変態狂人肉体派呪術師、冒険者ギルドを追放されたのでアステカとヴードゥを源流に持つ新呪術体系「カパック・ナワル」を操りソロ冒険者を極める!   作:大地の杖

8 / 9
第8話「偽りの名、汝の名」

イツァムのデッパツから3時間、一切のエンカウントもなく歩き続け…いやなんか途中で魔法陣描いて供物用意して躍りちらしてたな…まぁいいか…

 

「…あ?なんだこれ…」

 

…これは…夥しい量の血痕だ!

そしてその血痕は建造物に繋がっている…

 

これは、祭壇…?

 

「…ろくでもなさそ~ッ…!でも間違いなく天魔の類いの仕業なので呪物製作チャンスです」

 

~~~

変態移動中…

~~~

 

祭壇の上では男が木で出来たノコギリで犠牲者の首を切っていた!

 

「オーウッ!サマエルッ!!」

 

サマエルと断定された男はそれを否定することもなく、そしてイツァムに顔を向ける…

 

「…これは、これは…コールマンの三男坊…」

 

「しかもバレてるッ!!」

 

…二話目のセラフィムからか?

 

「…なんか、サマエルについて忘れてんだよな」

 

「ふむ、私について何か知っていると」

「ではこれ以上生かす理由はないな」

イタリアにおいて三日月を意味する包丁、メッザルーナのような木のノコギリを両手に持ちイツァムに接近する!

 

「初陣だッ!頼むぜ~マクアウィトル~ッ!」

 

マジックボックスから鉄製のマクアウィトルを構え、応じる!

 

木のノコギリとマクアウィトルがかち合うッ!

しかし鉄製のマクアウィトルの重さ(15kg)の前に木のノコギリはすぐに悲鳴を上げる!

 

「フン、人の世のモノは脆い…」

「では、神威を見せよう」

 

「サマエル・マルキラはマナセに仕え」

イザヤの昇天、1章8節の一部を諳じる!

「そしてベリアルは、大いなる怒りとともにエルサレムから吹き去った」

11章43節の一部を諳じる!

「彼らの間には多くの不潔さがあり、互いにそれを貪り食い合っていた」

7章11節の一部を諳じる!

 

「…マルキラ…あっ、そうか!マクアウィトル意味ねぇ!」

どういうことなのだ?!

「説明してる時間はなァい!!」

 

逃げ出しながらマントからくくりつけられた呪物をもぎとる!

 

「ボティオッ!!」

 

疫病を運ぶ風が吹き荒れる…!

 

「の前にこの間のアザゼルの皮膚ッ!!」

 

マジックボックスから取り出したアザゼルの皮膚を身に纏う!

 

「それは…アザゼル…!」

 

アザゼルの皮膚を覆うヤギの毛が疫病を吸着し、そしてイツァムに降りかかるその疫病をアザゼルの皮膚が身代わり=スケープゴートになる!

 

「これで届くはず…!しかし…今のアイツはいったいどれだ?ベリアル?マルキラ?サマエル?サマエルではないしな…マルキラかベリアルなんだが…んー…」

 

イツァムは逃げながら思考を巡らせる!

 

「…コールマンが、背を向ける?…呪術か!させぬ!」

 

疫病をもたらす竜巻がイツァムを襲いくる!

 

「…たしか…諳じれるか…?コールマン家に伝わる超口語訳のイザヤの昇天…やるしかないか!よし… 『とにかくベリアルは、イザヤに対して怒り狂っていた。イザヤが自分の正体を完全にバラした上に、王たちやエルサレム、ユダの国がサタンの支配にどっぷり浸かっていることを、全部世間にぶちまけてしまったからだ。』…だよな?」

 

「えーーと…続きが…」

 

疫病の竜巻がイツァムを飲み込む!しかしそれによってもたらされるあるゆる害はアザゼルの羊毛つき皮膚に吸われる!

 

「たしか…『怒りが頂点に達したベリアルは、マナセ王の心の宿り木の中にずるずると入り込み、そこに完全に住み着いた。そしてマナセをそそのかし、彼の口を使って命令を下させた。「イザヤを捕らえろ。そして、木のノコギリで真っ二つに挽き割って殺せ」と。』…これベリアル…いや、さっきマルキラって名乗ってたしマルキラか…?」

 

「これはマルキラである」

「これはマルキラの肉である」

「これはマルキラの命である」

 

うごうごとトウモロコシの生地を発酵させて出来た焼き人形が姿を変える!

その姿は…なんだこれは…人ではない、気体か…?

 

「えい」

 

その気体のような姿に変貌したボティオをマクアウィトルで叩くようにして斬る!

 

「…ウグッ…!う、うおおおおお…!」

 

男の七孔から見るからに体に悪そうな色の気体が吹き出ていく!

 

「この、私が…!呪殺される…!?」

 

「アザゼルもこれで殺したからなぁ…やっぱ堕天使とか天使とかには呪殺が効くんスよね」

 

気体は霧散した!

 

マルキラ を 倒した!

 

アザゼルの羊毛縫い付け皮膚(マルキラの毒ガス吸着済み)を手に入れた!

マルキラが憑依していた男の遺髪を手に入れた!

 

しかしそのマルキラに近寄る女の影アリ!

 

─それは、夜空によく似合う、美しい髪を持つ女だった

 

リリス(マルキラの妻)が現れた!

 

「…あなた…?」

 

「スゥーッ…えっこれヤバイ?」(小声)

いやぁヤバイっしょ…絶対狂うって…

 

「…コールマン…」

 

「ヤベェ!!こっち向いた!!」

逃げろ!!!

 

 危 !

 

「ホワァァァァッ!!」

 

マクアウィトルを持ち構える!当方に迎撃の用意アリ!

 

「…愛しいあなたの夜、愛されたわたしの夢。そして、万魔殿たるわたしの胎内(はら)」

 

「…そっちかッ!」

 

『ライラ・リリートゥ』(夜の魔女)

 

リリスを中心に「夜」が展開される!

 

「緊急術式展開開始!の前に!」

 

「セノイ!サンセノイ!セマンゲロフ!」

三天使の名を唱える!

 

「…!」

リリスが怯む!

悪魔学においてかつて天が彼女を連れ戻し、去勢して封印したという記述を持つ!

つまりこの三天使の名はシンプルにリリスのトラウマを抉り怯ませる呪文ということになるのだ!

 

「夜が更けて酒を飲む、なぜ私はそれを拒もうか。さあ、黄金の衣を身にまとい、輝く衣服で身を包むのだ。」

イツァムの呪文が響く!

 

「ここは私の髪の毬。あなたの祈りは天に届かないわ…死に続けなさい、永遠に!」

三天使の呪文を唱えられたリリスはしかし美髪の呪いをけしかける!

展開された夜そのものが大蛇と化し、イツァムを食らおうと襲いかかり、イツァムは飲み込まれてしまう!

 

「ぬうううっ…!」

しかしマクアウィトルを蛇の口内でつっかえ棒にして飲まれまいと耐える!

 

「…しぶとい…!おとなしく飲まれて…!」

 

「私の神は水の上、美しく輝く水面へと降りてこられた。神は美しいイトスギのようであり、美しき緑の蛇のようである。今や私は苦しみを置き去りにした。」

イツァムの神を称える詩が唱えられる!

 

「…イトスギ…緑の蛇…マヤか!」

「儀式などさせるものか!私自ら殺してくれる!」

 

大蛇は夜空に向け大口を開ける!

その口の中にリリスの髪から変身した毒蛇がなだれ込む!

 

「私は進む、私は打ち滅ぼすために進む。私の魂は青き水の中にあり、私は黄金の水の中に姿を現す。私は人々の前に現れ、彼らを戦争へと奮い立たせるだろう。」

「緊急術式展開準備完了!即時展開!!」

 

『皮を剥がれた我らが主』(シペ・トテック)

 

アステカにおける生け贄を捧ぐ祭壇からの神威が「夜」を侵食し、そして皮を剥ぐように崩壊させる!

 

「…これは…私の髪が…あああっ!」

髪を剥がれる激痛がリリスを襲う!

ボトボトと展開に巻き込まれた髪が地に落ちる!

 

「形勢逆転だァ!!」

 

その剥がれた髪はイツァムを包む黄金の衣、輝く衣服となる!

 

イツァムはこれで決めると言わんばかりにマクアウィトルで切りかかる!

「ぐぅっ、うううっ!」

しかしリリスは髪を束ね一匹の大きな蛇を産み出し、そのマクアウィトルを受け止め一瞬の隙を作る!

 

しかしその一瞬の隙が命取りだった

 

「イツァム・ヴァレン・コールマン!!」

 

「?!」

なぜイツァムのフルネームを!

 

「その偽りの名、剥がしてくれよう!」

「汝、その真名─」

「イツァム・ナー・コールマン!!!」

「YHWHのみならず、三位一体の主さえも地に引きずり降ろし、封じ、天魔人大決戦を引き起こした狂気の家系、創世神の名を冠するその六代目!!」

 

イツァム・ナー…マヤ…いや、本名…まずい!

 

「…う、おおおおお…!」

本名を明かされたことにより『皮を剥がれた我らが主』の神秘性が破壊されていく!祭壇が崩壊していく!

 

世界は元居た神殿に戻った!

 

「…ざまぁみろ…!」

 

しかしここでマルキラの憑依していた男、マナセ王が痙攣する!

 

「リリスッ…リリス…!」

 

「あなた…なの…?」

 

「リリス、手を…」

 

「ええ、喜んで…」

 

マナセ王(マルキラ)の手を取ったリリスは美髪を取り戻し、しかし死の瘴気を纏う!

これが夫婦の力だというのかッ!!

 

「私は、負けられないの」

 

イツァムは緊急術式解放、そうして展開された術式の破壊により完全に疲弊しきっている!

 

「…クッ…ここまでか…」

 

イツァムは膝をついてしまう…

 

「ん…?」

 

マナセ王の遺髪がリリスの美髪に引っ張られていく…

 

「…なんだ…これは…?」

 

「諦めたかしら、なら死になさい…イツァム・ナー・コールマン…!」

 

「…引き寄せ合う力…引力…!」

 

イツァムは賭けに出る!

 

「まだだッ!!」

 

イツァムは背を向け逃げ出す!

 

「マナセ王の遺髪のミサンガをマクアウィトルに!リリスの剥がれた髪をオレの首に!!そしてアザゼルの心臓飴の元を心臓ごと食らって気付けだッ!」

 

そして素早く即席のミサンガを作り出し、マクアウィトルにくくりつけ、自らの首にもくくりつける!そしてマンドラゴラの植え付けられたアザゼルの心臓を食らうことで活力を得る!

 

「…悪あがきかしら…無様ね、コールマン…」

「ゼエ、ハアッ、くうっ…!」

 

玉のような汗を流しながらマクアウィトルを一閃、今度こそ死したマナセ王(ベリアル)から心臓を抉りだし、そしてそれを掲げ天に吠える!

 

「貴様ッ!!」

 

怒りに燃えるリリスの美髪は無数の蛇に変貌し、そのそれぞれがイツァムに襲いかかる!

 

「我が身を縛るこの皮を今こそ剥がん!」

「我が魂に宿るナワルはジャガー!すなわちテスカトリポカの化身なり!」

「我、葦となりて内なる蛇と交われり!」

「我が身を守るすべての神の名の元に、我、ナワッリ(怪物)と化さん!!」

 

心臓は天に捧げられ、身を包む煙と共にジャガーに変貌していく…!

 

「…どこまで愚弄すれば気が済むのかしら…いっそ冷静になってきたわ…!」

しかしその腹のうちにはどす黒い殺意が渦巻いている!

 

「土壇場で閃いたぜ…これが最後の手札…!教えてやる。引力、それは「重さ」だ…おまえを轢き殺してやる…!」

引き合う力、それは呪術においては消して切れない繋がりを意味する!

 

イツァム、345kg。

 

鉄製マクアウィトル、15kg。

 

この二つが引き合う対角線上には呪術が物理的影響をもたらすこの世界では何が生まれるか?

 

そう、360kgの「重力線」である!

 

「グルアアアアアッ!!!」

 

イツァムは吠えながらマクアウィトルを真横に投げつけ、蛇を踏み潰し、噛みちぎり、重力線で轢き潰しながらリリスに吶喊していく!

 

そして真横に投げつけられたマクアウィトルはしかし、ミサンガ同士の引力に引っ張られ浮遊し、イツァムの後を追いかけていく!

 

「小細工を!」

「本当に小細工か見せてやるよォ…!」

 

イツァムはリリスの回りを駆け、跳ね、三次元軌道を展開する!

 

重力線がリリスに迫る!

 

「私の夫をバカにしないで…!」

 

しかし神の毒たるマルキラの毒が重力線を阻む!「神威」と豪語したのは伊達ではなかった!

だがもはやリリスにはイツァムの姿が捉えられない!

引力は引き合う力、であればそれを引きずる力はより強い!

その時速、180km!

そして三次元起動によりマクアウィトルにスイングバイが発生している!

結果、重力線は重さを増し、それはゆうに200トン以上にまで到達するッ!!

 

「─捉えた」

「…愛しているわ、あなた…!」

 

破裂音と共にリリスの首と胴体は泣き別れした!

 

リリスを倒した!

 

リリスの遺髪を手に入れた!

 

イツァムは煙にまかれジャガーからヒトに戻っていく…

だがしかし、いまだ駆け抜けるイツァムにマクアウィトルが引き寄せられるッ!

「ウオオッ!!」

180kmで自らに突っ込んでくるマクアウィトルを逸らすため即座にミサンガを投げ捨てる!

 

マクアウィトルはミサンガを貫き地に深々と突き刺さった!結果10mにもわたるクレーターが出来上がる!

 

「あぶねえ~ッ!自分の閃きに殺されるッ!」

…イツァム!血が!

 

「へ?」

七孔(毛穴を除く顔の全ての穴)から血液が噴水のように出ているぞッ!!

「…マジかぁ…頑張りすぎたかな…バロンの旦那は…呼べ…ないか…」

 

イツァムはその場に倒れ込んでしまった!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。