堂島家の姉は、犯罪者が好きなことを隠している。   作:an-ryuka

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8.

 

真白のアパートに戻ってからは早かった。

 

真白の体がソファの上で揺れていた。

足立は片手で彼女を押さえ、もう片方の手を首元へ置く。

 

大学の時からある、足立が荒れた時の癖だった。

息が詰まり、真白の呼吸が乱れる。

 

「っ、……透、それ……」

 

「何」

 

「もっと」

 

足立は目を細める。

 

「何を?」

 

「もっと、締めて」

 

言わせたかったわけではない。

けれど、言われた瞬間、足立の中の何かが強く熱を持った。

 

「……ほんと、お前さぁ」

 

首に置いた手に力が入り、真白の喉が押しつぶされる。

足立は真白の腰をさらに引き寄せる。

 

「ぁ、あ……っ」

 

真白の声が跳ねる。

手が足立の腕時計を掴んだ。革ベルトを握りしめる指が白くなる。

 

足立はその真白の手を見た。

 

「そんな好きかよ」

 

「好き」

 

「僕じゃなくて?」

 

「透ごと、好き」

 

「気持ち悪いこと言うな」

 

「好き」

 

「黙れって」

 

「好き、透……」

 

足立は歯を食いしばった。

聞きたくない。

聞きたい。

その両方が同じ場所にあった。

 

足立は息を荒げ、首から手を離し、代わりのように肩へ顔を埋めた。

 

石鹸の匂い。

雨の匂い。

生田目のトラックに残っていた洗剤と段ボールの匂いが、まだ真白の服のどこかに移っている気がした。

 

それが嫌だった。

 

足立は真白の肌に噛みついた。

 

「っ、痛……」

 

「消えろよ」

 

「何が?」

 

「他の男の匂い」

 

真白は一瞬だけ目を見開いた。

それから、嬉しそうに笑ってしまった。

 

足立はその顔を見て、ますます苛立った。

 

「笑うな」

 

「嫉妬?」

 

「違う」

 

「うん」

 

「違うって言ってんだろ」

 

「うん」

 

「……っ、くそ」

 

足立の動きが荒くなる。

真白は声を抑えきれなくなって、足立の肩に顔を寄せ、体が大きく震えた。

 

ソファの軋みも、外の水音も、遠くなっていた。

 

 

やがて足立が体を起こそうとすると、真白が腕時計を掴んだまま離さなかった。

 

「……離せよ」

 

「少しだけ」

 

「重い」

 

足立はそう言いながら、完全には離れない。

真白は足立の腕時計を撫でている。

 

外の雨は、いつの間にかまた降り始めていた。

 

 

数日後、生田目は戻ってきた。

 

律儀にも、真白の前に現れた。

顔色は悪く、目の下には濃い隈があった。仕事着のまま、堂島家から少し離れた道端で真白を待っていた。

 

「危なかった」

 

生田目は掠れた声で言った。

 

「あんな場所だとは思わなかった。俺は……俺は、あんなところに人を入れていたのか」

 

真白は彼の前で、静かに立っていた。

 

「戻ってこられたんですね」

 

「何とか。何かに追われて……よく分からない場所で……」

 

「菜々子ちゃんを入れないでください」

 

真白は穏やかに言った。

 

生田目は強く頷いた。

 

「入れない。絶対に。俺は間違ってた」

 

その言葉に、真白は微笑んだ。

 

「よかった」

 

よかった。

本心だった。

 

これで菜々子は、少なくとも生田目には入れられない。

そう判断した。

 

判断したこと自体が、間違いだった。

 

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