願いの物語シリーズ【古谷淳史】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
突然だが、放課後俺たちは駅前の喫茶店に行く事になった。
理由は簡単だ。鈴木君が誘い、俺たちが頷いたからである。
「おい。佐々木。古谷。帰り大都会行こうぜ」
「うん。良いよ」
「オッケー。あ、紗理奈も一緒に連れてくけど、良いか?」
「勿論だ」
なんて軽いノリで決まり、練習のない休息日だった俺たちは特に着替える事もなく、そのまま喫茶店に向かう事になった。
そしてメニュー表を睨みながら、自分の財布の中身を思い出しつつ、どこまで行けるか考える。
「これが、喫茶店」
「ほら、紗理奈。この中から選ぶんだ」
「……どれが良い?」
「食べたい物は紗理奈が選んでいいんだよ」
「そうなんだ」
「紗理奈ちゃん。この店で頼むなら断然ナポリタンだぜ?」
「ナポ?」
「そう。ナポだ。そして飲み物はメロンソーダ。これで決まりだ」
「おい。鈴木。口を挟むな」
「一番美味しい物を教えてるだけだろ」
「それが口を挟んでるって言うんだ」
いつもの言い争いを聞きながら、俺は今日頼むものを決め、悩んでいる紗理奈ちゃんへと視線を向ける。
一応鈴木君の話は聞いているみたいだけど、そのままナポリタンとメロンソーダを頼むという事は無いようだ。
「ふふん。僕も決まりだ」
「どうせいつものだろ。言わなくても良いよ。分かってるから」
「おい! そういう言い方は無いだろ!? 僕だってたまには違うものを頼む事だってあるんだ!」
「じゃあ聞くけど、何頼むんだよ」
「今日はナポリタンとメロンソーダだ」
「今日も。だろ。言葉は正しく使えよ」
「やかましいな! そういう君は何を頼むんだ!」
「僕は……そうだな。ホットケーキと、ミルクティー……かな」
「佐々木、それ頼むんだ」
「うん。それでさ。紗理奈が良かったら、紗理奈が頼む奴と半分ずつにしない?」
「いいの?」
「勿論。僕が頼んでるんだ」
「……ありがと」
紗理奈ちゃんは佐々木君の言葉で頼むものを決めたらしく、嬉しそうに微笑みながら佐々木君に頼むものを伝えていた。
色々とトラブルはあったけど、こうして無事佐々木君といい関係に戻れて良かったなと思う。
何だかんだ言いつつ、佐々木君は人の事をよく見ている人だから、佐々木君の近くに居ればひとまずは安心できると思う。
そして、注文してからそれほど時間もかからずにデザートやら飲み物やらが届き、俺たちはそれに口をつけていった。
「ほら、紗理奈。先に食べな」
「でも、佐々木は?」
「僕は後で良いからさ。まずは紗理奈が食べなよ。ほら、まずは一口」
佐々木君は、自分の前に置かれたホットケーキを綺麗に切り分け、紗理奈ちゃんの口に運んだ。
紗理奈ちゃんは嬉しそうにそれを食べると、美味しいよと佐々木君に告げる。
実に幸せそうな光景だ。
「古谷」
「どうしたの?」
「胸やけするな」
「そう? 幸せそうで良いじゃない」
「古谷は心が広いな。僕は孤独感に頭がおかしくなりそうだぞ」
「それは大変だね。僕も君の口に運んであげようか?」
「勘弁してくれ。やるなら可愛い女の子にやってもらいたい」
「ナポリタンを?」
「……その時は、何か別の物でも食べるさ」
「じゃあその前に練習しとくと良いよ。ナポリタン以外を食べる練習をさ」
「考えておこう」
それから鈴木君は目の前のナポリタンを、実に食べにくそうに完食し、メロンソーダをズズズと飲んでいるのだった。
そして、目の前の二人を見て、どこか安心したような顔をしつつ、ようやく俺が食べている物に気づいて驚いた様な顔になった。
「今気づいたが、古谷。ナポリタンじゃ、無いじゃないか」
「本当に今更だね」
「サンドイッチ、だと? お洒落なもの食べてるな。モテか? モテようとしてるのか? 古谷! 許せないな!」
「落ち着きなよ。別に大した事じゃ無いだろ?」
「いーや。大した事だと思うぞ。僕は! 僕は知ってるんだからな!? 君がファッション誌なんて買ってたのを!」
「なっ、どこで」
「こんな狭い町だ! 噂なんてどこからでも回ってくるんだ! さぁ、吐け! 誰だ! どこの誰と良い雰囲気になった!? 吐け!!」
「吐く事なんて、何も、無いね」
「くっ、マズイ、このままじゃ僕だけぼっちになってしまう! な、何とかしなくては」
「なんだ。鈴木。そんな事を気にしてるのか」
「君にだけは言われたくないぞ! 佐々木! 何だかんだ君がモテている事を僕は知っているんだからな!?」
「いや、僕じゃ無くてさ。ほら、相手がいない人なら居るだろ?」
「誰だよ」
「立花先輩」
「あのなぁ!? 立花先輩は作らないだけだろ!? 賭けても良いが、立花先輩が道端で「あー、恋人ほしー」とでも呟いたら次の日には十人くらい恋人出来てるわ!!」
「確かに」
嫌でも想像できるという物だ。
実際立花先輩は非常に、ひっじょーにモテるからな。
……そう考えると、やっぱり藤崎さんも、立花先輩の為に料理の練習してるんだろうなと思い、何だか気持ちが落ちる。
あんなに一生懸命に料理の勉強をしているんだし、そりゃ立花先輩の為だよなぁ。
それはそう。当然のトーゼンタウンである。
何か虚しくなってきたな。
「鈴木と古谷は、好きな人、いるの?」
「っ!」
「あー? 別にいないよ。どうした急に」
「んーん。気になっただけ。好きな人いるって言ったら、ライバルかなって」
「なんでライバルなんだ」
「だって、鈴木って、佐々木が好きなんでしょ?」
「んな訳あるか!! 僕と、佐々木はライバルだ!! 佐々木にそんな気持ちを感じた瞬間は無い!!」
「そうだったのか……! ごめん。鈴木」
「何謝ってるんだ! 君は! ふざけるなよ!?」
「あは、あははは。駄目だ。腹痛い」
「くぁああ!! 君っていう男は! 僕の名誉を著しく傷つけたな!? 勝負だ!!」
「良いよ。今度は何で勝負する?」
「フン。今日と言う今日は許さないぞ。デスゲームだ」
「で、ですげーむ?」
「そうだ。紗理奈ちゃんみたいな女の子には出来ない。呪われたゲームだ。ふふふ。既に恐怖を感じている様だな。佐々木」
「くっ」
「俺は止めておいた方が良いと思うけど」
注文した紅茶を飲みながら口を挟むが、ヒートアップした鈴木君は止まらない。
「良いか? スタート時間は今日の夜九時だ! 夜九時に家を出て、学校に集合。そこからっ、くっ、な、七不思議の場所を全て回る。途中で帰った奴が臆病者で! 敗者だ!」
「い、良いだろう。ま、勝つのはこの天才佐々木だけどね!」
「フン。強がりを!」
結局互いに引かず、俺たち三人は夜の学校に集まる事になった。
当然だけど、紗理奈ちゃんは家だ。
こんな危ないイベントに参加させる訳にはいかない。
何せ、このイベントは幽霊だどうのという前に学校に入る関係上先生に見つかる可能性が高いのだ。
見つかれば親に連絡が行くし、そうなれば先生と親のダブル説教が待っているという事になる。
まさにデスゲーム。
心臓の弱い子供には参加させられない呪われた遊びなのだから。
「さて、古谷? 佐々木。準備は良いか?」
「良いけど。何で俺まで参加する事になってるの?」
「当然だろ。逃げる訳が無い」
「聞いてないね。まぁ良いけど」
俺は溜息を吐きながら、学校の校庭に佐々木君や鈴木君と一緒に侵入する。
校舎はすっかり電気も消えているし。先生も帰ったのだろうと安心して校舎に向かい、その扉に手を付けた瞬間。
後ろから俺たちを呼ぶ声が聞こえた。
「佐々木。鈴木。古谷。そこまでだ!! 大人しくしろ!!!」
「なっ! 体育の烏丸!」
「なんでここに!?」
「お前らが来るってタレコミがあったんだよォ。オラ! 逃げたら説教五千倍だからな。大人しくしろ!」
「くっ、いったい誰が」
「千歳紗理奈だ。お前らが死んじゃうかもしれないから助けてって、泣きついて来たぜ」
「なんて、ことだ」
「鈴木が変な言い方をするから紗理奈が誤解したんだろ!?」
「僕のせいだって言うのか!? 佐々木が説明しなかったからだろ!?」
「さー。言い争いもそこまでだ。大人しく。仲良く、お説教といこうじゃないか!?」
その日。俺たちは長いながーいお説教を先生と親の両方から受ける事になった。