ペストマスクは別のダンジョンに行ってみたい 作:読専の翁
国内屈指の不人気ダンジョン、アンデッドばかりが出るから通称不死の巣窟、この辺では巣窟と呼ばれていたりネットでは不死靴といわれている。そんなダンジョンが俺のホームだ。
なぜこのダンジョンがそんなに不人気なのか、それは出てくるモンスターが浅い層では儲からないスケルトン、そのちょっと先では臭いし汚いし見た目が悪いゾンビが出てくることが原因だ。俺もこのジョブじゃなければ潜ることはなかっただろう。
ふとなんでこんな不人気ダンジョンに隔離されなければならんのだ、と今まで思ってきたことを再度思いながらゾンビを殴り倒し心の中でため息をつく、最初の頃はあんなに恐ろしかったゾンビも今では流れ作業で倒せるのもいつからだったか、ちょっとした感慨深さを感じながら近づいてきたスケルトンを迎える。
敵ではない、味方であり俺がこのダンジョンをホームにしてる理由、そう俺はアンデッドを使役するネクロマンサーというジョブについており、このスケルトンは俺の使役しているアンデッドだった。
スケルトンが俺の足元にあるドロップ品を袋に入れる、浅い層に出ることからわかる通りスケルトンはかなり弱い、武器を持っていてもゾンビ相手には倒される可能性が高く、しかしレベルを上げるため俺が前で戦ってゾンビを倒しているのだ。
ありがとうと言いつつスケルトンのレベルを確認する、進化すると言われるレベルまであと少し、進化したら他のダンジョンに遠征することもできるかもしれない。そんな妄想をしながらマスクに仕込んだ香水の匂いが薄くなっているのを感じる、今日はここまでか。
いつか普通の敵と戦うことを夢見ながら帰還する。
「査定が終わりました。」
今日のドロップはそこそこよかったらしい、誤差の範囲ではあるがいつもよりも高い査定額を見る。
「一応聞きますけど何か残しておくものはありますか?」
巣窟をホームにしている人は残念ながら少ない、なのでこの受付は俺がいつも全部売るのを知っているが規則なので一応聞いているようだ、いつものように全部買取でというと裏に少し戻りお金を持ってくる。
「それで巣窟卒業はいつくらいになりそうなの?」
業務の時間は終わったようだ、口調が変わった受付にあと3回ほど潜ればスケルトンが進化しそうだ、と告げる。受け付けはそっかーと相槌を打ち少し間を開けてから口を開く。
「あなたがここを卒業しちゃうと寂しくなっちゃうね。」
ただでさえ人が少ないダンジョンだ、思うところがあるのだろう。そんな彼女に他のダンジョンに潜らないことには卒業するかはわからないと言っておく、ここのことは嫌いだが、人が少ない分儲けという分には悪くない。なんならダンジョン維持名目で少しだけ高く買い取りしているのも知っているのだ。ホームを変えるなら引越しもしたいところだしいろいろとめんどくさいことが待っている。巣窟のことはそこまで好きではないが金稼ぎという面ではそこまで悪くはないとも思っているのも事実なのである。
素直じゃないなーと嬉しそうにする彼女をしり目に帰る準備を整える、帰りに香水を買い足さないとなとぼんやり考えながら帰路に就くのだ。