初代虚狩りだった元カノと百年ぶりに再会したら、未練たらたらな指名手配犯になっていた件   作:you are not

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だらだらと書いてたら、朝の三時まで書いてた。やべぇって


話し合いの末の和解

 

 ピュロイスの気配が完全に消えると、部屋には重苦しい静寂だけが残った。

 

「……リン!?」

 机へ突っ伏したリンの身体を、僕は慌てて抱き起こす。

 

 一定のリズムで上下する腹部のふくらみが、確かな呼吸を伝えている。首筋に手を当てると、脈拍もきれいに整っていた。

 

「気を失ってるだけ、かな」

 その隣では、レミエールもリンの額へそっと手を当て、静かにエーテルを流し込んでいた。

 

「大丈夫、安心して」

 白い羽根が淡く舞い、リンの身体を優しく包む。

 

「流れも落ち着いてるから。ただ、疲れて眠っちゃったみたい」

「よかった……」

 その言葉にようやく肩の力が抜け、安堵の息を漏らす。

 

『……我も焦っておるのでな』

 ふと、ピュロイスの言葉が頭をよぎる。あいつは嘘をつくような奴じゃない。あんまり悠長にしていられる状況じゃないと考えるべきだ。

 

「部屋まで運ぼう」

「うん」

 僕がリンを抱き上げると、レミエールは黙って扉を開けてくれる。

 

 その何気ない仕草が、不思議と懐かしかった。

 

 百年前からずっとそうだ。言葉を交わさなくても、お互いが次に何をするか分かっていた。今も自然にそう動けてしまうことが、少しだけ嬉しかった。

 

 いや、だからこそお互い分かっている気になっていることに気づかなくなってしまったのかもしれない。

 

 夜更けの静けさに包まれた誰もいない廊下を、二人肩を並べて歩く。

 

「今日は色々ありすぎて疲れちゃった」

「僕もだ。でも、もう先延ばしにはしたくない」

 レミエールが僕の言葉にうなずくと会話は途切れる。

 

 けれど、その沈黙はいまままでの気まずいものとは違っていた。不思議と居心地の良さと懐かしさを感じる。

 

 今この瞬間、心の底から隣を歩けるようになった気がした。

 

 

 やがてリンの部屋へ辿り着く。

 

 静かにベッドへ寝かせると、リンは小さく寝返りを打ち、再び穏やかな寝息を立て始めた。

 

「よく寝てるね。誰かさんにそっくり」

 レミエールは毛布を肩まで掛け直し、優しく前髪を整える。

 

「ならリンは君よりずっと寝相がいいってことだ」

「それは否定できないかも。君ほど私の寝相を知ってる人は他にいないし」

 照れくさそうに笑う横顔を見て、思わず僕も笑ってしまう。

 

 長居してリンを起こさないよう、静かに部屋を出ると夜の廊下は静まり返っていた。

 

 二人同時に足を止める。

 

「レミエール」

「うん」

 短い言葉。お互いの一言だけで何を話したいのか、分かっていた。

 

 昨日までなら。彼女は笑って誤魔化してそのまま帰ろうとして、僕はそれを見届けるだけだった。

 

 けれど今日は違う。

 

 振り返った彼女と、自然に目が合うと少しだけ照れたように笑う

 

「……ターン制バトル、しよっか?」

 

 


 

 

 部屋へ戻ると、さっきまでの賑やかさが嘘のように静かだった。

 

「座ってくれ」

 アキラは椅子を引く。

 

「うん」

 レミエールが座ることで向かい合う形になる。

 

 だが、どちらも口を開かない。いや、開けない。 さっきまで「ターン制バトル」なんて軽口を叩いていたのに、いざ始めようとすると言葉が出てこない。

 

「……まずは謝らせてほしい」

 先に口を開いたのはアキラだった。

 

「ダメだよ」

 レミエールがアキラの口に人差し指を突きつけて静止させる。

 

「今日は謝るの禁止」

「え?」

「ターン制バトルであって、謝罪大会じゃないから」

「……分かった。合わせるよ」

 アキラは一度目を閉じ、小さく息を吐く。

 

「僕は……君を頼るのが怖かった」

 レミエールは何も言わず、静かに続きを待つ。

 

「百年前、死んで君を残して一人にした。だから、君とまた一緒になることに後ろめたさがあった」

 拳を握り締める。

 

「君が幸せに生きてるなら、それでいいと思いこんで距離を置こうとした」

 部屋に静寂が落ちる。

 

 やがてレミエールが静かに口を開いた。

 

「私のターン、いいかな?」

「もちろんだとも」

「……私もね」

 レミエールは膝の上で指を組み、しばらく俯いていた。

 

「頭では分かってるの。アキラさんが、どうして別れようって言ったのか。私を守りたかったことも、未来へ進ませたかったことも、全部」

 すると、彼女は困ったように笑う。

 

「だからあの日、君と別れてからずっと仕方なかったんだって自分に言い聞かせてきた」

「……」

「アキラさんは悪くないって……でも」

 握り締めた拳が小さく震える。

 

「納得なんて、できるわけないじゃん」

 その声には、百年間押し殺してきた感情が滲んでいた。

 

「好きな人とまた会えたのに、もう終わりだって言われて……はい、分かりましたなんて、そんな簡単に割り切れるわけないよ……」

 静かに涙を流すその姿にアキラは何も言えなかった。

 

「君は自分勝手だったね」

 レミエールは顔を上げる。

 

「私のためだって言って、私がどう思うか、一度も聞いてくれなかった」

「……」

「私は君の婚約者だったんだよ?」

 その一言が胸に刺さる。

 

「なのに、一人で全部決めちゃうなんてひどいと思わない?」

 

「……そうだね」

 アキラは静かに肯定する。

「ひどかったと思う。でも、あの時の僕には、それしか君を生かす方法が思い付かなかった……君を失う方が、ずっと怖かったんだ」

 

「だから!」

 レミエールも思わず声を荒げる。

 

「そういうところだよ!いつも自分一人で全部抱え込んで!」

「それを言うなら君もだろ!百年経ったって言うのに、何でも一人で抱え込もうとする癖が今でも治ってないじゃないか!」」

 互いに声を荒げ、言葉をぶつけあう。お互いに言いたいことを言い終えると、同じように肩で息をしていた。

 

 しばらくして、レミエールが力なく呟く。

 

「……もう。ほんと君って、昔から変なところだけ頑固なんだから」

「それはこっちの台詞だよ、レミエール」

 アキラも苦笑する。

 

「……」

「……」

 お互い沈黙のまま見つめ合う。

 

「ふふっ」

「ははっ」

 思わず、何がおかしいのか同時に吹き出して、笑っていた。

 

「……なんか悔しい」

「何がだい?」

「こうやってぶつかり会っても、結局いつもの私たちなんだもん」

「それの何が悔しいんだい?」

 するとレミエールは少しだけ唇を尖らせる。

 

「あんなに一人で悩んでたのが馬鹿みたいじゃん。」

 アキラは苦笑した。

 

「君の言う通り、百年経っても変わらないんだね僕たちは」

「うん、嫌になるくらい変わってない」

 もう、さっきまでの気まずさはなく、二人の間に今度は心地よい沈黙が流れた。

 

「アキラさん」

 レミエールは静かにアキラを見つめる。

 

「私が、タウミエルを取り戻すの協力してくれる?」

「もちろん。そのつもりさ。明日の朝、リンたちにもちゃんと話そう」

 二人は互いの言葉を受け止める。

 

 どちらの目的も変わらない。変わったのは、その目的を共有できるようになったことだけ。

 

「ピュロイスの言う通り、最初から話していれば済んだ話だったね」

 レミエールが苦笑する。

 

「……返す言葉もない」

 アキラも苦く笑った。

 

「僕たちは、お互いを信用しすぎていたのかもしれない。」

「というと?」

「信用していたから、言わなくても伝わると思ってしまった。だから、一人で抱え込んでしまったのかもしれない」

「……耳が痛いこと言うなぁ」

 レミエールは呆れたように笑う。

 

「お互い様だよ」

 アキラの言葉にまた笑い合った。

 

 その笑顔は、百年前に何度も交わしたものと何一つ変わっていないと感じられた。

 

 レミエールは差し出された手を見つめる。

 

 百年前、幾度となく握った手。失ったと思っていた温もりが、今また目の前にある。

 

「アキラ」

 ゆっくりと、その手を重ねると彼女は少しだけ悪戯っぽく笑った。

 

「また私と一緒に踊ってくれる?」

 その笑顔を見て、アキラもつられて笑う。

 

「もちろん。共犯者にだってなってみせよう」

 レミエールは目を丸くしたあと、小さく吹き出した。

 

「ふふ、いいねそれ。ダンスパートナーよりドキドキしちゃう」

 レミエールは握った手を少しだけ強く握る。

 

「……もう逃がさないから」

「逆に、僕から逃げられると思ってるのかい?」




後方腕組みピュロイス「ほーいいじゃあないか。こういうのでいいんだよ、こういうので」

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