ナイトシティを喰らう   作:高濃度補給剤ぶんぶん丸

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おすすめはあるか?

今日は……ヤキトリですかねぇ。



何だこれは!?

え?ヤキトリです。



4:二口目:ヤキトリ

通話を終えてから10分ほどでリカルドは大きな丸いものがいくつか串に刺さったヤキトリを3本持って帰ってきた。

「お、今日はヤキトリか。やっぱたまには肉だよな。」と言いながら1本受け取るテッド。

「この丸いのがヤキトリ?これはどの部位なんだ?」ヴァンも受け取りながらつぶやく。

「部位?何言ってんだヤキトリ(YAKITORI)はヤキトリ(YAKITORI)だろ?こっからここまで、刺さってるので全部だ」と不思議そうな顔をしながら直径が5㎝くらいありそうな特大のつくねのような球体の一つをテッドは二口で食べた。

 

「焼き鳥というんだから鳥(bird)を焼いたものではないのか?最低限の辞書データしかないがそれくらいは私にだってわかるぞ。」からかわないでほしい、とムッとした顔になってヤキトリを端からボリッと一口で食べるヴァン。

説明しようと半笑いでヴァンの方を見て、串の先ごとなくなっているのに気づいてスンッと真顔になり二度見するリカルド。

 

「普通は串は食わねぇんだぞ。人はそういうインプラントを入れてないと消化できないところだからな。」

「二人してなんだ。私は吸収できるからいいんだ。」少しむくれながらぶつくさ言う。

 

「で、なんで鳥(bird)が出てくるんだ?ヤキトリ(YAKITORI)はヤキトリ味だろ?」と不思議そうな顔をしながら食べているテッド。それを聞いて何かに気づいたようにリカルドが続ける。

「あぁ、そうか。ナイトシティ民じゃないなら分からないよな。この街じゃ鳥ってのは基本的にはいるとこ*1にしかいねぇんだ。これは違う。」

 

「じゃあこれは何でできてるんだ?」むしゃむしゃしながらヴァンは聞き返す。

「今の肉は工場で作られた合成肉ばっかりさ。だから料理人が下手でもみんな中ったりしない。このヤキトリはチキン味の合成肉に食用プラスチックのナンコツチップを練り込んだやつだな。触感は悪いけど火を通さないでも食えたはずだぞ。ちょっとべちゃッとしてるから焼いた方がうまいけど。」

 

「鳥(トリ)を名乗るのに鳥(bird)じゃないのか。」

「あぁ、それとな、お前が言いたいのは多分鳥(bird)じゃなくて鶏肉味(chicken)だと思うぞ。*2」

 

「チキンは鳥(bird)の肉ではないのか?」

「鳥(bird)は鳥(bird)でも鶏の肉(chicken)らしいぞ。まぁ俺たちはチキン味しか知らないが。」

「はぇー。チキンって鶏だったんだな。えっ大丈夫かよ??たまに本物の鶏肉食って死んだやつの話とか聞くぞ。鶏は他の家畜の肉よりヤバいんだろ?家畜の肉なんて闇市じゃ他に出回ってねぇ*3けど。」

「チキンのフレーバーが付いてるだけだからな。オールフーズのもバイオテクニカのもコオロギプロテインか、最近は食用のヒラムシ*4のミンチのもあるらしいが、それを殺菌して加工したやつだから生で食って食中毒で死ぬなんてことはないさ。ちゃんとした工場製の合成肉*5は穴とか開いてなきゃだいたい安全だ。」

 

「というか、動物の肉をそのまま食べると最悪死ぬのか人間。脆過ぎないか?」

「本物のチキンなんて料理したことあるやつ少ないだろうしな。どれくらい熱を通せば食えるのか俺にはよくわからん*6。多分そういうのが原因なんだろうな*7。そもそもそういう趣味でもないならみんな大した調理器具持ってないしな。いや、グリル*8の用意がある家はサントドミンゴとかみたいなスペースのあるとこにはそこそこあるだろうけどよ。」

 

「それで、ヤキトリはどうだった?」とヴァンの、もう持ち手の部分しかなくなった串を見てリカルドは問う。

「口がじわっとした。」串の残った部分を爪楊枝のように使いながら答えるヴァン。

「しょっぱさかな。あとは?」

「そうだな……。テッドがワサビ?というのを味に数えた理由が分かった気がする。」使い終わった串をスティック状のプレッツェル菓子のようにポリポリと食べながら続ける。

「この匂いがチキンのものとしてつけられているなら、元来肉と塩というのは相性がいいのだろうな。人間の歴史の味がする。」

 

「あとはブロックの時より匂いの影響が大きい。味とは別のレイヤーのものが重なって一つのものになっている、気がする。そうだな……動画の映像部分と音声部分のように受け取る感覚器(センサー)が違うだけで確かにこれは支え合ってひとつの物を完成させている。」

「ほぅ。ブロック以外の食事が初めてにしてすでにテッドよりグルメレポートが上手そうだな。」と感心した様子のリカルドにテッドが言い返す。

「やってみないとわかんねぇだろ!」

 

「じゃあうめぇとすげぇ以外でなんか言ってみろ。ハイ!」とマイクを向けるジェスチャーをするリカルド。

「えっうまいもんはうまいんだから……。あー、えー?……めっちゃ肉!!」とテッドが言ったのを聞いて、リカルドは首を振りながらヴァンの手を取る。

「勝者、ヴァン!」と上げられた手の意味が分からずヴァンはただ困惑していた。

*1:
2063年の鳥類駆除法によりナイトシティからは鶏だけでなくハトやカモメなど野生のものも含めて鳥は除かれている。外に出さずに育てられている闇市の鶏くらいしか市内には存在しない。

これはこの街のみの法律である。制定理由は鳥により蔓延した致死率の高い感染症(これは設定上実在する)に対抗するためであり、この鳥による感染症の前にも何度もそういった感染症の蔓延はたびたび起きていて恐れられていたため市民としても市が対策をうつことには賛成が多かっただろう。

しかし、世界中を襲った以前のそれと違いこの街を局所的に襲ったこの感染症について、付近のメガコーポが作っていた細菌兵器でも漏らした後、拡大を抑えるために鳥を駆除にまわったのではないかと個人的には邪推してしまう。

*2:
豚肉のヤキトリとかも現代日本にはあるので、リカルドのこの予想は厳密には誤っている。

*3:
家畜ではないそこら辺にいる動物の肉を加工したものなら出回っているようだが

*4:
ウミウシみたいなやつ。現代にいるようなのと違い、おそらく遺伝子改造されて効率的になっていると思われる。

*5:
ちゃんとしてない工場製の缶詰でボツリヌス菌中毒での死亡例がニュースになることもある。

*6:
ゲーム中でも本物の鶏の肉?よくわからないけど危ないんでしょう?味見で死ぬつもりはないわ。という話をしている市民がいる。そもそも工場生産ではない素材があまり流通していないこともあり、調理済みの物を買ってくることしかできず、調理というものから市民が遠ざけられている分基礎的な知識が乏しいと思われる。

*7:
ゲーム的な見栄えの問題かもしれないが、ナイトシティのヤキトリは一つのボールがやたらデカい。火力を普段気にせず適当に焼いている人があのサイズ感のまま金網で鶏肉を焼こうとしたら、おそらく外は焦げているのに一塊が大きすぎて中が生、ということはよく起こると予想される。

*8:
いわゆる日本人がバーベキューと呼ぶものはアメリカではこう呼ばれている。アメリカのバーベキューはこれとは全く別物である。

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