初代虚狩りだった元カノと百年ぶりに再会したら、未練たらたらな指名手配犯になっていた件 作:you are not
それと、皆様の応援のおかげで日間16位取れました。
その後みんなでパーキングで車を拾って、ブレイズウッドにへ向かう。
しばらくして、ブレイズウッドに到着すると、広大な砂漠と荒野に囲まれた町は変わらず砂嵐が吹き荒れ、西部劇を彷彿とさせる光景が広がっていた。
街に入ってすぐ、見知ったカリュドーンの子たちの顔を見つけた。
「よう、プロキシじゃねぇか!よく来たな、遊びに来てくれたのかよ?」
最初に声を掛けてきたのはシーザーだった。隣にはパイパーがいて、少し離れたところではビックダディさんの姿もあった。
「ホロウ・ザ・ヒーローじゃ大変だったみたいだな」
「うん、実はね」
リンはホロウ・ザ・ヒーローの大会で起きた出来事を大まかに説明する。
二人が知っているロームルでのことから、賞品の音動機を狙っていたこと。そして、それをラミル――レミエールが奪っていき、現在探していること。
「そういうことか……」
シーザーは腕を組み、小さく頷く。
「けど、そのピンク髪の女ってのは、ちょっと心当たりがねぇな」
「カリュドーンの子総出で探してやりてぇところだけどよー」
二人は申し訳なさそうに肩をすくめる。
「あいにくここんとこ、こっちも人手がねぇ」
「何かあったのかい?」
「TOPSだよ、TOPS」
アキラが聞くと、パイパーが不機嫌そうに吐き捨てた。
「何考えてんのか知らねぇが、また郊外に首突っ込んできたんだ。それもブレイズウッドに近いホロウにだぜぃ」
「だから今は、みんなそっちの対応で手一杯なんだ」
「うん、わかったありがとうね」
その話を聞き、リンが納得を示した。
「ところで、そのラミルって何者なんだ?」
シーザーが素朴に尋ねる。
「お兄ちゃんの元カノだよ」
アキラが少しだけ答えに迷っていると、リンがあっさり答えた。
「リンちょっと待ってくれ」
アキラがすぐに窘める。
「そういう言い方は誤解を招きかねない……」
「え?違うの?」
「……違わないけれど」
「煮え切らねぇのはかっこ悪いぜぃ」
パイパーが思わずツッコむ。
「元カノ?‥‥えっ!?アキラお前恋人いたのか!?」
シーザーが顔を真っ赤にしてうろたえる。
「そうなの、私も最近知ったばかりなんだ。妹なのに酷いよね。なんか昨日もやましいことしてたみたいだし……」
「それ、元カノって言うのか?」
パイパーはアキラはこいつマジかという顔で見る。
「とにかく、そっちの事情は大体わかった」
その横でシーザーは理解できずキョトンとしていたが、すぐに切り替えた。
「その『ラミル』とかいう奴のことは、こっちでも気に掛けといてやる」
「ありがとう。助かるよ」
僕は静かに頭を下げる。
少し離れた場所では、シーシィアがビッグダディさんと何やら真剣な表情で話し込んでいた。隣ではビリーが腕を組み、気まずそうな顔をしていた。
「あっ、プロキシ君!なんかそっちは収穫あった?」
「いや、特に何もなかったよ」
僕たちが合流すると、話は自然とレミエールのことへ移った。
「あぁ、そういや」
すると、ビッグダディさんが何かを思い出したように口を開く。
昨夜、バーニスが見慣れない女性と朝まで飲んでいたらしい。もしその相手がレミエールなら、何か知っているかもしれない。
そう教えられた僕たちは、さっそくバーニスを探しに向かうことにした。
「あーーっ!知ってる知ってる!」
端末のレミエールの写真を見せたバーニスが大きな声を上げる。
「昨日、一緒に飲んだ子だよ!」
「やっぱり!」
リンと僕は顔を見合わせた。
「初めてニトロフューエルを飲むらしくてね!最初は静かだったんだけど、お酒飲み始めたら急にいっぱい喋ってくれたんだ!」
「うん、それで?」
リンが先を促す。
「えっとねぇ……」
バーニスは少しだけ考え込む。
「プロキシちゃんのお兄さんの人の話をいっぱいしてたよ!」
「…………」
全員が何を察して、視線が僕へ一斉に集まる。
「『アキラさんにまた抱きしめてもらいたい』とか!『アキラさん、コーヒー好きなんだよ』とか!ほとんど惚気話ばっかりでさぁ。私もニトロフューエルのコーヒー割りが手放せなかったよ!」
最後の方はただの文句じゃないか?と思いながら、僕は何も言わずただ静かに、バーニスの言葉に耳を傾けていた。
「でも途中からさぁ……笑ってるのに、なんか泣きそうな顔になっちゃって」
バーニスの表情が少しだけ曇る。
「『会いたいなぁ』って、何回も言ってた」
僕はその言葉に小さく息を呑む。
ビリーやシーシィア、リンも何も言わない。
「でも最後はね!『ちゃんと会いに行くから大丈夫!』って、自分に言い聞かせるみたいに笑ってたよ!」
バーニスはまた笑顔を浮かべた。
「そ、そうなのかい……教えてくれてありがとうバーニス」
なぜだか、その笑顔に圧を感じながら感謝を伝えた。
「それで、そのあとなんだけど!」
バーニスは指を一本立てる。
「ブレイズウッドから一番近いホロウってどこ?って聞かれて、教えてあげたら、『ありがとう』って、そのまま行っちゃった!」
「ホロウか……」
僕は静かに呟く。どうやら、また一歩遅かったらしい。
「きっとまた会えるよ。だってあの子、プロキシちゃんのこと、本当に大好きだったもん」
その言葉に、僕は小さく目を閉じる。
「彼女が色々迷惑かけたみたいで、すまなかったねバーニス」
「大丈夫!でも、また一緒に飲むのはちょっと勘弁かな」
バーニスから聞いた場所を目指し、僕たちはブレイズウッド近郊のホロウへ足を踏み入れた。
道中、ビリーは完成した新フォームを披露した。装甲を一新し、バイクの乗り回すその姿は、以前より遥かに強力で彼が求めるヒーローらしくへ改修されている。
「どうだ店長! これが俺の最新フォームだ!」
「いいじゃないか、正義のヒーローそのものだ」
「流石わかってるぜ!」
短く笑い返すと、ビリーは満足そうに親指を立てた。
その後も、シーシィアの感覚を頼りにレミエールの痕跡を見つけ出し、彼女の案内に従い、ホロウの奥へ進んでいった。
「止まってくれ、誰かいる」
気配を感じ、全員を静止させる。
すると、ガシャン、ガシャンと金属が擦れ合うような耳障りな音が、静かな空間へ響く。
「おいおい、なんであいつがいるんだよ!?」
「ロームル!?なんで、あいつ豚箱送りになったんじゃないの!?……なんかメカメカしくない?」
目の間にいるのは、狼のシリオンのような野性味は感じられず黒と青を基調とした人型の知能構造体だった。メカロームルとでも呼ぶべきそいつは青白い光を放つ装甲を纏い、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「おいおい、どっかの戦闘力53万じゃねぇんだぞ!?」
「敵対反応感知。殲滅モード移行」
メカロームルはこちらの姿を認識した瞬間、武装を構え殺意をむき出しにしてくる。
「よし。みんな、ここは任せろ!」
ビリーは赤いマフラーを翻し、一気に距離を詰める。
バイクによる突撃、そして蹴りなどの鋭い一撃に、メカロームルは、反撃する間もなく機能を停止した。
「どうだ!」
胸を張るビリー。
しかし、一体だけではなかった。複数のメカロームルが群れを成すように集まってくる。
「って量産型かよ!」
「どうやら、宇宙帝王の兄の方だったみたいだ」
冗談を飛ばしながら僕は剣を構え直し、ビリーもバイクをふかす。
ふと、群れの中で、一体だけがこちらを見つめたまま動かない個体が、ゆっくりとこちらへ向く。
「よっ、久しぶり」
群れの最前列。一体だけ動きの違うメカロームルが、こちらへ軽く手を振るような仕草をした。
「また会ったね、fairy。それとパエトーン」
「……Youkai」
アキラは静かに剣を構える。
「相変わらず趣味の悪い登場だ」
「ははっ、褒め言葉として受け取っとくよ」
Youkaiは肩をすくめるように笑う。
「じゃ、挨拶代わりに」
Youkaiが操るメカロームルの瞳が、不気味な紫色に揺らめいた。
「……あ?」
ビリーの動きが、不自然に止まった。
肩が震え、膝が崩れ、その場へ片手をつく。
「ビリー!」
「やべべ、かか体が、ウウガネェ!……ここいつは、トロイの木馬!俺の最新ファファ、ファイヤウォールをどうやって!」
「数打ちゃ当たるってね。数百万送り込めば、一匹くらいは防壁を突破するさ」
Youkaiは愉快そうに笑う。
「これで君たちの切り札は封じた」
機械の口元が、不気味に吊り上がる。
「それとも君がやるかい?ピュロイスを失った君が?」
Youkaiはゆっくりとアキラへ視線を向ける。
「君相手にはいらないかもね」
「おいおい、余計に弱く見えるぞ」
メカロームルたちが一斉に武器を構え、僕たちを包囲する。
数の差は歴然だ。ビリーは動けない。
このまま押し切られると思った、その瞬間。
「狩りを始める」
凛とした声がホロウへ響く。
―――黒い外套を纏った一人の女性が戦場へ現れた。
彼女は高所からコウモリのように滑空し、メカロームルたちを華麗な足さばきで次々と倒す。
「黒枝の裁決官、プロメイア」
その名を聞いたYoukaiは、小さく舌打ちする。
「最悪のタイミングだな」
プロメイアの援護に合わせ、僕たちも一斉に反撃へ転じた。
シーシィアの二股の鞭に電流が走る。僕は迫る一体を横薙ぎに切り伏せた。数分にも満たない攻防の末、Youkaiは静かに肩をすくめる。
「……分が悪い」
次の瞬間、全てのメカロームルから光が消え、その場へ崩れ落ちた。
「今日はここまで」
Youkaiはそう言い残すと、それ以上戦うことなく全てのメカロームルを強制停止させ、そのまま姿をくらませた。
その後、朽峰グループを追うプロメイアと情報を交換した結果、互いの目的地が一致していることが判明した。僕たちは一時的に行動を共にし、シーシィアが追うレミエールの痕跡を頼りにホロウの奥へと進んでいく。
やがて空間の裂け目を発見し、その先まで足を踏み入れたものの、そこにレミエールの姿はなかった。周囲を捜索しても新たな手掛かりは見つからず、僕たちは一度ブレイズウッドへ引き返すことにした。
ブレイズウッドへ戻った僕は、自室へ戻るとレミエールから託された花束を花瓶へ移し替えた。
ワスレナグサ、アネモネ、アイビー。
部屋の片隅へ飾ると、不思議と彼女がそこにいるような気がした。
「会いたい」
ずっとそう思ってここまで来た。けれど、何を話そう?仲直りしたい?それとも―――
……やめよう。
疲れもあって考えを早々に切り上げると、その夜はすぐに眠りへ落ちた。
しばらくして、人の気配を感じて浅い眠りから意識が浮かび上がる。
目を開けると、そこには―――ベッドのすぐ横から、こちらを覗き込むレミエールの顔があった。
「あ」
「……」
目が合った瞬間、レミエールは一瞬だけ固まる。
「起きちゃった?」
僕は言葉も出せず、小さく頷く。
「んー、困るなぁ」
彼女は照れ隠しのために、自分の毛先を意味もなく親指と人差し指でつまんで、そっと撫でていた。
「こっそり帰ろうと思ってたんだけど」
そう言って身を引こうとしたレミエールに対して
―――僕は反射的に腕を伸ばした。
「え――」
逃がさないように、その身体を抱き寄せる。いつかの夜ぶりに感じる、彼女の温もりだった。
「アキラさん……?」
顔を上げようとする彼女の後頭部を掴んで抱き寄せる。
「逃げないでくれ、頼むレミィ」
気付けば、彼女の耳元へそう囁いていた。自分でも驚くほど弱々しい声だった。
そして、かつての愛称を、無意識に呼んでいた。
言ってなかったんですけど、みんなレミエールと言う名前から初代虚狩りだってわからんのは、ダン中佐と言うのが有名だし、仮に連想しても本人だとは思わないからです。織田さんと言われても、信長みたいとは思っても信長本人とは思わないみたいな。
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