっていた。

「……この子泣かせる前に、そろそろ止めません?」

 既に頑張ってはいるが半泣きの状態で続けるのは酷だと思う。ミクは提案した。

 お相手もそれが気がかりだったと言って、降参した。

「プクリン、実は泣き虫なんですよ……」

 手当てにスプレーで治癒するお相手はぼやく。

 元気いっぱいだが泣き虫。バトルも得意じゃない。

 だから自信ないけど、と言った訳か。

 ヤドランは気にせずまたボーッとしているのを戻す。

 一応三匹全員勝った。ミクの完勝。

「やったなミク!」

 見ていたメロコ達が寄ってきた。

 悪くなかった。そう言った。

 ただミクはテラスタルが解けて、泣きべそのプクリンに勝負とは言えども罪悪感が……。

「ゴメンねプクリン、ありがとう」

 相手も宥めているが、プクリンの泣きべそは続く。

 余程痛いのは嫌なのだろう。

 ぶっ叩く方からは痛みは予想できる。

「うーん……」

「気にするな。それもこいつの個性だ。向き不向きはどのポケモンにもある事だよ」

 メロコが割り切れと言うが、可愛いポケモンが半泣きって見ててこう、心に苦しくないか?

 ミクは悪いことをした気分になる。

 プクリンが泣き止む方法……。

 これしかミクにはない。

「一曲歌おうか、プクリン」

 頑張ったプレゼント、一曲聞いていっていい。

 そう聞くと驚くプクリン。目を丸くする。

 良いのか、とお相手も聞く。こっちの事情なのに。

「皆を歌で笑顔にするのが初音ミクです! なら私もそうするのがリスペクトと言う奴ですので!」

 そう言うと、何聞く? とプクリンに尋ねる。

 ミクの言動に、メロコ達はだろうなと思う。

 皆を笑顔にするのが歌姫。

 歌で健闘を称えるのも役目だ。

 これぞ初音ミク。気前の良さに、お相手もお礼を言う。

 これとは別途と言って賞金を支払い、健闘を称える歌声が原っぱの広場に長閑に響いた。

 応援歌を歌うミク。プクリンはみるみる泣き止み笑顔になって元気になっていく。

 ああ、こう言うのがミクなのだろうなと傍に居た大半が思う。

 スポーツとして戦って、勝っても負けても最後は笑顔に出来るシメの歌という文化。

 心地良い空気。

 青空の下で聞いている歌声に、耳を傾ける。

 すると……。

 

「ヴェアアアアアーッ!!」

 

 その歌声を掻き消すように、某蛭みたいなモンスターのような咆哮が聞こえた。

 ビックリして中断する。

 近くから、何やらこっちも歌っているような素振りで雄叫びを上げているポケモンが居た。

 プクリンに似ている。

 いや、シルエットは前のプリンか?

 ポニーテールのような触覚はプリンに似ているが、凄く、全体的にデカい。

 目の周りもアイシャドウのような模様がある。

 ふわふわ風に靡いている風船ポケモンと言うにはとにかく全部がデカい。

 ミクはギョッとする。

 メロコ達がデカいプリンが現れたと仰天する。

 そのプリンは、ミクを見て挑発的な笑みを浮かべる。

 大きく息を吸い込む。膨らむ身体。

 からの。

 

「ヴェアアアアアーッ!!」

 

 耳を劈く雄叫び。歌っているつもりか。

 出ているのは初音ミクだってチャレンジしないデスボイスのシャウトであった。

 或いは遠い世界で、身内を違う店に取られ魂の咆哮をあげた店員の如き絶叫。

 歌とは言えない。雄叫びとか言えない。

(サケブシッポ!? 何でこの世界に居るの!? ここ、バイオレットだよ!?)

 ミクは知っていた。同時に有り得ないと思う。

 この世界は未来にタイムマシンに繋がっている以上、古来のポケモンがいるハズが無いのに。

 なのに、いた。こいつは。

 サケブシッポ。古来のパラドックスポケモン。

 大昔のプリンと呼ばれるらしい、矛盾点。

 何故、ここに。ミクもわからない。混乱する一同。

 そのデカいプリンの事は知っているのはミクだけ。

 皆デカいプリンと言って、追っ払おうとする。

 所詮プリン、大して強くはない。

 そう思うのは無理もない。

 慌てて止めるミク。

 パラドックスポケモン。

 未来のパラドックスは小さく冷酷。

 古来のパラドックスは大きく凶暴。

 攻撃性は双方人類に攻撃する程のものだ。

「皆さん落ち着いて! このポケモン、通常のプリンじゃ無さそうです!」

 迂闊に近寄るなと警告する。

 ここでサケブシッポと言えばミクも色々危ないので、落ち着いてデカいプリンの出方を見る。

 雄叫びを上げているサケブシッポ。

 彼女? はミクを見てニヤッと笑った。

 どうだ、と誇るように。

「ん? おいミク……このプリン、お前を見てるぞ?」

「ですね……。ええと……?」

 メロコが言うとおり、サケブシッポはミクを見ている。

 何だろう? 歌唱力で競うつもりか?

 試しにワンフレーズ口ずさむ。

 すると再び対抗意識かシャウトする。

 耳を塞ぐ一同は、サケブシッポの意図がわからない。

「私の歌に対抗してこっちに来たのかな……?」

 思い浮かぶ節はそれだ。

 代表で恐々ミクが近寄ると、サケブシッポに立ったまま不敵に笑う。

 私、歌うの上手だろう。そう誇るように。

「ええと……」

 一応手招きして呼んでみる。

 サケブシッポは無警戒に寄っていく。

 危険性は無さそうだった。

 耳貸せというジェスチャーに応じたので、仕方なく耳打ち。

(サケブシッポ。多分この名前で分かるよね? ここに居る理由は分からないから聞かないけど。あのね。それ、歌のジャンルが私とは違うの。知ってる限り、それはデスボイスっていうシャウト。私の歌とはそもそも畑違い)

 そう耳打ちすると、ガーンという派手な表情とリアクションで絶句するサケブシッポ。

 一歩後退り、震えだした。

「お、おいミク……?」

 メロコが警戒して聞くが、手で制する。

「ねえプリン、私の歌はそういう絶叫は出さないの。さっきのシャウトにプリンの魂が籠もっているのは分かる。でも私はそういう歌は歌えない」

 ジャンルが違うので、比べるモノではない。

 それぞれの歌として、あるべくしてあるものだ。

 サケブシッポとは言わず、プリンと呼ぶ。

 震えるサケブシッポは、否定せず種類が違うと言われてぐうの音も出ないのか、俯いて黙った。

 ミクが聞いてみろともう一度ワンフレーズ歌う。

 サケブシッポも、悔しいのか不器用に鳴き声で真似る。

 ……音程がミクよりズレた、明らかな音痴だった。

 自覚があったのか、サケブシッポは歯軋りしてミクに近寄って、こっちも何故か半泣きになってきた。

 そして、地に足つけて丸っこい身体で顔を地面につけて土下座してきた。

 尊重された上で負けを認めたようだった。

「ど、土下座!? 歌でプリンに勝ったぞミク!?」

「えぇと、どうしたいの?」

 困惑するメロコに変わってミクが聞くと、サケブシッポは縋るような顔で顔を上げる。

 ポケモン界隈ではプリンは歌が上手の部類に入るので有名だが、サケブシッポはミクとはジャンルが異なる上に否定せずに得意分野が違うと言われて、普通に歌うと音程がズレる。

 負けだという意思なのか。

 これは、彼女? なりの弟子入りのような形のようだ。

 ミクが一緒に来るか尋ねると、頷いたサケブシッポ。

 ……まさかの歌でパラドックスポケモンに勝てる時が来ようとは。

 メロコの連れが、スマホで調べて漸くオカルト記事の一つにある、古来のプリンという項目を発見。

 仮称、サケブシッポというらしいと。

「な、何だこいつ……?」

 メロコがオカルト記事のポケモンに怪訝そうに見るが、ミクについてくるというつもりのようだ。

 遠慮気味にミクがボールを持ちだして、放る。

 無抵抗に吸収されてカチッと言って難なく捕獲。

「サケブシッポ? 古来のプリン? どういう事だ?」

 唖然とするメロコ達。

 ミクも混乱するけど、言えることは。

 古来のパラドックスもこの世界には出てくるらしい。

 凶暴で無くて良かったと思うミクであった。

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