TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい! 作:megajoy
真理亜視点との差異でシリアスなのにお笑いが出るかな、と(^ω^;)
真理亜が
なにもかもが好調に感じられていた。
当主である美摩の
本事業である〈
深刻な損害と死傷者は出ていない。
美摩には、あたかも、〈聖女〉である真理亜が、
幸運を運んできてくれたようにさえ、思えている。
いや、厳密には、真理亜が〈聖女〉であると、確定したわけではない。
だが、美摩にとっては、今や真理亜は、〈聖女〉以上の存在であった。
最愛の姉の遺児であり、娘である兎萌を、
呪い同然の〈
そしてその身に宿る、途方もない魔力量は、
新たな未来を築き上げていく希望そのものに見える。
兎萌に付けている女性の家庭教師に、真理亜の学力を
興奮を隠しきれぬ様子で、真理亜の優秀さを
世辞を嫌うこの家庭教師がそこまで言うのなら、真理亜の学力は、幼児なりに、
相当なものなのであろう。
亡き姉の教育の
揃って真理亜を絶賛してくる。
『子供とは思えぬ落ち着きと、丁寧な所作が素晴らしい。
将来が楽しみでなりません』
真理亜への
しかし同時に、頭の片隅で、不安が鎌首をもたげてしまう。
〈聖女〉と呼ばれるに
その命を
美摩は〈聖女〉の伝承と共に、
『アーサー王伝説』一大
思い出さずにはおれなかった。
─────聖遺物である〈聖杯〉を手に入れるため、一斉に探求の旅に出る、
アーサー王の円卓の騎士たち。
そのほとんどの騎士が
ひとりの騎士が、〈聖杯〉を見出すことに成功する。
その名は、ガラハド。
円卓の騎士において、〈
〈
アーサー王からも“世界最高の騎士”と
……………完全無欠と言うしかない、そのガラハドだけが、
〈聖杯〉を見出すことを、確かに
けれども、そこまで。
この地上に、奇跡と神秘の器である〈聖杯〉を
代償が必要だったのである。
それは、純粋で善良なる人間の魂。
つまり、ガラハドの魂そのものであった。
なんという矛盾であろう。
〈聖杯〉を手に入れるには、〈聖杯〉を手にするにふさわしい人間の魂が
必要なのだ。
ガラハドは、〈聖杯〉を手にした直後、神の世界へと召され、
主を失った〈聖杯〉もまた、世界から消え失せる。
“聖杯探求”は、聖遺物の消失と、世界最高の騎士の死という、
悲劇で締めくくられるのだ。
美摩は、真理亜と、騎士ガラハドを重ねて見てしまう。
異常なほどの膨大な魔力量に、魔性の美貌、そして、幼児とは思えぬ、
精神の完熟性。
“完全無欠の存在”───────大偉業を成すためだけにある命…………………。
そんなことを思い浮かべてしまった自分に、寒気を覚える美摩。
そうはならない、いや、させてなるものか。
姉の
させたりはしない。
姉に代って、自分が真理亜を守るのだ。
美摩はそう堅く決意し、おのれの〈
また、
現状戦力の実態と現場での問題点等の報告を命令した。
さらに向上させるためである。
………〈聖女〉に頼りきりならぬ、精鋭〈
作り上げねばならない──────────。
たとえ、阿鼻叫喚の地獄絵図がごとき大恐慌の
悠然と、人々を守り救う最強の軍団を………!
そうだ、〈聖女〉ひとりに、すべてを背負わせるような未来など、
あってはならないのだ。
真理亜は、おそらく、今代で世界最強の〈
その実力に比肩しうる者が、果たしてこの先、いるかどうか。
そんな真理亜を守るなどと、保護者の立場にある自分であっても、
おこがましい考えなのかもしれない。
けれども、もはや、理屈ではない。
守ることはできなくとも、真理亜を助け、支えなければならない。
自分ひとりだけでは、叶わぬであろう。
が、
真理亜が邪悪な〈魔〉との戦いで命を落とすという、
最悪の〈運命〉に
─────真理亜自身は、未来において、
強大な〈魔〉と戦う〈運命〉にあることを〈知って〉いる。
美摩は、真理亜の専属メイドになることを叶穂に命じたその日のうちに、
叶穂から、そう報告を受けていた。
本当は真理亜も、その〈運命〉に対して、
恐怖と不安を覚えている、と。
真理亜はまだ五歳、当然のことだ、と、美摩は思う。
美摩は、真理亜が
自分ではなく叶穂にだけ明かしたことに、叔母として、少なからず傷ついていた。
けれど、家族だからこそ言えなかったのだろう、と、真理亜の心情を
真理亜の母親である真魅《まみ》は、
その姉の娘が、
〈魔〉と戦い命を落とすかもしれない〈運命〉にある………………。
肉親を
そんなことを告げられるだろうか?
────言えるはずがない。
真理亜はきっと、
耐えるつもりでいたのだ。
しかし、これから側仕えになるという叶穂にだけは、つい、
本音をもらしてしまったのだろう。
思えば、幼い頃の自分も、当時は
姉の真魅には話せぬいろんな悩み事や不満を相談したものだ────。
美摩は、幼き日のことを、懐かしむ。
最愛の姉がいて、漱祗がいて────姉と共に、
立派な〈
だが、その日々、その夢は、突然、すべて奪われた。
真理亜から姉の手紙を渡された、今だからわかる。
自分が襲われ、おぞましい儀式でその身を
母のように精神を壊してしまっていたかもしれない──────。
過去の記憶に体を震わせて、美摩は、真理亜と、娘である兎萌の未来を想う。
諸悪の根源であるあの老翁は、取り除いた。
子供たちには、姉と自分が望んで得られなかった未来を、
そのためにも、ふたりを、超一流の〈
そう思い、基礎訓練である魔力操作から、
ふたりを厳しく指導するつもりでいたのだが──────。
訓練の初日、美摩は、初めて真理亜と出会った日と同様、
再びその破格の才能に
魔力を光に変換するのみならず、その光に様々な色を付与させ、
自在に操る技量まで、真理亜は、既に習得していたのだ。
「おねえさま、すごいですっ!」
魔力を操作できるようになり、一緒に訓練を始めた兎萌は、
無邪気に真理亜を賞賛している。
────凄い、なんてものではない。
真理亜の魔力操作技術は、現時点で、既に一流〈
この鮮やかなまでの魔力光操作は、姉の教えが優秀だった、
ということだけでは片付けられない。
美摩は、真理亜の才能に、恐怖すら覚えてしまう。
魔力光が視認しやすいよう、薄闇の中で訓練は行われているのだが、
真理亜の魔力光がその虚空に描き出すのは、星々の舞踏会とでも言うべき、
もはや一種の芸術の域にあるものであった。
美摩ほどの〈
その危険性を忘れ、見惚れてしまうほどに。
「……っ! 真理亜っ! それ以上は危ないわっ!
今すぐ操作を
我に返った美摩は、慌てて制止の声を掛ける。
「────大丈夫です、お姉様。まだ────まだ、やれます……!」
真理亜はなおも、魔力光の操作を続けながら、苦しげな声でそう応えてきた。
普段は聞き分けの良い真理亜のその返答に、美摩は、違和感を覚え、
真理亜の顔を見る。
──────
魔力光を生じさせるだけでも、幼児には大変な作業だ。
それを長時間持続させ、鮮やかな
その疲労は、幼児にとっては
それなのに、口元に笑みとは─────!?
美摩は、はっと、ひとつの結論に達する。
真理亜は、精神集中のしすぎで、通常の意識が薄れた
いわゆる、
その考えに至るや否や、美摩は、真理亜の小さな両肩に、手を掛けた。
そして、真理亜の意識を呼び戻すべく、激しく揺さぶろうとした、その瞬間である。
真理亜の両膝が、カクン、と折れ、糸の切れた操り人形のように、
その体が崩れ落ちそうになった。
訓練場の床に倒れ伏す前に、美摩が、危うく真理亜を抱き止める。
「真理亜っっっ!!!」
「おねえさまっっっ!?」
美摩と兎萌の叫びが、訓練場内に、
重なり響き渡った………………………………………………。
ガラハドのエピは諸説あります()
美摩が言ってるガラハド装備は完全捏造です(^∀^;)