初代虚狩りだった元カノと百年ぶりに再会したら、未練たらたらな指名手配犯になっていた件   作:you are not

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展開に迷ったときどうするかわかるか?サプライズピュロイス理論するんだよ。先に言っておきます。ピュロイス好きな人解釈違いだったらごめんなさい


消えない想い

 夜の風が、頬を優しく撫でていく。

 

 ブレイズウッドの街外れ。人通りの少ない一本道を、レミエールは一人歩いていた。

 

「もう……」

 耳まで熱い。

 

 頬に触れてみても、いまだ熱は少しも引いてくれない。

 

「こんなことになるなんて思わなかった……」

 思い出すだけで鼓動が速くなる。

 

 抱き寄せられた腕。

 

 耳元で囁かれた声。

 

 そして――

 

『君に会いたかった。』

 

「~~っ!」

 思わず腕を抱えて、自分をギュッと抱きしめる。

 

「なんで今さらあんなこと言うかな……」

 

 私を虚狩りでも軍人でもなく、ただ「アキラという一人の男を愛するレミエール・ダン」として見てくれる言葉。

 

 あの人は、スイッチが入るといつもそうだった。でも、そんな彼だから好きになったし、いつも心臓がもたなかった。

 

だけど―――

 

「昔より酷くなってない?」

 

 百年分積もった想いを、あんな風に真正面からぶつけられるなんて…‥‥あれじゃ、軽口を返す余裕なんてない。

 

 だって、大好きな人が――私を好きだと言ってくれる。

 

 ただそれだけで満たされるような気分になってしまうから。

 

「私って、こんなに単純じゃなかったはずなんだけど……」

 ため息をつきながら、レミエールは逃げたことに対する後悔をした。

 

 

 あのまま部屋にいたら、きっと昔みたいに―――

 

「だめだよレミエール。それだけはダメ」

 言い聞かせるようにレミーエルこ呟く。

 

 あの場は逃げるのが正解だった。だって、そうじゃないと全てを許してしまいそうになるから。全部諦めて、失ったはずの彼との幸せを取り戻していいんじゃないかと思ってしまうから。

 

 レミエールは胸元へそっと手を当てる。

 

「まだ何も終わってない」

 自分にはやらなければならないことが残ってる。だからこうして、私はこの場にいる。

 

「だから、もう少しだけ待っててね」

 その願いが、自分自身へのものだったのか、それとも――彼へのものだったのか。レミエール自身にも、もう分からなかった。

 

 


 

 

 気分転換するために夜風に髪を揺らしながら歩いていると、不意に視界の端で小さな人影が揺れた。

 

「……あれって?」

 こんな時間にブレイズウッドの外れを、一人の少女がふらふらと歩いている。

 

 足取りは危なっかしく、まるで眠ったまま歩いているようだった。

 

「リンちゃん?」

 すぐに誰かわかったレミエールは話しかけるが、返事はなく少女はゆっくりと、一定の歩幅で前だけを見て歩き続けていた。

 

「カローレ先生……」

 リンはどこか遠くを見るような目で、小さく呟いた。

 

「……夢を見てるのかな?」

 レミエールは静かに目を細める。

 

 故人の名前を口にするということは、過去の出来事を見せられているのだろう。アキラから失われた力が、彼女の中で暴れている。その影響だとすれば、放ってはおけない。

 

 レミエールはすぐに行動に移すことにした。地面を蹴ると、一瞬でリンとの距離を詰め、その肩を優しく掴む。

 

「君は、こんな悪夢を見るべきじゃない」

 黒い翼がゆっくりと広がると、羽根から零れた淡い光がリンを包み込む。暴れるエーテルを押さえ込むように、その光は静かに彼女の体へ染み込んでいった

 

「ぅ……ん?」

 すると、意識が戻ってきたのか苦しそうにうめく。

「ほら、起きて。帰って来られなくなるよ」

 

 

「……誰?」

 ゆっくりと意識を取り戻したリンは、目の前にいる人物を見つめる。

 

「よかった。ちゃんと起きたみたいだね」

 レミエールは安堵したように微笑む。

 

「レミエールさん……」

「ん?」

 少しだけ目を丸くする。

 

「その呼び方……」

 すぐに理解したのかレミエールはふっと優しく笑った。

 

「そっか。アキラさんから聞いたんだ。」

「うん」

 リンは小さく頷く。

 

「お兄ちゃんから聞いたの。レミエールって名前なんだって。でも酷くない?偽名使うとか」

「ごめんごめん。あの時は正体を隠さなきゃいけなかったから……じゃあ、私のフルネームと正体を教えてあげる」

 レミエールは少し照れくさそうに髪を耳へ掛ける。

 

「え?……なにそれ」

「やっぱりアキラさん教えなかったんだ……ほんと気遣いが上手」

 一拍置いて、静かに名乗る。

 

「……私の名前はね、レミエール・ダンっていうの」

 

「ダン……」

 リンはその名にひっかりを覚える。どこかで聞いた気がしたからだ。

 

「……え?」

 考え出してからものの数秒で頭の中で、学校の授業や本で見た資料が繋がる。

 

「気づいたみたいだね。そうだよ―――私は正真正銘『杖の軍のダン中佐』」

 レミエールは少し照れくさそうに笑う。

 

「それと――初代、虚狩りのひとり。そう呼ばれることもあるかな」

 

「う、嘘!」

 リンは思わず一歩下がる。

 

「だって教科書に載ってる人じゃん!」

「教科書かぁ……」

 レミエールは困ったように頬を掻いた。

 

「なんだか照れるね」

 そう言って、自分の左手へ視線を落とす。月明かりに照らされた薬指には、一つの指輪が静かに輝いていた。

 

「本当ならね」

 少しだけ寂しそうに笑う。

 

「アキラさんも、ダンって名字になる予定だったんだけど」

 

「……待って、本当にちょっと待って」

 リンは額へ手を当てた。

 

「婚約してたこともびっくりだけど、その前にレミエールさんは百年前の人なんだよね?」

「そうだよ」

「じゃあ、お兄ちゃんは何なの?」

 鋭い言葉にレミエールは押し黙る。

 

「だって、お兄ちゃん普通にレミエールさんのこと知ってたし!レミエールさんも、お兄ちゃんのこと知ってるし!しかも、婚約までしてたってことは……!」

 激しく揺れる瞳のまま、 彼女は溢れそうな想いで言葉を探す。

 

「お兄ちゃんも百年前の人なの!?」

「……それは」

 レミエールは苦笑する。

 

「ごめんね。それは私の口から答えられないかな」

「え?」

「アキラさん自身の過去だから。ちゃんと本人の口から聞いてあげて」

 少しだけ間を置いて、リンの瞳を真っ直ぐ見つめる。

 

「私からも一つだけ聞いてもいいかな?」

「なに?」

「アキラさんって、そんなに信用できない人かな?」

 リンはきょとんとした。

 

「え……?」

「もし君が知りたいって言ったら。アキラさんは、誤魔化したり、嘘をついたりする人?」

 リンは迷わず首を横へ振る。

 

「違う。確かに隠し事はよくするけど、私達に嘘はつくような人じゃない」

「うん、よくわかってる。花丸満点だね。アキラさんはいい家族に恵まれたみたい」

 その答えを聞いたレミエールは、どこか安心したように微笑んだ。

 

「きっと全部、自分の口で話してくれる。だから、その時まで待ってあげて……だって君達には兄妹の絆があるんだもんね」 

 レミエールはそう言って、小さく笑う。けれど、その笑顔はどこか寂しそうでリンは胸の奥が妙に引っ掛かった。

 

「ごめんね、つい話し込んじゃった。楽しい時間はあっという間だ。もう行かなくちゃ」

「レミエールさん!」

 思わずリンが呼び止めるとレミエールは振り返る。

 

「……どうしたの?」

「その言い方だと、まるで自分だけ仲間外れみたいじゃん」

「……え?」

「お兄ちゃんも、レミエールさんも、お互い好きなんでしょ?だったら、兄妹とか関係ないよ」

 レミエールは一瞬だけ言葉を失う。

 

「兄妹そろって、ズルいなぁ」

そして困ったように笑った。

 

「ありがとう、でもね」

 胸元で薬指の指輪をそっと撫でる。

 

「もう百年も経っちゃったから、いつまでも昔に縋ってちゃダメなんだ」

 レミエールは小さく微笑むと、踵を返した。

 

 黒い翼が夜風に揺れ、月明かりの下をゆっくりと歩いていく。

 

「……」

 リンは、その背中を黙って見送ることしかできなかった。

 

 でも、どこか寂しそうで、どこか無理をして笑って自分自身へ何度も言い聞かせているような背中に何も言ってあげられなかった。

 

(絶対に嘘だ)

 

 胸の奥が、ざわつく。レミエールは「昔に縋らない」と言った。でも、本当に前へ進めている人は、あんな顔をするわけがない。

 

 お兄ちゃんだってそうだ。二人とも、お互いが好きなくせに。二人とも、お互いを想っているくせに。

 

 なのに、どうして……。

 

―――ドクン

 

 その時、胸の奥から何かが大きく脈打つのを感じた。

 

「……え?」

 視界が白く染まる。体の奥底で、眠っていた何かが目を覚ます感覚。

 

 その怒りは、リンだけのものではない。長い長い眠りの中で、ずっと二人を見続けてきた存在もまた、同じ苛立ちを抱いていた。

 

『……フン。見ておれぬ』

 聞き慣れない声がリンの頭の奥で響く。

 

『互いに想い合いながら、互いを遠ざけるとは』

 リンの意識が途切れると同時に、瞳が黄金色へと染まる。

 

『実にくだらぬ。百年前の貴様らは、斯様に腑抜けてはいなかったはずだ』

 リンのものではない声が聞こえ、レミエールは振り返る。

 

「……リンちゃん?」

 レミエールの表情から笑みが消える。目の前に立つ少女は、もうリンではなかった。

 

『久しいな、我が半身の伴侶よ』

 黄金色の瞳が静かにレミエールを見据える。その声音は厳かでありながら、どこか呆れを滲ませていた。

 

「君、どうして……」

 レミエールは目を見開く。

 

『無論、我ならば造作もないこと』

 鼻で笑うように、小さく息を吐く。

 

『我を忘れたとは言わせぬぞ』

 その一言だけで十分だった。

 

 百年前、アキラと共に幾度となく戦場を駆け抜けた存在。彼の魂と共鳴し、力を貸し続けた意思。

 

 その名を、レミエールが忘れるはずがない。

 

「……ピュロイス」

 レミエールがその名を口にした瞬間、黄金色の瞳が細くなる。

 

『フン。ようやく思い出したか』

 夜風が二人の間を吹き抜ける。月だけが静かに、その再会を見下ろしていた。

 

『さて。積もる話もあるが、まずはあの腑抜けを叩き起こすとしよう』

 その口元に、不敵な笑みが浮かぶ。

 

『今、我は虫の居所が悪い。これ以上、貴様らの愚かな痴話喧嘩に付き合う気はない』

 黄金色の瞳が、アキラの寝ている寝室のある方角へ向けられた。




レミエール「アキラ好きだけど、復縁できません」
ピュロイス「なんだぁ、てめぇ」

 ピュロイス、キレた――!

あと、ピュロイスエミィむっずいね。お前全然喋んねぇんだもん。

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