バトスピオリカ勢によるオリカ勢のための血塗られた(笑)歴史エッセイ 作:しくお
2019年10月。ここで初めて、この話に作者以外の人間が出てくる。マコト。最初の同志であり、最初の対戦相手だ。
出会いはカードショップだった。元々、同じ店によく出没するバトスピ仲間で、ショップ大会で何度か卓を挟んでいるうちに、なんとなく仲良くなった。相手が元からバトスピを知っている、という点が、後で地味に効いてくる。
ある日、作者は切り出した。
「こういうの作ってるんやけど、触ってみーひん?」
「ほな、まず公式と当ててみよか」
これが、約10ヶ月続いた完全ソロ時代の、終わりの合図だった。
第1話で、母数1の――プレイヤー一人、デッキ一個きりの、史上もっとも無意味なtier表を、作った。あれから半年。毎話の最後に貼ってきた「環境tier表」は、全部その自己採点である。緋想天だの心綺楼だのと多少賑やかになってはきたが、対戦相手は最初から最後まで、座る席を移動した自分だ。
その一人芝居が、マコトが椅子に座った瞬間に、ようやく終わる。
とはいえ、初戦はまだ"対戦"ですらなかった。
マコトの言う通り、まずは公式デッキと当てることになった。マコトの公式バトスピ対、作者のオリカ。さすがに当時の公式環境トップを持ち出したわけではないが、結果は見るまでもない。オリカはやはりオリカ、カードパワーで公式をかなり蹂躙した。自分で好き放題に強く刷ったカードが、市販のカードに負ける道理はない。「対戦が成立した」と思いきや、最初に成立したのは、ただの一方的な蹂躙である。フェアでも何でもなかった。
環境がちゃんと生まれるのは、その次だ。
マコトにもオリカのデッキを渡し、握ってもらって、何度か対戦した。マコトは特定の主戦デッキを決めず、毎回バラバラに握った。ここでようやく、オリカ対オリカ――条件の対等な対人戦が成立する。tierという言葉が、初めて意味を持ち始めた瞬間だ。環境は、この日に発生した。
この頃の記録は一切残っていなくて、細かい勝敗までは、正直もう覚えていないが、一つだけ、やけに鮮明に覚えている試合がある。
マコトが握ったのは、魔理沙。作者が握ったのは、心綺楼。
魔理沙側は、まず[導界者]魅魔を据える。これがやっかいだった。魅魔は導界者――創界神とそっくり同じ仕組みで作ってあり、バトスピのルール上、相手はそもそも普通のネクサスやスピリットとしては対象に取れない。
【転者:3】Lv1-Lv2『自分のアタックステップ開始時』
〔このネクサスのコア3個をボイドに置く〕このターンの間、このネクサスはLv1BP3000、Lv2BP6000、"『このスピリットのアタック時』このターンの間、相手のスピリット/アルティメット1体をBP-20000し、BPが0になったスピリット/アルティメットを破壊する。"を持つスピリットとしても扱い、導界者ネクサス/創界神ネクサス以外では破壊されない。
で、スピリットの姿になっていても、だ。剥がせないまま殴ってくる。心綺楼から見れば、どうやっても除去できない壁が、前へ出てくる状態だ。
能面・大飛出(驚)を手元に置けば、
手元にあるこのカードは、以下の効果を発揮する。
■お互いのデッキは破棄されない。
■BP6000以下のスピリット/アルティメットのアタックでは、自分のライフは1ターンに2以上減らない。
で、BP6000以下の攻撃のライフの減りは抑え込めるので、素の魅魔(BP3000か6000)の打点くらいは頭を押さえられる。だが、杖を合体すればそうではなくなる。
魔法使い達の杖 BSTH003-C31/レアリティ:C
色:黄/コスト:4/軽減:黄・赤・導/種類:ブレイヴ/系統:導話・導魔/シンボル:黄/収録:BSTH003 東方夢時空
Lv1:1コア/BP4000(合体中+4000)
──効果──
【合体条件:導魔&コスト5以上】
【スピリット合体中】『このスピリットのアタック時』
このスピリットの効果で相手のスピリット/アルティメットを破壊したとき、相手のライフのコア1個をリザーブに置く。
【合体条件:導魔&導界者ネクサス】
【ネクサス合体中】『自分のメインステップ』
自分が系統:「導魔」/「楽族」/「空牙」/「動器」を持つカードを召喚/配置するとき、その軽減シンボル赤/黄2つまでを満たす。
このカードは導界者ネクサスにも合体でき、さらにスピリット化する魅魔は、スピリットとしてのアタック時効果も使えるのである。
心綺楼は、魅魔に3コア貯まるごとに2点ずつ押し込まれていく。
主役のこころは、間に合わないか、間に合ってもライフが残り1とかなのである。さらに、こころがやっと前に出る頃、ここに罠が二重に仕掛けてある。
ひとつ。こころのアタックは、彗星「ブレイジングスター」
フラッシュ
このバトルの間、系統:「幻想」と「導魔」/「楽族」を持つ自分の黄のスピリット1体はブロックされない。または、ただちにアタックステップを終了する。これらの効果が相手の効果を受けなかったとき、ゲーム中に1回ずつしか使えない。
で「はい、アタックステップ終了」と打ち切られる。
ふたつ。心綺楼が殴った、まさにその直後――[夢時空]霧雨魔梨沙が、バーストで降ってくる。
[夢時空]霧雨 魔梨沙 BSTH003-X02/レアリティ:X
色:黄/コスト:12/軽減:黄×6
種類:スピリット/系統:幻想・導魔/シンボル:黄/収録:BSTH003 東方夢時空
Lv1:1コア/BP12000 Lv2:3コア/BP18000 Lv3:4コア/BP22000
──効果──
このカードの軽減シンボルは、赤としても扱う。
【バースト:相手のスピリット/アルティメットのアタック後】
このカードをコストを支払わずに召喚する。
Lv1-Lv2-Lv3
このスピリットは疲労状態でブロックでき、自分の系統:「導魔」を持つ導界者ネクサスがある間、相手の効果を受けない。
Lv2-Lv3『このスピリットのアタック/ブロック時』
このターンの間、このスピリットとバトルしていない相手のスピリット/アルティメット2体をBP-10000し、BPが0になった相手のスピリット/アルティメットを破壊する。
素出しならコスト12の大物が、相手の攻撃に反応してタダで飛び出してくるのだ。魅魔がいる間、夢魔梨沙は相手の効果を受けない。さらに魔法使い達の杖まで担ぐとBPは26000だ。
だが、まだその夢魔梨沙は、対抗できる。
獅子(歓喜)
フラッシュ【アクセル:コスト5<赤><赤><赤><神>(この効果は手札から使用できる)】
相手のスピリット/アルティメット1体をデッキの下に戻す。『相手のアタックステップ』のとき、この効果は「フィールドに残る」効果以外では防げない。
こいつは、相手のアタックステップ中なら「フィールドに残る」系以外のあらゆる防御を貫通して、相手のスピリットをデッキの下へ叩き返す除去だ。この貫通力なら、魅魔がいることで、「受けない」と守られた夢魔梨沙ですら、無理やり押し返せる。盾は、剥がせるのだ。
問題は、その盾を配っている本人――魅魔のほうである。くどいようだが、こいつは対象に取れない。獅子がどれだけ強引でも、対象にできないものは戻しようがない。夢魔梨沙を押し返しても押し返しても、魅魔は、最後まで盤上に居座る。
結局、心綺楼はこの盤面を崩し切れない。アタッカーは剥がせず、殴り返せばブレイジングスターで止められ、その反撃がまた夢魔梨沙を呼ぶ。あとは魅魔で残り1点をもぎ取られて終わりだ。
そして、ここがいちばん間抜けな点なのだが――この試合、デッキ名を背負った本命、6コストの霧雨魔理沙は、一度も活躍しなかった。魔理沙の真骨頂は、相手が並べた生き物を薙ぎ払う、あのマスタースパークである。ところが心綺楼は、こころと手元の能面で戦う、スピリットを横に並べないデッキ。薙ぎ払うべき盤面が、そもそも相手に無い。看板の魔理沙が、出番のないまま試合が終わる。
自分で作ったデッキが、自分で作った別のデッキに轢かれる。しかも勝った側のエースは、何もしていない。
とはいえ、その自己採点、案外あなどれない。第1話からずっと一人で付けてきた環境tier表は、二人で回してみても、大枠はちゃんと当たっていたのである。
念のため、二人になる直前の、作者ひとりの自己評価を並べておく。
【2019年8〜9月/ソロ期 最終=作者ひとりの自己評価】
Tier1:緋想天
Tier2:心綺楼/魔理沙
頂点の緋想天は、二人で回しても揺るがなかった。一人で延々シャドーボクシングをしていた割に、作者の目は、案外確かだったのだ。
ただ、Tier2にこう書いた「心綺楼/魔理沙」――この並びだけは、さっきの一戦であっさり裏返った。魔理沙のほうが、上だった。一人で完璧に見切れていたわけではない。自分で作ったデッキ同士の本当の力関係は、他人の手に握られて、初めて綺麗に見えるものらしい。一人の見立ては、対戦相手ができた途端、こうして少しずつ書き換えられていく。
とはいえ、ここはまだ助走である。
二人で本格的に、何度も対戦を重ねるようになったのも、テキストが強すぎる弱すぎるで言い合いが始まったのも、だいたいは次のデッキ――風神録が出てからだった。
ともあれ、卓に二人目の手がついた。相手ができたことで、作者のクリエイト欲はさらに加速していく。巫女に喧嘩を売った天人の次に呼び出すのは、山の上の神々である。
【2019年10月 環境Tier表】
Tier1:緋想天
Tier2:魔理沙/心綺楼
次回:風神録