TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい! 作:megajoy
叶穂ちゃんが変態幼女に心に隠した中二病ワードを言い当てられたよ。
唐突に、真理亜の口から出た言葉が、
叶穂は思わず、胸元の寝衣に掛けていた手を引っ込め、真理亜の重ねてきた手を、放してしまう。
「……お、お嬢様、
普段は沈着冷静な叶穂だったが、動揺して、そう口走ってしまった。
他の何を言われても、
しかし──────〈歯車〉。
その言葉、その悩みは、母にも、双子の姉にも、
打ち明けたことがないというのに。
真実、叶穂の心の中を見透かしてでもいなければ、
出てくるはずのない言葉であった。
真理亜は、申し訳なさそうな顔をして、叶穂に謝ってくる。
「ごめんなさい。……わたくしは、なんでもはわからないけれど、
わたくしに関わることだけ、わかっていることがあるのです────
叶穂は、伝承に語られる〈聖女〉の〈力〉のことを思い出していた。
〈聖女〉は、すべての物事の本質を、霊感で悟り、
理解してしまう〈力〉を備えるという………。
〈聖女〉、やはり、このお嬢様が─────!?
「………………わたくしも、〈歯車〉のようなものなのです」
「え────?」
「………わたくしには、果たさなければいけないこと────使命……いいえ、
宿願といっていいものがあります。──────それは、他のひとには、
決して理解することができない、苦痛と、苦難に
わたくしは、その宿願を、絶対に果たさなければならないのです。
そうでなければ、この世界にわたくしが生まれた意味が、ないのです」
おお、その言葉、その覚悟。
これらが、五歳の
果たさなければならない、宿願。
それはきっと、伝承にある、命を賭して、邪悪なる〈魔〉を討つという、
〈聖女〉の責務なのであろう。
叶穂は、身じろぎすることもできず、真理亜の姿に、見入らされていた。
「────わたくしは、そのためだけに、動き続ける〈歯車〉………でも、
この身をすべて投げ打っても、その宿願が果たせるかどうかは、
わからない──────怖いのです。見通すことのできない、未来が……………」
真理亜は、その微笑を
その表情に、叶穂は、真理亜が初めて、
覗かせたように見えた。
ああ、と、叶穂は、理解してしまう。
〈聖女〉という大いなる〈力〉と責務を背負わされる、恐怖と不安。
まだ幼いにも関わらず、彼女は、その小さな体でそれらを受け止め、
なんという
それに比べ、自分の悩みの、なんとちっぽけで下らないものだったことか、
と、思い知らされてしまう。
〈歯車〉、自分たちふたりは、同じようなもの、と、真理亜は言った。
まったく違う─────〈歯車〉だとしても、彼女、真理亜は、
世界を動かす規模の〈歯車〉ではないか。
「本当に、本当に、怖くて怖くて
す……と、真理亜は、叶穂のほうへ、幼い手を差し出して見せる。
叶穂は、知らず、そうすることが自然であるかのごとく、その小さな手を、両手で握っていた。
「
安心して、未来に立ち向かえる気がするのです───────」
「わ、私が……?」
叶穂は、真理亜の言葉に、かつてないときめきと、高鳴りを胸に覚える。
「ええ。わたくしの未来には、
「………出会ったばかりで、突然、こんなことを言われても
困るでしょう────────。けれど、叶穂さん。
もし、
一生、わたくしのそばに、ずっといてくれる、と────」
「お約束致します」
即答し、叶穂は、真理亜の手を、両手で握りしめたまま、ひざまずいた。
迷いは、
だが、実際の彼女は、その恐怖に
まだ見ぬ未来に負けまいと必死に手をのばす、普通の女の子だったのである。
その子が、ただそばにいてほしい、と、自分の支えを、必要としているのだ。
どうしてその手を、
叶穂の即断に、真理亜が、戸惑ったように、口を開いてきた。
「……いいのですか? そのように簡単に答えてしまって────
この〈約束〉は、
これは、子供の、身勝手な物言いなのかもしれませんよ……?」
「────なら、私の方から、約束させてくださいませ」
言うなり、叶穂は、右手の小指を、真理亜のそれに絡める。
「私、
お嬢様と共に生き、お嬢様を支え続けることをここに誓います……!」
「ああ────! ありがとうございます、叶穂さん。
わたくし、なんと御礼を言ったら……!」
「お嬢様。私のことは、叶穂、と呼び捨てになさってください。
敬語も不要です。たった今よりこの叶穂は、お嬢様のしもべなのですから」
叶穂の強い要請に、真理亜は、困ったような笑みを浮かべた。
「ありがとう、叶穂。────でも、しもべ、というのは、わたくし、
よくない響きに聞こえて、嫌だわ。………“
叶穂、これからずっと、わたくしの
そう柔らかな願いを口にする真理亜に、叶穂は感激し、
絡めた小指に、優しく力をこめる。
「承知いたしました。重ねてお約束致します。
叶穂は一生、真理亜お嬢様の
「嬉しい────! ありがとう、叶穂。絶対に、絶対、〈約束〉よ?」
「はい、お嬢様。〈約束〉です……!」
心から
その瞳から、涙があふれ出て、頬を伝う。
それを見た真理亜が、驚き慌てた。
「叶穂……!? どうして泣くの!?
や、やっぱりわたくしと〈約束〉するのは、嫌なの!?」
「────違います。違うのです、お嬢様。
これは、うれし涙です………お嬢様に出会えて、
このようにお約束させていただいて─────叶穂は、嬉しくて、
泣いているのでございます」
真理亜は一瞬、顔をきょとんとさせたあと、花
「それは、わたくしもよ、叶穂。
〈約束〉することができて、本当に、嬉しいわ」
叶穂は、その真理亜の言葉に、胸を詰まらせた。
それから、〈約束〉の指切りをしていた真理亜の手を両手で包み、
拝むような形で自分の額に当て、目を閉じ、嗚咽《おえつ》交じりに、
感謝の言葉をのどから絞り出す。
「……お嬢様─────ありがとう、ございます……………っ」
「ありがとうを言うのは、わたくしのほうなのよ?
叶穂………これから、よろしくね?」
「はい。こちらこそ、よろしくお願い申し上げます、お嬢様─────!」
叶穂は、空虚であった心の内が、満たされていくのを感じていた。
それは、これまで生きてきた中で、一番の幸福感。
ああ─────そうか、私は、この
生まれてきたのだ。
〈歯車〉、お嬢様が大いなる〈歯車〉であろうとするならば、
この身も、〈歯車〉となろう。
この命あるかぎり、お嬢様のそばにあり続け、支え続けるのだ。
そして、〈聖女〉たるこの御方の運命における
ことごとく
真理亜の小さな手を握りながら、そう決意する叶穂。
その心に、
代わりに、叶穂の心の中では、
熱く、心地良い風が吹いていた………………………………………。
お嬢様に出会って、生き甲斐を見つけるメイドさん……。
イイハナシダナー(;∀;)