ガンダムビルドダイバーズ コールオブプログレス   作:フルスロットルしょうくん

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キャラクター紹介

藤倉 アイリ
本作主人公。17歳。
誕生日:4/20
身長:159cm
体重:××kg

好きなもの:家族、友だち、ネイルアート、新作のコスメとコンビニスイーツのチェック
嫌いなもの:家族や恋人が死ぬ系の感動映画

好きなガンダムシリーズ:無し(現時点では)





第二話 VS ザクハイドランジア

5/11 13:25

 

 

「お待ちしておりました。藤倉アイリさん」

 

 

 病院から帰宅したアタシに、我が家の玄関先から声をかけてきた黒髪の美少女はそう言った。

 

昨日今朝に引き続き、意味のわからない展開でさすがに脳みそが処理しきれない。

 

「…誰アンタ?

会ったこと…無いよね」

肺腑から吐き出すように、か細い声でアタシは返答した。

 

 

 

「…正確には初対面ではありませんが、そうですね。

明確にお話をするのはこれが初めてになると思います。」

 

意味がわからない。

 

    ・・・・

こちとらあんな事があったばかりで、精神的にも肉体的にも疲労がピークに達しているのだ。

誰かと仲良く談笑する気にはなれなかった。

 

 

 

「聞きましたよ、お友達の事。

───心配、ですよね」

 

「…ッ!!

アンタ、な──」

何がわかるんだよ、とそう言いかけた瞬間

被せるように

 

 

「私なら、アナタのお友達を助けられる"情報"を与えられると言ったら─お話を聞いてくれますか?」

 

 

「……………は?」

 

 

 

 

 

雨上がりの昼過ぎ。

 

自宅の前の玄関の石畳の上で、黒髪を肩口でそろえ、髪と同じ程度に黒いブラウス、一段明るいダークグレーのミニスカート、ブラウンのロングブーツを履いたモデルのような美少女は、アタシにそう尋ねた。

 

肩がけバッグとは別の、

手に持った赤い長方形のポーチがやけに目にとまった。

 

 

 

------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 順を追って思い出そう。

アタシも頭ン中ぐっちゃぐちゃだから。

まず……GBNだ。

金曜の夕方に、友達のカナがGチューバーデビューしたいから手伝ってくれってことで、アタシは三年ぶりにGBNにログインした。

 

 

 そこで、三年前に使っていたアタシのガンプラ──ガンダムmk-リベンジに、非戦闘エリア内で襲われた。

本来できない場所でバトルを仕掛けられたってことだ。

 

 

 

…………そう、アタシは三年前にGBNをプレイしていたんだ。

でもその時は、ちょっと精神的にも不安定で、リアルで色々とあって本当にキツくて

あんまり思い出したい記憶じゃないし、正直、今起きてることと関係あるとは思えないし…

 

 

 で、だ。

その久方ぶりにログインしたGBNで、アタシとカナは過去の自分のガンプラデータを操る何者かに襲われた。

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カナは、その時から意識が戻らなくなった。

 

 

 

 

 

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5/10 18:55

 

「ねぇ、カナ何やってんの?寝てんの?起きてよ…ねえってば!」

 

「お客様?お客様!」

 

 明るくなった店内で、スタッフの男性と共にカナに声をかけるアタシは、自分の声がだんだんと上ずっていくのを感じた。

 

 

 カナは、GBNの筐体座席の硬い椅子の上でぐったりとして動かない。

嫌な予感がしてカナの胸部の中央に耳を密着させる。 

トクントクンと心音と、浅い呼吸が聞こえる。手首に指を当てると脈拍は消えてない。

─生きてはいる。良かった…

 

しかし、どうしたことか目を覚まさないのだ。

 

 

 男性スタッフに呼吸と脈拍があることを伝えると、彼はすぐさまバックヤードに引っ込み、救急に電話を入れてくれた。

 

 

 

 

 

30分ほどで救急車が到着し、ストレッチャーに運ばれていくカナの姿を見送ったアタシは、男性スタッフが貸してくれた廃棄予定の傘を拝借し、

雨が降りしきる中帰宅した。

疲れていたので、夕飯もお風呂も入らずに泥のように寝たところまでは記憶にある。

 

 

 

 翌日、雨は止んでいた。

アタシは朝イチでカナの運ばれた病院に赴いた。

(きっと大丈夫だろう、つよい刺激で昏倒したとか、そんな感じだろう。)

(link/連絡メッセージアプリに返信がないのも、スマホが使えなかっただけだろう。)

(起きてたら食べれるように、カナの好きなバナナクレープでも買っていってやるか。)

 

なんていう、アタシの希望的考えは

病院のエントランスホールに居たカナの両親の姿を見た瞬間に打ち砕かれた。

 

 

 

カナとは小学校以来の友人だった。

小学校、中学、高校とずっとつるんできた仲だったので、カナの両親もアタシを見つけた途端駆け寄って話を聞かせてくれた。

 

 

「お医──んが言うには、─体的には問題がない─て」「脳波にも─常は見られ─いって」「でも、起──くれないの」

「パパや、私が──ら声をかけても…」

「アイリちゃ──もお話──て─げてね…」

 

 

 

なんて言うんだろう、こういうのは

ちゃんと耳は聞こえてるはずなのに、水のなかにいるような…音がくぐもって聞こえる。

 

 

 

ちゃんと会話をしたはずなのに、相手の声をよく聞けてなかった気がする。

 

 

 

───たぶん、ショックがでかすぎてアタシが理解したくないだけなんだろうね。

こんなこと前もあったから知ってる。

 

 

 

 

 

 

 気がつくと、病院の正面入り口の前に立っていた。 

足元には頬を伝って落ちた水滴が2.3個コンクリートに跡をつけていた。

 

 

 

 

 

 

------------------------------------------------------------------------

5/11 13:10

 

 雨上がりの住宅街、アスファルトの端っこや溝の部分にはまだ雨に濡れたあとが残る道を、力ない足取りで歩きながら考える。

 

 

塀や電信柱、戸建て住宅が何十メートルも続く、何千回も歩いた道を無意識に歩きながら

ずっと脳みそでは思考がぐるぐるしている。

 

 

 

 

 意識不明?GBN…ゲームで殺され……撃破されたから?あり得ない。

「フルダイブ型オンラインゲームに取り込まれて、負けたら=現実世界での死」なんていうのは漫画やアニメやゲームや小説の話で、実際にあるわけない。

 

頭では理解している。

そんなことは、フィクションと現実が違うなんてことは、来年で成人になる自分の頭ならちゃんと理解できるはずなのに。

 

 

心の底で納得できない自分がいるのもまた、事実だ。

 

 

 

 あのガンプラ…あの自分の過去の機体が、自分の友達を奪った…?あり得ない。

じゃあアレは、カナがあんなことになったのは、アタシのせいなのか……?あり得ない。

 

じゃあなんでアタシは無事だった?負けてないから?

 

 

「………ッッ!!!」

 

 

そこまで逡巡し、

気付いた瞬間、胃の中がひっくり返りそうになった。

 

------------------------------------------------------------------------

【と、とにかく、もういいっしょ?

はやくログアウトして出よう、帰ろう】

 

【う、うん……………アレ?これログアウトってどうやるの?】

 

 

【はぁ?

メニュー画面開いて"ログアウト"って────】

------------------------------------------------------------------------

 

 

(アタシが先に、カナにログアウトの仕方を教えて、ログアウトさせておけばよかったんじゃない─!?)

 

 

 

 

なんで戦闘に乗った?

カナは初心者で、少なくともあの時点では、ガンプラバトルを目的としてログインしたわけじゃないのに

 

 

 

浅薄にも過去の自機との戦闘に応じたのは、紛れもないアタシだ。

 

 

「…………………………………………………………スン…」

馬鹿過ぎた自分が嫌になって、叫びたくなったが、そんな元気もない。

鼻をすすることが精一杯だった。

昨日の夜、今朝も何も食べなくて正解だったかもしれない。なにがしか胃に収めていれば、今全て吐き出していただろうから。

 

 

 

(自分が嫌になる……)

 

気がつくと自宅まであと5メートルほど、隣家の前まで来ていたのか。

4歩ほどの距離が今はとても遠い。

 

 

 

いつもこうだ。そういえば三年前のあの時も…………

 

 

 

 

「藤倉…アイリさんですね?」

 

何故か、自宅敷地内…塀の内側から出てきた黒髪の─控えめにいって、そう喩えても申し分のない─美少女に声をかけられた。

 

 

 

あっけに取られたアタシは、何も言えずにただ立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました。藤倉アイリさん」

 

 

 

 

 

 

 

黒髪美少女とアタシの頭上には

雲一つない青空に、太陽が眩く輝いていた。

 

 

 

-----------------------------------------------------------------------

 

5/11 13:30

 

 

 

「か、カナの──アタシの友達を助けられる情報って…何さ?」

 

こう聞くのが精一杯だった。

 

 

 

 

 

 今のアタシを、はたから見れば酷い格好だろう。

ウルフカットの髪は、ホンモノの狼の体毛のようにボッサボサ。

涙と汗で落ちてにじんだファンデとアイシャドーのせいで目元はゾンビみたいだ。

衣服は昨日の朝から着ている学校指定のブラウスにスカート。まぁまぁ臭う。

 

 

対して、黒髪の美少女はキューティクルが綺麗に輝いている。

「天使の輪」と呼ばれる美しい髪の輝き、自分には縁遠い代物だ。

切れ長の目元と薄い唇は、昨今流行りのギャルメイクとは相性が良くなさそうだが、

逆に上品な、大和撫子的な美しさを醸し出している。

黒でまとめられたファッションは逆に着こなすのが難しいものだが、完全に着こなした彼女のファッションは気品すら感じるほどだ。

 

 

(なんだコイツ…読モでもやってんのかってくらいの見た目だな…。)

 

 

 

 

しかし、彼女のその美しい唇から飛び出した言葉は

おおよそ不釣り合いかつ不似合いなものだった。

 

 

 

「それを説明するためにも────私と、ガンプラバトルをして下さい。」

 

 

「……………………………………は?」

 

何言い出すんだコイツは。

ガンプラバトル?この美少女が?アタシと?

 

こんな状況なのに?

 

「……いや、無理。

そんな気分じゃないし、第一アタシは─」

 

 

 

「お友達の意識が戻らなくても良い、と?」

 

 

 

 

「──は?」

 

自分がどんな顔をしているのか、鏡がないから解らないが

崩れた化粧と、感情を失い見開いた目で睨めつけていた自分の顔は…きっと凄まじい形相をしていたと思う。

 

黒髪の美少女は意に介さず、一拍置いて口に出した。

 

「……昨日、市内のGBNベースで女子高生が昏倒し緊急搬送された、という情報が入りました。

 

加えて、アナタのその格好…今の口ぶり、その反応…」

 

「で?なんでそれでアタシの友達のことだって解るワケ?

アンタまさか………」

(あの襲撃者の仲間だとか抜かすんじゃないだろうね?)と、怒気を込めて言うその前に

 

「先ほどアナタのお母様からお聞きした内容とすり合わせると、

アナタのお友達ないしお知り合いがその被害者ではないか、と

 

思ったまでですよ」

 

 そういばコイツ、アタシの家の敷地から出てきたな……成る程。

うちの母はなんでこう…誰にでもベラベラとお喋りするんだろうか…。

っていうか、推察でしかないじゃんそれは。

 

「…………最初に言ったことって、カマかけたってわけ?」

「ハイ♡」

 

満面の笑顔で答えられた。

アタシが男だったらキュンキュンメロついてたであろう百万ドルのスマイルは、残念ながらアタシの心を動かすには至らない。

 

 

 

「それに─」美少女は続けて言う。

「そもそも、その件が無くても私はアナタを訪ねていましたし、ね…」

 

ワケのわからないことを言う。

 

 

 

空腹、寝不足、気力体力は底をつきそうだが、冷静に考えた質問をぶつける。

 

「…っていうか、カナ──友達を助けられるって何?

確かに、アタシの友達は昨日から意識が戻らないけど……そんなの自然に回復するかもしれないじゃん。

 

病院でお医者が診てるし、家族だってついてる……あんなゲーム、お遊びでアタシにできることなんて──」

 

 

 

 

「5件起きてるんです。

GBNベースでプレイヤー…"ダイバー"が意識を失う事件が。

そして、先の5名は未だに意識が戻っていません…。」

 

 

黒髪の美少女は、その整った顔立ちの眉尻を上げ、毅然とした目つきでアタシに向けてそう言い放った。

 

 

「アナタのお友達が、6件目でない保証も無いでしょう?」

 

 

 

 どういうことだ、たかがゲームだ。

ガンプラを戦わせて遊ぶ、仮想空間でのゲームで、なんでそんなことに……。

 

 

……解らない、理解できない。

この状況もわからない。

アタシにとって、何もかもがついていけない。

 

 

「アンタ、何を知ってる………?」

さんざん逡巡した結果、アタシから出力されたのはコレだった。

 

 

 

 

「ですので、私の話に乗ってほしいのです。

 

 

私とガンプラバトルをしてください。お願いします。」

 

 

 

話が振り出しに戻った。

 

 

 

 

 

 

私には、

 

 

 

 

 

 

その提案に乗る以外の選択肢が考えられなくなってしまっていた。

 

 

 

 

-----------------------------------------------------------------------

 

14:20 市内ゲームセンター

 

 

 

 アタシの家がある住宅地から、南に徒歩15分の場所に、昨日カナと行ったところとは別のGBNベースが設置されたゲームセンターがある。

 

プラモデータの射出成形機は無いが、ゲームとしてプレイするだけなら誰でも気軽に行くことができる場所だ。

 

 

"盛り場"と言われ、校則では行ってはいけないことになっているが、土曜の今日は年の近い男女が多く、それなりに盛況のようだ。

 

 

 

 アタシと黒髪の美少女は、道すがら自己紹介など…という気分にもなれず

アタシの視線など意に介さずスタスタと歩くこの女と、幽鬼やゾンビのような風体で歩くアタシとで、はたから見たらよくわからない二人組が無言で歩くという

地獄のような十五分間を乗り越え、ココに到達した。

 

 

互いにGBNのヘッドギアを装着し、GBNにインする。

 

 

 

昨日は、横にカナがいた。

昨日のこの瞬間は、複雑だが楽しい気分でもあったが……今は違う。

 

 

 

「ねぇ、いい加減名前くらい教えてよ。」

アタシが真正面を見据えながら尋ねる。

 

 

「…私に勝てたら、目的も氏素性も、全部お話しますよ。」

 

 

 

 

 

この1時間ほどで解ったことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……アタシ、コイツ嫌い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------------------------------------------------------------

 

ステージ  宇宙空間

 

 

 

 漆黒の闇の中に、コックピットに乗った状態で転送される。

 

 

 

 アタシの格好は前回と同じ、ゲストログイン枠のハロだ。

 

 

そして機体は"ガンダム・バエル"という機体をチョイスした。

 

 

 

 

"機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ"に出てきた機体だそうで、アタシは正直何も知らない。強いのかコイツは?

 

 

「ほう……ガンダム・バエルですか

なかなか良いチョイスだと思いますよ。」

 

モニター越しに対戦相手の声が響く。

 

「ていうか、アナタご自身のガンプラはないんですか?」

 

「あ、あるわけないじゃん…」

嘘だ。

 

 

 

 一応、ココに来る前に一度帰宅し、棚に置いてある昔の機体"ガンダムmk-リベンジ"のガンプラを持ってきてはいた。

GBNにログインをする際にも、ガンプラスキャニングを試してもいたのだ。

──結果は、まぁ予想はしていたけど【使用不可】だった。

スキャニングエラーではない、使用不可…。

 

仕方なしに、今回もレンタル機体を使わせてもらうことにしたわけだ。

 

 

 

「…まぁ、良いでしょう

どのみち私のやることは変わりませんし、ね…!」

 

 

 

ブースターをふかした紫色の機体が迫る。

機体識別はザク、こいつは知ってる。

初代ガンダム…アタシが昨日乗ったガンプラが登場する作品に出てくる量産機体だ。

 

 

 

本来は緑だったりピンクだったりする機体だが、この機体は相手のオリジナルカラーになっているようで、紫を基調としパステルピンクで差し色が入れられている。

 

 

 素人目に見ても配色のセンスはなかなか良いと思う。

緑の部分は紫とダークパープル、黒い部分はピンク…と女の子らしい配色になっている。

見た目の鮮やかさに一瞬気を取られたが、今は戦闘中だ。

 

 

コイツに勝って、カナを助けられる……かもしれない情報をもらう。

アタシのやることは決まっている。

 

 

 

ブオオオッッ!!

 

「ッ!?」

なんだコイツ速くない!?

 

一瞬で遠目に見ていた紫色のザクが眼前に迫り、両手に持った2本の斧をこちらに振り上げる!

 

 

ガギィンッ!!

「…!」

「ぐっ、ぐぐぐ…」

 

 

 

ガンダムバエルの装備する2本の剣をとっさに抜いたアタシは、双方向から迫る斧を間一髪でガードする。

 

「反応は上々、良いですね…。」

「そりゃ、どーもッ!!」

 

 

双剣で斧を弾き、左脚で強烈な蹴りを叩き込む。バエルの蹴撃は相手の脇腹に直撃し、距離が離れた。

 

 

この隙は逃さない…!!

 

 

 

今度はこちらから突撃し、斬り込んでいく。

ちょうど先ほどの奇襲をこちらがやり返す形になるが、相手はまだ体勢を立て直せていない今が好機だ。

 

 

「…蹴りはザクの専売特許というわけではない、ということですね…」

「ワケのわからないことをゴチャゴチャと!」

 

もらったッ!

 

ドギャァッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

「ぐああああああぁっっ!?」

          ・・・・・・・・・

吹き飛ばされたのは、アタシのバエルの方だった。

 

白亜の機体は、突如右後方から受けた衝撃により錐揉み回転しながら無様に飛ばされ、宇宙空間に数多ある隕石にぶつかり、胸部をしたたかに打ち付けた。

 

 

(なんだ!?

何が起きたんだ、今の一瞬……!)

 

アタシのバエルの右の剣を、確かに相手の紫色ザクの首元に叩き込んだハズ…だったのだが、

紫ザクはまるで"人間のように"身を捻り、斬撃を回避した。

バエルの斬撃は空を斬り、伸ばしきった右腕では防御も間に合わず、これまた"人間の動きのような"回転蹴りをモロに喰らいぶっ飛ばされたのだ。

 

 

 

「ぐっ、何なのアンタのその紫ザク…

インチキくさい動きして…!」

 

モニターに表示されたアラートの表記、さっきの衝撃で右のスラスターがやられた……もう高速移動は無理か。

 

 

 

 

まるで獲物を前にした肉食動物のように、

ゆっくりと、近くの隕石に着地するかのように脚を付けたザクが語る。

 

 

 

「"ザクハイドランジア"……

 

ただのザクじゃあないんです、

…紫ザクなんて呼ばないでもらえます?」

 

 

ダンッ!ガ、ガ、ガ、ガガガ!!

 

 

宙に浮いた小島のような隕石を勢いよく蹴りつけ、跳躍する紫ザク──ザクハイドランジアはそれを繰り返す。

 

縦、横、斜め、上、下、左、右、文字通り縦横無尽に大きめの隕石を蹴り跳躍を繰り返し、跳ね回る!

 

 

あんな動き、普通のガンプラにできる動きじゃない!

まるで水中を自由に動き、ターンを繰り返す水泳選手のように、アタシのバエルの周りの距離を詰めてくる。

 

 

 

「ガンダムバエルは射撃武器を一つしか持たない、メインの武装はその双剣のみ…

実に良い選択でしたよ──"私のザクハイドランジアの相手として"ね!!」

 

 

 そういう意味か!とツッコんでやりたいが、そんな場合ではない。

 

 

 

逃げ出そうと背を向けた瞬間、斬りつけられるであろうことは想像に難くないわけだし

突撃しようにもスラスターを潰されたバエルでしたとて、だ。

 

"一発逆転の術"というものがGBNのシステムには存在するが、レンタルガンプラでは使用ができない。

 

 

 

どうする?降参するか?

付き合ってやったんだ、相手の希望には沿っただろう、もう───

 

─────────────────。

 

 

 

 

 

「…冗談じゃない!」

勝たないといけない理由はないが、負けてやる理由はもっと無い。

 

一瞬の最中、思考を巡らせる。

さてどうする、攻めるならどこだ?

そういえばさっきアイツが、バエルには射撃武器が一つあると言ってたな…。

 

 

アタシはバエルのスラスターを動かし、少し姿勢を変えると、両の腕を下げ、構えを解いた。

まるで"さぁどこからでも攻撃してください"と言わんばかりの状況だ。

相手もそれを察したらしい。

 

 

 

「───やっぱり、誘わなきゃ良かったですね。

無駄な時間だったのかも」

 

 

 

 ザクがバエルに最も近い隕石に脚を置き、蹴飛ばす勢いを乗せてこちらに向かってくる。

位置関係的にはバエルの頭上、ほぼ真上に近い位置にある隕石─機体の倍ほどもある巨石を足場に、真っすぐこちらに飛来してくる

 

 

 

「しれませ────」

 

バキャッ!!!

ガガガガガガガガガガガッッ!!

 

「!?」

 

大きな破裂音をたて、ザクハイドランジアに無数の礫が襲いかかる!

 

「(自分の間近にある隕石を、バエルのレ超電磁砲で撃って破壊した─!)」

 

ガンダムバエル唯一の射撃武器は、翼状のスラスター上部に備えた超電磁砲が各翼に1門ずつ。計2門の実体弾兵器だ。

 

その威力はお世辞にも高いとは言えず、MSに対する有効打に欠ける─いわば牽制用兵器だ。

 

仮にこちらのザクハイドランジアに直撃したとしても、勢いを殺すには至らず

ましては致命傷になるはずもない…そう確信していた。

 

 

 

 それほどまでに、ここGBNでは作り込まれたガンプラとレンタル用ガンプラデータの差は大きいのだ。

 

まともに必殺武器の直撃を食らえばダメージは大きいが、牽制用超電磁砲やバルカンなどどれほど喰らった所で落ちる心配などない。

 

 

 

しかし、ステージオブジェクトは別である。

 

 

 

動かない的であり、当てることも砕くこともできるステージオブジェクトである隕石は、バエルの超電磁砲によって粉々に砕かれ、無数の礫となって───ザクハイドランジアの視界を一瞬だが塞いだのだ。

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおっ!!!」

「──なッ!?」

 

 

 

 

 

 残った左側のスラスターをふかし、三角飛びの要領で巨石を蹴り飛ばした反動で、バエルがザクハイドランジアの背後をとった───!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんの真似です?

さっさとトドメを刺せばいいじゃないですか」

 

「馬鹿、そしたら終わっちゃうでしょ

 

─約束でしょ。

教えてよね、カナを助ける方法……アンタのことも」

 

 

バエルの黄金の剣の切っ先が、ザクハイドランジアの後頭部に突きつけられる。

その状態で、2機の巨人はまるで時が止まったように固まっていた。

 

 

 

 

一瞬の静寂のあと、ザクハイドランジアの乗り手が吐き出す。

 

 

「先ほどの言葉、訂正しますね」

「?」

 

 

 

「アナタは見込み通り、強い人でしたね。」

 

 

 

 

 

モニター越しに、

黒髪の美少女の微笑みが、見えた気がした。

 

 

 

 

 

-----------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 そのままモニター越しに、黒髪の美少女は告げた。

 

 

「私の名前はヒカル──海原 ヒカル。

うなばらに光るで、海原ヒカル」

 

 

「え、かいはらって……まさか」

 

アタシは聞き覚えのある、懐かしい名前に面くらい、しどろもどろに聞き返す。

 

 

 

「ええ、そうです。

 

 

 

 

 

 

アナタの亡くなったお兄さん、藤倉 ソウマさんの親友

 

 

 

─海原 シンイチの 妹です。」

 

 

 

 

三年ぶりに聞く、幼なじみの名前を思い出し、何も言えなくなっているアタシを尻目に黒髪の美少女─海原 ヒカルは続けて言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤倉アイリさん、お願いです。

 

 

 

私の友人も、あの謎の襲撃者に奪われたんです。

 

 

 

 

──────────協力、しませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 空気がない宇宙空間には、当然大気の流れで生じる風も吹かない。

だけど、この時─海原ヒカルに誘われた時、アタシは───

 

 

 

 

背中に向かって吹きつける、風を感じた………気がした。

 

 

 

 

 

-----------------------------------------------------------------to be continued!




以上、第二話でした!

今回登場のザクハイドランジアの"ハイドランジア"とはアジサイのことですね。
紫や青の鮮やかな花から着想を得てネーミングされた設定です。

機体の秘密に関しては今後明かされていく予定です
今回入れたかったけど入り切らなかった…

ではまた次回
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