[刀剣乱夢] 燭台切光忠は主を甘やかしたい   作:himausa

28 / 28
本丸日誌 記入者:山姥切国広 -あかつきが見えた日-(後編)

翌日も何事もなく仕事が進む。主は昨日書いた書類をそのままにしてしまうのだろうか。それもしかたないか。

「あるじさん、何か忘れてない?」

「乱さん?」

「ほら!」

「乱」

薬研が止めようとしたとき、主が引き出しを開けた。

三振で、息が止まる。

何を取り出すのか。

もしかして、昨日の――。

主が濃紅色のリボンを取り出す。

「これ、直りました」

数日前に、乱が出陣で少し端がほつれたと騒いでいたリボンだ。軽傷にもならなかったので、手入れするわけにもいかなかった。

「え、本当!? ありがとうーっ」

「……私には、これぐらいしかできませんから……」

乱がリボンを早速結びなおして、喜んでいる。

「どう?」

「よくお似合いです」

「でしょー?」

すっかりと誤魔化されているようだ。

「……じゃなーい!」

「ひゃっ!?」

「乱、その辺にしとけ」

薬研が乱を引きずって部屋を出て行った。

静かになった部屋の中、主が深く息を吐く。

その手が、もう一度引き出しに伸びた。

取り出されたのは、革表紙のバインダー。見たことのない備品だ。

「山姥切さん」

主が珍しく、顔を上げて、見上げてくる。

「……少しだけ、近侍を変えても、いいでしょうか」

渡されたバインダーを開く。

 

近侍任命書

 

  燭台切光忠

 

バインダーを取り、立ち上がる。

「いいんだな?」

主に問いかける。主は視線を少し迷わせ、頭を下げた。

「……お願い、します……」

「わかった」

足早にバインダーを手に燭台切の元へ届けた。

やっと。

やっとだ。

山姥切が戻った時、主は乱に詰め寄られていた。

「戻ったか、山姥切」

ほっとした様子で薬研と主が息を吐く。

「あるじさん、どういうことか聞かせて?」

主は迷いながら、言葉を紡ぐ。

「……少しだけ、近くで、って」

「……それで、私も……少しだけ」

「……なりたいって、思って……」

三振の視線に顔を上げて、続ける。

「もちろん、無理だとは思うんですけど」

「無理じゃないよ!」

「無理じゃない」

「無理じゃねぇさ」

乱、山姥切、薬研に言われ、主は口を曲げる。

一度頭を下げ、それから、自分の部屋に戻ってしまった。

「……少しでも、大きいんだよ、あるじさん……」

乱が小さく呟く。

その頭を薬研が軽く叩く。

「あとは、大将次第だな」

「ああ」

山姥切も大きく頷いた。

主が少しでも、この本丸で息を付けるようになればと、願って。

 

 

 

【本丸日誌】

 

記入者:山姥切国広

 

・燭台切に近侍任命書を届けた

・明日から、俺は近侍ではない

・それでいい

 

欄外コメント:

・明日かー(乱)

・大将の様子を注意しておけよ(薬研)

・わかってる。まかせて(乱)

・燭台切を寄越したのは、大倶利伽羅だった(山姥切)

・それ、ボクもきいた。ぐっじょぶだよね(乱)

・最初は余計な世話だと思ったが。結果的には、だな(山姥切)

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。