初代虚狩りだった元カノと百年ぶりに再会したら、未練たらたらな指名手配犯になっていた件 作:you are not
ようやくできたヤンデレミエールルート。ちょっと設定が難産だったぜ。先に言っておくと、本編と異なり、平和ロスカリファルートで、レミエール曇らせ若干入ってます。それでも良いという方はどうぞ
天使は明日を夢見るか
玄関のドアノブへ手を掛ける。
ガチャリと最後までドアノブは回らず、やはり開かない。
「……やはり駄目か」
アキラは小さくため息を吐く。
外から掛けられているかぎが開けられないかと試すのは、今日だけで三度目になる。
ここへ来てから何日経っただろう?
部屋は広く、食事も不自由はない。ビデオもあるし、着替えもある。食事も定期的に彼女が持ってきてくれる。おそらく生活に必要なものは何一つ欠けていない。
ただ一つ、外に出るという自由を除いて。
「少しくらい外の空気を吸っても、罰は当たらないと思うんだけどね」
苦笑しながら、今度はスプーンのでドアノブのねじを回す。
瞬間。背中を強く押され、アキラはバランスを崩した。
「うっ……」
気付けば世界がぐるりと反転して、アキラはドアの反対側の壁を見ながらリビングのカーペットの上に寝転がっていた。背中に痛みを覚えながら、首を持ち上げようとする。
「……何してるかな?」
「うぐっ」
だが、その前にネクタイを引っ張られて胸から体が持ち上げられた。それをしたのは誰でもない、買い物袋を抱えたレミエール本人だった。
「どうしてこんなことするの?」
レミエールのネクタイを掴む指先は、小刻みに震えていた。
「……どこか怪我、してない?」
レミエールはアキラの肩や腕へ触れ、傷がないか確かめる。
その時、アキラが持っていたスプーンが地面に音を立てて落ちた。
「へーそういうことしちゃうんだ」
レミエールは静かに床へ落ちたスプーン、それからドアノブを、最後にアキラと順番に見ていった。
「ごめんね。こんな危ないもの、置いちゃってたね……今度から全部プラスチック製にするから」
レミエールは静かに宣言する。そこに冗談もなにもなく、ただ事実を告げているだけだった。
「レミィ」
アキラはゆっくりとレミエールの顔に手を伸ばし、目じりの涙をぬぐう。
「落ち着いてくれ。本当に逃げるつもりじゃない」
「……」
「ただ、ほんの少し外に出たいだけなんだ」
その一言で、レミエールの肩がぴくりと震える。
「なんで?」
「ずっとここにいても、僕は豚のようにぶくぶく肥えるだけだ。たまには散歩でも―――」
「ダメだよ」
言葉を遮るように、レミエールは首を横へ振る。
「だけど――」
「ダメ」
もう一度、今度は、はっきりと。
「外は危ないから」
その言葉に、アキラは思わず苦笑する。
「ここはロスカリファだろう? 治安もそこまで悪くない―――」
「違うよ」
レミエールは小さく呟いた。
「危ないのは、街そのものじゃないよ」
「……どういうことだい?」
「君が外へ行くこと、そのものが危ないから」
アキラは言葉に詰まる
「僕なら大丈夫さ」
「アキラさんを信用してないわけじゃないの」
レミエールは首を振る。
「強くても弱くても、君は一度、死んだ」
「……けれど、この状況は正しいとは思えない」
その一言で、レミエールは目を細める。
「……そうだね」
自分でも分かっているのだ。これは普通じゃない。
―――それでも
「でも、それで君がまた私を置いていくなら……私は間違ったままでいい」
レミエールはアキラのネクタイを握る手に、さらに力を込める。
「君の『また明日』なんてもう聞きたくない……だから、君は今日をずっと生きて」
「君が僕を心配してくれているのは分かる。」
アキラは静かに息を吐く。
「でも、これは違う。僕を守っているつもりなんだろう。でも、それは僕から生きる自由を奪っているだけだ」
レミエールは何も答えない。
「確かに世界には危険もある。だけど、それでも人は外へ出て、生きていくものだ。だから僕は……」
「……くせに」
小さな声だった。
「レミィ?」
俯いていたレミエールの肩が震える。
「……何にも知らないくせに」
「え?」
レミエールはゆっくりと顔を上げた。瞳には涙が滲み、それでもアキラだけを真っ直ぐ見つめている。
「君と一緒にいるとき、どんな気持ちだったと思う?」
レミエールは震えながら笑った。
「朝、幸せな疲労を感じながら二人で飲むコーヒーの温かさも。いつもは格好いいのに、時々だけ見せる可愛い顔も。不意打ちでキスしたら、本気で怒るところも」
ネクタイを握る手が、さらに強く締まる。
「そうやって笑いあって、一緒に過ごす毎日がどれだけ幸せだったかも」
ぽろり、と一粒の涙がカーペットへ落ちる。
「……全部、知らないくせに」
震える声は止まらない。
「それが全部、一瞬でなくなった時の苦しさも……今度こそ絶対に離したくないって思っちゃうことも」
レミエールは唇を強く噛む。
「本当は、自由にしてあげなきゃいけないって、こんなの間違ってるって、ちゃんと分かってる……それでも」
とうとう堪えきれず、レミエールはアキラの胸へ顔を埋めた。
「それでも、私だけのものにしたいって思っちゃう、この最低な葛藤も……」
嗚咽が混じる。
「……全部、知らないくせに」
「……」
アキラは口を開きかける。だが、結局何も言えなかった。
レミエールの肩は、小さく震え続けていた。胸元へ顔を埋めたまま、嗚咽だけが静かな部屋へ溶けていく。
アキラはレミエールの背中をさすりながら、何も言えなかった。何を言えば、この涙を止められるのか分からなかった。だたゆっくりと、レミエールのピンクの髪へと手を添える。その温もりをもって、アキラは自分が今ここにいることを静かに伝える。
「僕は……」
静かに目を閉じる。
(どうして、こうなってしまったんだろう)
思い返せば、すべての始まりは、彼女と再会したあの日だった。
ちょっと短いけど、ここでいったん切ります。次回から何で監禁されたのかを書いていきます
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