初代虚狩りだった元カノと百年ぶりに再会したら、未練たらたらな指名手配犯になっていた件   作:you are not

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原作のストーリーの部分はダイジェストで説明するのだ!どうせ、みんな見たいのは未練たらたら元カノ、レミーエルに決まってるのだ。


例外の時間

 その後、僕たちは大会初日を迎えた。

 

……とはいっても、開始早々から何もかもが予定通りには進まなかった。

 

 邪兎屋のボスであるニコは借金取りとのトラブルで参加できなくなり、代わりに家に不法侵入してきたシィーシアが替え玉としてチームへ加わることになった。

 

 大会が始まってからも、ある参加者がホロウ内のキャロットデータへ不正に干渉し、コース全体を混乱させる事件が発生。リンたちはシィーシアやビリーと協力して犯人を突き止め、運営へ通報したことで事態はひとまずの収束を見せた。

 

 けれど、その代償は決して小さくない。

 

 多くの参加者を救うため、リンは無理を押してインプラントを使用してしまった。

 

 結局大会は一時中止したこともあって、リン達は疲労困憊のまま六分街へ戻ることになった。

 

 


 

 

 その日の夜。

 

 リンは自室のベッドで静かな寝息を立てていた。

 

 突然気を失った時は肝が冷えたけれど、呼吸も脈も安定している。本人も大会中から「少し疲れた」と口にしていたこともあり、ひとまず今夜は様子を見ることにした。

 

 幸い、シィーシアが「今日はあーしが見てる」と言ってくれたおかげで、リンの傍には彼女がついてくれている。

 

 だから僕は、隣の自室へ戻ってきていた。

 

……だからといって、落ち着けるわけがなかった。

 

 机の上には、昼間弄っていた音動機と工具が置かれたまま。片付けようとして手に取ってみても、どうにも集中できない。

 

 このままリンの症状が悪化すれば?

 大会でフリンツ合金音動機を取り逃せば?

 

 グルグルと思考が休まらない。気がつけば、またコーヒーを飲んでいた。昼間のはお店のしっかりしたものだったけれど、今飲んでいるのはインスタント。こういう安っぽさが逆に安心感を覚える。

 

―――コンコン

 

 部屋の扉が、二度だけ軽く叩かれた。

 

「……?」

 

 来客?

 

 しかも、自室の扉を?

 

 こんな時間に?

 

 首を傾げるより早く、ガチャリ、と扉が開く。

 

「こんばんは、アキラさん」

 聞き覚えのある、どこかのんびりとした声。

 

「……レミエール?」

 ピンク色の髪を揺らしながら、レミエールがひょこっと部屋へ顔を覗かせた。

「ごめんね、驚いた?」

 

「……どうしてここに。というか、どうやって入ったんだい」

「それはね、裏口の鍵が開いてたから、そのまま入っちゃった。でもね? 妹ちゃん起こしたらかわいそうだから、ちゃんと静かに来たんだよ?」

 

 悪びれる様子もなく彼女は言うが、完全に不法侵入だ。呆れて思わず額を押さえる。

 

 けれど、彼女がリンの様子をちゃんと確認して、起こさないように配慮してくれたことだけには、素直に感謝すべきなんだろうか‥…。

 

「‥‥座るかい?」

 僕は座っていたベットの隣をポンポンと叩く。

「いいの?」

「おや。不法侵入者にも遠慮という概念があったとは知らなかったな」

「失礼だなぁ。ちゃんとノックはしたよ」

「返事を待たずに入った時点で全部台無しだよ」

 くすりと笑いながら、レミエールは僕の隣へ腰を下ろした。

 

「それで……こんな夜更けに、プロキシの自室に何の用だい? 昼間、お互い距離を置こうって話をしたばかりだと思うんだけど」

 僕は彼女の方を見る。

 

「そうなんだけどね? どうしても君に直してもらいたいものがあるの」

 レミエールは思い出したように服のポケットをごそごそと漁ると、大会で配布された地図を表示する端末であるエーテリアスカードを取り出す。

 

「これなんだけど……」

 僕へ差し出された画面には、大きく赤い文字でエラーが表示されている。

 

「今回は何をやらかしたんだい?」

「えっとね」

 彼女は少しだけ視線を逸らしながら、人差し指同士をつつく。

 

「十年前の大会で、プログラマーさんが隠しコマンドを仕込んでたってニュース見たの」

「それで?」

「アキラさんが昔教えてくれたじゃない?」

 彼女は得意げに両手を動かし始める。

 

「『上上下下左右左右BABA』って」

「……まさかと思うけど」

 嫌な予感しかしない。

 

「試しに入力してみたらね?」

 にこっと笑う。

 

「なぜか動かなくなっちゃった」

「……」

 僕はしばらく黙ったままカードを見つめ、そして、小さくため息をつくしかなかった。

 

「昼間、セルフレジを使わずに店員さんを呼べと言った意味が、ようやく分かったみたいだね」

「……えへへ。だから来たの。アキラさんなら、直してくれるでしょ?

「まったく、何年経っても、困ったら僕を呼べばいいと思ってるだろう?」

 工具箱を引き寄せ、ドライバーを手に取る。

 

「ほら、貸してごらん。」

「直せそう?」

「壊した本人よりは詳しいつもりだよ。」

「お願い、先生。」

 レミエールは嬉しそうに身を乗り出す。

 

 百年前も、彼女は何かを壊しては、決まって僕のところへ持ってきた。

 

『アキラさん、お願い!』

 そう言われるたびに、僕は苦笑しながら工具箱を開いていた。

 

……本当に、変わらないな。

 

 変わってしまったのは、僕たちを取り巻く時間だけだ。

 

「……なるほど、やっぱりアンチチートが働いていたみたいだ」

 受け取った端末の裏蓋を開けば、内部を一目見ただけで原因は分かった。

 

「……つまり?」

「君が余計なことをした証拠だね」

「どのくらいかかりそう?」

 レミエールは感心したように頷く。

 

「これくらいならすぐさ」

 画面にサービスモードを呼び出すと、いくつか認証を済ませ、ロックを解除する。

 

 数十秒後、赤い警告表示が消えた。

 

「これで治ったよ」

「えっ、もう?」

「これくらいならね」

 裏蓋を戻し、電源を入れる。

 

「ほら、動いたよ」

 カードの画面を見てみれば、正常に表示されていた。

 

「今度からは普通に使うんだよ」

「うん……たぶんね」

「その『たぶん』が一番信用できない言葉だ」

 そう言いながら僕は、彼女にエーリアスカードを手渡す。

 

「…………」

 レミエールは僕の手ごとカードを掴んだまま、じっと見つめる。

 

「どうしたんだい?」

 

「ちゃんといるんだなぁって思っただけ」

 そう言って彼女は、僕の手を両手で包み込む。。

 

「まだ君が生きてること信じられなくて」

 指先を確かめるように、そっと親指でなぞる彼女に、返す言葉が見つからず、気が済むまで触らせることにした。

 

 静かな沈黙が流れる。

 

 カップの中のインスタントコーヒーから、まだ湯気が立っていた。

 

「……ねえ」

 レミエールが不意に僕を見た。

 

「妹ちゃんのこと、心配?」

「……そんなにわかりやすかったかい?」

「君はいつも一人で抱え込もうとするから、顔を見ればわかるんだ」

 レミーエルの言うことはまったくもって図星だった。

 

 僕は視線をコーヒーへ落とす。

 

「呼吸も脈も問題はなかった。少しすれば元気に目を覚ますだろう」

「それなのに、不安なんだね」

「……君のエスパーぶりには驚かされる」

 認めるしかなく、僕は頷く。

 

「もし悪化したら、もし目を覚まさなかったら……もし大会で音動機を手に入れられなかったら」

 一度考え始めると、悪い想像ばかりが浮かんでくる。

 

「何もしてあげられない事がもどかしくて仕方ない」

 ぽつりと漏らした独り言に、レミエールは何も言わない。

 

 ただ、そっと僕の隣へ身体を寄せてきた。

 

「レミエール?」

「今日はゲームも駆け引きもなし」

 彼女は静かに笑う。

 

「ただ、昔みたいに甘えるだけの時間にしよう」

 返事を待たず、彼女の両腕が背中に回り込む。

 

「……私も、そうしたいから。」

 ふわり、と。背中から伸びた両翼が、優しく包み込んでくる。

 

 それは虚狩りの翼ではなく。レミエールという一人の女性の温もり。逃がさないためでも、束縛するためでもない。ただ、不安を少しでも和らげるような抱擁のぬくもり。

 

「大丈夫」

 耳もとで、優しい声が響く。

「君の凄さは私が一番よく知ってるから」

 僕は自然と目を閉じていた。

 

 不思議なもので、さっきまで張り詰めていた胸の奥が、少しだけ軽くなるように感じる。

 

「ありがとう」

 自然と口をついて出ていた。

 

「ふふ、それを言うならこっちの方かな」

 レミエールはそれは嬉しそうに笑う。

 

「本当は、エーテリアスカードなんてどうでもよかったの」

「……え?」

「ただ、君に会いたかっただけ」

 そういうと、レミーエルは照れ隠しのように笑う。

 

「昼間、あんな別れ方だったから」

 僕は苦笑するしかなかった。

 

「君らしい理由だ」

「そうでしょ?」

 彼女は少しだけ顔を近づける。

 

 あと少し、あと少しで、お互いの額が触れそうな距離。

 

―――僕は彼女の唇に人差し指を立てた。

 

「レミエール、その先は、まだダメだ」

 首を横に振ると、彼女は少しだけ寂しそうに目を細めた。

 

 レミエールは僕の指から逃れるどころか、その人差し指に自分の唇をそっと押し当てて、指越しに深く、熱い吐息を吹きかけてくる。

 

「……うん。アキラならそう言うよね」

 そう言いながら、彼女のルビーのような瞳は、僕の理性をじわじわと焼き切るように見つめ続けている。

 

 そんなやり取りをしながらも、互いを抱き締める腕を緩めることはなかった。

 

 それくらいのわがままなら、今日くらいは許されてもいい気がした。




この作品、後々レミエールの設定明かされると矛盾で死ぬことになる未来しか見えない。そうなったら、この二次作品はこういうもんなんだなと思っといてください。
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