終末世界で世界最強の剣豪を目指す者   作:ワニノコ

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第二話

 

ホロウ内部。

邪兎屋の従業員であるビリー・キッドとアンビー・デマラは荒廃した駅のような場所を駆けていた。

そして、二人は何かに追われ、焦っていた。

 

「は?戻ってきたぞ!?」

 

それもそのはず。

ホロウとは内部の空間が無秩序に連結しており、一度入ると方角に沿って進むことなどが意味を成さない場所だ。

出られるとすれば、外にいる誰かがホロウ調査協会へ救援を申請する。

もしくは、キャロットの使用やプロキシの助けが必要だ。

だが、案の定ビリーとアンビーはプロキシの助けどころかキャロットすらも持っていない。

ビリーは両手で頭を押さえ、アンビーは辺りを見渡す。

すると、歩道橋から二体の怪物が現れ、落ちてくる。

エーテルの侵蝕を受けて結晶化した体、小さなブラックホールのようなコアで構成される怪物・・・エーテリアスだ。

 

「クソッ、キリがねぇ!これじゃ弾代だけで大赤字だぜ・・・!」

 

『ガアァァァ!』

 

「来る、構えて」

 

エーテリアスは吠え、ビリーとアンビーに向かって一直線に向かってくる。

ビリーは二丁拳銃を構え、アンビーは電磁ナタを鞘から抜く。

すると、後ろから声が聞こえた。

 

「お前ら、そこどけ!」

 

その声に聞き覚えがあったのか、ビリーとアンビーはその声の主に従ってそこをどく。

そして、その声の主・・・ゾロは『秋水』を振り、二体のエーテリアスを斬り伏せる。

 

『おーいこっちだ、急いで!』

 

後ろにあった脱線した列車の影からイアスが呼びかける。

その言葉に従い、アンビーとビリーは列車の裏に行く。

 

「やぁ、お疲れ様!」

 

「スカーフの喋るボンプ・・・」

 

「おぉっ!もしや・・・『パエトーン』!」

 

 

 


 

クリティホロウ、古い地下鉄分岐駅某所。

 

「あの上級エーテリアスの声はもう聞こえない」

 

「よ、良かった・・・走り過ぎて足の油圧ロッドが折れるかと思ったぜ!」

 

アンビーは落ち着きながら辺りの状況を確認し、ビリーは足を見てほっとしている。

 

「適度な休憩を取ることを提案する。良い?プロキシ先生?」

 

『二人は休んでて、見張りは僕とゾロがするから。ゾロもそれで良いかい?』

 

「あぁ」

 

エーテリアスを斬り伏せ、『秋水』を鞘に戻したゾロは短く返事をする。

 

「ありがとう。プロキシ先生、ロロノア先生」

 

「ふぅ、さっきは危なかったぜ。まさか赤牙組のおっさんが、あんな風に異化しちまうとは。店長が俺たちをあそこから連れ出してくれて助かったぜ。さすが『パエトーン』!相変わらず頼もしいな!」

 

『いやいや、プロキシの役目を果たしたまでだよ』

 

アキラはボンプ越しにだが、笑顔で受け答えをする。

 

「ニコのことだから、節約のために自力で対処するように言ってくるかと思った。プロキシ先生とロロノア先生が駆け付けてくれなかったら、私たちはエーテリアスの領地から脱出できなかったはず。ありがとう」

 

アンビーはアキラとゾロに感謝を伝える。

ゾロは周囲の見張りに専念していて無言のままだが、アキラは『礼には及ばないさ』と返す。

 

「所でさ、最初に協力した時から聞きたかったんだけど、店長の店の設備って、ボンプと感覚を同期できる上に、ホロウ内部ともリアルタイムで通信できるんだろ?治安局やホロウ調査協会より、よっぽどスゲェじゃねぇか!そんな切り札があるなら、なんで調査協会に加入しねぇんだ?もっと贅沢な暮らしができるのによ!俺らみたいなホロウレイダーと働いてたら、メリットよりリスクの方が高いだろ?」

 

『僕たちにも色々と事情があるのさ』

 

アキラはそう言い、ビリーに返答する。

 

『(確かに、ホロウには特殊な性質がある・・・従来の通信シグナルでは、ホロウの外までは届かない。これは、あらゆる研究機関が挑んで、未だに解決できてない難題だけど・・・僕たちのデバイス『H.D.D』なら、僕とリンの目に埋め込まれている『知能水晶体』を介し、ホロウ内とリアルタイムで通信できる。だけど、僕とリンにはやるべきことがある。その目標を達成するためには、ホロウにより深く入っていかないといけない。公的な機関は身元審査が厳格なせいで、プロキシとして出発せざるをえなかったけれど・・・今は地道にお金を貯めて、情報を集めている最中だ。だが日に日に、プロキシにとっては生きづらい世の中になってる気がするな・・・)』

 

アキラは心の中でそう思っていると、見張りをしていたゾロが声を掛けてきた。

 

「アキラ、エーテリアスが来たぞ」

 

『ガアァァァ!』

 

少し離れた場所からエーテリアスの声が聞こえてきた。

 

「早くね?横になろうとしてた所だってのに!」

 

「すぐに撤退しないと。・・・でもまぁ、ビリーが望むならここで永遠に眠るのも良いかもね。来年のスターライトナイトの新作のベルトを貴方の墓前に供えてあげる」

 

「命日にはお前の墓に行って線香を焚いてやるから安心して眠れよ」

 

「アンビーもゾロの兄貴もそういうこと真顔で言うなよ、本気か冗談か分かんなくなるだろ!」

 

『はははっ、とりあえず出口に向かおうか』

 

アキラはそう言い、出口への案内を開始する。

ゾロはアンビーに手首を掴まれながら移動をする。

途中、エーテリアスと遭遇したが、ゾロが難なく斬り伏せた。

そして、工事をされ掛けている線路の所まで来た。

 

「店長!次はどの方向に行けばいいんだ?」

 

『このまま進む』

 

「了解」

 

「分かったわ」

 

アンビーはゾロの手首を掴みながら、アキラが指定した方向に歩き出した。

 

「ちょっと待て!この先は壁だぜ!?」

 

進もうとするアンビーとゾロをビリーは静止させる。

 

『心配しないで、お兄ちゃんの言う通りにすれば大丈夫だから』

 

「この声は・・・おぉ!もう一人の『パエトーン』だ!」

 

ビリーはイアスから聞こえてきたリンの声に反応する。

 

『リン、やっとログインしたんだね』

 

『ごめんごめん!さっきまでずっと、ホロウの出口の安定性を検証してたの。ビリー、アンビー、ゾロ、聞こえる?とにかく、お兄ちゃんがさっき言った進路は間違ってないよ。後、ホロウを出てからの脱出経路も手配してある、私たちを信じて。お兄ちゃん、もう感覚同期を解除してもいいよ』

 

『それじゃ店で落ち合おう、グッドラック』

 

アキラは感覚同期を解除し、声が聞こえなくなった。

 

「そういう訳だ。さっさと出るぞ」

 

「直進する、衝撃に備えた体制を」

 

「ぶつかるぶつかるぶつかるぅぅ!」

 

奇妙な開放感と共に、三人とボンプは壁をすり抜ける。

 

「エーテルの圧迫感が消えた」

 

「やっと・・・出てこれたんだな、俺たち!よっしゃ!」

 

その時、近くに停車してあった車からクラクションが鳴る。

その車から、ニコが降りてきた。

 

「時間も場所も、全部『パエトーン』の予想通りね・・・ほら、三人とも乗って!」

 

「ニコの親分!」

 

ビリーが嬉しそうに言い、三人は車に乗る。

そして、その車はビデオ屋を目指すのだった。

 

 

 


 

ニコはビデオ屋の駐車場に車を停め、降りた。

そして、ゾロ、アンビー、ビリーも降り、アキラとリンが来るのを待つ。

 

「来たわね!ナイスタイミング!」

 

「ニコ、戻ってくるのが早すぎないか?まさか、また信号を無視したのか?」

 

「そのまさかだ」

 

「違うわよ!普通の青信号とR値255の青を通過しただけだから!あっ、それから・・・来る途中に確認したけど、尾行はされてなかったわよ!」

 

「アンビー、R値255の青ってなんだ?」

 

「あなたのジャケットと同じ色」

 

「・・・」

 

アキラはゾロの発言でほぼほぼ確信はしていたが、アンビーがビリーの着ているジャケットと同じ色ということを言い、完全な確信に変わった。

 

「ニコ、従業員たちを助けてあげたんだから、そろそろツケを払ってもらえる?」

 

「待って!まだ終わってないでしょ?あたしの依頼は『人とモノ、どちらもホロウから出すこと』。ほら、半分しか終わってないじゃん!」

 

「安心して、ニコ。ちゃんと覚えているさ」

 

「もう、『パエトーン』は頼りになるって信じてたわ!」

 

「・・・で、そのモノはホロウのどこにあるんだ?」

 

ゾロは現場にいたアンビーとビリーに聞く。

 

「正確な位置は分からないけど、対象の金庫は危険度の高いエーテリアスの活動範囲内にある。ホワイトスター学会のエーテリアス図鑑での登録名は『デュラハン』。上級エーテリアスよ」

 

「そう、それだ!赤牙組の親玉も運が悪いな。強烈なエーテル物質に侵蝕されて高危険度のエーテリアスになっちまった。俺とアンビーで金庫を奪おうとしたけど、あいつ尋常じゃないくらい強くてさ。撤退するのがやっとで回収まで手が回らなかった」

 

アンビーとビリーがそう言い終わると、アキラはゾロの方を見る。

 

「ふむ・・・ゾロ、君なら『デュラハン』に勝てるかい?」

 

「さぁな。・・・だが、負けるつもりはない」

 

「頼もしいぜ!ゾロの兄貴!」

 

ゾロの発言に、ビリーの表情も明るくなる。

だが、ビリーはあることに疑問を持つ。

 

「・・・そういえば親分、あの中には一体何が入ってんだ?ここまで体を張る価値があんのかよ?」

 

「ふふん、早速答え合わせをしましょ・・・『これ』を見て!」

 

ニコはペンダントを取り出した。

そのペンダントにはストリートギャングのシンボルらしき赤い牙が付いていた。

剥き出しになった金属の部分を見るに、ただの装飾品ではなさそうだ。

 

「これは・・・一見、ただの精巧なペンダントだけど、実際はメモリディスクだね」

 

「えぇ。これは小型のメモリディスク・・・赤牙組の首領『シルバーヘッド』の所有物よ。十四分街から抜け出す前に、あたしがビルの中で拾ったの!事前に調査した所によると・・・あのクソおやじ、これを肌身離さず持ってたらしいわ。きっと、重要な何かが隠されてるはずよ!金庫の暗証番号と関係があるに違いないわ!」

 

「(要は、盗んだってことだな)」

 

ゾロはツッコもうとするが、ニコが嬉しそうに話すので、心の中に留めておいた。

 

「でも、少し破損してるみたい」

 

「・・・本当だ、焦げちまってるぞ!」

 

「ねねっ、『パエトーン』!なんか方法はないの?あんたたちの店にある、あの複雑なコンピューターは使えない?」

 

「H.D.Dのスペックは、ほぼホロウデータの処理に割いてるんだよね。けど、内部のデータを取り出すだけでいいなら・・・お兄ちゃん、私、インターノットの演算パワーを拝借して復元してみるね」

 

リンはニコからペンダントを受け取った。

 

「よし、じゃあ約束ね!こっちは何とかしてホロウにある金庫の位置を確認するから、手掛かりがあったらまた連絡するわ!あたしから金庫の回収作業の連絡が来るまでは、他の仕事をしててもいいわよ!あ、メモリディスクからデータを抽出するのも忘れずにね!」

 

「じゃあまたな、店長!ゾロの兄貴!」

 

「では、また」

 

そう言い、邪兎屋は車に乗り込む。

だが、去り際にニコが相談をして来た。

 

「そうそう、まだ相談したいことがあるの!」

 

「割引ならしないよ」

 

アキラはニコが相談の内容を言う前に釘を刺す。

 

「流石店長、親分のことをよーく分かってるぜ・・・」

 

「早すぎるわよ!まぁ、割引はして欲しいんだけど・・・『パエトーン』の相場を乱しちゃったら悪いでしょ?だから前みたく、インターノットでサブアカを作ってくれたり・・・ね?」

 

「プロキシ先生、どうか割引して。じゃないと・・・ロロノア先生の有る事無い事を叫びながら泣く」

 

「・・・」

 

ゾロはジト目でアンビーを見る。

そして、ため息をついてアキラを見た。

 

「はぁ・・・割引してやってくれ」

 

「分かったよ。・・・でも、今回だけだよ」

 

その言葉を聞き、ニコは満面の笑みを浮かべながら車を走らせていった。

その後、アキラはリンの情報を使ってサブアカを作るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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