TS転生☆ドM悪役令嬢は、美事に破滅したい!   作:megajoy

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本日は二話更新です。
よろしくお願いします~

Q:このドM、奨学金もらえるほど成績優秀だったらしいのに、なんで頭の悪い思考と行動ばっかりしてるの?
A:勉強できるのと頭いいのは、方向性が違うから……(目逸らし)


M〇九 母娘の絆!ドMが呼んだ奇跡の和解!

美摩の悲痛な叫びに反して、真理亜は、普通に気絶しただけであった。

いや、普通に、というのは、この真理亜を基準にして、の話だったが。

 

通常の魔力保有者ならば、急激に膨大な魔力を失う時点で、肉体そのものを

()がれるような苦痛を感じてもおかしくはない。

そのため、精神に異常をきたしたり、生命活動が危ぶまれる状態に

(おちい)ることもある。

 

が、どっこい、この真理亜の精神は、最初から異常であったし、

前世の死に間際で、生命活動が停止する大苦痛に

歓喜したことのある“超”のつく被虐嗜好者(マゾヒスト)

気を失ったその顔には、愉悦に()()ちた笑みが浮かんでいた。

 

しかし、これが、絶世の美幼女が浮かべる笑みであるから、(たち)が悪い。

なにも知らない第三者の目には、苦しいながらに、やるべきことをやり()げたと

感じている、献身的な〈聖女〉の表情にしか見えなかったのである。

 

この表情に、恐慌状態を引き起こしかけている美摩と、緊張にこわばる漱祗(すすぎ)は、

稲妻に打たれたかのごとく、感動と感銘を覚えていた。

 

────────おのれのことを(かえり)みず、会ったばかりの従妹(いとこ)に、

命を(ささ)げて惜しまぬようなその姿。

まさしく、愛に満ちた〈聖女〉ではないか、と。

 

およそ買い被りも(はなは)だしかったが、兎萌(ともい)(ため)を思っての、

真理亜の命()けの行動を見ては、そのように並外れた勘違いをしてしまっても、

無理はなかった。

 

事態がどうなっているのか理解できない兎萌(ともい)も、

その兎萌を抱きしめる専属メイドの叶夜(かなや)

そばで控えている叶夜の妹、叶穂(かなほ)らも、同様の気持ちを抱いている。

 

こちらの三人は、〈聖女〉という概念を意識していなかったが、

直感で理解していた。

今、目の前で行われたのは、(とうと)い犠牲行為であったことを──────────。

 

実際には、『原作でそういうシーンあったナ~』という、

軽いノリで実行されたコトであったし、

気絶して浮かべている笑みは、『強めの御褒美(ゴホウビ)ありあたーッス(ありがとうございますっ)!』という、

イカれた被虐精神からくるモノであったのだが。

 

「………真理亜お嬢様の体温が急激に低下しています。急ぎ、処置を行わないと」

 

漱祗は、真理亜の体に触れ、端的にそう告げる。

 

漱祗の言葉どおり、真理亜の全身は、冬の外気に包まれていたかのごとく、

体温を失っていた。

それは、生命活動が危ぶまれるほどに、魔力を失ったということの証左(しょうさ)である。

 

一日の短時間のうちに、急激に熱が上がったり、下がったり。

まったく忙しい、人騒がせな幼女であった。

 

とはいえ、コトの真相を知らない美摩たちにとっては、

幼気(いたいけ)な子供の命が風前の灯火になっている、深刻な事態には違いない。

 

────漱祗が急いで、だが優しく真理亜の体を抱き上げ、

ベッドに横たわらせる。

そしてそのまま、真理亜の寝衣の上着をはだけさせ、

その幼い素肌に右手を添えた。

 

「奥様。真理亜お嬢様は、魔力の枯渇状態にあるはず。奥様と私とで、

真理亜お嬢様のお体に魔力を分け与えれば、命の危険の心配はなくなるかと」

 

「───え、ええ、そうね、その通りだわ」

 

漱祗の冷静な言葉に、恐慌状態に(おちい)りかけていた美摩は我に返り、

うなずいてみせる。

手にしていた〈鳳凰の杖〉をベッド近くの台座に置き、それから、漱祗と同じく、

真理亜の胸にその手を置いた。

 

「……タイミングを合わせてちょうだい───3、2、1、今よっ」

 

長年の付き合いである主従、美摩と漱祗は、呼吸をぴったりと合わせて、

真理亜の体へ魔力を注ぎこみはじめた。

 

ふたりの魔力が流れ込んでいくにつれ、魔力の甚大な消耗により、冷え切っていた

真理亜の体は、みるみるうちに温かさを取り戻していく。

真理亜の体に触れている美摩は、その事実を(じか)に感じ取り、大いに安堵した。

 

同じく、真理亜の容態の安定を()てとった漱祗が、美摩に進言してくる。

 

「奥様、真理亜お嬢様は、もう大丈夫でしょう。

あとは私が魔力を分け与えますので、奥様はお休みになってください」

 

「─────いいえ、私も、もう少し……」

 

「奥様。奥様が体調を悪くされては、本末転倒でございます」

 

「……漱祗。あなたの主を、見くびってもらっては困るわ。

それに、この子は、今日から私の、もうひとりの娘になるのよ」

 

そう言うと、美摩は、叶夜に抱きしめられる兎萌を見やった。

そして、静かに、けれどあたたかみのある声を出す。

 

「……兎萌。こちらに来なさい」

 

兎萌は、久しく聞いたことのない母親の穏やかな声音に戸惑ったが、

抱きしめてくれている叶夜の手を離れ、おずおずと美摩のそばへと歩み寄った。

 

美摩は、いったん真理亜の体から手を放し、兎萌の前に両膝をつく。

それから、ゆっくりと、兎萌を抱きしめた。

 

「──────────ごめんなさい」

 

「っ……おかあさま──────?」

 

思わぬ母の謝罪の言葉に、兎萌は、我が耳を疑ってしまう。

 

「……魔力を使えないあなたに、

今まで辛く当たってしまってばかりだったわ─────

あなたは、なにも悪くなかったというのに」

 

ぎゅう、と、美摩は、兎萌を抱きしめる力を、強くした。

 

「────魔力を扱えなかったあなたの気持ちを、

考えてあげなければいけなかったというのに。

駄目な母親で、本当にごめんなさい………」

 

「おかあさま……………」

 

兎萌は、抱きしめてくれる母親のぬくもりに、

それ以上の言葉もなく、涙ぐむ。

 

幼い兎萌には、呼び出されてからの一連の出来事が、よく理解できていない。

けれども、感覚だけで、わかっていた。

 

〈母〉が、戻ってきてくれたのだと─────────────────。

そしてそのすべては、初めて会った従姉(いとこ)……義姉(あね)である、

真理亜のおかげである、と。

 

先ほど、真理亜が兎萌に魔力を注ぎこんだ際に、兎萌の幸せを願う気持ちを

直接受け取っていることと合わせて、兎萌は、喜びに体を震わせる。

 

(おねえさまは、わたしをたすけにきてくれたんだ………!)

 

間違ってはいないのだが、正しくない認識をしてしまい、兎萌の脳は、

見事に真理亜への勘違いによって()かれてしまった。

 

誠にもって、ご愁傷様(しゅうしょうさま)と言うほかない。

アーメン。




さあ、どんどん勘違いさせていっちゃおうねえ……(゜∀゜)
(人の心とかないんか?)
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