同室の君へ   作:困った産

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読み返したんですがケイロンがかなり優秀な生徒になっててびっくりしました。
・成績優秀
・古代魔術が見える研究者
・純血名家
・リドルに流されない冷静さ
すごいですね。


暖炉のそばで

 あたり一面の銀世界が広がる今日、城内はどこか浮き足立っていた。

 

 雪化粧した城内には6メートルをゆうに超える巨大なクリスマス・ツリーや宙に浮く何百本ものロウソク、光る氷の柱や輝く星、動くオーナメントが飾られている。

 

 廊下ですれ違う生徒たちは「よい休暇を」と足取り軽く笑い合う。

 

 スリザリン生のほとんどは学校から去るので、談話室はガラガラだった。

 僕も荷物をまとめてホグワーツ特急の最後尾になんとか乗り込む。

 

 家に帰れるということでテンション高くはしゃいでいる同級生の側でぼんやりと窓の外を眺め、彼らの話を聞き流す。ホグワーツ特急は単調な雪景色の間を目にも止まらぬ早さで駆け抜け、あっという間にキングス・クロス駅に到着した。

 

 列車が到着した途端、駅のホームは再開を喜ぶ家族でごった返す。

 人波にもまれて押し合うなど真っ平ごめんだった。皆がはけるのを待ってから出ようとしばらくコンパートメントに居座る。

 ホームでひとしきり再会を喜び終えた人たちが家に向かい始め、人影が薄くなり、まばらになってきた所を見計らって、やっと列車から外に出ると…

 

「お兄ちゃん、遅い」

 ぶすっとして顔をやや歪ませた妹のアイリスが父親とかけ寄ってきた。

 

 お父さんはクスクスと笑って、

「おかえり、ケイロン。あんまりにも遅いからもしかして列車に乗り遅れてしまったのかと思ったよ。」

 

「ごめんなさい、お父さん。ホームに人がとても多かったから。」

 

 大丈夫、そんな気にしてないよと微笑む父の手を握る。

「それじゃあ父さんから離れないで、3,2,1!」

 

 ぐにゃっと視界が歪み、目を開くともう見慣れた家の中にいた。

 3ヶ月ぶりの我が家はとても懐かしい。

 

 奥から母が出てきて僕の背に手を回し、僕も母の背中に手を伸ばす。

「おかえりなさい。元気に帰ってきてくれてよかったわ」

 

 …ちょっと恥ずかしいというか何というか。

 早々に手を離して、離れようとする僕を母は「あらあら」という目で見つめ、

「さあ、早く入って、ホービーが沢山の料理とお菓子を用意しているの。あなたの大好きなチョコレート・ケーキもあるわ。」

 

 

 ダイニングのテーブルには僕の好きな食事ばかりが並んでいる。

 4人用のテーブルと椅子が余すところなく埋まり、屋敷しもべ妖精のホービーが腕によりをかけた料理の香りが部屋を満たした。

 

 カトラリーの心地よい音が響き、食卓を囲む。久しぶりの我が家の安心感に、僕の心はすっかり解きほぐされていた。

 

 食卓では僕ばかりが話していた。

 それでも皆は嫌な顔一つせず、楽しそうに僕の話を聞いてくれた。

 授業のこと。

 新しく読んだ本のこと。

 エイブリーの失敗談。

 寮での会話。

 

 三か月分の出来事が、堰を切ったように溢れて止まらない。

 まるで手に入れたトロフィーを自慢しているようだ。

 

「そういえば、スラグ・クラブにも参加しているんだ。ブラック家のルクレティア先輩とヴァルプルガ先輩にも良くしてもらっている。スラグ・クラブは彼女たちに推薦していただきました。」

 

 父も母も満足そうに微笑み、ブラック家と懇意にできるのは良いことだと褒めてくださった。

「そう、寝室はエイブリーと一緒になったんだ。あとカーマとウィルクス。」

 

「もう1人は? ホグワーツは5人部屋でしょう?」

 

 お母さんの言葉に僕のナイフとフォークを動かす手が止まる。

「えっと、家名は持たないのだけどトム・リドルという子が一緒です。でも、彼が学年で一番優秀で、実技でも筆記でも常に首席なんだ。」

 

「優秀な子なんだね。もちろん生まれは色々あるだろうが…良い縁は財産だ。大切にしておきなさい。」

 …一応「聖28一族」に名をつらね、過激ではないが純血主義の家系の当主である父がそんなふうに言うのは少し意外だった。

 

「クリスマス前には幾つかパーティーが設けられている。アイリスは留守番だがケイロンはもうホグワーツに通っているんだ。一緒に参加するつもりでいるように。」

 

 またパーティーか。いや、そんなふうに思ってはいけない。次期純血貴族当主としての役目の一つだ。精一杯頑張らねば。

 

「ええー、私もパーティーに行きたい。なんでお兄ちゃんだけなの。」

 

「ケイロンはホグワーツに入学したもの。それにアイリス、あなたも11歳になったら行けるのだから、それまでにマナーをしっかり学ぶのよ。」

 

 魔法界の名門貴族が集まるクリスマス・パーティは貴族たちが共同で開催する。僕の家も出資はしているはずだ。来場者、主催者共に顔と名前を覚えて失礼が無いようにしなくては。

 とりあえず純血名鑑で4世代ほど遡って覚えておくか。

 

「そういえばアイリス、あなたクリスマスまでのどこかでダイアゴン横丁へクリスマス・マーケットに行きたいって言ってたわよね。ねぇあなた、家族で一緒にショッピングに行きましょうよ。」

 

 アイリスのふてくされた表情がぱっと明るくなる。こういう場の雰囲気をパッと変えてしまう所にお母さんの「グリーングラス夫人」としてのスマートさを感じる。

 

「じゃあフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に寄れる?」

 僕が尋ねると、アイリスが畳み掛けるように、

「あたし、ドレスが欲しいの!」

「ケイロンは相変わらずね。でもアイリス、あなたドレスを買ってどこへ着ていくの?」

 呆れた顔をして笑うお母さんに、

「まあいいじゃないか。ちょっと早めの誕生日プレゼントにしよう。な、アイリス」

 と、お父さんが若干の娘馬鹿さを発揮する。

「やったぁ。お父さん大好き。あ、待ってでも私フクロウも欲しい。」

 

「それはどっちか1つだな。マダム・マルキンのところかイーロップのフクロウ百貨店か。じゃあ12月の23日に行くからどちらがいいかよく考えておきなさい。」

 こういうところはしっかりしているんだよな。うちの家。

「お父さん僕も本が……」

 

「わかった、わかった。お前はそういうと思った。ただし3冊までだぞ。」

 

 よし、じゃあどの本にしようか……。

 

 ドレスかフクロウかで頭を悩ませている妹の前でお母さんがお父さんにさり気なく「私もパーティ用のドレスが欲しいわ」と提案している。

 

 どうやらそちらが本題のようだ。

 ちょっとスパイスの入った家族の時間はゆったりと過ぎていく。

 それはホグワーツでは決して味わえない家庭の温かさだった。

 

 

 ディナーの後、部屋の焚き火の側のソファにのんびり寝転がって本を開く。

 僕の部屋には大量の本が溢れかえっているけどホグワーツの図書館を知ってしまった今では少し物足りない気がした。

 僕が大きくなったら絶対に本専用の家を作る。

 

 隣のテーブルにはホービーが持ってきてくれたジンジャー・ブレッドマンが積み上げられたお皿が置いてある。食べながら本を読むのもソファに寝転がるのもちょっと、いやかなり行儀が悪いけど久しぶりに帰ってきた僕のことを察してか両親は何も言ってこなかった。

 

 これが談話室のソファだった暁には先輩方からどんなお叱りを受けることか…。

 

 いつの間にかアイリスはソファで寝こけている。

 僕も本を閉じ、ゆっくりとソファに横になって目を閉じる。

 やはり家の安心感は別格だ。

 お母さんがブランケットをかけた感覚を最後に僕の意識はゆっくりと下へ落ちていった。

 

 

 

➤

 

 

 

Sideトム・リドル

 

 

 クリスマス休暇の間、ホグワーツに残るスリザリン生は片手で数えるほどしかいない。

 いつもは血統を誇る声で騒がしい談話室も、今はただ暖炉の爆ぜる音だけが響いている。

 

 五人部屋の寝室を独占できるのは、何よりの収穫だった。あの忌々しい同室の男たちの寝息や無駄話に煩わされることもない。静寂は、僕だけのものだった。

 

 

 

 パタン、と静まり返った図書室で羊皮紙の乾いた音を響かせ、本を閉じる。

 

 指先に残る古い革表紙の感触を味わいながら、僕はこの三か月間を静かに反芻していた。

 ──ホグワーツは、実に素晴らしい場所だ。

 ここでは力は隠すものではない。

 むしろ力を示すほど、人は自ら近づいてくる。

 

 あの薄汚れたロンドンの孤児院とは違い、僕は「優秀な生徒」として称賛される。

 持っている力は全く同じだというのに、環境が違うだけで評価はこうも簡単に裏返る。

 …滑稽極まりないことだ。

 いや、やはり僕が「特別」な存在だったという証明だ。

 

 窓の外では、何も知らない生徒たちが雪景色の中で無邪気にはしゃいでいる。

 あの灰色の、凍えるような孤児院の冬に戻るくらいなら、この冷厳な石造りの城で一人、知識を貪っている方がよほど居心地がいい。

 

 あそこは「戻る」場所ではなく、捨て去る場所だ。

 もう二度と思い出す必要はない。

 

 

 

 イギリスの冬の日没は恐ろしく早い。

 机の上に積み上がる

「ホグワーツ創設史」

「偉大な魔法使い100人」

「英国純血家系録」

「高度呪文学」

「恐ろしい闇の魔術史」

 

 そして「新・魔力の本質理解」

「感情と魔法の関係論」

 

 これはもう暗記したから必要ない。

 覚えていない本を幾つか抜き取って、他は全て棚へ返した。

 

 

 大広間にいるスリザリン生で僕に話しかけて来る人間はいなかった。

 普段の耳障りな雑音がなくて心地よい。

 しかしグリフィンドールのテーブルあたりで弾けるクラッカーの音が騒々しい。

 彼らに品というものはないのか。

 

 …口に入れたスープは暖かく、味も悪くない。

 スープは音を立てずにすくう。

 ナイフは一定の角度で動かし、肉を均一に切り分ける。

 パンは一口ずつちぎる。

 

 孤児院では誰も教えてくれなかった作法だ。

 だからこそ、誰よりも完璧に覚えた。

 

 デザートはなくていい。

 それをゆっくりと味わう意味が僕にはなかった。

 

 静かな食堂。

 静かな廊下。

 静かな寝室。

 ホグワーツは休暇になると、ようやく本来の厳かな姿を見せる。

 人が減れば減るほど静寂の中で城は多くのことを語る。

 

 それだけが僕を上機嫌にさせた。

 

 

 

 寝室に戻ると4つのベッドは依然としてきれいに整えられていた。

 エイブリーの机の上には放置された羊皮紙。

 カーマのキャビネットの上には薄汚い菓子の包み紙。

 ウィルクスのベッドの下には脱ぎ散らかされた靴下。

 

 そして、グリーングラス。

 彼の机の上はまた違う意味で悲惨だった。書籍は乱雑に積み上げられ、メモと思われる紙切れは机の上にも床にも散乱している。

 近づいて視線を落とすと、さらに無秩序に全てがさらけ出されている。

 そこかしこに飛び散ったインクの染みと、解読を拒むような悪筆。 これほど混沌とした環境で、よくもまあ「研究」などと呼べる真似ができるものだ。

 

 しかし、これだけ物が散乱しているにも関わらず、彼がいつも丁寧にまとめている資料や自作の「ホグワーツの地図」とやらはどこにも見当たらない。

 

 いったいどこに……と辺りを見渡すと彼のキャビネットから微かな魔法、それも保護魔法の痕跡を感じた。

 

 __隠しているならば、それは見る価値があるということだ。

 ためらうことなく、その扉を開く。

 

 キャビネットの中は机の上の惨状が嘘のように整然とした空間だった。

 資料は分野ごとにきちんと束ねられ、私物は整列して収められている。

 まさか机の上はカモフラージュか、という予想が頭をよぎるがいつもの彼の散らかし具合を思い出し、それはないと結論づける。

 

 おそらく彼にとってこのキャビネットの中だけが唯一「整理する価値がある空間」ということなのだろう。実に分かりやすい男だ。

 

 さて、保護魔法がかかっている場所は……

 上段の右端__そこだ。

 かけてある保護魔法は初歩的で解呪に3秒もかからない。

 彼は本気で、この程度の子供騙しで己の秘密を守れると思っているのだろうか。それとも単なる気休めのつもりか。

 

 どちらにせよ、結果は変わらない。

 杖を一振り。

 抵抗にもならない防壁は霧消し、僕は目的のものを引き出す。

 

 そこにしまわれていたのは彼が作成したホグワーツについての地図と一冊の手帳。

 

 ホグワーツの地図は余白こそ多いもののやはり、何を示しているのかわからない矢印や記号が多い。矢印が魔力の流れだとしてこの渦のような記号は何を示しているのか。

 彼にしかわからない以上、これ以上見ても得られるものはない。

 

 手帳はすっきりとした濃紺の表紙に金色のコーナーパーツがつけられた上品な作りだった。

 下部には「Cheiron Hector Greengrass」と印字されている。

 開こうとすると魔法のブックラッチに阻まれる。

 

「アロホモーラ」

 

 カチリと音を立てて開いた手帳には9月1日からの出来事が書かれている。

 途中崩れた文字も目に入るがただの日記だ。

 研究の覚え書きかと思ったが、書かれているのは日々の出来事ばかりだった。

 個人の日記か。                                                                                                  

 なら興味はない。

 

 ページを捲る手が止まった。

 …僕の名前だ。

 

「リドルには気をつけたほうがいいかもしれない」

 入学初日。

 この時点で僕を警戒していたのか。

 

 なぜだ、なぜそう思った? 

 

 この部屋のすべてのものを焼き払いたい。

 湧き上がるそれを抑えて再び日記に目を落とす。

 僕について書いてあることは少ない。

 時々、僕のことを「面倒くさい」、「うざったい」、「自分が知らないということが気に入らないだけだろう」と書かれている。

 …そういう評価か。僕の全ての探りはそういうふうに捉えられていたらしい。

 

 

 しかしこの一文「魔力は見えるってだけで上手く扱えはしない」

 

 そういうことか。

 古代魔術は認識できる。しかし自在には扱えない。

 少なくとも、今は。

 確かに彼がその類の魔法を行使しているところは見たことがない。

 なら、すぐに脅威になることはない。当面の優先度は下がる。

 

 ……いや。

「上手く扱えない」と「扱えない」は違う。

 ならば、いずれ扱えるようになる可能性はある。

 

 これからも観察を続ける必要性は…ある。

 

 

 

 ページを飛ばして僕と言い争いをした日へ飛ぶ。

 今思い出しても苛立つが彼は一体何を考えたのか。

 

 ページを戻してあの日を見ると…「リドルは興味深いやつだ。僕と考え方は違うけどもっと話してみてもいいかもしれない」

 

 それだけだった。

 あれほど言い争ったにもかかわらず、彼は出来事そのものにはほとんど紙幅を割いていない。そこは彼にとってはそこまで重要ではなかったのか。

 

 興味があったのは僕ではなく、僕の考え方。

 そしてその考え方から導ける結論。

 …そういう人間か。

 

 その一文を最後にお得意の研究についての推論が書き留められている。

 

「もっと話してみてもいい」

 …そう書いておきながら、彼の方から話しかけてきたことは一度もない。

 その程度の優先順位だったということか。

 

 

 書き込まれたページの残りが少なくなった頃、一つだけ異質なページがあった。休暇前の最後の休日。彼がホグワーツを探検していたという日。

 びっしりと詰め込まれた文字は、いつもの悪筆がさらに崩れ、ほとんど走り書きに近い。

 

 合言葉、

 トロフィー室、

 言葉による魔法の固定、

 記憶の蓄積。

 これは僕に話した内容と一致する。

 

 …その先だ。

 7階__巨大な魔力、

 地下__闇の魔術と思われる痕跡

 

 隠していたな

 

 意図的か。

 それとも、確証が得られていなかったからか。

 

 どちらでも構わない。

 重要なのは、彼が情報を選別していたという事実だ。

 

 

 そこからは再び日常的な内容が続く。

 そして家に戻るのが楽しみだという書き込みを最後に、そのあとは白紙だ。

 

 …得られた収穫は2つ、

 

 1つはグリーングラスは古代魔術を認識できる。しかし扱えるわけではないということ。

 

 もう1つ、7階と地下には彼が僕に伏せた何かがある。

 …十分だ。

 

 

 …それにしても、ケイロン・グリーングラス

 実に奇妙な男だ。

 

 談話室にこそよくいるが彼が積極的に輪の中心に入って話す姿を見たことはない。

 スラグ・クラブでも専ら聞き役に徹している。レイブンクロー生とは妙に親しげだが。

 

 彼の時間の殆どは本と机に向けられている。

 僕と彼が言葉を交わした回数は多くない。

 そもそも彼自身、必要以上に口を開く人間ではない。

 

 しかし、あれほど人付き合いを避けているにもかかわらず、不思議なことに彼の周囲から人が消えることはない。

 本を返却しに行けば、レイブンクロー生に呼び止められる。

 廊下を歩けば誰かしら教師が声を掛ける。

 食堂では向こうから席へやって来る者までいる。

 彼はただ応じているだけだと言うのに。

 

 彼を好む者は多い。

 一方で、彼を嫌う者も少なくない。

「何を考えているのかわからない、気味の悪いヤツだ。」

「いつも本ばかり読んで。」

「レイブンクローに入ればよかったものを。」

 

 そんな陰口を耳にしたことは一度や二度ではない。

 

 だが、本人は気付いていないのか、あるいは気付いていて興味がないのか、どちらにせよ反応しない。

 理解に苦しむ。

 目的のために人間関係を作ろうともしない。

 かといって孤立しているわけでもない。

 嫌われても平然としているくせに、好かれようと努力もしない。

 

 しかしそれでいて能力はどうだ? 

 

 社交の場では最低限以上の礼節を弁え、

 学力は学年でも上位。

 僕を初日から警戒した観察力。

 名門純血グリーングラス家の後継。

 古代魔法を認識し、いずれ扱う可能性すらある。

 

 利用するには警戒心が強く、

 放置するには能力が高すぎる。

 

 彼は僕の素晴らしい「友人」にはならないだろう。

 だが__こちらの出方次第では有力な「協力者」になり得る。

 

 彼との付き合いはもっと慎重にしなければならない。

 

 手元の手帳と地図を元の位置へ戻す。

 全ての魔法の痕跡を消し、僕が彼のキャビネットを開ける前と同じ状態にした。

 

 

 静まり返った寝室には、暖炉の火が小さく揺れている。

 四つのベッドは主を失ったまま静まり返っている。

 聞こえるのは暖炉で薪が爆ぜる音と、遠くを吹き抜ける風の音のみ。

 

 僕はサイドテーブルの明かりを消し、カーテンを閉じる。

 闇の中には、誰の気配もなかった。

 

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