TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい! 作:megajoy
世界各国に、昔からそれぞれ〈聖女〉はいたのです、たぶん。
よく考えてませんけど(・∀・)
〈聖誕祭〉の鑑定儀式を終えたその後。
二月十四日。
この世界で、この日は、古代西洋の〈聖女〉、ステラシア・ヴァレンタインが、
愛する女性に告白した時、甘い菓子を贈ったことにちなんで、女性が、
“ヴァレンタイン・デー”となっている。
日本でもこの日は、定番の祭日として、定着していた。
全国の街で、女性同士のカップルたちが、それぞれの恋愛を謳歌している。
その日の、
ささやかなパーティーが開かれていた。
“ささやか”と言っても、そこは大貴族も同然の
美摩、真理亜、兎萌の三人は、正装し、さながら高級レストランでの食事会の
ような
これは真理亜と兎萌、幼いふたりが、社交界におけるパーティや食事会での
振る舞いを学ぶ、予行練習も兼ねているのだった。
しかし、今夜のこの場に、習い事のテストのような、厳しい雰囲気はない。
真理亜が屋敷にやってくるまでにはなかった、
メインディッシュが済み、デザートが運びこまれるというタイミングで、真理亜と
兎萌が席を離れる。
そして、配膳スタッフのそばに行き、一緒に、デザートの乗ったワゴンを
戻ってきた。
何事かと、美摩は、
「美摩お姉様、わたくしと、兎萌ちゃんで、料理長に手伝ってもらって、
チョコレートを作ったのです。───どうぞ、お召し上がりください」
「お召しあがりください、お母さま」
にこやかに笑う真理亜と、緊張とはにかみがないまぜになった顔の兎萌が、
美摩に、小さなサプライズを捧げてきた。
差し出されてきた皿の上には、ハート型の、ナッツとドライフルーツがまぶされた
チョコレートが乗せられている。
「「ハッピー・ヴァレンタイン」」
真理亜と兎萌が、声を揃えて、美摩に、それぞれ、折りたたまれて封のされた
カードを差し出してきた。
美摩は、それらがチョコレートと共に贈られる、自分宛てのメッセージ・カード
であることをすぐに察して、顔をほころばせる。
「ハッピー・ヴァレンタイン。……ふたりとも、ありがとう。嬉しいわ」
カードを受け取った美摩の言葉に、真理亜と兎萌は、顔を見合わせて、
笑いあった。
ふたりはそのまま、ワゴンから、ラッピングされた小箱を取り出していく。
「メイド長と、叶夜と叶穂のぶんも作ったの。あとで食べてね。はい、メイド長。
いつもありがとう。そして、いつも、お世話してくれて、ありがとう、
「いつもありがとう、メイド長。叶夜も、叶穂も、いつも、お世話してくれて、
ありがとう」
「「ハッピー・ヴァレンタイン」」
チョコレートの入った小箱を、そばに控えている漱祗と、叶夜、叶穂らに、
手渡したあとあと、ふたりは、再び声を揃えて、言った。
「ありがとうございます、真理亜お嬢様……! 家宝に致します───!」
「いやだわ、叶穂。すぐに食べてくれないと、だめよ?」
「はい! 宝石を血肉にするつもりで、食べさせていただきます!」
「叶穂ったら。おおげさね」
感激のあまり、息を荒くする叶穂に、苦笑する真理亜。
「叶夜も、すぐに食べてね?」
「はい。のちほど、食べさせていただきますね」
真理亜たちのやりとりを横に、兎萌と叶夜も、同じように笑い合う。
「真理亜、兎萌。こちらにいらっしゃい」
真理亜と兎萌が三人にチョコレートを渡し終えたあと、美摩が、そう呼びかけた。
ふたりが美摩の下にやってくると、漱祗が、美摩に向けて、ベルベット生地で
あつらえられた箱を差し出してくる。
漱祗の手で、箱のふたが開けられると、そこには、ふたつのペンダントが、
収められていた。
円形の、硬貨ほどの大きさで、鳳凰を
あしらわれている。
「───この春から、ふたりとも、
少し早いけれど、これは、そのお祝いの品よ。……我が
〈
子供たちも、多数、入学してくるわ。あなたたちふたりは、その子供たちから、
高みにあるだけの能力と、振る舞いを求められるでしょう」
そこで一度言葉を切り、ふたりの目を見たあと、美摩は、話を続けた。
「……
これは、その
持つにふさわしい生き方をするように。───わかりましたね?」
「「はいっ」」
ふたりの返事に、満足したようにうなずき、美摩は、口元に笑みを浮かべる。
「よろしい。……このペンダントは、お守りでもあるの。今日から、
肌身離さず、首に掛けておきなさい。さあ、もっとこっちに来て」
美摩は、そう言ってふたりをさらにそばへと呼び寄せると、手ずから、ふたりの
首にそれぞれペンダントを掛けてやった。
「お姉さま、おそろいですね!」
「ふふっ、そうね」
首に掛けてもらったペンダントを見せ合い、無邪気に笑い合うふたり。
その光景に、美摩はまた、
願わくば、このふたりが、未来でもこうして笑い合っているように──────。
美摩は、心の内で、ひとり密かにそう祈った。
その時である。
真理亜が、突然、弾かれたように、周囲を見渡しだしたではないか。
それに数瞬遅れて、美摩も、異変を感じ取る。
────屋敷内で、なにか、
そのことに、漱祗、叶夜、叶穂の三人も気づき、警戒しはじめる。
兎萌は、室内の異様な雰囲気を感じ取ってから、ようやく、屋敷の異変に気付き、
「…………美摩お姉様。なにか───よくない
入り込んでいます」
真理亜が、表情を険しくして、そう断言してくる。
「───そのようね」
〈聖女〉であるこの子が、こんな表情で、警告を発するとは。
美摩は、真理亜が初めて見せる警戒心に、事態の深刻さを認識した。
「奥様。回線が切られたようです」
屋敷の警備部に連絡を取ろうと、備え付け電話の受話器を取った漱祗が、
冷静な声で告げてくる。
「叶夜、叶穂。武装して、子供たちを緊急避難ルートへ」
「「承知致しました」」
美摩は、叶夜と叶穂に短く命令すると、席を立ち、真理亜と兎萌ふたりに目線を
合わせるべく、ひざまずいた。
「真理亜、兎萌。叶夜と叶穂の言うことを聞いて、落ち着いて行動しなさい」
「わかりました」
美摩の言葉に、真理亜は、すぐさまうなずいてみせる。
兎萌は、事態が吞み込めず、母を見つめ返すことしかできなかった。
「お母さま………」
「────大丈夫よ。なにも心配いらないわ」
不安げな表情の兎萌に、そう微笑んでみせたあと、美摩は、立ち上がる。
「漱祗、行くわよ」
「はい、奥様」
美摩が、漱祗を連れ立って、広間を出ようとした、その刹那────────。
バツン
そんな音と共に、広間の明かりが、消えた。
突然の光の消失に、兎萌は短い悲鳴をもらし、思わず、
真理亜に抱きついてしまう。
「……漱祗! 光を!」
「はい。ただいま───」
美摩の命令で、漱祗が、魔力光を生み出すべく、手をかざそうとした。
ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ・ボッ
だが、漱祗の動きに先んじて、発火音がしたかと思うと、広間の四方の壁に、
数々の青白い炎が生じる。
「───これはっ……!」
それら青白い炎から、
取った。
(………
そう戦慄しながら。
ふ・ふ・ふ・ふ・ふ───────────────────────────
突如、
嘲笑であった。
『───わずか
美摩よ………』
嘲笑のあとに、そんな不気味な声が、
直後、広間の床に、黒く
それは、黒い霧、としか言えぬものであった。
黒い霧は、
「叶穂! お嬢様たちを!」
叶夜が叫んで、黒い霧めがけて、跳躍した。
その右手には、常に隠し持っている鉄製の暗器、
それは、対〈
並の〈
「叶夜! いけません!」
いつも冷静な漱祗が、悲鳴のごとき制止の声を出す。
しかし、遅かった。
「がっ…!?」
叶夜の体が、宙で、
『漱祗の娘か───ああ、
黒い霧は、いよいよ人体の輪郭を現し、完全に、実体化した。
その右手が、軽く、羽虫でも払うように、振るわれる。
すると、宙で固められていた叶夜の体が、凄まじい勢いで、広間の壁に
叩きつけられた。
そのまま床に落ちた叶夜は、ピクリとも動かなくなる。
「
兎萌が絶叫して、叶夜へと駆け出そうとするのを、真理亜が、必死に抱き止めた。
その様子を見て、広間に姿を現した人物が、
「安心せい……そう簡単に死にはすまいて────。それぐらいには、鍛えて
おるのだろう? 漱祗。……どうした、美摩。儂を見た驚きで、声も出ぬか?」
その人物を
「おのれ……っ!。この世に迷い出たか、
伝奇モノには鬼っょ不死身ジジイが付き物。
型●の伝統にのっとっております(≧∀≦;)