TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい!   作:megajoy

35 / 36
本編世界が“鬱伝奇百合鬼畜エロゲー世界”であるという前提、いちおー、忘れないでクレヨン☆
……主人公がアレすぎて、書いてる本人も忘れそうですけども(^∀^;)


M三五 〈妖神〉復活

「……っ!!! 美摩(みま)母様(かあさま)───っ!!!」

 

美摩の耳は、確かに、真理亜の、その悲鳴を拾っていた。

真理亜の呼び声が、気絶していた美摩に、覚醒を(うなが)すが、

その意識を明瞭とさせるには、至らない。

 

それでも、“母親”としての本能か、意識はなくとも、

『早く目を覚まさなければ!』

という焦燥感と衝動が、黒く沈んでいる意識の底で、もがき続ける。

 

だが、そうしても、美摩がはっきりと目覚めたのは、玄紺が立ち去って、

およそ一時間後のことであった。

思うように体が動かず、美摩は、テーブルを支えにして、よろよろと立ち上がる。

 

──────真理亜は、玄紺に連れ去られてしまったのか。

兎萌は、叶穂が連れて逃げたはずだが………、どれくらい時間が過ぎているのか。

 

広間には、電気の明かりが戻っていた。

しかし、屋敷の者が誰も、(あるじ)である自分(美摩)(もと)に来ていない、ということは、

いまだ玄紺に襲われた状態から、脱していない、ということであろう。

 

そう判断した美摩は、漱祗(すすぎ)だけでも起こして、玄紺のあとを追うべく、

ふらつく体を、無理矢理動かそうとした。

そこでふと─────テーブルの上に散らばっていた、メッセージカードが、

目に入る。

 

真理亜と兎萌が、チョレートと共に、美摩に差し出してきたものだった。

そんな場合ではないというのに、知らず、美摩は、弱々しい手つきで、

カードを開いていく。

 

【                        】

【お母さまへ                   】

【                        】

【兎萌の、お姉さまといっしょにいたいというお願いを】

【聞いてくださりありがとうございます。      】

【学園に入学してお姉さまといっしょにがんばって  】

【いきますので、魔法をいっぱい教えてください。  】

【大好きです。                  】

【                        】

【                    兎萌より】

【                        】

 

 

【                        】

【美摩お姉様へ                  】

【                        】

【お母様を亡くしたわたくしを、兎萌ちゃんと一緒に、】

【我が子のように育ててくださり、本当にありがとう 】

【ございます。お姉様のことは、いつも、もうひとりの】

【お母様のように思っています。お姉様に、真渡園家 】

【には、立派な娘がふたりいる、と思ってもらえる  】

【よう、これからも頑張ってまいります。至らない  】

【ところがありましたら、ちゃんと叱ってやって   】

【くださいましね。                】

【                        】

【             愛をこめて 真理亜より】

【                        】

 

ふたつのメッセージを読み終えたあと、美摩の目から、大粒の涙が、ポロポロと

(したた)り落ちた。

 

「う、う、うううううううぅぅぅぅぅ────────────────!!!」

 

ふたりの子を、玄紺の魔の手から防ぎきれなかった、おのれの無力さと悔しさに、

美摩は、喉の奥から、無念の嘆きをほとばしらせる。

 

子供ふたり、まともに守れずして、何が真渡園(まどぞの)()の当主か、何が母親か。

特に真理亜、あの子を、絶対に〈運命〉から守ってみせると、そう誓っていた

というのに………!

 

「うぅぅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛───────────!!!」

 

美摩は、苦鳴のごとき声を上げて泣き、膝から崩れ落ちた。

 

()き姉から託された姪子(めいこ)

暗い未来………その道で命を落とすかもしれぬというのに、すべてを守ろうと

決めている幼子(おさなご)

 

その子の、助けにすらなれぬというのか。

真白(ましろ)きあの子が(けが)されてしまうのを、(ふせ)げぬというのか。

 

不甲斐(ふがい)なさ(きわ)まるおのれ自身に、美摩は、怒りと悲しみがないまぜになった涙を

流し続ける。

 

────────────〈力〉が欲しい。

真理亜、あの健気(けなげ)な“娘”を守ることのできる、〈力〉が…………!!!

 

涙に(まみ)れた美摩が、心の底から、そう願った時。

美摩の体の(うち)から、大鳥(おおとり)の鳴き声が、()き起こった。

 

カキィィィィィィィィィィィィィィィィィ──────────────ン!!!

 

そして、けたたましい金属音が鳴ると同時に、黄金の光が、広間に満ちあふれる。

美摩は、涙に濡れた目を、見張った。

 

鳳凰(ほうおう)の杖〉が、美摩の眼前、その宙に、顕現(けんげん)したのである。

 

〈鳳凰の杖〉顕現(けんげん)に必要な、魔法真言を唱えていないというのに、何故……!?

美摩は、驚くあまり、わずかの間、呆然(ぼうぜん)としてしまった。

 

(〈鳳凰の杖〉が、(みずか)らの意志で顕現(けんげん)したというの!?)

 

自分(美摩)の願いを聞き、〈鳳凰の杖〉が、〈力〉を貸してくれる────────。

そう思いかけた美摩だが、心の中で、その願望を、否定した。

 

(〈鳳凰の杖〉は、きっと、私を叱咤(しった)するために、その姿を現したんだわ)

 

涙を(ぬぐ)い、美摩は、〈鳳凰の杖〉を手に取り、目を閉じる。

 

────そうだ、なにを腑抜(ふぬ)け、(ほう)けていたのだ。

“母親”ならば、すぐさま立ち直り、“子”を救うため、全力を尽くせ……!

 

美摩は、かっと両眼を見開くと、杖の底部(ていぶ)先端(せんたん)を、おのれの下腹に突き当てる。

それから、意識を集中し、体内の異物を、(さぐ)り当てた。

 

そのまま、〈鳳凰の杖〉が持つ、魔の存在だけを焼き払う浄化の炎で、玄紺が

美摩の体内に潜ませていた肉腫(にくしゅ)を、消滅させる。

 

「うぐぅっ……!」

 

さすがにその余波による内臓への損傷なし、というわけにはいかなかったが、

即座に治癒魔法を使い、肉体を全快させた。

美摩は、続けて、倒れている漱祗(すすぎ)に近づき、同様の治療を(ほどこ)す。

 

「あがっ!? あっ、あっ、あぁ……お、奥様────?」

 

漱祗は、激痛と、魔法で癒される感覚で目を覚まし、自分を見下ろしている(あるじ)に、

おぼつかぬ意識のまま、呼びかけた。

そんな漱祗に(おお)いかぶさり、美摩は、無言で唇を重ねる。

 

「んっ、んぅ───っ…………は、ぁ……お、奥様………」

 

「────真理亜がさらわれたわ。玄紺を、追うわよ」

 

唇を放し、漱祗と抱き締め合ったあと、美摩は立ち上がり、簡潔に、現状と、

次に取るべき行動を口にした。

漱祗は、数秒、目を(またた)かせたが、我に返ると、すぐに立ち上がる。

 

「承知いたしました。───不様(ぶざま)(さら)してしまい、申し訳ありません、奥様」

 

「そういうのは、あとよ。叶夜(かなや)を起こして。今、動ける人間だけを集めて、

可能な限りの武装を急がせなさい」

 

頭を下げる漱祗を制して、美摩は、最優先の指示を(くだ)した。

 

「承知いたしました」

 

漱祗は再び一礼すると、いまだ気を失ったままの叶夜を起こしにかかる。

 

美摩は、自分の携帯端末を取り出すと、ひとつのアプリを起動させた。

GPS発信機の信号を、追跡するアプリである。

 

─────今夜、真理亜と兎萌に贈ったペンダントには、ふたりの安全のため、

最新の超小型GPS発信機を、仕込んでおいたのだった。

 

(まさか、贈ったその日に、機能を使うことになるなんてね)

 

万が一の時のために、と、安全の(そな)えで仕込んでおいた発信機だが、

それが即日、効果を発揮することになろうとは。

 

発信機が真理亜を救う(すべ)となった、その僅差(きんさ)のタイミングに、

美摩は、(きも)()える。

もし、真理亜と兎萌に、ペンダントを着けてあげていなかったら、こうして

意識を取り戻していても、真理亜の行方は一切わからず、手詰(てづ)まりになっていたに

違いない。

 

おのれの防犯意識を、おのれで()めてやりたい気持ちになりつつ、美摩は、

端末の画面操作に集中した。

その直後、画面に表示された地図の場所に、驚愕する。

 

「この場所は────!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漆黒の闇………その空間に、青白い炎が(とも)った。

その炎に続けて、ひとつ、またひとつ、と、炎が生じていく。

 

青白い炎の列に照らし出された空間は、巨大な洞窟であった。

天井は円蓋(ドーム)状で、日の光が差し込む(すき)など、どこにもない。

 

地面が整地されている以外は、すべて、天然の地下空洞である。

 

───────いや、ひとつ、明らかに、人の手による、構造物があった。

洞窟の最奥(さいおう)の壁、そこに、海波(うみなみ)を思わせる装飾の(ほどこ)された、

巨大な、両開きの石扉(いしとびら)である。

 

全幅は八メートルほどで、その高さは、十メートルはあろうか。

 

その巨大な石扉の前に、黒衣の男たちが、(つど)っていた。

その数、四十八人。

 

総じて、蛇を()した仮面を(かぶ)っている。

その仮面の男たちが、突然、一斉に、ひざまずいた。

 

ゆらり、と、男たちの首領である、玄紺が、洞窟に姿を現したのである。

その両腕には、意識を失った美幼女……真理亜を抱えていた。

 

真理亜の身は、行衣(ぎょうい)と呼ばれる、白の(ころも)に着せ替えられている。

 

「見よ。今代(こんだい)の〈聖女〉は、我が手の内────今宵(こよい)、この〈聖女〉を生贄の

〈器〉に捧げ、我らが〈神〉、絶沌(たちふせ)様を、この世に呼び戻す……!」

 

玄紺の言葉に、仮面の男たちの間で、感動のどよめきが広がった。

そう、男たちは、魔道秘密結社〈那由他(なゆた)の蛇〉の一党なのである。

 

那由他(なゆた)の蛇〉の悲願は、〈禍威魔(かいま)〉の〈神〉、〈妖神(ようしん)絶沌(たちふせ)を復活させ、

女性優位の社会を破壊することにあった。

その悲願が、今、まさに成就しようとしている……!

 

仮面の男たちの興奮は、かつてないほどに高まっていた。

 

「〈扉〉を、()(はな)てぇいっ!!!」

 

玄紺が、高らかに命じる。

 

仮面の男たちは、すぐさま、古代魔法真言の唱和を開始した。

四十八人の、魔力のこもった詠唱に、巨大な石扉が、ゆっくりと、反応する。

 

ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ………

 

地響きのごとき音を立てながら、石扉が、左右に横滑りで開いていった。

……………石扉の開かれた、その中、その広大な空間に、()るもの。

 

それは、赤黒い表皮の、肉塊(にくかい)

(おびただ)しい数の、巨大な触手の群れ。

 

それらが、地面を、壁を、天井を──────すべて、埋め尽くしている。

 

触手群の表皮は、粘質のある液体を分泌(ぶんぴつ)しているのか、扉外(とびらそと)の青白い炎に

照らされ、ぬらぬらとしたてかりを見せていた。

そのすべての触手は、おのれらの息づきを示すかのように、(うごめ)いている。

 

およそ人が見るだにおぞましく、冒涜(ぼうとく)的な光景であった。

 

「さあ、我らが〈神〉よ!!! 貴方様の新たな〈器〉にございます!!!

 どうぞお受け取りくださいませ!!!」

 

玄紺が、触手の群れに向けて、真理亜の体を差し出して見せる。

すると、赤黒い触手が複数伸びてきて、真理亜の体を、絡め取った。

 

そのまま、扉の奥、おのれらの()()へと、真理亜の体を、引き込んでいく。

 

()いで、扉の奥から、他の触手群が、魔法真言の唱和を続ける男たちに

向かって、伸び出ていった。

四十八人の男たちのその身に、赤黒い触手が、巻き付いていく。

 

その途端に、異変が起こった。

仮面の男たちの、魔法真言の唱和が、崩れていく。

 

────赤黒い触手に、男たちの生命力と魔力が、

吸い取られていっているのだった。

だが、それでも、男たちは、魔法真言の詠唱を()めない。

 

おのれの命を差し出して(かえり)みぬほどに、〈妖神(ようしん)絶沌(たちふせ)を、狂信しているのである。

その狂信に応えるかのごとく、扉の奥、触手の群れから、黒い(もや)

(しょう)じはじめた。

 

暗い闇の中にあって、なお黒い、その漆黒の(もや)は、次第に渦巻く気流となって、

触手に絡め取られた、真理亜の体に──────流れ込んでいく(・・・・・・・)

 

真理亜の体が、ビクン!、と、()ねた。

 

「我らが〈神〉!!! 絶沌(たちふせ)よ!!! いざ、降臨なされませ!!!」

 

玄紺は、(つば)飛ばし、(よだれ)()らしながら、絶叫する。

……そう、この巨大洞窟の扉の先は、〈妖神(ようしん)絶沌(たちふせ)が封印された、

秘密の石室(せきしつ)であったのだ。

 

石室を埋め尽くす赤黒い巨大触手の群れは、魂の抜けた、

妖神(ようしん)〉の残滓(ざんし)のような存在(もの)

それら触手群に、生命力と魔力を与えることで、〈妖神(ようしん)絶沌(たちふせ)の魂を、物質世界に

復活させる呼び水とし、その魂を〈器〉に()れる──────。

 

それが、この降臨の儀式であった。

真理亜こそが儀式に必要な、魔力に満ち溢れた“生贄(いけにえ)”………〈器〉なのである。

 

黒の気流はいよいよ激しさを増し、無数の竜巻となって、真理亜の体へと、

流れ込んでいった。

 

触手に拘束された真理亜の体は、それを拒絶するように、大きく()ね続けている。

あたかも、大嵐の海に翻弄される小舟のようだった。

 

やがて………………真理亜の体への、“黒”の流入が、終わる。

真理亜の体の痙攣(けいれん)と、男たちの詠唱も止まり、静寂が、訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“────────────(カエ)ッタゾ…………………………………………………”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真理亜の口から、真理亜のものではない声が、発せられる。

 

その声を耳にして、玄紺の顔に、勝利の笑みが浮かんだ。

千年以上の宿願(しゅくがん)成就(じょうじゅ)した、と、確信したのである。

 

禍威魔(かいま)〉の〈神〉、〈妖神(ようしん)絶沌(たちふせ)が、この世に、復活した。




〈妖神〉が復活したー!?
うわー!もーダメだー!(@きくたけリプレイモブ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。