終末世界で世界最強の剣豪を目指す者   作:ワニノコ

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第八話

 

一方その頃、ニコたちはカンバス通りにいる住民からの委任状を受け取っていた。

 

「ほれ、アンビーちゃんや、これで委任状は全部だよ」

 

「ありがとう」

 

「いやいや、お礼を言うのはこっちの方だよ。あなたたちがいなかったら、あたしら全員どうなってたことやら。それにしても・・・助けを呼びに行ってくれたお嬢ちゃんだけど、中々戻って来ないわねぇ」

 

「はぁ、確かに妙だわ・・・また想定外のことに巻き込まれたんじゃないでしょうね?」

 

ニコは猫又に何かあったんじゃないかと思い、心配そうな顔をしている。

そこに、イアスに接続したアキラが走ってきた。

 

『確かに想定外のことはあったけど、策を思い付いた』

 

「この声は・・・プロキシ!」

 

「みんな、お待たせ!」

 

「・・・映像で見た光景と同じだな」

 

イアスの後ろには猫又とゾロが走ってきた。

そして、アキラはこれまでの経緯をニコたちに説明した。

 

「なるほど。列車を止めて爆破自体をやめさせようとしたけど、車両はヴィジョンの武装した増援で一杯だった・・・ふん、どうやらヴィジョンは、住民たちの決死の抵抗をよっぽど恐れてるみたいね。でも、プロキシの言ってたプランは良いと思うわ!さっすが、知恵と勇気の『パエトーン』ね!」

 

ニコはアキラが伝えたプランに納得する。

そして、デッドエンドホロウ内で助けた子供の祖母に指示を出した。

 

「おばあさん、さっきの救助プランは聞いててくれたわよね。住民のみんなを、一番近い地下駅に集めてくれる?」

 

「安心しなさい、足手纏いにはならないよ。すぐにみんなに知らせてこよう」

 

「えぇ、お願いね。あ・・・そうそう、この近くのホロウに赤牙組の古い拠点があるって聞いたんだけど、何か知らない?」

 

どうやら、ニコは依頼料を諦めていないようだ。

 

「おいニコ、それ今聞くことか?」

 

「当たり前でしょ!猫又にとっては大事な家族の形見なんだから」

 

「・・・じゃあ仕方ねぇな」

 

ゾロはニコの反論を聞いて納得する。

というのも、ゾロの腰に差している刀の三本のうちの一本である『和道一文字』は亡き親友である『くいな』の形見でもあるから、同情してしまう部分があるのだ。

 

「それで、何か手掛かりを知ってるかしら?」

 

「そのあたりのことなら、知ってるよ。というより・・・ここに住んでる人で、赤牙組のことを知らない人はいないだろうね」

 

「えっ、本当?」

 

「本当だとも。何せ、赤牙組はこの場所で生まれたんだからね。ここに住む人々は、何かしら彼らと関わりを持ってるのさ」

 

そうして、おばあさんは昔の赤牙組のことを話し始める。

 

「とは言っても、赤牙組は今とは全然違うんだよ。当時は孤児たちを引き取って、戦い方の他に読み書きも教えていたんだ。弱きを助けるために立ち上がったのも、一度や二度じゃなかった」

 

「そうなのね・・・」

 

ニコは今頃になって自分たちが赤牙組が崩壊仕掛けていることに関わっていることを後悔し始めた。

そこに、ゾロがフォローを入れる。

 

「気にすんなよニコ。組織ってのは人が増えると変わってくるもんだ。だろ、ばあさん?」

 

「あぁ、その通りさ。シルバーヘッドって若造、数年経ってめっきり人が変わってね。貧民街を見下すようになってからは、組員を率いて、人様に言えないことにも手を出し始めた。そんな様子を見てられなくなって、組を抜け、ここを出ていった者も少なくない。しばらく経って、赤牙組自身もここを離れたのさ。あたしらは今の赤牙組と関わりはないし、関わりたくもない。『シルバーヘッド』が治安局に追われてホロウに落ちたのだって、ただの自業自得だとしか思えないね・・・」

 

「えっ、今、なんて?」

 

猫又は『シルバーヘッド』がホロウに落ちたことを聞き、妙な反応を見せる。

 

「どうしたんだい、お嬢ちゃん?確かに赤牙組とは関わりたくないと言ったけど、気に障ってしまったかい?」

 

「そ、そこじゃなくて・・・!『シルバーヘッド』は、治安局に追われてホロウに落ちたの?邪兎屋に・・・やられたんじゃなくて?」

 

「ぎくっ・・・!そ、それは・・・」

 

ニコが痛いとこを突かれたような反応を見せる。

そこに、ビリーが慌ててフォローを入れる。

 

「コホン!子猫ちゃん・・・いや、依頼人さん、分かってくれ!誤解を解こうとしたんだが、そのキラキラした目で見つめられると、何も言えなくなっちまって・・・!確かに、俺たちはたまたま現場に居合わせた・・・けどあいつをやったのは・・・治安局なんだ・・・」

 

「そんな・・・あんたたちじゃ・・・なかったの・・・?」

 

「猫又、気を落とさないで。例え治安局の介入がなかったとしても、邪兎屋なら、『シルバーヘッド』に手こずることはなかったわ」

 

「コホン・・・今回の件は、猫又が勝手に誤解しただけとはいえ・・・あたしたちにもほんの少し責任があるわ。形見探しの依頼料は、ちょっぴりオマケしてあげる!と、とにかく、この話は終わりよ・・・今は一刻も早く列車を奪って、住民たちをここから連れ出さなきゃ!さぁ、出発するわよ!」

 

ニコたちと猫又、ゾロはホロウに入る準備をするのだった。

 

 


 

数分後、一行はホロウに入った。

 

「さぁみんな、そろそろ列車に着くわよ!」

 

そうしてニコは全員に聞こえるように、作戦を告げる。

 

「作戦目標は至ってシンプル・・・守衛を倒す、列車を奪う、そのままずらかる。以上!」

 

「了解!」

 

ニコの作戦を聞き、ビリーは返事をした。

だが、アンビーは何やら軽快なリズムを口にしている。

 

「どうしたお前?」

 

「アンビー、緊張で壊れちゃった?」

 

「いや・・・多分、BGMで盛り上げようとしてるんじゃねぇか?十中八九、映画の影響だな・・・」

 

「大丈夫よアンビー。そんなのなくたって、この作戦の重大さはみんな分かってるはずだわ。プロキシ、運転はあんたに任せたからね。そっちの準備はどう?」

 

『腕が鳴るな』

 

『お兄ちゃんがこんなにやる気になるなんて、珍しいね・・・応援してるから、頑張って!』

 

「よし、それじゃあ行きましょ!あっと言わせてやるわよ!」

 

そうして、出発した。

そして、目の前に目的の列車を見つけたが、バリケードみたいなもので塞がれているため、制御盤で向きを変えることにしたのだが

 

「貴様ら、何者だ?」

 

列車を守っていた兵士の一部に見つかってしまった。

 

『ゾロ、頼んだ!』

 

「了解」

 

「ぐわぁ!」

 

「がっ・・・!」

 

ゾロは『秋水』と『三代鬼徹』を鞘から抜いて、盾を持って向かってくる兵士を盾ごと斬り伏せた。

 

「先を急ぐわよ!」

 

ニコに着いて行くと、一つ目の制御盤を見つけた。

そして、制御盤のレバーを下げると、列車が下がり、二つ目の制御盤を見つけた。

列車を守っている兵士は列車が下がったことには気づいたが、ニコたちがいることはバレなかった。

そして、二つ目の転車台に繋がるレバーを下げるが、反応がない。

 

『転車台に、何やら引っ掛かっているようだけど・・・」

 

「あぁもう!めんどくさいわね!」

 

『落ち着いてくれ。慎重に近づいて取り払おう』

 

そうして列車に近づき、引っ掛かっていた箱を取り除くと、転車台が動いた。

だが、まだ気づかれてはいないが、列車を守っていた兵士たちが前に出てきてしまった。

 

「流石に気づかれちまったか・・・」

 

「まぁ気にすんな。全員黙らせれば気づかれなかったことにできるからな」

 

「やるなら静かにやりなさいよ」

 

「あぁ、分かってる」

 

そうしてゾロは列車を守っていた兵士たちに近づく。

 

「おい貴様!何者だ!?」

 

「それ以上近づくな!撃つぞ!」

 

だがゾロは無言で刀を構える。

 

「二刀流」

 

ゾロは高速で二刀を振り抜く。

 

 

『ー"鷹波"ー』

 

 

ゾロは刀を振り抜いた影響で発生した波状の衝撃波を兵士たちにぶつけた。

その攻撃範囲は広く、一度で全ての兵士を薙ぎ倒してしまった。

一方ニコたちは、ゾロが兵士たちを相手しているうちに、こっそりと列車に忍び込み、パールマンを列車の外に引き摺り出した。

 

「グハァ!」

 

「だるまのオッサン!命を何とも思わない大悪党め、大人しく降参しろ!」

 

「猫又、ゾロ、だるまのオッサンも連れてって!アンビーとビリーが運転室に向かってる。プロキシ、ホームで乗車を待つよう住民たちに知らせて!」

 

「お、お前たち・・・あのスラムの連中を列車で連れ出すつもりか?させん!させんぞ!連中が外に出て何か言おうものなら、私とヴィジョンは終わりだ!」

 

パールマンは激しく抵抗する。

それを見かねたゾロがパールマンの頭を踏みつけ、パールマンの目の前に『秋水』を地面に刺した。

 

「別に、それでいいだろ」

 

「ッ・・・!誰でも構わん、どんな手を使ってでも、こいつらを阻止しろ!」

 

『警告!予定ルート上路線の予期せぬ破断。小規模な爆発による線路の損壊を検出。計画は失敗です』

 

『何だって・・・!?大変だ!線路が壊れた!』

 

「何ですって!?」

 

「パ、パールマン長官、ご安心を!新エリー都へ続く唯一の線路を爆破しました。これで奴らはもう出られません・・・」

 

どうやら、爆破したのはゾロの一撃を喰らっても意識が飛んでなかった兵士のようだ。

 

「お、おお、お前!このバカタレが!線路を爆破するのは、我々が撤退した後だ!スラムの連中だけでなく、我々まで閉じ込められてしまったではないか!?」

 

「チッ・・・!」

 

ゾロは怒りに任せて爆破した兵士を壁まで蹴り飛ばした。

そして、運転室に向かっていたアンビーとビリーが戻ってきた。

 

「ニコ、四方から敵の増援が来てる。どうする?」

 

「あぁもう・・・だるまのオッサンを連れて、列車の中に隠れるわよ!」

 

そうして列車の運転室の中に駆け込む。

そして、パールマンの持っている無線からは突入の指示を求める声が聞こえる。

 

「おい、分かってるよな?」

 

ゾロはパールマンの首筋に『秋水』を当てた。

もちろん、パールマンは首を縦に振ってくれた。

 

「と、突入はするな!私は今その運転室だ!邪兎屋の侵・・・紳士淑女に捕まっている!よく聞け、絶対に動くんじゃないぞ!この私が少しでも怪我を負ったら、会社はお前たちに責任を問う!」

 

パールマンがそう言い切ると、ゾロは無線を切り、パールマンの頭を乱暴に撫でた。

 

「よくやったな」

 

「おいアンビー。見ろよ、ゾロの兄貴の顔」

 

「映画に出てくる悪役の顔にそっくりだわ」

 

二人がそういうのも無理はない。

ゾロの顔はとってもとーっても笑顔なのだから。

 

「それにしてもあのオッサン、意外と役に立つな〜」

 

「しばらくは攻撃してこないはずよ。でも、私たちの計画は失敗に終わった」

 

「そうだよな・・・線路が無くなっちまったんだ。列車があったところで、住民たちを運び出すことはできねぇ!これが・・・絶体絶命のピンチってやつか!?」

 

「・・・へへっ・・・」

 

猫又は何故か笑い出していた。

 

「おいおい、こんな時によく笑ってられるな!」

 

「ううん、あんたのことを笑った訳じゃなくて。・・・これ、さっきたまたま見つけたんだ。・・・あたしの家族の、形見」

 

猫又は家族の形見であるペンダントを見せた。

 

「これって、写真?写ってるのはあんたと・・・赤牙組の『シルバーヘッド』?」

 

「実は、あんたたちを騙してたんだ。赤牙組に肩身を奪われたってのも、嘘。私は、昔カンバス通りの近くに住んでて、組に引き取られた孤児の一人なの」

 

そうして猫又は語り始める。

みんなで故郷を守ろうと誓い合ったこと。

組は日に日に酷くなって、組を抜け、故郷に戻らなかったこと。

邪兎屋へと復讐のためにデッドエンドホロウに 連れて行ったこと。

だけど、想像していた人物像とは随分と違い、子供を助け、ヴィジョンの陰謀を知った後も躊躇わず残ることを選んでくれたこと。

そして、『シルバーヘッド』が邪兎屋のせいで死んだんじゃないと知ったこと。

一通り語り終え、猫又はパールマンの襟元を引きずる。

 

「覚悟はできてる。あたしがヴィジョンと交渉してくる」

 

「おい待ちやがれ。あいつらがまともに取り合ってくれる保証はねぇだろ」

 

ゾロは猫又の腕を掴む。

 

「安心して。パールマンって切り札もあるし、あたしの出身が赤牙組だって知ったら、きっと交渉に応じてくれる・・・」

 

「おい!」

 

猫又はゾロの手を振り解き、パールマンを連れて列車から出る。

 

「依頼人さん!猫又!・・・オイ、戻って来い!」

 

ビリーはドアをガンガンと叩く。

 

「猫又!猫又ってば!アンビー、ビリー、早くドアを開けて!」

 

「ダメだ、ニコの親分!この車両、窓もドアも信じらんねぇほど頑丈だ。あのパールマンって奴が、わざわざ補強させたに違いねぇ!」

 

「お前ら、そこどけ!」

 

ゾロは手に持っていた『秋水』と『三代鬼徹』で列車のドアを斬り裂く。

だが、既に猫又の姿はない。

 

『Fairy、今すぐ猫又の位置を教えてくれ』

 

『依頼人の現在地を特定。進路によると、依頼人はおよそ30分後にホロウの出口に到着すると推測されます』

 

「ってことは、もう猫又を止める方法はないのか?」

 

「そうだとしても・・・住民の救出なんて大事、猫又一人に背負わせるわけにはいかない。ヴィジョンは人命を踏み躙るようなドクズなんだから、きっと一筋縄じゃいかないわ」

 

「だが、作戦は失敗した。今のおれたちじゃ、あいつらを助けることはできねぇ」

 

「あぁもう!一瞬で全員にエーテル適性をあげる方法があればいいのに!」

 

『見方を変える必要があるかもしれない。『山もしわれに来たらずば、われ山へ行くべし』という言葉を聞いたことはあるかい?』

 

『・・・なるほどね、流石はお兄ちゃん。危険は伴うけど、私たちに残された唯一の方法かも』

 

アキラとリンは作戦を思い付いたようだ。

 

「えっ?どういうこと?」

 

『実はね。カンバス通りと新エリー都、この二つは直線距離で結ぶ分には、そう遠くないの。デッドエンドホロウの拡張で道が阻まれたから、時間をかけてホロウの中を通らなきゃいけないってだけ。つまり、ホロウ自体を縮小させられたら、安全になった道から、住民たちも一気に脱出できるってわけ』

 

「そうか、その手があったか!エーテリアスを叩けばいいんだろ?俺たちにとっちゃ楽勝だな!」

 

「だけど、ホロウの規模を効率的に縮小させたいなら、エーテリアスを3000体ぐらい倒さないと」

 

その場にいる全員は、アンビーの推測に絶句した。

 

「それじゃ間に合わねぇだろ。もっと効率的な方法はねぇのか?」

 

『もちろんあるよ。『デッドエンドブッチャー』を倒す』

 

「よし分かった。アキラ、今すぐそいつの所に案内しろ」

 

『あぁ、もちろんさ』

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

ニコはゾロを『デッドエンドブッチャー』の元に案内しようとするアキラを止める。

 

「あぁ?今更何を躊躇ってるんだよ?おれたちには時間ねぇんだぞ?」

 

『そうだよニコ。それに、『デッドエンドブッチャー』を倒す作戦は考えてあるさ』

 

「えっ?そうなの?」

 

アキラは作戦を話す。

まず、ゾロを『デッドエンドブッチャー』の元に案内し、戦わせる。

ゾロを案内し終えたら、アキラはニコたちと一緒にヴィジョンが運んできたエーテル爆弾を『デッドエンドブッチャー』の元に持ってくる。

そして、『デッドエンドブッチャー』を爆殺する。

至ってシンプルで単純な作戦だ。

 

『じゃ、ここからは二手に別れよっか。お兄ちゃんはゾロを『デッドエンドブッチャー』の所まで案内して。ニコたちはここで待機して、お兄ちゃんが戻ってくるのを待って。お兄ちゃんが戻ってきたら、ありったけの爆薬を列車に積んでくれる?』

 

「えぇ、分かったわ。すぐに作戦開始よ!」

 

そうして、作戦が開始されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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