ナイトシティを喰らう 作:高濃度補給剤ぶんぶん丸
通話を終えてから10分ほどでリカルドは大きな丸いものがいくつか串に刺さったヤキトリを3本持って帰ってきた。
「お、今日はヤキトリか。やっぱたまには肉だよな。」と言いながら1本受け取るテッド。
「この丸いのがヤキトリ?これはどの部位なんだ?」ヴァンも受け取りながらつぶやく。
「部位?何言ってんだ
「焼き鳥というんだから
説明しようと半笑いでヴァンの方を見て、串の先ごとなくなっているのに気づいてスンッと真顔になり二度見するリカルド。
「普通は串は食わねぇんだぞ。人はそういうインプラントを入れてないと消化できないところだからな。」
「二人してなんだ。私は吸収できるからいいんだ。」少しむくれながらぶつくさ言う。
「で、なんで
「あぁ、そうか。ナイトシティ民じゃないなら分からないよな。この街じゃ鳥ってのは基本的にはいるとこ*1にしかいねぇんだ。これは違う。」
「じゃあこれは何でできてるんだ?」むしゃむしゃしながらヴァンは聞き返す。
「今の肉は工場で作られた合成肉ばっかりさ。だから料理人が下手でもみんな中ったりしない。このヤキトリはチキン味の合成肉に食用プラスチックのナンコツチップを練り込んだやつだな。触感は悪いけど火を通さないでも食えたはずだぞ。ちょっとべちゃッとしてるから焼いた方がうまいけど。」
「
「あぁ、それとな、お前が言いたいのは多分
「チキンは
「
「はぇー。チキンって鶏だったんだな。えっ大丈夫かよ??たまに本物の鶏肉食って死んだやつの話とか聞くぞ。鶏は他の家畜の肉よりヤバいんだろ?家畜の肉なんて闇市じゃ他に出回ってねぇ*3けど。」
「チキンのフレーバーが付いてるだけだからな。オールフーズのもバイオテクニカのもコオロギプロテインか、最近は食用のヒラムシ*4のミンチのもあるらしいが、それを殺菌して加工したやつだから生で食って食中毒で死ぬなんてことはないさ。ちゃんとした工場製の合成肉*5は穴とか開いてなきゃだいたい安全だ。」
「というか、動物の肉をそのまま食べると最悪死ぬのか人間。脆過ぎないか?」
「本物のチキンなんて料理したことあるやつ少ないだろうしな。どれくらい熱を通せば食えるのか俺にはよくわからん*6。多分そういうのが原因なんだろうな*7。そもそもそういう趣味でもないならみんな大した調理器具持ってないしな。いや、グリル*8の用意がある家はサントドミンゴとかみたいなスペースのあるとこにはそこそこあるだろうけどよ。」
「それで、ヤキトリはどうだった?」とヴァンの、もう持ち手の部分しかなくなった串を見てリカルドは問う。
「口がじわっとした。」串の残った部分を爪楊枝のように使いながら答えるヴァン。
「しょっぱさかな。あとは?」
「そうだな……。テッドがワサビ?というのを味に数えた理由が分かった気がする。」使い終わった串をスティック状のプレッツェル菓子のようにポリポリと食べながら続ける。
「この匂いがチキンのものとしてつけられているなら、元来肉と塩というのは相性がいいのだろうな。人間の歴史の味がする。」
「あとはブロックの時より匂いの影響が大きい。味とは別のレイヤーのものが重なって一つのものになっている、気がする。そうだな……動画の映像部分と音声部分のように受け取る
「ほぅ。ブロック以外の食事が初めてにしてすでにテッドよりグルメレポートが上手そうだな。」と感心した様子のリカルドにテッドが言い返す。
「やってみないとわかんねぇだろ!」
「じゃあうめぇとすげぇ以外でなんか言ってみろ。ハイ!」とマイクを向けるジェスチャーをするリカルド。
「えっうまいもんはうまいんだから……。あー、えー?……めっちゃ肉!!」とテッドが言ったのを聞いて、リカルドは首を振りながらヴァンの手を取る。
「勝者、ヴァン!」と上げられた手の意味が分からずヴァンはただ困惑していた。
これはこの街のみの法律である。制定理由は鳥により蔓延した致死率の高い感染症(これは設定上実在する)に対抗するためであり、この鳥による感染症の前にも何度もそういった感染症の蔓延はたびたび起きていて恐れられていたため市民としても市が対策をうつことには賛成が多かっただろう。
しかし、世界中を襲った以前のそれと違いこの街を局所的に襲ったこの感染症について、付近のメガコーポが作っていた細菌兵器でも漏らした後、拡大を抑えるために鳥を駆除にまわったのではないかと個人的には邪推してしまう。