ナイトシティを喰らう 作:高濃度補給剤ぶんぶん丸
長い一日が終わり、夜が明けた。テント生活のホームレスの朝は早い。
リカルドはいつものように明るくなってきたテントの中で目を覚ますと寝ぼけまなこをこすりながらテントから這い出した。
そこに聞こえてきた、聞きなれない音の方を向くと目の前にふわりと上から降ってくるヴァン。
「うおっ!?今どっから!?」
「電柱の上。電波状況がマシだったから。テキストも画像データも読めるように変換できるようになったし、少し人間のことが分かったかもしれない。」
「
「してない。目立つのは本意ではなかったから見るだけだ。」
「ヨシ。」
「おっす!おはよう!!」とそこに起きてくるテッド。
「おう、おはよう。朝から声がデカいな。」と返すリカルドとその横で手を上げて挨拶するヴァン。
その時数ブロック離れたところから銃声と爆発音が聞こえてくる。
そう時間をおかずにリカルドの端末にNCPDスキャナの通知が来たのを見てヴァンは納得したように頷く。
「こちらでも受け取れている。ちょっと行ってくる。」とBalmungを副腕のハードポイントから抜くと腰から背中にかけてのスタスタ―群をふかして走り去った。
「おっ速ぇ!追いかけようぜ!」と走り出すテッド。
「まぁどんなもんか確認しとく必要はあるからな。」としぶしぶそれを追いかけるリカルド。
建物の間を抜け、曲がり角の先に現場が見えた。距離100m……90m、介入まで約4秒。
前方で銃撃戦、生死不明ダウン1、生存は2対2、銃撃戦から車道を挟んで爆発に巻き込まれたのか市民と思われる死体1、姿勢を低くしてこちらの方に逃げようとしている市民1。
照会完了、銃撃戦をしているのはアニマルズ2、スカベンジャー3。全員
ここまで1秒と経たずスキャンし終える。撃ち合うスカベンジャー達の背中方面からヴァンが迫る。
AVとも違う甲高い飛行音をさせながら近づくヴァンに最初に気が付いたのはスカベンジャー越しにそれが見えたアニマルズ達だった。
「おい、なんだありゃ。っ突っ込んでくる!」と横のチューマにちらりと目くばせするが相手も首を振って応え、二人は近くの遮蔽物に身を隠そうとする。
気付くのが一拍遅れたのはスカベンジャーたち。
空飛ぶギロチンのように水平に構えられた刃が首を通過したのだ。
アニマルズと向かい合うのを放棄して振り向くもう一人のスカベンジャーを置き去りにしてさらに加速したヴァンはそのままアニマルズ二人が遮蔽物にした箱の上を飛び越えざまにその刃を振り下ろした。血が飛ぶ。
振り下ろされた先にいたアニマルズは脳天から頭の前半分を失って絶命することになったが、死の振り子の後半、刃が振り上げられる側にいたアニマルズはケレズニコフ*1でも積んでいたのか持っていた銃を振って、それを犠牲に刃をそらす。
残ったアニマルズは真っ二つになった銃を捨て、相棒が持ったまま倒れた銃に飛びつくとそのままヴァンに射撃をおこなう。
一方のヴァンは飛び去ったすぐ先にある街灯の柱を片手でつかみ、速度を落とさないまま元の方向に戻ろうとする。
銃弾が街灯で跳ね、つかまれたところに大きな力がかかり手形が残る。
それが引き返してくる間も銃撃を続けて撃ち落とそうとする。
銃弾は当たるはずの軌道のものも確かにあった。
しかし命中の直前にまるでジャミングを受けたスマート武器*2のようにそれの直前の何もないところで銃弾がそれるのが見えてしまった。
「っ!?」それが、残ったアニマルズの見た最後のものだった。
最後に残ったスカベンジャーはようやく振り向ききって最初の向きに一周したところだった。
そこにアクセルべた踏みの車のような速度で突っ込んできた拳に耐えきれなかった彼の頭部は胴体からそのままもぎ取られて二つになり、もう永遠に一つに戻ることはなかった。
一人目の首が飛んでからここまで二秒、上に飛んだその首がようやく落ちてきた音を最後に現場は一旦静かになった。
「すっげぇ!やっべぇ!!」終わるまでに追いつけずに結果的に離れたところで見ていることになったテッドがバカでかい声で駆け込んでくるまでの短い時間だったが。
「最後のズバッ!と左から右に向かって斬った動きのまま気が付いたら出てきてた左手でパンチ!あれすっごいな!カラテとかカンフーってやつか?」と興奮冷めやらぬテッドにリカルドがしゃべりかける。
「いいからお前は無事な銃とか、他になんか持ってないかとか探しとけ。俺はチップスロットが生きてるやつを探す。」
「なんで首のスロットなんて探すんだ?」
「そりゃこれがNCPDスキャナで受けた仕事だからだよ。通報内容としちゃそっちの歩道で多分こいつらのグレネードとキスしちまったやつが被害者だろうな。で、なんでそうなっちまったのかわかる証拠が必要なんだ。」
いまいちよくわかっていなさそうなテッドと、なるほど、切るところにも気をつけないといけないんだなと何かに納得しているヴァンをしり目にリカルドは続ける。
「ホロだと内緒話ができるだろ?で、目の前にランナーがいないなら直接でつなげばまず傍受されない。それで直近の通話ログが残ったままになるわけだ。グレネードを投げたか投げられたことを話してりゃ今回の犯人がわかって事件解決だ。NCPDは犯人がわかりゃそれでいいからな。」
チャットログ:イワンとミハイルとウラジーミル
イワン:アニマルズが復讐代行?済んだことに金出すような余裕のあるやつがストリートにいるのかよ。ましてやここはパシフィカだぞ
ミハイル:いたからこいつらが来てんだろ。
イワン:こいつらも傭兵だけで食っていけないからアニマルズもやってるんだろうがな。
ウラジーミル:野良犬に噛まれた気分だぜ。
ミハイル:アニマルだけにってkグレネードだ!!
ミハイル:ハッ蹴っ飛ばしてやったぜざまあみろ!
イワン:馬鹿野郎、誰か巻き込まれたぞ。通報に乗った暇な傭兵でも来たら三つ巴か向こうに付くかだ、急げ、不利になるz
ウラジーミル:チクショウ、焦り過ぎだ! 生きてるか?ダメか、クソッ。
ミハイル:どうする、ここじゃ離れると遮蔽がない。どこに退く。
「あった。ここだな。まぁ誰のせいだとしても全員転がってるから問題ないだろ。で、このログをコピーして送るってわけだ。わかったかヴァン?……あれ、そういやお前どこでチップ読むんだ?」
「
「ここはガッチリ規格化されてるところだからな。誰がやってもちゃんとしたリパーがやるなら同じとこに同じ機器が入ってるはずだぜ。スロットの互換性の関係もあるから自前で適当な改造するやつも基本的にはいないはずだ。」と答えるリカルド、それに納得したように頷いているヴァン。
リカルドは入金があった通知に気づいて内容を見て声を上げる。
「ん?うわ!まだログ送ってねぇのにいきなり500エディ*3も入った。えっ逆に怖ぇんだけど。」
「……あぁー。そういうことか。」ぎょっとした後明細を見て納得するリカルド。
「そっちの後に倒した方のアニマルズ、手配以外に賞金*4がかかってたみたいだな。」
「で……ログの方も送った。これで完了だ。しかしなんで俺の口座に……?あっ。ヴァン、お前丸ごと同じようにしたって言ったよな?」心当たりを確認していくようなそぶり、そしてヴァンからも答え合わせが返ってきて確定する。
「肯定。あぁ、そのまま手配情報を見ていたからリカルドの端末がこれらを倒した扱いになっているのか。振込先も同じままというわけだ。なるほど、こちらにも今の通知は来ている、確認できた。」
「はぁ。金が溜まったらお前の市民IDを作って口座もわけないとな。手配できるフィクサーを探しておくか。」と言い終わった時に追加の通知がくる。
「1200エディ。これはどれくらいなんだ?」と通知を見て尋ねるヴァン。
「この時間だとNCPDも処理が早いな。そうだな、屋台で飲み物を一缶買うとか、俺らみたいなホームレスのとこにまわってくるような多少期限が切れてても食えるとか、人気が出なかったりで投げ売りになった食料なら1エディもありゃ買える。それか文字通りのバック・ア・スライス*5とかもな。もっと怪しいやつならエニー単位だ。」とリカルドは指を一本たてる。
「銃とかと違って、食って死ななきゃいい、まで下げるなら食いもんは安い。どっちもいいもんは天井知らずなのは一緒だけどよ。」
「テッド、どうだなんかあったか?」
「やっばいぞ。予備の銃、デカいナイフ、弾薬にキャッシュ、おっバウンスパックにグレネードもあったぞ!」
「持ち物は使えるものも多そうだが、
「そこで転がってるスカベンジャーの連中ならウェアの一つ、肉の一筋まで”有効活用”しちまいそうだが、俺らじゃ
「
「しかし色々持ってたな。とりあえずヴァンの使えそうな武器はもらっておけよ、残りは一旦俺らが持っておく。で、持てるだけ持ったら飯食いに行こう。焼きたてのピザとかどうだ。」
「焼きたてのバック・ア・スライス!こいつらの持ってたキャッシュだけでもたくさん買えるな!」
「次はそれを試してみよう。楽しみだ。」と頷くヴァン達は荷物をまとめてヘイウッドにつながる橋に向かう。
今日のナイトシティスラング
nova:ヤバイ、やったぁ、最高!