TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい! 作:megajoy
ゆ●理論はすべてを解決する……!
(っっっ……! おねえさまの、まりょく、はいってくる────!
……あつい、けど、きもち、いいっ……あたま、ぼーっ、って、
なっちゃ、う────────♪)
溶かされそうなほどの多幸感を覚えていた。
そして、魔力と共に、真理亜の思念も、自分の心に流れこんでくるのを
感じる。
“どうか、幸せになってほしい。自分は、どんなことになってもいいから────”
それは、真理亜の、嘘偽りない願いに他ならない。
兎萌にとって、それは、久しぶりに触れる、母性愛と呼ばれるもの。
実の母親から、常に与えられてしかるべき感情であった。
兎萌の頬を、大粒の涙が伝う。
専属メイドの
理屈抜きの、純粋な愛情──────。
真理亜の思念に、心震わされ、兎萌は、嬉しさのあまり、とめどなく涙を
流し続けていた。
「────兎萌、どこか、体が痛むの?」
真理亜から、事の成り行きを見守ってほしい、と言われていた美摩であったが、
兎萌の涙する様子を、さすがに見かねて、そう声をかけてしまった。
「……だいじょうぶ、です、おかあさま………!」
兎萌には、自分が真理亜の思念を感じた喜びを、言葉にして伝える術がなく、
ただそれだけ答えるにとどまる。
だがその声の響きが、美摩には、今まで自分が耳にしたことのない、
明るさに満ちているように聞こえ、ひとり、また胸を痛めていた。
自分は、我が子に、こんな声を出させたことがあったろうか、と。
しばらく、美摩は、そんな
幼女ふたりを見守っていたが、ふと、気づく。
………規格外の、膨大な真理亜の魔力を、兎萌の身体が受け入れ続けていることの
異常さに。
美摩から見て、兎萌がその肉体に宿している魔力量は、並だ。
つまり、その並の魔力量を
そこへ貯蔵可能な許容量以上の魔力を注ぎこむことは、
肉体そのものを破壊しかねない。
しかし、兎萌は、痛みを訴えることもなく、むしろ、さらなる魔力の注入を
望んでいるようにも見える。
美摩は、真理亜が、『兎萌の
と言ったことを思い出した。
(“
使うことができなかったのは……!?)
目の前で起こっている異常な出来事に、美摩が、おぼろげながら、
答に辿り着くか、と思われた時。
室内に、聞いたことがない、鳥類が出すような鳴き声が、響き渡った。
自然界の生物が出すものとは思えない、
だが、鳥類のいななきを連想させる鳴き声。
その数瞬あと、兎萌の全身が、閃光を放ちだす。
黄金の輝きであった。
黄金光は、兎萌を中心に渦を巻いたかと見るや、ふたすじの大きな光流を
そのまばゆさに目をかばいながらも、事を見守る四人には、
それが、二枚の翼に見えた。
その光の双翼が、部屋を覆い尽くすほどに、広がる。
カキィィィィィィィィィィィィィィィ────────────ン
直後、金属同士が激しく打ち合ったような音が、轟き響いた。
同時に、室内を満たしていた黄金光も、消え失せる。
そして、美摩、漱祗、叶夜、叶穂の四人は、見た。
兎萌の頭上に、黄金の杖が、浮かんでいるのを────────。
「これ、は─────ま、まさか……!?」
黄金の杖を目にした美摩は、知らず、呟いていた。
見たことなどない。
けれど、〈
〈
美摩以外の三人も、その神器の名を、頭に思い浮かべていた。
〈
伝承では、
その消失の真相は、『
しっかりと語られている。
〈鳳凰の杖〉は、古き大戦で、ほとんど〈力〉を消費し尽くし、消滅しかけた。
そのため、その根源たる物質
その
真渡園の一族が、悠久の時を掛け、子々孫々に、魂を受け継がせながら、
再物質化するための魔力を、蓄積させ続けることにしたのだった。
〈鳳凰の杖〉の再物質化───つまり、その復活を結実させる役目を
負うことになったのが、兎萌である。
〈鳳凰の杖〉復活の
失われてしまったため、現代にてその詳細を知る者は、残されていない。
それゆえ、兎萌が魔力を扱うことができない状態を、“魔力操作不能症”と
判断されてしまったのだ。
兎萌の肉体には、魔力が宿っているのに、本人には、使えない………。
それもそのはず、兎萌本人が生み出し、使えるはずの魔力を、復活しかけている
〈鳳凰の杖〉が、根こそぎ吸収し続けていたからであった。
兎萌自身の魔力生成量は、決して低くはない。
が、魔力を生み出す
肉体の生存本能が、魔力生成機能を大幅に
何故なら、他者に魔力を奪われ続ける状態で、十全に魔力生成を機能させれば、
兎萌の生命活動に支障をきたす恐れがあったからである。
そのせいで、〈鳳凰の杖〉は、復活を前にして、
いわば、足踏み状態となっていた。
完全復活のための魔力は、今、この時点より十年後まで蓄積し続け、かつ、
愛を
起こるまで────具体的には、兎萌ルートの百合Hイベント直前まで、
そこで、この転生者である真理亜の、千倍チート魔力である。
真理亜が持てる魔力を全
数分と
あっけなく、〈鳳凰の杖〉を、復活させてしまった。
真理亜は、こうなることを、完全に理解していたのか……?
答は、半分YESで、半分NO。
兎萌ルートにおける、〈鳳凰の杖〉復活イベントを、当然ながら真理亜は、
けれども、真理亜は、その際における詳細なテキストを、クリック
もしくは“次のシーンまでスキップ”で、読み飛ばしていた。
『
読んだり読まなかったり、の、いわゆる“スキップレイヤー”だったのである。
ライターが、必死に悩んで書き
ポンポンポン♪、と、すっ飛ばすプレイヤー─────断罪されるべき、
────なので、〈鳳凰の杖〉復活における詳細な理屈は、知らないに等しく、
『なんか主人公が兎萌ちゃんに魔力をあげてたナ~』くらいの、軽いノリで
魔力注入をやっていたのであった。
とはいえ、兎萌を幸せにしてあげたい、という願いだけは、混じり
純粋に善良な想いから生まれたものである。
その一点に関してだけ言えば、真理亜は、賞賛されるべきかもしれなかった。
もっとも、その願いを知る人間はただひとり、魔力と共に、真理亜の思念を
受け取った兎萌だけであったが。
しかし、兎萌が今、真理亜に対して抱いている気持ちは、
真理亜への賞賛ではなく────
無償で、自分の幸せを願ってくれる存在に、出会えた
この時、兎萌は、“魔力操作不能症”が解消されるかどうか、その結果のことなど、
どうでもよくなっていた。
今日、初めて出会って、
“おねえさま”がいてくれれば、自分は、なにもかも満たされるような気がする。
兎萌は、根拠なく、そう確信していた。
「………うまくいったみたいですね────」
真理亜は、兎萌から額を離し、宙に浮かぶ〈鳳凰の杖〉を見上げる。
それから、美摩へ、微笑を浮かべてみせた。
「美摩お姉様、杖をお取りください。
「え、ええ───」
真理亜の言葉で、我に返った美摩は、〈鳳凰の杖〉に、おそるおそる手をのばす。
美摩が意を決して杖を掴むと、杖全体が淡い黄金光を放った。
その発光に、美摩は一瞬だけ
なかったことを理解する。
〈鳳凰の杖〉が、美摩を“真渡園一族にして、〈杖〉の
認めたことを、伝えてきたのだ。
「良かった────これで、兎萌さんも………」
そこまで言って、不意に、真理亜の体が、カクンと傾く。
「おねえさま!?」
いまだ両
幼女の反応速度と力では、間に合わない。
あわやふたりとも床に崩れ落ちるか、というところを、
ふたりをまとめて抱き止めた。
「……! 真理亜お嬢様は、気を失っておられます────!」
ふたりを抱き止めた漱祗は、即座に真理亜の状態に気づき、美摩に知らせる。
言われた美摩は、すぐに原因に思い至った。
〈鳳凰の杖〉復活のために、真理亜は、自分の魔力を、限界まで兎萌の肉体に
注ぎこんだのに違いない……!
真理亜がいかに膨大な魔力を持っているとはいえ、幼い子供だ。
莫大な量の魔力を一気に失えば、大人でも命に関わることがある。
「真理亜っっっ!!!!!」
美摩の悲痛な叫びが、室内にこだました………………。
気絶してしまった真理亜……!
果たして真理亜は無事なのか……!?(←白々しくに)