ガンダムビルドダイバーズ コールオブプログレス 作:フルスロットルしょうくん
ガンダム、その他ロボアニメ、映画漫画大好きマンです。
もちろんガンプラもネ!
さすがに定期とまでは言えませんが、まぁまぁ間隔空けずに更新していきたいところ…
拙作にはなりますが、お付き合いいただければと思います。
ではでは。
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5/10 18:06 GBN内 渓谷ステージ
「ハァッ、ハァ…!!
くっそ、なんなんだよアイツ…!!」
搭乗しているRX-78-2、初代ガンダムのコックピットで自分の悪態が虚しく響く。
雨の降りしきる渓谷フィールド。ブーストをふかし、巨大な二足歩行のロボット、モビルスーツが逃げまどう。
岩壁に囲まれた周囲、ゴツゴツとした岩石のすき間を縫うように、白い巨体を操り走り抜けていく。
ズドォォン!
「ぐあっ!?」
背後、一瞬前に自機が居た地点が爆発し、爆風に煽られ体勢を崩す。
「こンの……!」
着地と同時に背後の敵に向き直り、アタシは覚悟を決めた。
「舐めやがって……いいよ、やってやるよ!!」
岩棚から姿を現したのは、自身が乗っている機体とよく似たシルエットの機体。
───ガンダムmk-2
橙色に彩られ、血のように赤い両肩、両腕に構えた2本のバズーカ、その両腕はビーム発振器を装備し、アンバランスにならない程度に肥大化している。
アタシはこの機体をよく知っている。おそらく、現在このオンラインゲーム「ガンプラバトルネクサスオンライン」
通称「GBN」をプレイしている誰よりもずっと……!
「アンタは誰なの!?なんでそのガンプラを使ってるの!?なんで……ッ!」
片腕で光の刃を構え、満身創痍の白い機体は
橙色の捕食者に向かって果敢に吠えたのであった。
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〜〜〜10時間前。
5月の10日、暖か…というよりは少し暑いくらいの気温の金曜日の朝。
夜から天気が崩れると予報にはあったが、それも下校よりもっと後の話。
傘も用意せず悠々と歩く人たちの中にアタシは居る。
そんな同じ学校に向かう生徒で賑わう通学路の途中
「アイリぃぃぃっ!ちょっ、今日放課後付き合って!」
朝イチからアタシは喧しい高い声で迫りくる友人、島津 カナに気圧されていた。
眠そうな目に、明るめの茶髪ポニーテールがトレードマークの彼女は、それこそ小動物の尻尾のように髪を揺らしながらアタシの肩にタックルをかましてきた。
そんな朝から元気一杯な友人に、精一杯の友愛を示し………顔面を片手で掴んで止める。
「朝からうっさい」
「ご、ごめ…アッ!こめかみがっこめかみがががががが…!」
ギリギリギリとカナの顔に指がめり込む。
友人を大人しくさせたアタシ達は朝食がてらコンビニに寄ることにした。
学校のはす向かいにあるコンビニで軽食を買い、イートインコーナーで2人並びになり、校門が閉まる直前までの15分をめいめいに過ごす…いつもの流れだ。
カナはその眠そうな目にバッチリ付けたマスカラをいじり、アタシはアタシでコンパクトミラーで化粧のノリをチェックする。
父や母からは「若いうちから化粧してると肌の劣化が早くなるぞ」と咎められるが、化粧なんて今時小学生でもやっていることで、"身だしなみ"の範囲を出ないだろう。
「んでさぁ〜、さっきの話の続きなんだけど
私、Gチューバーデビューしようと思って!」
「G…チューバー?ナニそれ?」
「GBNって知ってる?なんかガンダムのオンラインゲームがあって
アバター作って色々できるの!
そこで配信したり〜、歌ったりするのよ
けっこう最近のインフルエンサーでもGチューバーから人気出た人たちが多くって……」
要するにオンラインゲームの中で人気者になりたいってワケね、と話半分に聞いていたのだが、
「だからアイリも手伝ってほしいの!」
「ハァ!?なんでアタシが!」
突然の提案に面食らってしまったが、なおもカナは続けて言う。
「だってアイリ、昔やってたんでしょ?GBN
いつだったか私に教えてくれたじゃん!」
「ぅぐ………………」
確かに言った覚えがあった、しかし中学時代の話を今更になって振られるとは思いもよらず、アタシは返答に窮してしまった。
「た、確かにやってた…けど、最近は全然……「「あーーー、ヤバいよアイリ!時間!」
スマホの時計を見ると、8:15にはコンビニを後にする予定がもう8:25になっていた。
広げていたカフェオレやらサンドイッチやら菓子パンを手早くスクールバッグに詰め込んで、2人揃って校門に走り出す。
アタシにとってGBNもガンダムも、ガンプラも、全て中学時代に置いてきたもので
好きでも嫌いでもない、自分に関係のないものだと思っていた。
少なくとも、この時、この瞬間までは………。
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群青学園高等部 2年B組 出席番号26番
藤倉 アイリ
それがアタシの名前だ。
ヘアースタイルはウルフカット、髪の色はアッシュグレー。今はコレが気に入ってる。
ピアスは左耳に1個空けている。2年前の誕生日にママから貰ったもので、大切にしてる。
目つきはパパに似て、鋭いとか目つき悪いとかよく言われるけど、そんなのはメイクである程度変えられるから特に気にはしていない。
好きなものはインディーズバンド「ヨワムシの反撃」、化粧品ブランドのリベルタ、あとはコンビニスイーツのチェックが趣味…
自分で言うのもなんだけど、割とフツーでしょ?
ただ、他人とちょっと違うところがあるとすれば────
「ちょっとー、アイリ聞いてる?」
「うおっ!?」
アタシ達は、放課後市内のGBNがプレイできるベースに来ていた。
今朝がたカナが言っていた野望を実行に移すため、友人の協力をするために
アタシは数年ぶりにGBNにインしていた。
ゲストアカウント用のハロのアバターになっていたアタシの前に現れたのは、
海賊の船長のような帽子とコートをまとった女性ダイバーだった。 肩にはガンダムSEEDのマスコットロボ、トリィを模したオウム?が乗っている。
華美な外見だが、ポニーテールの髪型と眠そうな目つきは紛れもない……
「カナ……だよね
何それ……どういうコンセプト?」
「ふっふーん♪
いいっしょ?お小遣いつかってアバターデザイナーの人に作ってもらったんだー♪」
アバターデザイナー…そういうのもあるのか…
「っていうかアイリこそ何それ…なんかその丸いの?」
カナが指し示す。アタシの今の姿は
「あー、これ?ハロだよ。
ガンダムシリーズのマスコット、一番最初の主人公が作ったロボットで…」
「ははは、ナニソレ可愛い!
アイリやっぱガンダム詳しいの?」
「あ、いや、そういうわけじゃなくて受け売りで…」
言いかけてやめた。
これは今思い出さなくてもいいものだと、友達と遊ぶだけの時間に触れなくても良いものだ、と蓋をする。
「それより、ココでなにすんの?
雨降る前には帰りたいんだけど…」
今、アタシ達がいるのはリゾートエリア。
目の覚めるような真っ青な海、綺麗な砂浜が広がる非戦闘エリアだ。
「そりゃあもちろん、初配信の準備だよ!」
カナが言うには、
まずデビュー告知動画を投稿し、いくつか方向性の異なる動画をアップしていき、視聴者の反応を見て方向性を模索していきたいということらしい。
素人考えで行当りばったりかと思いきや、意外とちゃんと考えてはいたんだなと感心しつつ、展望の話を聞いていくうちに嫌な予感がしてきた。
「で、その撮影をアイリにお願いしたいの!」
ほらきた。
正直、気乗りはしないが
収益化が叶った際にはいくらかのマージンをくれるというので承諾した。
それまでの費用は友達価格で好きに使われてやろうと思う。幸い、今はバイトも部活もやっていなければ──
「どうせ彼氏も居ないでしょ?アイリはさぁ♪」
「カメラの画角、下からばっか撮るけどいいの?」
「ウソじゃん冗談じゃん!!」
などと戯れつつ、アタシたちは海をバックに撮影を開始した。
ヤシの木、ツルナやハマゴウが生い茂る緑地と真白い砂浜、海の青が綺麗なコントラストを描く明媚な場所で
海賊船長コスプレをしたダイバー・カナが立つ姿がなかなか画になる。
「んじゃあ撮るよー」
ハロのアバターのアイカメラが点滅し、動画録画モードが起動する。
「さん、にー、いち─はい!」
「やぁやぁ野郎ども!準備は良いかー!?
私の名前はキャプテン──」
ドザバァァァァン!!!
突然、カナのバックの海面が巨大な水しぶきを上げて爆発した。
「───は?」
「ッ!?なになになに!?」
あり得ない、ここは非戦闘エリア─ガンプラバトルをしないで遊んだり話をしたりする用のエリア─だ!
「なんでこんな所で…爆発!?
カナ!大丈………ッ!?」
吹き上がる水しぶき、押し寄せる巨大な波の向こうにアタシは確かに見た。
昼の海辺の陽光に照らされて鮮やかに輝くオレンジ色の装甲、金色の2本のアンテナ、赤く塗装された両肩
特徴的なバルカンポッドを側頭部に装備したその機体は、ガンダムmk-2という機体で、「機動戦士Zガンダム」の前半主役機として有名なガンダム……。
しかし、重要なのはそこじゃない。
「あれ、は──────────」
───────あれはアタシのガンプラだ。
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アタシとカナはそれぞれのガンプラに乗って安全地帯まで逃げることにした。
─GBNでは、プレイする為にガンプラを使うことが必要不可欠だ。ただ全員が全員自前のガンプラを用意できる訳でもない。
そのため、ゲストログインや新規アカウントを作った時にレンタルガンプラを使用することができる。
──もちろん、個人制作のガンプラとは性能に天地ほどの差があるけれども。
アタシはRX-78-2.初代ガンダム
カナはジェガンをレンタルしている。
アタシ達を襲ってきているガンダムmk-2は、執拗にこちらを敵と定めて狙ってきているようで追撃の手を緩めない。
つまり、アタシ達は慣れないレンタルガンプラで、何故か非戦闘区域にまで攻撃を仕掛けられる相手から逃げ切らないといけないわけだ。
「ちょ、待ってアイリ…!私もう無理……」
「ダメだカナ!止まらないで!」
──いや、止まってしまえばいいのだ。
GBNでの敗北は=死ではない。
負けたところで、ゲストログインと新規アカウント作成のアタシたちに失うものなんて無いのだ。
だが、言いしれぬ不安がある。
何か、アレに追いつかれてはいけないような、そんな不安が………。
2機の機体が、浜辺から退避し森林の中を進む。しかし設定全高18mクラスの機体だ。木々の中に入ったとしても全体まで隠せるほどではなく、立ち上がると肩口から上は相手に見えてしまう。
オレンジ色のmk-2は執拗に攻撃を続けてくる。
ビシュウン!!
mk-2の放ったビーム・ライフルがカナの乗るジェガンの左肩を掠める。
「うぁぁぁぁぁっ!?」
「カナ、大丈夫!?」
「だ、大丈夫だけど、なんかビカビカいってるぅ〜!!!」
半泣きのカナが悲痛な声を上げる。
ダメージアラート…やはり非戦闘区域でも相手の攻撃によるダメージ判定がある。
つまり、自分たちは今"バトル中"にされているということ…。
「ッッ、だったら……!」
踵を返し、オレンジ色のmk-2に向き直る。
「ど、どうすんのアイリ!?」
「戦う……しかないでしょ、こんなの…!」
RX-78-2 ガンダムの武装は、ビームサーベル2基、ビーム・ライフル、頭部バルカン、大型の盾。
ジェガンはガンダムと同じでサーベルにライフル、盾…ハンドグレネードが3つあるが、バトルをやったこともないカナに戦力として期待をするのは酷だろう。
なら、アタシがやるしかない……何より、何よりだ。
アイリの視界いっぱいにmk-2の盾が迫る
盾をこちらに向かって投げ捨てたのだ。
「ッ………こんなモン!!!」
投げ捨てられた盾を、同じく手持ちの盾で弾く。mk-2の盾は跳ね返され、大きくガンダムの右前方にふっ飛ばされていった
その刹那。
瞬間、mk-2がガンダムに肉薄する!
2本のビームサーベルを同時に抜き、水平横薙ぎに二筋の光の刃が左右同時に迫りくる!
「こッ…んのくそぉぉぉぉぉっ!!!」
ドガァン!
ガンダムが手持ちの盾を手放し、交差する凶刃の中央めがけて蹴り飛ばす!!
燃える炎のような赤い盾が、さらなる温度で焼き切られ上下真っ二つに寸断されると同時に、ガンダムは手持ちのライフルを投げ捨てた。
アイリはガンダムの武器スロットを手早く操作しビームサーベルを2本引き抜くと、先ほどの仕返しと言わんばかりに袈裟斬りを左右同時に繰り出した!
ジジジジジジッ!!!
ガンダムとmk-2、互いに2本のビームサーベル、計4本のビームサーベルが交差し鍔迫り合う。
…間近で見るとよく分かる。
やはりこの機体は──────!
「アタシの、ガンダム……マーク、リベンジッ!!!
なんでお前が───ッ!」
ここにいるんだ!─と言いかけた瞬間、敵機の両腕手甲に装備されたビーム発振器から新たな光の刃が形成される!
「ぐうううっ!?」
閃光がはしり、アイリは自機もろとも吹き飛ばされた。
「く、くそっ、そういえばそんなんあったな…忘れてた…!」
モニターに表示される機体情報を見やると、右腕の損傷は軽微で、ダメージアラートは出ているが問題はない
しかし、左腕は損傷が甚大であり手首から先は失われ、黒煙を噴き上げていた。
敵機から距離を保ち、カナの乗るジェガンの近くに退避するアイリのガンダム。
ベキベキと、足元の木々がへし折れる音が響く。
「ハァ…ハァ……」
「あ、アイリ……」
こちらを心配するカナの声がコックピットに流れる、ダイバーの姿だが、泣きそうな顔になっているのは声からも見た目からも理解できた。
こちらは必死ではあるがハロの柔和な顔になっているのが逆に可笑しいくらいだ。
「カナ…あのさ、───」
「えっ……わ、わかった…!」
すわ好機と、こちらとの距離を縮めようとするmk-リベンジ。
手首から先を失った左腕で、カナのジェガンを守るように遮り………
合図を送る
「今だッ!!」
「そ、そぉいっ!!!」
間の抜けたなカナの叫びとともに、ジェガンのハンドグレネードが宙空に向かって投げられる。──一瞬の静止の後、後退するmk-リベンジ。
───そう、お前は退くしかない
───ライフルと盾を持っていない今のお前は飛び道具のグレネード、爆弾を処理する武装は一つを除いて有していない
───なら一歩後ろに退くしかない
だからこそ、アタシがそれを使う!!
「バァァァルカンっ!」
ドガァァァァアン!!
グレネードの爆発と爆煙が、こちら側とmk-リベンジの視界を完全に遮断する。
足元の木々に炎が燃え移り、周囲一体が炎に包まれる。
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燃え盛る森を背中に見送り、2人はアバターのまま渓谷フィールドに逃げおおせる。
地理的には、浜辺の先に森林があり、森林を越えた先に渓谷が広がっている。
アイリとカナはその渓谷にたどり着き、岩の隙間に身を隠していた。
「な、なんだったのアレ…
急に襲ってくるとか怖すぎ……」
「アタシもわかんない…
そもそも、あそこって襲ったりとかできない場所のはずなんだけど…」
状況を整理しようにも、相手の正体も相手の目的も不明瞭な今では明確な答えも出ない。
今できることと言えば、少しでも早くあの謎の敵から逃げ切って安全にログアウトすることのみだ。
「と、とにかく、もういいっしょ?
はやくログアウトして出よう、帰ろう」
「う、うん……………アレ?これログアウトってどうやるの?」
「はぁ?
メニュー画面開いて"ログアウト"って────」
ふと視線を上げると、我が目を疑う光景が広がっていた。
ジェガンの
カナの乗っている機体の
ちょうど胸から上の部分が、コックピットの上から先が"無くなっていた",
「カナ…?」
消えたジェガンの上半身があったであろう部位の先に、アイリの視線の先に
ガンダムmk-リベンジが立っていた。
(おいおいおいおい、ふざけんなふざけんなふざけんなクソクソクソクソッ!!!!)
「カナ!?カナ───ッ…」
(そうだ、落ち着け、別にGBNでやられたとしても死んだわけじゃないんだ…)
頭で考えろ、今のアタシ(のガンプラ)は左腕を欠損していて武器もサーベル1本しかない…
できることと言えば……逃げることのみ…ッ!!
なおも執拗に追撃を続けるガンダムmkリベンジを尻目に、決死の逃避行を続けるアタシは、逃げながら必死に考えていた。
非戦闘区域で攻撃─バトルを強制開始させる謎の権限、執拗に初心者狩りをやめない行動原理、何より使っているガンプラ……
そう、"ガンダムmk-リベンジ"は
過去にアタシが作って実際にこのGBNで使っていたガンプラだ。
もちろん、ガンプラ自体は家の何処かにあるし、今日この日この時ココに持ってきている筈もない。
ならなんでそのガンプラが自分を襲ってくるのか……考えられるとしたら、
「チーターか何か…でも、そんなこと可能なの?だったら何で……」
何で、自分のガンプラデータを使うのか?
それこそ現GBNチャンプであるクジョウ・キョウヤのガンプラや、"最強の代名詞"メイジンカワグチのガンプラデータを使えばいい。自分のガンプラとは、文字通り比較にならないほど強力なハズだ。
ドガァァン!!
ズドォン!
「ッ…!!」
岩陰を乗り移るように逃げ回っていたガンダムに業を煮やしたのか、mk-リベンジは肩に懸架した2丁のバズーカを両腕に携え、こちらの進行方向に向けて無差別に撃ち放ち始めた。
「あぁもう……!」
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5/10 18:06 GBN内 渓谷ステージ
「アンタは誰なの!?なんでそのガンプラを使ってるの!?なんで……ッ!」
──返答はない。
ガラガラと岩石の破片が岩棚を転がり落ち、自機─RX-78-2の足にカンカンと音をたてぶつかってくる。
渓谷フィールドのちょうど中央に位置するここは、ぽっかり口をあけたように広がる平野の入り口にある。
本来、この場所こそがこの付近のバトルフィールドな筈だ。
ならば本来の用途通りに、戦ってやろうじゃないか。
ビームサーベルを右手に握りしめ、やや斜に構え相手の出方を伺う。左腕腕は使い物にならないが、いざと言う時には盾代わりに使い捨ててやる腹積もりだ。
じりじりと橙色の機体と白い機体が対峙する。
緊張と疲労で汗が肌を流れ落ちる感覚、アバターこそ緑の球形ロボットではあるが、実際に操作している自分は生身の人間なのだ。
ゲームの中であると頭では理解しているが、視覚と聴覚を刺激するVRゲーム…GBNではまるで実際に戦場で敵と相対しているような、そんな緊張感を否が応でも感じさせる。
「……」
「………………ッ!」
機体を勢いよく加速させ、全速力で橙色の機体、mk-リベンジめがけて駆け出す!
桃色に光を放つ刃を肩から引き抜き、距離を詰めるRX-78-2。
そんな相手の行動を、まるで予測していますよと言わんばかりに2丁のバズーカの砲口を向けるmk-リベンジ
発射される双発のロケット弾
薄く引き伸ばされた時間の中で、アイリは全神経を集中させる。
──この感じ、久々だ。
──ヒリヒリする感覚、1秒の中でガチャガチャと思考が切り替わる感じ。
試験のラスト5分間のあの感覚に近い。
肉薄する弾頭が僅かに視認できる刹那の時間、あらかじめ予測し入力していた命令が作動する
──素早く体を回転させ身を捻り、ギリギリでロケット弾をかわす!!
直前に回転ステップ…アメフトのスピンムーヴの動きを手早く入力しておき、相手の射撃武器に合わせた判断が功を奏した
そのまま加速を殺さずに一気に敵機との距離を詰める!
「!!?」
直撃させたと思ったロケット弾を回避されたmk-リベンジが明らかに驚いた反応を見せる。
(目的もアンタの存在も解らないけど…とりあえず今はこれで……ッ)
ダンッッ!!!
人間で言うところの残り一間、MS一機分の距離を詰める為に大きく跳躍するRX-78-2、右手で突き出すビームサーベルはmk-リベンジの胸部、コックピットブロックを狙っている。
GBNでは多くのガンプラがココを突かれると敗北になる、急所の一つだ。
「いいかげん、落ちろぉぉぉぉッ!!!!」
最後の力を振り絞り、腹の底から声を上げたアイリが見た光景は───────
暗闇だった。
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5/10 18:18 ガンダムベース内、GBNコーナー
「……ハッ!?」
「………え、ろ、ログアウト、した?」
顔に着けているGBNギアの感触を触り、もう自分がゲームを終了していることを自覚したアイリは、汗だくになった自分の顔を拭い
ギアをそっと外す。
汗で落ちたファンデが手の甲に付いたので、制服のスカートで拭い周囲を見渡す。
急にログアウトさせられた原因に気がつく
薄暗い店内、非常灯の灯りの他に、光がこちらに近づいてくる。
「大変申し訳ございません、お客様…
ただいま落雷による停電でブレーカーが落ちてしまったようで……
電気の復旧後でよろしければ、もう1プレイ追加させていただきますが……」
手に懐中電灯を持ったメガネの男性スタッフが、GBN筐体の座席越しに話しかける。
そういえば、夜から天気が崩れるのだと気にしていたのは自分じゃなかったか。
「あ……いや…いいです…」
あの戦いから解放された安堵感か、トドメを刺せなかった心残りからか、何の感情も乗らない空っぽの言葉で返答をし、ふと隣の座席に目をやる
まだカナがギアを着けている。
「カナ?ねぇ、終わったからもう帰ろう?」
肩を揺するが反応は無い。
「え、ちょっと、まだ入ってんの?
さすがにもうアタシ疲れたから帰るよ……ねぇ、オイッ」
さらに強く肩を揺する。
反応はない。
「…………………カナ?」
パッ、パッ、と明かりが灯る
電力が復旧した店内では、有線から流れるBGMがまた流れ出した。
途中で止まったワンシーズン前の曲が
再び奏でられていた。
-----------------------------------------------------------------to be continued!
以上、第一話でした。
オリジナル主人公ものですが、特別ガンダムが好きな訳でも、ガンプラに熱意があるわけでもない、ふつーの女の子が事件に巻き込まれていく…そんな話になっております。
オリジナル機体や原作機体なども織り交ぜて活躍させていきたいと思ってます!
定期更新とはいかないかもですが、生温かい目で見守っていただけると幸いです!
よろしく!