TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい!   作:megajoy

32 / 33
この世界は伝奇百合鬼畜エロゲーの世界である……。
という、“伝奇”と“鬼畜”を体現した竿役爺キャラです(・∀・)


M三二 魔人の圧倒

くくく……、と、広間に現れた侵入者は、再び哄笑(こうしょう)する。

 

(おう)よ。美摩(みま)漱祗(すすぎ)。そなたらふたりの肉体(からだ)が、忘れられんでな────。

この身を半分、吹き飛ばされ、焼き払われても、迷い戻ってきたのよ」

 

侵入者は、ベロリ、と、いやらしく舌なめずりをして見せた。

 

「っ……! 黙れっ! この下衆(げす)がっ……!」

 

「ほう? 子供らには聞かせたくないか? (わし)がおまえたちの、初めての

おと──」

 

侵入者がすべてを言い終える前に、美摩の突き出した両掌(りょうてのひら)から、

光輝く魔力の塊が、撃ち放たれる。

 

初歩の攻撃魔法、〈光弾(こうだん)〉。

だが、真渡園(まどぞの)()当主、〈退魔法師(たいまほうし)〉の最高導師(グランドマスター)である美摩が、

高い魔力を込め、独自の理法で撃ったそれは、必殺の一撃に他ならない。

 

命中したが最後、並の〈禍威魔(かいま)〉なら、

()()微塵(みじん)に消し飛ばしてしまうほどの威力を持っていた。

 

しかし────────────────────。

 

〈光弾〉は、侵入者の眼前で、見えざる壁に阻まれたかのように、爆発四散し、

光の粒子となって、消える。

 

(……〈魔力障壁〉───! 全力ではなかったにせよ、こうも簡単に……!?)

 

美摩は、おのれの攻撃魔法を易々(やすやす)と防がれたことに、戦慄した。

美摩の心中で、焦りの色が濃くなっていく。

 

何故なら、侵入者が、魔法を使って、自分の〈光弾〉を防いだわけでは

ないことを、見抜いたからであった。

 

魔法を発動させて、攻撃を防ぐ力場を作り出すのが〈魔法障壁〉。

魔力を周囲に放出し、その魔力の“(あつ)”だけで攻撃を防ぐのが〈魔力障壁〉。

 

侵入者が、美摩の〈光弾〉を防ぎ、消滅せしめたのは、

〈魔力障壁〉によるものだったのである。

美摩は、怒りと、焦りの混じった視線を、侵入者に向けた。

 

侵入者は、美摩のその視線を、嘲りの笑みを(もっ)て受け止めている。

 

侵入者の風貌は、がっしりとした体格の、着流しの老人であった。

ただし、その着流しは、両肩口(かたぐち)から(そで)が破かれており、

老人の筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な両腕が露わになっている。

 

青白い炎に照らされた、その肌の色は薄紫色で、張りと艶があった。

“老人”と見えたのは、ざんばらとした長い髪の白さ、深い(しわ)が刻まれた顔と、

(ほほ)(あご)に、白髭(しろひげ)()やしているからである。

 

両足は、裸足(はだし)

そして、その両眼は、本来、白いはずの部分が黒く、目の色は、赤色。

 

異様。

人間の形をしているが、(ひと)ではないモノ。

 

────この老人こそが、邪法(じゃほう)により、おのれの肉体を〈屍霊鬼(しりょうき)〉化させ、

不死の存在となった魔人………真渡園(まどぞの)玄紺(げんこん)であった。

 

美摩は、戦慄と混乱に荒れる心をなんとか()(しず)め、考えを巡らせる。

 

六年前、自分と漱祗の策によって、なんとか討ち果たしたはずの、諸悪の根源。

この凶悪な魔人が、何故、今頃になって、目の前に現れたのか。

 

自分と、漱祗に復讐するため───?

真っ先に、その考えが浮かんだ。

 

いや、それもあるだろう。

けれど、それだけではない。

 

真理亜だ(・・・・)

美摩は、そう直感する。

 

〈聖女〉である真理亜を、狙って来たのだ………!

 

(わし)(だま)()ちにして六年か───。多少、腕を上げたようだが、その程度で

“最高導師”を名乗れるとはなあ……これだから女は()(がた)いというのだ」

 

そう言って、なおも玄紺は、嘲笑する。

 

散々(さんざん)その肉体(からだ)に、おのれの身の程を教えてやったというに、小娘が、

いまだ理解できておらんようだわい」

 

「───その小娘に一度殺されたくせに、どの口がほざくのかしら」

 

悪態で返す美摩だが、完全に、虚勢(きょせい)であった。

 

その顔は、玄紺に純潔を奪われ、恥辱(ちじょく)の限りを尽くされた過去を思い出し、

(しゅ)に染まっている。

子供らふたりを後ろにかばい、顔が見えぬようになっているのが、幸いであった。

 

………力の差は、歴然。

美摩は、漱祗、叶穂らとの連携攻撃による打倒を脳内で数十通り試行したが、

敗北の結末しか、予測できない。

 

しかし、美摩には、切り札があった。

〈鳳凰の杖〉である。

 

玄紺が、どのようにして冥府から舞い戻ったかは謎だが、現在、自分が、

〈鳳凰の杖〉を霊的に常備しているとは、知るまい。

〈鳳凰の杖〉による魔法攻撃ならば、玄紺の〈魔力障壁〉を破り、討ち滅ぼす

ことができるに違いない、と、美摩は、確信していた。

 

問題は、〈鳳凰の杖〉を顕現(けんげん)させるために要する、時間である。

古代魔法真言を唱え、美摩の体から〈鳳凰の杖〉が実体化を終えるのに必要な

時間は、約三秒。

 

短い呼吸が済む程度のわずかな()だが、魔人である玄紺なら、不測の反撃を

察知、警戒し、妨害と制圧にかかるには、十分(じゅうぶん)な時間に違いなかった。

 

美摩ひとりだけで立ち向かうのならば、勝ち目はない。

が、美摩には、漱祗と、叶穂がいる。

 

ふたりの援護と牽制を念頭に置くことで、

〈鳳凰の杖〉顕現(けんげん)までの時間の目途(めど)はつけられた。

あとは、攻撃開始の呼吸(タイミング)だけである。

 

子供たちを、守らなければ……!

美摩は、その絶対の意志を(もっ)て、漱祗と叶穂に、攻撃命令を下そうとした。

 

だが──────。

玄紺が、機先を制するように、ニヤリと嘲笑(わら)う。

 

「なにやら、隠し玉があるようだの」

 

「っ……!」

 

胸中を見透かされた思いになった美摩だったが、最早、攻撃する他に、

選択肢はない。

 

「漱祗! 叶穂!」

 

美摩は、ふたりに号令を発した。

美摩の号令直下、漱祗と叶穂が、玄紺に討ちかかり出す。

 

〈鳳凰の杖〉を顕現(けんげん)させるべく、美摩も即座に、

古代魔法真言を唱え始めた。

 

“来たれ、人界(じんかい)(まも)り…”

 

「ふ」

 

玄紺は、それらを一瞥(いちべつ)し、一笑に付した。

そして、その右手を、わずかに動かす。

 

クンッ

 

「「んぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!?!?!?♡♡♡♡♡♡」」

 

美摩と漱祗が、突如として沸き起こった、下腹部から脳天を焦がす感覚に、

嬌声(きょうせい)を上げて、のけぞった。

それから、ふたり同時に、その場で床へと、膝から崩れ落ちる。

 

(うぅっ!?♡ あっ♡ どっ♡、どうしてっ……!?♡)

 

美摩は、身動きが取れぬほど、下腹部から、全身に響き走る感覚に襲われていた。

 

漱祗のほうも、同様である。

頬を赤く染め、両手を床に付き、体を(さいな)む感覚からもれそうになる声を、

必死に抑え込んでいた。

 

「美摩お姉様!」

 

「お母さまっ!?」

 

真理亜と兎萌が、美摩に駆け寄ろうとする。

 

「だっ♡…駄目っ! 近づいてはっ! 駄目っ!」

 

全身を襲う感覚に(あらが)いながら、美摩は、自分に近づこうとするふたりを制した。

 

そんな美摩を、またしても玄紺は、(あざけ)り笑う。

 

「〈淫紋(いんもん)〉を解呪して、安堵(あんど)しておったか? くく、甘い甘い……

おまえたちの下腹(はら)(なか)に、儂の肉腫(にくしゅ)(ひそ)ませておいたのよ。

万が一の時の保険に、のう────」

 

クンッ

 

「「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ────っっっっっっっ♡♡♡♡♡♡」」

 

玄紺が右手を動かすだけで、美摩と漱祗は、再び(もだ)えて、体をのけぞらせた。

あまりの衝撃と感覚に、もはや、その身を起こしておくことも(かな)わず、

ふたりとも、その場に倒れ伏してしまう。

 

「っ…!」

 

叶穂が、自分ひとりだけでも一撃穿(うが)たん、と、玄紺めがけて、苦無(くない)を流星のごとく

投擲した。

が、その苦無(くない)は、見えざる壁───〈魔力障壁〉に(はば)まれ、(はじ)かれる。

 

それを想定していた叶穂は、構わず、別の苦無(くない)逆手(さかて)に持ち、玄紺へと

突貫(とっかん)した。

 

「姉妹揃って、(いのしし)武者か。漱祗の娘にしては、いま少し芸が足りんのう」

 

玄紺は、叶穂に向けて、左手をかざす。

 

「ぐぅっ!?」

 

それだけで、叶穂の全身は、床から縛り付けられたように、動けなくなった。

玄紺が、哄笑する。

 

「役者不足、役者不足。……(わし)の相手ができるのは、肉付きのいい、

その体だけのようだて」

 

「くっ……うぅぅぅ───っっっ!!!」

 

叶穂は、歯を食いしばって体を動かそうとするが、もがくことすらできない。

 

「おまえの肉体(からだ)も味見したいところではあるが……今は、急ぎの用があるでな。

また次の機会に取っておくとしよう」

 

立ったまま動けぬ叶穂に、(ねば)りつくような視線と下卑(げび)た笑いを送ったあと、

玄紺は、真理亜と兎萌のほうに、向き直った。

真理亜が、兎萌を(まも)(かば)うように抱き締めて、きっ、と玄紺を(にら)みつける。

 

「ほほ、意志の強い童女(わらめ)よの。……わかるぞ───その身に宿す膨大な魔力………。

まさに、我らが〈神〉の(にえ)となるにふさわしい────!」

 

玄紺が、ひと目で真理亜の魔力保有量を見抜き、喜びの声を上げた。

 

「っ…♡ あ…♡ ぅ…っ……♡」

 

美摩の耳は、玄紺のその声を確かに拾っていたが、全身を襲った強烈な感覚の

余韻(よいん)が残響しており、甘い(しび)れに、指先一つ動かすこともままならない。

漱祗に関してはさらに(ひど)く、口から(よだれ)をたらし、普段の冷静沈着な姿からは

考えられぬ、(とろ)けた顔で失神し、全身を小刻みに痙攣(けいれん)させている。

 

幼いふたりを庇護(ひご)する存在は、ことごとく、陥落(かんらく)してしまっていた。

玄紺が、勝ち誇ったように、邪悪な笑みを浮かべる。

 

「さて、連れて行くかの。なに、怖がることなどひとつもない────むしろ、

女として生まれた幸せを、(あま)すことなく教えてやるでな………」

 

真理亜と兎萌のふたりに、玄紺の加虐性に満ちた視線が、ねっとりと注がれた。

 

兎萌は、恐怖のあまり、悲鳴すら(のど)から出せず、涙目のまま全身を震わせ、

真理亜の体に、しがみつくことしかできない。

真理亜は、そんな兎萌を勇気づけるように、強く抱きしめ返し、唇を固く結んで、

玄紺を(にら)み続けている。

 

幼女ふたりは、()(すべ)なく、魔人の手に落ちるしかないと思われた。

玄紺が、悠々と、真理亜と兎萌に向かい、一歩、踏み出そうとする。

 

「ぬっ───!?」

 

その時、玄紺の足元、その周囲の床から、鮮烈な光が噴き上がった。

 

ひとつだけではない。

四方八方から、光の鎖が床から飛び出し、玄紺の四肢と胴体に絡みつく。

 

「儂の〈魔力障壁〉を破るだとっ……!?」

 

玄紺の顔が、驚愕(きょうがく)で歪んだ。

目を()いて、真理亜を見る。

 

真理亜は、左手で兎萌を抱きしめたまま、右手を、玄紺に向かって

突き出していた。

 

「まさか、その(とし)で、〈星雲嵐鎖(せいうんらんさ)〉を使うのか────!?」

 

知らず、玄紺は、最上級鎖状拘束(さじょうこうそく)魔法を使ったのか、との真理亜への問いを、

口からもらしてしまう。

 

「…今のは〈星雲嵐鎖(せいうんらんさ)〉ではありません…。〈縛鎖(ばくさ)〉です」

 

真理亜は、慇懃(いんぎん)にも、玄紺に答えていた。

────自分が今、使っている魔法は、初級の魔法、〈縛鎖(ばくさ)〉である、と。

 

この返答には、さしもの玄紺でも、たじろがざるをえない。

それが意味するところは、初級魔法である〈縛鎖(ばくさ)〉を、圧倒的魔力の

絶対量によって、最上級魔法と同等の威力を持たせた、ということだからである。

 

その事実にたじろいだ玄紺であったが、すぐに、喜色満面の笑みを浮かべた。

そして、うなずきながら、賞賛するように、笑い声を上げる。

 

「なるほどなるほど! 素晴らしい魔力だわい! それでこそ、

我らが〈神〉への最高の供物(くもつ)! (にえ)の〈聖女〉ぞ………!!!」




直接描写ではないので、ギリセーフ、と思ってるんですが、どうでしょう、ドキドキ……。
迷ったんですが「設定上、このジジイなら絶対こうしてる」と伝奇エロゲー魂を優先させました。
OUTだったらどうにか書き直すつもりです(^∀^;)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。