ドラゴンクエストⅤ 転生したらパパスだった件。   作:兎深みどり

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第43話『残っていた裏技』

 スライムレース場へ入ると、五匹のスライムが横一列に並んでいた。

 受付の上には、組み合わせごとの倍率が表示されている。

 

 前世で何度も見た光景だった。

 だが、今の俺はコントローラーを握っているわけではない。

 

(本当に通用するのか?)

 

 格闘場で魔物の戦いを見る。

 決着がつく前に切り上げ、そのままスライムレースへ向かう。

 そこで一番と二番の組み合わせへ賭ける。

 

 SFC版で有名だった裏技だ。

 

 俺は一番と二番へ、失っても問題のない枚数だけを賭けた。

 

「間もなく出走です!」

 

 合図とともに、五匹のスライムが跳ねるように走り始めた。

 一番が先頭へ飛び出し、二番がその後ろにつく。

 

 三番が外側から追い上げてきた。

 だが、ゴール直前でわずかに失速する。

 

「一着、一番! 二着、二番!」

 

(……当たった)

 

 払い戻されたコインを受け取りながら、俺は結果を見つめた。

 

 一度だけなら偶然で済ませられる。

 俺はもう一度、格闘場へ戻った。

 

 少額を賭け、魔物たちが戦い始めたところで席を立つ。

 先ほどと同じ道を通り、スライムレース場へ向かった。

 

「一番と二番だ」

 

 再びレースが始まる。

 

「一着、一番! 二着、二番!」

 

(また当たった)

 

 今度は格闘場を出たあと、わざと通路の途中で足を止めた。

 受付へ着くまでの時間を変え、一番と二番へ賭ける。

 

 結果は一番と四番だった。

 

(やっぱり、何かが違う)

 

 前世で読んだ検証では、格闘場を出てからスライムレースを始めるまで、同じ操作を同じタイミングで入力すれば、同じオッズと結果を再現できたという。

 

 完全に同じ入力を繰り返すために、操作を記録して再生できる特殊なコントローラーを使った者までいた。

 

(だが、今の俺にはコントローラーなんてない)

 

 ゲームのボタン入力を、この世界でどう再現すればいいのかなど分からない。

 同じ道を通り、同じ手順で受付へ向かうことはできても、それだけで同じ結果になる保証はなかった。

 

 それでも、先ほど成功した流れを可能な限り繰り返す。

 

 格闘場で賭ける。

 戦いが始まったところで席を立つ。

 寄り道をせず、スライムレース場へ向かう。

 そして、一番と二番へ賭ける。

 

「一着、一番! 二着、二番!」

 

 三度目の成功だった。

 

(なんで使えるんだよ……)

 

 最初の船で、俺は幼いフローラに会っている。

 あの出会いは、PS2版以降で追加されたものだった。

 

 だから、この世界はリメイク版を基準にしていると思っていた。

 町の造りや細かな出来事には、DS版に近い部分まである。

 

 それなのに、SFC版だけのはずの裏技まで残っている。

 

(SFC、PS2、DSがごちゃ混ぜなのか?)

 

 理由は分からない。

 同じ手順を踏んでも、時折違う結果になる。

 

 それでも、一番と二番が勝つ確率は明らかに高かった。

 

(使えるなら使わせてもらう)

 

 俺は増えたコインの一部だけを賭け、外れたときにも元手を失わないようにした。

 成功するたびに賭ける枚数を増やし、失敗すれば再び少額からやり直す。

 

 日が沈み始める頃には、手元のコインが五万枚を超えていた。

 

 

「五万コイン、確かにお預かりしました」

 

 交換所の女が奥へ入り、一本の剣を抱えて戻ってきた。

 

 銀色に輝く刃。

 柄には、王冠を戴いたスライムを思わせる装飾が施されている。

 

「《メタルキングのけん》でございます」

 

 俺は差し出された剣を受け取った。

 

 ずしりと重い。

 だが、重心が安定しており、軽く振るだけで刃が素直に走る。

 

 試しに魔力を流すと、その力は引っかかることなく剣先まで届いた。

 

(これが、攻撃力百三十……)

 

 パパスのつるぎとは、比べものにならない。

 

 山越えの道具はそろっている。

 エルヘブンで使う金にも手をつけていない。

 

 予定になかった、最高の成果だった。

 

 俺はメタルキングのけんを背負い、夜のオラクルベリーへ出た。

 

 次は海辺の修道院。

 そこから再び海を渡り、エルヘブンを囲む山脈へ挑む。

 

 俺は背中の剣へ手を触れた。

 

(待っていろ、ゲマ)

 

 原作のパパスが持つことのなかった剣を手に、俺は次の目的地へ歩き始めた。

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