願いの物語シリーズ【ヒナちゃんねる3】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第1話『また、ここでみんなと、配信やる。いい、かな?』

唐突なヒナちゃんねる配信無期限停止、さらには陽菜ちゃん自身が呟きアプリで、もう配信辞めると呟いた事で始まった大騒動。

 

おそらくは陽菜ちゃんがアイドルを辞めた時に匹敵するくらいの大騒ぎになった。

 

騒いでいる人の中には純粋に陽菜ちゃんのファンも居たり、ただ騒ぎたいだけの人も居たり、兄さんこと立花光佑さんのファンで陽菜ちゃんのアンチも居たりしたが、とにかく話題は独占し続けていた。

 

そんな中、もしかして陽菜ちゃんが辞める原因はこれでは? と陽菜ちゃんファンの一人が見つけてきたのは、陽菜ちゃんのお母さんと言われている人、夢咲里菜さんによる衝撃の告白であり、ジョージ・ウィルソン、夢咲里菜さんの二人が事故で意識不明の重体になっているという状況であった。

 

陽菜ちゃんにとって両親がどれほど大きい存在であったか。

 

陽菜ちゃんの呟きを見ていれば、何となく察する物もある。

 

だからこそ、俺たちは陽菜ちゃんがまた帰ってくる様に、陽菜ちゃんの両親が目を覚ます様に祈る事しか出来なかった。

 

しかし、陽菜ちゃんからの呟きは全く更新されず、続報も出てこず、俺たちはもうあの無邪気な陽菜ちゃんの姿を見る事が出来ないのかと絶望していた。

 

だが! だが!!

 

天は我らを見捨てなかった!!

 

【待ちに待った時が来たのだ】

 

【多くの英霊たちの祈り呟きが無駄でなかった事の証の為に……!】

 

【再び陽菜ちゃんの生意気で可愛い姿を見る為に……!】

 

【ヒナちゃんねる復活の為に!!】

 

【陽菜ちゃんが、ここに帰ってきたぁぁああ!!】

 

【祝 ヒナちゃんねる 復☆活】

 

【まだ例の勢力生き残ってたのか】

 

【残党はしぶといからね。しょうがないね】

 

【残党狩りの組織結成しなきゃ】

 

【後のシリーズで敵になりそう】

 

【おじさん達、はよ成仏してくれ】

 

【プラモ作ってる時もめっちゃイライラしてたのに、わざわざ配信見に来るのはどういう心境なんだ……?】

 

【そら孫とか娘可愛さだろ】

 

【陽菜ちゃんはお前らの孫でも無ければ、娘でもねぇ】

 

【まぁ男アイドルのファンには母親面した奴とか彼女面した奴が出てくるっていうし、女アイドルなら父親面した奴とか彼氏面した奴が出てくるのは自然っちゃあ自然だろ】

 

【それはそう】

 

【今までは陽菜ちゃんの父親不明だったし。里菜さん美人だし。そういう輩が出て来ても不思議は無かったけど、もうとんでもねぇ父親が発覚したんだよなぁ】

 

【まだ分かんないでしょ。夢咲里菜が適当言ってるだけかもしれないし】

 

【そうそう。ジョージ・ウィルソンの金目当てかもしれないじゃん】

 

【夢咲里菜だって相当金持ってるだろ。陽菜ちゃんだって稼いでるんだしさ。今更そんな事する理由が無いだろ。何か他に理由があったんじゃねぇの?】

 

【そもそも、ジョージ・ウィルソンが病院に運ばれた時、夢咲里菜も何故か現地に居て、何故か同じ場所に陽菜ちゃんとか兄さんとかも居たんだよなぁ……ホンマに偶然か?】

 

【まぁ親とかどうでも良いよ。俺は陽菜ちゃんを見に来たんだ】

 

【お? はじまる】

 

最後にヒナちゃんねるをやった時よりも多くの人が見ているヒナちゃんねるの配信で、俺は緊張しながら画面が切り替わり陽菜ちゃんが現れるのを待っていた。

 

今回の配信については、正直そこまで手放しに喜べないのだ。

 

何せ、陽菜ちゃんは18時から配信するとだけ呟いて終わりだし、それ以降は何も反応がない。

 

もしかしたら今回の配信が最後になってしまうかもしれないのだ。

 

俺は唾を飲み込みながら、画面を見つめた。

 

【さて】

 

【吉と出るか凶と出るか】

 

『……』

 

画面に映し出されたのはやや緊張した陽菜ちゃんが一人。

 

しかしいつもの笑顔や元気な声は……ない。

 

【どうしたんや】

 

【まさか……マジで終わりなのか……?】

 

【明日から何を楽しみに生きていけば良いんだよ】

 

『あっ、始まってたんだね。ごめんごめん。気づいてなかった』

 

【ズサー!!】

 

『いやー悪いね。久しぶりの配信だからさ。緊張しちゃって緊張しちゃって』

 

【大丈夫?】

 

【無理してない?】

 

『無理なんてしてないよ。まぁアイドル時代からさ。緊張する事はいっぱいあったし。今回も同じ様なものだから』

 

陽菜ちゃんは少しだけ真剣な顔になると、深呼吸を一回して、いつもの笑顔を俺たちに向けてくれた。

 

『実は、さ。今日、ゲストを呼んでるんだ』

 

【ゲスト……?】

 

【誰だ?】

 

『みんなも気になってるみたいだし。紹介するね! えっと……うん。ゲストは、私の、パパと、ママ……です』

 

【なん……だと……】

 

【ふぁっ!?】

 

『やぁ! みんな! 久しぶりだね。ジョージ・ウィルソンだ! 僕の事は勿論知ってるよね? そして今日からこれが名乗れるとは感動的だよ。陽菜ちゃんの父。パパさ!』

 

【う る せ ぇ】

 

【佐々木並みの煩さで笑う】

 

『このカメラで、良いのかしら。初めまして? 陽菜の母親をやらせて貰ってる夢咲里菜です。あ。陽菜。これ。忘れ物よ』

 

【テンション↑↓】

 

【マジで真実だったんか】

 

【陽菜ちゃんがやたら演技の才能あったのって父親譲りだったんやなって】

 

『ノンノン。演技は僕じゃないよ。ね。陽菜』

 

『うん。お姉ちゃんが色々教えてくれたから』

 

陽菜ちゃんが里菜さん登場時に渡されたやや大きいぬいぐるみを抱きしめながら、はにかんで笑う。

 

その姿は長年陽菜ちゃんを追いかけてきた俺でも知らないものだった。

 

【かわE】

 

【え? なに? 陽菜ちゃんがヤバイ可愛いんだが、どうしたマジで】

 

【あのクッソ生意気でわからせたくなる陽菜ちゃんはどこ? ここ?】

 

【お使いのモニターは正常です】

 

『えっとね。実はね。もう配信なんか辞めようかなって思ってたの』

 

【やめないで】

 

【見てる】

 

【どこに振り込めばいいですか?】

 

『でも。でもね。お姉ちゃんが、私を待っている人が居るよって言ってくれて、それで、みんなのコメントとか、見てね。わたし、わたし……また、ここに、かえってきたい、っておもったの』

 

【泣かないで】

 

【聞いてるよ】

 

【陽菜ちゃ】

 

『だから、また。帰ってきたよ。また、ここでみんなと、配信やる。いい、かな?』

 

【うぉぉおおおお!!!】

 

【やっぱり陽菜ちゃんは天使だったんやなって】

 

【うるさくしている方がお前らしいだろう。いつもの様にやれば良い。昔みたいに。ただ、光佑をあまり困らせるなよ】

 

【陽菜ちゃん!! おかえりー!!】

 

【ん?】

 

【おい。今、待て、おい】

 

【大野晄弘!! って本物じゃねぇか!!!】

 

【まさかの陽菜ちゃんアンチ最前線、最も古くから陽菜ちゃんのアンチだった男が陽菜ちゃんに応援コメントを!!】

 

【天変地異でも起こるんじゃないか?】

 

『大野……ううん。晄弘おにいちゃん。ありがと……でも! でも。そっちも加奈子お姉ちゃんにあんまり迷惑掛けちゃ駄目なんだからね!』

 

【うっっっっっっ】

 

【泣いた。全俺が泣いた】

 

【大野が陽菜ちゃんアンチを止めたら、他のアンチはどうなる?】

 

【何も変わらんが……】

 

【悲しいなぁ。これじゃ世界から争いが無くならない訳だ】

 

『……はい! 終わり!! しんみりするの、終わり!!』

 

陽菜ちゃんは息を大きく吸い込んで、吐き出すと、涙を拭って、笑顔を見せた。

 

そして、少し無理はしているけれど、陽菜ちゃんは挑戦的ないつもの笑顔を浮かべて、スタッフが持ってきた大きな箱をテーブルの上に置く。

 

『という訳で!! 今日はいつかの配信の続きをやっていくよー! はい! 今日こそ、このモンスターを作っていくぞー!』

 

『おぉ。これは例のパーフェクトなプラモデルだね?』

 

『そう! 今日はこれを、その……家族みんなで、作っていきます』

 

『了解したよ。陽菜。という訳だ。里菜。協力してくれるね?』

 

『……私も、一緒にやって良いのかしら』

 

『オーノー。陽菜。里菜がこんな事を言っているよ』

 

『お母さんは全く! まったくだよ! 見て。この大きさ。私とお父さんだけじゃ、作れないよ。お母さんも、一緒に作ってくれなきゃ。それとも、お母さんは、陽菜の事、きらい?』

 

『っ、嫌いな訳ない! 嫌いな訳無いじゃない。でも』

 

『だいじょーぶ。陽菜はさ。お母さんの事大好きだから。勿論お父さんもね。だから、ね。一緒に、やろう?』

 

『……うん』

 

【なんかよく分からんがいい話だな】

 

【とりあえずこれで里菜さんの炎上も消えそうね】

 

【なんなら母娘でアイドルデビューしてくれ。この見た目ならいけるやろ!】

 

『さ。という訳で、話もまとまったから。このロボット作っていくよっ!』

 

【ロボットじゃねぇ】

 

『このいっぱいあるパーツを作るとこの大きなロボットになるのか。凄いね』

 

【ロボットじゃねぇって言ってんだろ!!】

 

『じゃ、じゃあお母さんは何すればいいかな。この、えっと、この子の服とか作ればいい?』

 

『服……? は難しいんじゃない?』

 

『大丈夫。お母さんに不可能は無いから。じゃ、まずサイズ図るね』

 

『ちょっ、お母さん!? まずはこれ作るんだって』

 

『デザインから起こすから少し待ってね』

 

『話を聞いてよー!!』

 

この時の放送はいつもよりもグダグダしていたし、凄い企画をした訳じゃない。

 

でも、ずっと後まで伝説として語り継がれる事になる放送になるのだった。

 

『じゃあパパはパーツを全て切るよ。危ないからねっ』

 

【ちょ】

 

【早まるな! 難易度が獏上がりするぞ!!】

 

『もう! 二人とも陽菜の話、聞いてよー!!』

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