TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい! 作:megajoy
「踊る」シリーズ、なんだかんだ楽しみです(・∀・)
ゴポ………ゴポ………………
幼い女の子────
霧絵は一糸まとわぬ姿で、その体に何十本もの薬液導入管を
緑色の薬液で満たされた、巨大な、水槽めいた装置に入れられている。
────いたい、いたい………くるしい、たすけて、だれか────────
霧絵は、ぼんやりとした意識の中で、繰り返し、訴え続けていた。
だが、それらの言葉は、声になって、外に伝わることはない。
口と鼻は、下あごから、呼吸のための酸素マスクで覆われていたし、その体は、
薬剤によって、動く自由をすべて奪われていたからである。
ゴポ………ゴポ………………
そして、そもそも、声を発することができたとしても、装置の中に満たされた
薬液と、分厚いガラスに隔てられた外界に、言葉が届くわけがなかった。
さらに──────届いたとしても、その思いを解する者は、いない。
代わりに、医師のような白衣をまとい、狂喜の叫び声を上げる男が、
暗い研究室の中に、ひとり、いるだけである。
「───いいぞ、いいぞぉ……! 霧絵ぇ……! おまえは、この装置で、
地上最高の魔力を手に入れるのだっ………!」
狂気に満ちた両眼で、装置の中の霧絵を見つめる男。
名は、
霧絵の、父親であった。
「私のこの装置さえあれば、誰でも膨大な魔力を手に入れることができる───! 〈
私を追放した
海蔵は、自分が勝利した未来を思い浮かべ、よだれをまき散らしながら哄笑する。
私の研究は、間違っていない。
正しいのは、私だ、私なのだ─────────!
そう……この男、今戸海蔵は、科学力で人間の魔力を増大させることができると、
自分が考え出した理論を、
その狂信による暴走の末、実の娘を実験台に使う、というこの暴挙に至っていた。
「さあぁ───霧絵ぇ……今日はおまえの誕生日───っ!
まさに生まれ変わる日として、ふさわしい日だっ……!
父のこの手で、新たに生まれ変われぇぇぇぇぇ────っっっ!!!」
装置を起動させるレバーに、海蔵の手が、今まさにのばされんとする。
──────その時であった。
「そこまでよっっっ!!!」
「っ!? だっ、誰だっ!? ぐぁっ!?」
突如、響き渡った声に、海蔵が振り返るや、閃光が走り、海蔵の体は、
強い衝撃を受けて、大きく宙を舞う。
魔力の塊を、衝撃エネルギー弾として撃ち出す初歩魔法───〈
攻撃であった。
海蔵はそのまま、装置の強化ガラス面に、その身を叩きつけられたあと、
激しい勢いで床に落下する。
「………本当に、実の娘を、実験台に使おうとしてたのね───────」
床に落ちて苦痛の
声の主は、女性である。
〈
いつものビジネススーツ姿ではなく、肌を多く露出させ、体の輪郭が浮き出る、
扇情的な銀色のドレス状スーツに身を包んでいる。
五歳の子供を持つ母親とは思えぬ、
この世界での、〈
その美摩の後ろから、研究室の中に、女性警察官たちが、
次々になだれ込んでくる。
そして床に転がっている海蔵を取り押さえ、その両手を後ろ手にして、
手錠をかけた。
「今戸海蔵! 未成年者
逮捕する!」
「……! ば、馬鹿なっ! な、何故、この場所がわかったのだっ!?
は、放せっ! 私を放して実験を続けさせろっ! でなければ、貴様らは
一生後悔することになるぞっ!?」
海蔵は、床に押さえつけられながら、もがき、叫ぶ。
そんな海蔵を冷ややかに見つめて、美摩が、言い放った。
「おまえの研究は大失敗よ。────危うく、娘の魔力生成力を、潰すところ
だったわ」
「な……」
海蔵は、数秒、思考を硬直させる。
それから、憤怒に顔を赤く染めて、わめき散らしてきた。
「なにを抜かすかこの女ァーっ! わっ、私の研究がっ! 私の理論がっ!
間違っているはずがっ! 実験が! 失敗するわけがないだろうがぁーっ!
この、ドぐさrぶべぇっ!?」
女性警察官が海蔵の顔を打ちすえたので、美摩への
美摩は、そんな海蔵へ近づき、冷徹に、真実を告げた。
「確かに、おまえのこの装置は、対象の持ちうる魔力を、限界以上に増大させる
ことができる。……でもね、それは肉体の魔力生成力を、回復不能なまでに
無理矢理絞り上げ、死滅させる勢いで魔力を発生させることで、一時的に、
魔力量を増大させるだけ。そんな自殺行為に等しい
体に施せばどうなるか。──────聡明な頭脳の持ち主なら、わかるわよね?」
美摩から皮肉げに締めくくられ、海蔵の顔色が、怒りの赤から、
絶望の青に変わる。
「そ、そんな馬鹿な……っ! 私の、私の研究が───理論が……っ!」
「………これ以上話しても無駄のようね。あとは、刑務所の中で、好きなだけ
自分の理論を検証するがいいわ。────連行しなさい」
美摩の命令で、海蔵は、女性警察官らに引き立てられていった。
もはや海蔵は完全に意気消沈しており、暴れる気配は、まるでない。
その口からは、ブツブツと未練がましく何事かひとりごとがもれるだけで、
おとなしく、研究室から連れ出されていく。
そのうちにも、
霧絵を救出しはじめていた。
「────美摩お姉様? もう、よろしいでしょうか……?」
そこへ、透き通るような、澄んだ声が響く。
「真理亜。ええ、もう、大丈夫よ」
美摩の返答のあと、その場に、
メイド姿の叶穂に付き添われた、真理亜である。
「なんて
真理亜は、装置から助け出されようとしている霧絵の姿を認め、両手を口に
当てた。
そして、美摩に、懇願してくる。
「美摩お姉様! 霧絵さんへの治癒魔法、どうか、わたくしに
掛けさせてください……!」
「う……」
幼い女の子────
ピンク色の照明で照らされた、見知らぬ天井。
舞は、困惑した。
ここ、どこ……?
いつのまに、ねちゃったんだっけ─────?
寝る前の記憶を、思い出そうとする舞。
おたんじょうびだから、パパと、おくるまでドライブしてて───。
すごくきれいなホテルのレストランでおしょくじして、それで……あれ……?
舞は、そこから先の記憶がないことに思い至る。
ガチャリ……
「え────」
そこでようやく、舞は、自分がどんな異常な状態にいるか、気づいた。
服は、舞のものではない、純白の、フリル付キッズドレスを着せられ、ベッドに
寝かされている。
両手を頭上に上げる格好で、舞の両手首は、鎖付の拘束具がはめられ、
ベッドの
「なに、なんで……?」
舞は起き上がろうとしたが、拘束具と鎖が、それを許さない。
不安と恐怖で、舞の心がいっぱいになる。
ギィィィィィィ────────
「ひっ────」
扉が開く音がしたほうに目を向け、舞は、
下着一枚しか履いていない、全裸同然の、禿頭で肥満体の男が、部屋に入ってきた
からである。
「んんゥ~? 舞ちャァ~ん、起きたみたいだねェ~………?」
男……
「───やっ……パパっ! パパァ────っ! たすけてーっ!!!」
舞は叫んで、姿の見えぬ父親に、助けを求める。
そんな舞を、駿府は、嘲り笑った。
「無駄だよォ~、舞ちャァ~ん。キミはそのパパに、売られちゃったんだから
ねェ~! かわいそうにねェ~!」
「え……?」
“パパに、売られた”
舞は、駿府が言った言葉の意味を、理解しかねる。
父親が、自分を売る? 何故?
そんなことが、ありうるのか?
幼い舞にとっては、この状況も、駿府の言っていることも、なにもかもが、
理解を超えた事態であった。
「ああァ~、舞ちャんは、知らなかったんだねェ~。キミのパパはねェ~、
お仕事に使うハズのお金を、自分のためだけに、使いこんじゃったんだよォ~?
それで、お金を増やそうとして、逆に失敗ィっ! 大損失ゥっ! それで、ボクに
どうにかしてほしい、って、泣きついてきたんだァ~。『娘を好きにしていい』、
って言って、ねェ~……!」
ギシリ、と、駿府は、ベッドに上がってくる。
「ひっ……!」
舞は、再び、恐怖に声をもらした。
駿府の言っていることはよくわからなかったが、自分に、よからぬことをしようと
していることだけは、明白だったからである。
「あ……い、いや────っ!」
舞は逃れようとして、ガチャガチャと両手を激しく動かすが、拘束具が
外れることはない。
その様子が
「大丈夫、だいじょ~ぶだよォ~? なんにも、怖いことなんかないからねェ~。
むしろ、気持ちイイくらいさァ~………」
「やだっ! やだぁっ────っ!」
「ああ、そうだァ……舞ちャんは今日、お誕生日だったねェ~。おめでとう、
舞ちャ~ん♪ ハッピ・バァ~スデイ・ディア・舞ちャ~ん♪ ボクがキミを、
これからずっと、可愛がってあげるからねェ~♪」
グフフと、駿府がよだれをたらし、舞の幼い体に、今まさにのしかからんとする。
──────その時であった。
「そこまでよっっっ!!!」
「ブヒィっ!? だっ、誰だっ!? ぐァっ!?」
突如、響き渡った声に、駿府が振り返るや、閃光が走り、駿府の首と四肢に、
光の鎖が巻き付く。
魔力で形成された鎖により、対象を拘束する初歩魔法───〈
駿府はそのまま、魔力の鎖に勢いよく後方へ引きずられ、ベッドの下へ、
叩き落される。
「………こんな小さな子供に手を出そうだなんて。
床に落ちて苦痛の
声の主は、女性である。
〈
〈
その美摩の後ろから、研究室の中に、女性警察官たちが、
次々になだれ込んできた。
そして魔力の鎖で拘束されている駿府を組み伏せて、その両手を後ろ手にして、
手錠をかける。
「駿府栄太! 人身売買罪、及び、不同意わいせつ罪他諸々の罪で逮捕する!」
「ブヒィっ!? こ、このボクに、こんな真似をしてタダで済むと思うなよっ!?
ボクは、政治家や警察の大幹部に、大勢知り合いがいるんだっ!
駿府は、組み伏せられながらも、暴れ、叫んだ。
そんな駿府に、
「……“
────自分が敵に回したのが誰なのか、これから、思い知るがいいわ」
「なにィ……!?」
駿府の心の中が、怒り一色で染め上がった。
女など権力と金でどうにでもなる、という、これまでの思い上がりが、
この期に及んで、駿府の無駄な
「女がァっ! ボクを誰だと思っているんだァ~っ!? 政財界にこの人アリと
あとで、思い知rブヒィっ!?」
女性警察官が駿府の顔を殴りつけたので、美摩への
続かなかった。
美摩は、そんな駿府へ近づき、無慈悲に、事実を告げる。
「おまえの所有する島と屋敷。今頃、警察の捜査が入っているわ。───これまで
随分と、好き勝手をしてきたようね。金に
裏帳簿は、既に押さえている。嬉しいでしょう? 仲の良いお友達と一緒に、
刑務所に行けるんだから。───地獄へ道連れというのが、正しいのかしらね?」
美摩から突き付けられた
「な……ボクの島のことまで───!? い、いったい、どうやって……!?」
「────おまえが知る必要はない。せいぜい、刑務所の中で、自分の落ち度を
悩み続けるがいいわ。…………連行して」
美摩の命令により、駿府は、女性警察官らに引き立てられていく。
現実を受け止め切れていないのか、駿府の表情は、呆然自失といったような、
魂が抜け落ちてしまったかのようなものだった。
抵抗する気力もすっかり消え失せたようで、女性警官らに、引きずられるように
して、部屋から連れ出されていく。
そのうちにも、
拘束を解きはじめていた。
「…………美摩お姉様。もう、終わったでしょうか───?」
そこに、曇りのない、清らかな声が響き渡る。
「真理亜。ええ、全部、片付いたわ」
美摩の返答に、メイド姿の叶穂を
「良かった───舞さんは、無事なのですね」
「大丈夫よ。傷ひとつ付けられていないわ……あなたのおかげよ、真理亜」
拘束を解かれ、医療班に介抱される舞を見ながら、ふたりは、そう言葉を交わす。
「───けれど、心に受けた衝撃は、
自身のおぞましい記憶を思い出し、美摩は、つい、短く本音をもらしてしまった。
それを聞いた真理亜が、その顔を、辛そうに曇らせる。
そして、美摩に、懇願してきた。
「……美摩お姉様。舞さんの心を落ち着かせるための治癒魔法、わたくしに
掛けさせてください────!」
STOP!児童虐待!
子供たちが健やかに育てる世界になりますように……( ˘ω˘ ) 人