原作小説を元にしているので映画勢には配慮していないかもしれません。
駄文ではありますがよろしくお願いします。
始まりあるいは終わり
「やあ、リドル。そろそろ君が来る頃だと思っていたよ」
眼前の青年はそう言って朗らかに微笑む。その顔は出会ったあの時を彷彿とさせるほど変わらないものだった。
「アバダ_ケダブラ」
この俺様が何十何百と唱えてきて初めて、初めて躊躇して放った緑の閃光は彼が手を振ることでさっと消し去られ、かつての同室の彼はゆったりと足を組み直す。
この余裕そうな態度にいつも心をざわつかせられる。
「そんなに焦らないでよ。時間はたっぷりとあるんだ。さあ、紅茶もスイーツもある。君は甘いものを好んでいただろう。」
今まさに自分を殺そうとしている相手に取れる態度とは思えないが。
そもそもあの時代、甘いものは穢れた血どもの戦争のせいでめったに食べることができなかったというのに。
溢れ出ようとする言葉が押し込まれる。喉がひどく渇いていく気がする。
「さあ、リドル。思い出話に洒落込もうじゃないか。」
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コンパートメントに乗り込むとすぐに先輩となるマルフォイ家の子息やブラック家の令嬢、そして同級生のエイブリーを見つけることができた。
お調子者の彼はどうやら面白い噂を聞きつけたらしくニヤニヤとしながら僕の肩に肘を置き、口を開いた。
「聞いたかい?どうやら最後尾にかなりの美少年が座っているらしい。女の子達が噂してたんだ。」
「へえ、君がそんなふうに言うなんて。家名は?」
「いや見たこと無いし第一、僕たちと同じ学年で純血名家ならみんな知り合いのようなものじゃないか。ということは混血かマグル生まれってことさ。」
「見に行くかい?」
三日月型に細められた瞳が2つ、こちらを覗き込む。
僕はそれを躱すようにマルフォイ_先輩やブラック家の面々が他の上級生と話しているのを視界にいれて、
「いや、遠慮しておくよ。動物じゃあるまいし。見ていて楽しめるものではなさそうだ。」
興味がないのか、女子たちに噂されているのが気に食わないのか、はたまた純血名家ではないからなのか、理由はよくわからないが僕の返事に彼はフウンと言って話をそれ以上掘り下げはしなかった。
そうして彼はとめどなく調子の良い話をし始め、それを流すため僕は本を開いた。
彼の話は決して退屈ではないが切りどころが見当たらない。お父さんが素晴らしいコレクションを手に入れたという話をしていたと思えばいつの間にかクィディッチにまで話が飛んでいるのだ。
よくもまあそんなに次から次へと話題が出てくるものだ。まあ、口下手な僕からすればありがたいことだけど。
列車を降り、ゆらゆらと小舟に揺られ、見えてきたホグワーツ城は東西南北に大小さまざまな塔が立ち並ぶそれは壮大な城だった。
もちろん親や親戚からホグワーツのことは聞いている。しかしそれを抜きにしてもほう…とほうけてしまいそうになるほどの美しさが眼の前にはあった。
そして今まで視界薄っすらと瞬いていた青白い糸のような魔力はホグワーツでは炎や煙として濃密に漂っている。かつて見たことのないほどの圧倒的な魔力の痕跡に胸が高鳴る。研究を行うに退屈しなさそうだ。
これからの生活を思い浮かべると、心臓が高ぶり、無意識に笑みが溢れ出る。
緩む頬を引き締めながら険しい小道を進み続けるとやがて大きな扉が見えてきた。
細やかな意匠が掘られた重厚な扉がゆっくりと開かれ、視界いっぱいに奥が見えないほど広い大広間が広がった。
城内にはいるとまず目に入ってきたのは天井に浮かぶ無数のろうそくだった。やはりかの創始者が作った代物は桁が違うのだろう。これまで見てきたどんな城でも見たことのない高等魔法が使われているようだった。
四方でゴーストが飛び、そこいらの新入生にちょっかいをかけている。
ゴーストをこわごわと見つめているのは大方マグル生まれか。
壇上には教師が、4つの長机には各寮の先輩となる方々が歓声を上げながら新入生を拍手で出迎えてくださっている。
どうやら副校長と思わしき先生が組分けについて説明していたようだが周りを見渡しても皆初めて見る景色に夢中でろくに聞いていないようだ。かく言う僕もそうだが。
そのうちに古びた帽子が歌い始め、アルファベット順に名前が呼ばれていった。組分けとはどうやらあの帽子を被ることらしい。
我が家の人間としてスリザリンだとは思うが、もし、万が一にもレイブンクローならまだマシかも知れないがハッフルパフやグリフィンドールにでもなってしまったら一体親に何と言われることか…
今まで一度も感じなかったはずの緊張がさっと頭を駆け巡る。
そんな僕を見てエイブリーはにっかりと笑い、「俺達がスリザリンじゃないわけがないだろう?」
そう軽口を叩いてAのエイブリーはさっさと呼ばれ、椅子に座り帽子を被せられ_るや否や
「スリザリン」
と言われ悠々とスリザリンの長机に座り、こちらを見てニコッと笑った。
その笑顔を見ると暖かな安心感が胸の中に広がり、同時に自分よりちょっとばっかしアh…、馬k…お調子者な彼が入れたのだから僕も入れるはずだという謎の自信が湧いてくる。
そうこうしているうちに
「グリーングラス・ケイロン」
先程までの不安はもう感じなかった。みんなが見ている中、ゆったりとしかし堂々と前を向いて歩く。流れる好奇の目もなびく髪の毛も気にはならなかった。
椅子に座ると、視界がさっと暗くなる。
途端に低くしわがれた声がした。
『ううーむ、君はスリザリンを望んでいるのだね。しかしレイブンクローいやグリフィンドールにも入れる素質がある。
いやもちろんスリザリンには十分に適正があるがね。』
(なんだって、レイブンクローならまだしもグリフィンドール?お断りだね。僕は研究のためにも家のためにもそして友人も…)
『よろしい。よろしい。君がそう決意しているのであれば』
「スリザリン」
明るくなった視界の先に微笑んで拍手をするエイブリーやマルフォイ先輩、ブラック先輩も見えた。
エイブリーの隣に座り、スリザリンに入れた喜びを交わしながらやっと落ち着いて壇上を見ることができた。
「リドル・トム」
そういわれてでてきた彼をみて
「あれ、あの子だよ。列車の中で女の子たちが噂していた子。ウワーここから見てもハンサムだ」
確かにその少年の顔立ちは整っていた。周りの女の子もひそひそと騒いでいる。
そうして彼の頭が帽子に触れるかどうかの内に
「スリザリン」
そう呼ばれて僕たちの居るところとはやや離れた対角線上の所に座った。
早速女子生徒や、家名を探る者たちに囲まれている。
「彼、組分け早かったね。そういえばケイロン、お前少し組分けが遅かったようだけどどこと迷っていたんだ?」
「レイブンクローさ、素質があるんだって。」
僕は肩をすくめて返した。
「へえ、でもぽいなあ。だって君がレイブンクローでも正直違和感ないよ。
でもせっかく7年一緒に過ごすんだ。一緒のスリザリンで嬉しいよ。」
…まあ嘘は言ってない。本当のことを言ってるわけでもないけどね。
そのうちに組分けは終わり、机の上には豪華なご馳走がざっと並んだ。
ローストチキンにローストビーフ、ヨークシャープディング、ベイクドポテト、シェパーズパイ…これにはどの寮の生徒も目を輝かせた。
隣のエイブリーは料理を取り分けているし、眼の前のゴイルにいたってはすでにローストビーフを口に含んでいる。
そういう僕も挨拶もそこそこにフィッシュ・アンド・チップスとマッシュポテトに手を伸ばしたわけだが。
そうしてお皿の料理に底が見え始め、ちらほらとアイスクリームやアップルパイ、糖蜜パイにエクレアだのドーナツだのに手を出す生徒が見え始めた頃、僕たちのそばにマルフォイ先輩とブラック先輩がやってきた。
「やあ、グリーングラス、エイブリー、ノットとゴイル。このあたりは君たちが揃っているんだね。まずは入学、そしてスリザリンへの入寮おめでとう。僕たちは君たちを心から歓迎するよ。」
「スリザリンに入ったからには相応の成績と態度を求めます。スリザリン生として恥じない振る舞いをするように」
「ありがとうございます。期待に恥じないよう精進します。マルフォイ先輩…ええーっと
横目にルクレティア・ブラック嬢を見た僕を察して
「ヴァルプルガでいいわ」
「よろしくお願いします。ヴァルプルガ先輩」
満足気に去っていく二人を見て、
「とりあえず挨拶ができてよかったよ。でもマルフォイ家やブラック家傍家のヴァルプルガ先輩にわざわざ挨拶してもらうなんて…」
ノットの言う通りだ。これでは面目が立たない。
「本来なら僕達からしないと行けないからね。エイブリー、今からでも遅くない。他の純血貴族…まずはルクレティア先輩からだな。挨拶をしにいこう。」
「賛成だ。ノット、ゴイル、俺達と一緒に挨拶しに行こうぜ。」
そうしてつつがなく4人で純血貴族の先輩に挨拶を済ませ、ついでに他の純血の子息令嬢と挨拶をし、やや長いディペット校長の挨拶を聞き流した僕たちは寮に向かった。
石造りの階段を下ると、ひんやりとした空気が頬をかすめ、先程までの大広間の熱気がさまされていく。
監督生の先輩が一見何も無さそうな石の壁に向かって
「エメラルド」
と放つとエメラルドグリーンとシルバーを基調とした重厚感のある談話室が姿を現した。
どうやらスリザリン寮は地下、それも水の下にあるらしく窓からは緑色の光がゆらゆらと入ってくる。
部屋は石造りで中央には暖炉と革張りのソファが置いてある。
シンボルの蛇と骸骨は如何にもな純血主義の貴族が好みそうだ。
「一年生諸君、ここが我らがスリザリン寮の寮室だ。合言葉は2週間毎に変わるからきちんと覚えておくように。」
「寝室は廊下を進んで向かって右が女子寮、向かって左が男子寮よ。寮は5人1部屋。ちなみに男子は女子寮に入れないからね。」
女性のこれまた監督生のバッジを付けた上級生が釘を差す。
そうして監督生の案内で一年生は寝室に入っていった。
寝室もまたエメラルドを基調とした石造りの部屋で中にはグルッと囲むように4本柱の天蓋付きベッドが5つとキャビネットが置いてあった。
「ケイロン!!」
振り返るとエイブリーがいた。
「君と一緒の部屋で嬉しいよ。改めてこれからよろしくな。」
「僕も君と同室でよかった。そうだ、父上に手紙を書かなくては。スリザリンに入ったし、君とも同室だ。きっと喜ばれる。」
間違いない、と二人でトランクから羊皮紙を出そうとした時、コンコンコンと規則正しいノックが3回聞こえ、振り返ると例の美少年が入ってきた。
「こんにちは、君たちが同室なのかな?僕はトム・リドル。リドルと呼んでくれ」
「わぁーお 君と同室なんてびっくりだ。あ、僕はオーベロン・エイブリー。好きに呼んでくれていいよ。そういえば君、家系は?」
おい、エイブリー。リドルなんて聞いたこともない家系なんだからわざわざ聞くなよ。スリザリンに来たのだからマグル生まれじゃないにしても混血なのは間違いない。ここで穢れた血なんて言ったら面倒なことになるぞ。
と視線を送ると、
「僕は親がいなくてね。でも父親が魔法使いだ。」
「へえそうなのか。まあでもスリザリンに来たってことはきっとどこかで名家の血を持っているってことさ。
それでOKじゃないか。よろしく、リドル」
僕の思いが通じたようで何より。
「はじめまして。リドル。僕はケイロン・グリーングラス。名字の方がちょっとばっかし長いからケイロンでいい。これからよろしく。」
「ああ、エイブリー、ケイロンどうぞよろしく。」
そうして次にやってきた2人(残念ながらノットとゴイルではなかった)を交えて挨拶をし、雑談をしようとしたが、みんなクタクタだったのか早々にベッドに入り眠りこけてしまった。
ベッドに入り天蓋をじっと見つめる。隣のリドルのベッドは天蓋のカーテンが降りていて中を見ることはできないが微かに音がするあたりまだ起きているだろう。
挨拶の時、リドルに家名を持ち出したときのあの目。にこやかではあったが警戒を持っているだろう。まあそれ自体は構わない。むしろスリザリンらしいとさえ言える。が、それを抜きにしてもどこか油断ならないような言葉にできない危うい目をしていた。
エイブリーはお調子者だからきっとそこまで気にしていないだろうが…気をつけたほうがいいだろうな。彼は。
そんなふうに考えているとあっという間に眠りの渦に飲み込まれていってしまった。
そうして僕たちのホグワーツ生活がはじまったがトム・リドルという男は全く素晴らしい生徒だった。そして警戒というニ文字が馬鹿らしくなるほどの優等生であった。
ホグワーツでのスリザリンの初めての授業は呪文学だったが、彼は浮遊呪文、ウィンガーディアムレヴィオーサで羽を浮遊させる呪文を一発で成功させ、教師から点数をもらっていた。無論僕も純血名家なのでその程度の事は当然できるが。
しかし彼の快進撃はこれでは済まなかった。
寮監のスラグホーン先生の魔法薬学では完璧な調合と知識を披露し、すぐに気に入られていた。
変身術でも、闇の魔術に対する防衛術でも薬草学でも天文学でも彼は完璧だった。そしてなにより魔法史のビンズの授業でも眠ることなく真面目に聞いているというのだ。
全く信じられない。そんな事ができるのは人間じゃないよ、全く。
1ヶ月もたたないうちに彼は校内で眉目秀麗、才徳兼備な素晴らしい模範生という称号を恣にした。
彼は誰に対しても人当たりがよく、空いた時間は常に図書室にいた。宿題は誰よりも先に終わらせ、どんなに難しい呪文も軽々とできるそんな人だった。
そんなものだから同室のエイブリーはもちろんノットもゴイルもクラッブもマルフォイ先輩も果てはルクレティア先輩、ヴァルプルガ先輩も彼を褒め称え、先生方も彼をホグワーツ始まって以来もっとも優秀な生徒なのではないかと噂した。当然スラグホーン先生はリドルを気に入り、彼を見ると好物の砂糖漬けパイナップルを見つけたかのような笑顔で話しかけるのだった。
そんな僕といえば寮内の人間とは良い距離を保ちつつ、寮外の人間と諍いを起こすこともなく成績はある程度の上位をキープしたまま得意の研究に身を捧げるのだった。
エイブリーを見ているとどうにも確信が持てないが、ある程度の名家の子息令嬢は初歩的な内容なら予習を済ませている…はずだ。
僕は最低限の先取りはすでに家で済ませているし、(最もこれは僕の好奇心と家の財力が合わさって可能になっただけだが)満点は取れずとも予習と復習を軽くしておけば成績が落第するということはないし、ましてや宿題ができないなんてこともない。
だから変身術のレポートができておらず、僕とリドルに泣きついている同室3人組は放っておいてよいのだ。
リドルは寝室ではよく、というか毎日本を読んでいるが僕は研究の分野として古代魔術を行っている。将来は貴族当主として動かなければならないが、それはそれとしてこの古代魔術の研究を仕事にできたらいいなと思っている。まだ趣味の域をでてないし、誰にも言えてないけれど。
古代魔術は魔法理論に相当する分野だ。けれど主要な魔法学を学ぶだけでは到底足りない。なんせルーン文字、魔法史、天文学にも痕跡があるのだから。…やることは山積みだ。
それはさておき
「ケイロン、君は何の本を見ているんだい?」
ああトム・リドル。君は秀才だから自分が知らない分野が気になるんだね。
「ただの個人的な興味関心に基づく本さ。君が興味を持つ分野ではないと思うよ」
「でも僕も本が好きなんだ。ぜひ君の呼んでいる本が知りたい。」
だから君が気にするようなことではない。
そもそも古代魔術と思わしき痕跡は多くの人が視認できない。
僕だって見えている、というだけで大々的に使えるわけではない。
今までこれが見える人に出会ったことはないし、彼の口ぶりからして彼もまた見えてはいない。
だから説明の意味がないのにこの秀才さんと来たら毎日言葉を変えてさりげなく尋ねてくる。
ああマーリンの髭、放っておいてくれ。
そうして再び彼に背を向ける
悔しそうにしていることなんてお見通しなんだからな。
なんならスラグホーン先生に僕のことをさりげなく尋ねていることも、僕が借りた本を図書館で借りていることも知っているからな。
別に隠しているわけではない
それでも彼はどうもなんかなあ。時折見せるあの目。あの口元。狡猾さを持ち、手段を選ばない生粋のスリザリンなんだろう。だけどもう一つのスリザリンの側面、つまるところの同胞愛ってヤツが彼からはまるで感じられない。
まああくまで僕の直感でしかないけれど。
sideエイブリー
俺の同室兼幼馴染、まあ純血貴族で同年代なんてみんな幼馴染みたいなものだけど。とにかくやばい変人代表ことケイロンは今日もハンサム天才代表のリドルに話しかけられて無視を決め込んでる。
興味ないことに無視とだんまりは相変わらずか。
あいつは昔から本ばかり読んではホグワーツで習うような難しいことを先々進め、挙句ある日
「これだ、これが僕の人生を捧げるべき学問で運命なんだ」
とトチ狂ったことを言い出し、彼の両親を大いに苦しめ、今なおブツブツつぶやきながら羊皮紙に羽ペンを走らせている。
ぶっちゃけ俺はあいつのようなやつが天才なんだと思っていた。
でもそれはホグワーツで嬉しい誤解だと気づいた。なんせ我らが同室のトム・リドルは頭が良く、何でもでき、性格もよく、意味がわからないことはしない。ちなみにイケメンだし女の子からめっちゃモテる。そしてなにより宿題を教えてくれる。
俺の邪魔をするな全開のケイロンに見習ってほしいくらいだ。
いや別にケイロンが頭が良くないわけではない。ほとんどの科目で成績上位だしあいつができないことなんてまずない…はず。ただそこまで学校の内容に興味がないだけなんだろう。
だからリドルは敵対心?闘争心?みたいなのをケイロンに向けている。
興味持たれてないし無駄なんだから諦めたらいいのに。
ていうか同級生からあんな態度取られたら怖くて近づけないだろ。
そうは思うけどリドルは毎日彼に話しかけ、何をしているのか尋ねている。
そんでたまに俺に飛び火してくるんだよなあ。
「エイブリー、ケイロンは何をしているんだ、よく一緒にいる君なら知っているだろう」
って。
でもケイロンが何をしているかは俺もよくわからない。なんならあいつの父親や母親もよくわかっていないと思う。
だってこの前グリーングラスの当主夫妻から俺にあいつが何をしているか、変なことしてないか、みたいなことを書いてある手紙が送られてきた。
どうやら手紙の返信がなかなか帰ってこないらしい。無視か気づいてないの2択だな。
たぶん後者だ。
昔、何をしているのか尋ねたときは古代ルーン?の文字を解析して?魔力と歴史の痕跡を辿って?魔法の理論を体系化するみたいなことを言ってたような。
リドルにそう答えたら「そう。ありがとう」と返されてその日から彼は古代ルーン文字の練習を始めていた。
いや早えよ。3年生の選択科目だろ。なんでできるんだよ。あ、ケイロンもできるんだった。
でもケイロンって話すと悪いやつじゃないんだよなあ。ちょっと何言ってるんだろってなるときもあるけど面白いし優しい。純血貴族としての務めも果たそうとしてるし責任感も感じられる。
スリザリンの女子達がミステリアスでかっこいいと噂しているのもちらほら聞こえる。
いやそんな体でこの始末だからおかしいのか。
我に返ってケイロンの方を向くとさっきまでなかったはずの羊皮紙が机を超えて床に散乱している。おまけに目をがん開きながらなにか書いてる。
それをリドルは興味深げに眺め、あろうことか羊皮紙、それも見たこともないような記号やら文字やらが書いてあるものを拾い上げ、しげしげと見つめて考え込んでいる。
あまりにもマッドで恐怖な様子にそっと目をそらし、天才とはヤバイやつということを再認識する。
それはどうやら同室の二人、カーマとウィルクスにとっても同じようだった。