パソコンで再生された映像では、猫又が邪兎屋に依頼をし、赤牙組のホロウの内にある三箇所の拠点に行き、うち二箇所の拠点は空振りに終わった。
そして、邪兎屋は最後の拠点があるデッドエンドブッチャーのいる『デッドエンドホロウ』に向かおうとしていた。
「うぅ・・・猫を被ってる自分を見るのが、こんなに恥ずかしいなんて・・・!」
猫又は顔を赤らめて、手で顔を隠している。
「へぇ、あの『にゃ』って、わざとだったの?」
「えっ!?い、いやいや!ネコのシリオンはみんなこんな感じだ・・・にゃあ〜」
アキラの指摘に、猫又はわざとらしく語尾ににゃあ〜っとつける。
「うん・・・状況は大体分かったよ。あんたは今日、ニコたちと赤牙組の拠点を探しに、デッドエンドホロウに向かったんだね」
「そう!それから色々あって・・・とにかくニコたちは今、爆破エリアにいる!」
すると、会話の最中にFairyが割り込み、報告をしてくる。
『マスター。ただいまニュースチャンネルにて、今回の依頼に関連しているとみられる情報が放送されています。お見逃しなく』
Fairyにそう言われ、三人と猫又はテレビを見ると、速報が入っていた。
『速報です。生中継でお送りいたします・・・まもなく、ヴィジョンの最後の輸送列車が出発し、デッドエンドホロウへと入ります!情報によると、この無人列車は自動運転モードで走行し、爆破解体に使う最後の爆薬を目的地まで輸送するとのことです。列車が到着し次第、現場の監視拠点に控えているパールマンさん自ら指示を出し、爆破解体が実施される予定です。パールマンさんは、爆破解体の準備が整ったことを確認してから技術スタッフと共に現場から撤収し、市街地の本部に戻るようです・・・』
「まずい!最後の列車がもう発車しちゃう!視覚記録の続きを観てる時間はないぞ!何とかして爆発を阻止しないと!ニコが埋立地の灰になっちゃう・・・」
猫又の焦る声が響く。
一方、三人は冷静だ。
「お前なぁ、言葉で言うのは簡単だが、どうやって列車を止めるんだよ?」
「そうそう。その場で止めちゃったら、治安局に捕まるのがオチだよ」
「事態を通報するのが一番だけど、ニコたちがホロウレイダーをやってることもバレる・・・」
アキラとリンは爆発の阻止する方法を考えるが、どうしても深刻なデメリットが付いてしまう。
すると、Fairyが喋り出した。
『提案。いっそ、ホロウの中で列車を止めるのはいかがでしょう?』
「そっか!外から直接ホロウの中の様子は探知できないんだから、捕まる心配もないぞ!」
「うん・・・今からデッドエンドホロウに潜入して、列車が必ず通る道を阻むことができれば・・・確かに理論上は可能だ」
「Fairy、列車の位置をリアルタイムで把握できる?」
『可能。目標車両までの安全なルートを計算しています』
Fairyは『デッドエンドホロウ』の安全なルートを計算し始めた。
「よし、今回は緊急事態だ、デッドエンドホロウの中で列車を止める方法を探してみよう」
四人の意見が一致した。
それからゾロは、猫又とイアスに接続したアキラと一緒に『デッドエンドホロウ』の中へと入った。
『もしもし、聞こえる?』
「あぁ、ちゃんと聞こえてる」
ゾロはいつものように受け答えをするが、猫又は少し驚いていた。
「おぉ、すごい・・・!直接ホロウの中と通信できるプロキシなんて初めてだぞ。どうりで、ニコが新エリー都最強のプロキシって言うわけだ!」
「悪い気はしないけど、今は列車を止める計画に集中しよ。動く前に、まずは要点をおさらいしてみて」
リンにそう言われ、ゾロと猫又は要点をおさらいした。
まず、爆薬を積んだヴィジョンの自動運転の無人列車が通る線路を切り替えてトンネルを通るように仕向ける。
それから、列車がトンネルに入って減速し始めたら、ゾロか猫又のどちらかがボンプを列車の上に投げる。
そこからは、イアスに接続したアキラがメンテナンスハッチから潜入して運転室で列車を止める。
「ざっとこんな感じだな」
「うん。だけど、デッドエンドブッチャーの具体的な位置はまだ分からないの・・・三人とも、気を付けてね!」
「あぁ」
「りょーかい!」
「じゃあ、行動開始。グッドラック!」
それからゾロと猫又はイアスに接続したアキラに着いて行った。
だが、道中にエーテリアスが現れた。
『ガアァァァ!』
「チッ、面倒だな。おい猫又、アキラを連れて下がってろ」
「えっ?何言って・・・」
『安心してくれ、ゾロなら大丈夫だ』
イアスに接続したアキラは猫又の手を掴んで後ろに下がった。
そして、ゾロは『秋水』を鞘から抜いた。
『ガアァァァ!』
エーテリアスはゾロに襲いかかるが、ゾロは難なく回避した。
「一刀流」
『ー"厄港鳥"ー』
ゾロは三日月形の飛ぶ斬撃を放ち、エーテリアスを真っ二つにした。
因みに、『デュラハン』の時に放った『ー"三百六十煩悩鳳"ー』よりも素早く放つことが可能だ。
「す、すご・・・」
戦いを見ていた猫又は心の中で思っていたことが口から漏れてしまった。
一方、それを聞いたアキラはイアス越しに笑みを浮かべている。
すると、戦いを終えたゾロが猫又とイアスに接続したアキラの元に近づいた。
「エーテリアスは片付いたが、あれはどうする?」
ゾロの目線の先には、廃棄された列車の車両が奇妙な角度で道に横たわっていた。
「プロキシ、あたしたち道を間違えてない?」
「猫又、あんたたちの進路は間違ってないよ。見た感じ、この車両は外的な力で破壊されている。多分、エーテリアスに投げられたんだと思う」
「やったのは、デッドエンドブッチャーか?」
「ううん。そこまでは分からない。次の目的地は車両の向こう側だけど、何とか行けそう?」
「あたしだけなら、全然よじ登っていけるけど・・・」
猫又はゾロとイアスを見た。
だが、ゾロは不敵な笑みを浮かべていた。
「まぁ心配すんな。道なら作ればいいだけだ」
「えっ?」
「えぇっ!?」
猫又はゾロの発言に困惑していると、電車の向こう側から少女の驚いたような声が聞こえた。
「んにゃっ!?今、誰か喋った・・・?まさか、電車が!?」
「んなわけねぇだろ。多分、向こうに誰かいるだけだ」
ゾロが猫又にツッコミを入れると、電車の向こう側にいる少女が喋り出した。
「あの・・・皆様は、ホロウ調査協会の調査員様ですか?」
「・・・まぁ、そんな感じだ」
『どうしたんだい、何か手伝えることがあるかな?』
「待って。あたしたちが協会の人間かどうかより、まずは電車さんから名乗るのが業界のルールだぞ」
「えっ?そ、そうなんですか?ごめんなさい、そのようなルールを・・・存じ上げておりませんでした」
猫又の指摘に、電車の向こう側にいる少女は困惑しつつも、謝罪して自己紹介を始める。
「えっと・・・私はカリン、家事代行会社の従業員です。星座は双子座、血液型はRh−、好きなことはお掃除です。市民ナンバーは・・・」
「そ、そんなに細かく紹介しなくても・・・それで、カリンちゃんはどうしてこんなとこに?」
「つ、ついさっき、危険なエーテリアスを避けて通ろうとしましたら、同行していた皆さんとはぐれてしまったんです!私は『キャロット』データを所持していなくて・・・調査員のお二人なら、きっとホロウから脱出するルートをご存知ですよね?ど、どうか私も連れて行っていただけませんか?」
「ホロウで道に迷った一般人、か。それにしても、家事代行の人なんかがどうして危険なホロウなんかに?」
「どうする?おれたちにあんま時間はねぇが、助けるか?」
『あぁ、もちろんさ。ゾロ』
「了解」
ゾロは短く返事をし、車両に近づく。
「悪いが、ちょっと離れてくれないか?」
「は、はい!」
電車の向こう側にいるカリンは返事をし、少し距離を取ったような音がした。
「んにゃ?今度は何を・・・?」
『まぁ、見ていれば分かるさ』
困惑する猫又にアキラがそう言った次の瞬間、ゾロは手に持っている『秋水』を何度か振り、電車の車両を斬り刻んだ。
「あいつ、色々と無茶苦茶だぞ・・・」
猫又はゾロが目の前でやったことに、驚きを通り越して呆れていた。
そして、ゾロが斬り刻んだ電車の車両の先からはメイド服を着て長柄の電動丸ノコを持った少女・・・カリンが歩いて来た。
「あ、ありがとうございます。あ・・・!はじめまして!」
カリンは頭を深く下げた。
「は、初めまして、調査員様!・・・えっ?先ほどからお話しさせていただいてたのは、こちらのボンプ様だったのですか・・・?あわわ、すみません!ボンプ様のご身分を疑っているわけではなくて・・・」
『本当に、ただの家事代行会社?』
アキラはイアス越しにカリンの持っている武器を見て、疑問に思う。
「すみません、その・・・弊社は幅広い分野でビジネスを展開していまして、中にはホロウ関連の業務もあるんです・・・そうだ!調査員様は先をお急ぎなんですよね?き、きっと道中お役に立ちますので、どうか私をホロウから連れ出してください!お、お願いします!」
カリンは深く頭を下げた。
『まぁ、無理なお願いでもないしね』
『うん、あたしもお兄ちゃんと同意見だよ。彼女を出口に連れて行くのはいいけど、一応知らない人なんだから、お互い内緒にしたいこともあるでしょ』
「決まりだな。ただし、おれたちに対して余計な詮索はするな。分かったな?」
「はっ、はい!」
「よし、それじゃあ先を急ごう!」
猫又がそう言い、イアスに接続したアキラに案内される。
だが道中に
『・・・』
ズシンッズシンッっと音を立てて歩くデッドエンドブッチャーを見かけた。
「あれがデッドエンドブッチャーか」
「プレッシャーが半端ないぞ!」
『別の方向に行ってくれて何よりだ』
アキラはここでデッドエンドブッチャーと一戦交えなかったことにホッとした。
そして、探していた制御室に着いた。
だが、操作レバーを押しても反応がない。
「どういうことだ?」
「あの・・・どんな任務をされているのかは分かりませんが、制御盤のランプを見ると、『ラインデータが切断されているという意味みたいです」
「なるほど、つまりデータを再接続すればいいってことだな!」
『それなら僕に任せてくれ』
そうしてアキラは再接続を開始する。
少しすると、再接続が成功し、列車の進路が変わった。
だが、列車が来るまで時間があるので、先にカリンをホロウから出すことにした。
道中、エーテリアスに遭遇したが、難なく突破し、近くにあった出口を見つけた。
『出口はきっとあの場所だ』
『肯定。この空間の裂け目はホロウの外へと通じています。旅のお供、家事代行会社の従業員:カリンの依頼を達成可能』
「ん?『パエトーン』、何か言ったか?」
「目的地に着いたって言っただけだろ」
『あぁ。カリン、前方に出口がある。そこから出れば大丈夫』
「ほ、本当ですか?出口が見つかったんですね?よ、よかった・・・!あの・・・本当に、ありがとうございました!調査員様のお力がなければ、カリンはきっとこのホロウを永遠に彷徨ってました!」
カリンは感謝し、頭を深く下げた。
「その・・・ボ、ボンプのホロウ調査員様には初めてお会いしました!よ、よろしければ、お名前を教えていただけませんか?今度、従業員一同でお礼に伺いたいんです!」
「・・・言ったはずだ。余計な詮索はするなって」
「あ・・・!す、すみません!」
カリンはゾロに指摘され、頭を深く下げる。
『気にしないでくれ。ただ、この業界ではあまり深入りしないのがお互いの為だよ。縁があればまた会おう、カリン』
「バイバイ、カリンちゃん!」
カリンは三人に深々とお辞儀をし、裂け目に入って行った。
すると、近くで列車が通る音が聞こえた。
三人は急いで列車を追うのだった。