御指摘などございましたら、どうぞ気軽にコメントお願いします。
因みにこちらの作品は、以前修正液に関わるサイト名で書いていました未完結の作品の書き直しになります。
また、名前のあるキャラやモブキャラが多く出る作品ですが、そこまで重要人物ではありません。
とてとてとてとて
そんな音が聞こえてくるんじゃないかと、微笑ましくその人物を見つめる集団がいた。
桃色の髪をした、自隊の新しい隊長よりも小さいその姿。
十一の数字と鋸草が刻まれた副官証を左肩に巻き付ける彼女は紛れもない十一番隊副隊長―草鹿やちるだ。
武闘家と荒くれ者で形成される護廷一の戦闘集団を二番目にまとめあげる存在だ。
といっても、普段から真面目に仕事をしているわけではない。
見た目の通り、彼女はまだ幼い子供だ。年齢=外見というわけではないこの尸魂界な為、実際の所彼女が本当に中身まで子供なのかを知る術はないのだが…。
今期になりやっと志願していた十番隊への入隊が決まった彼はまだ知らないことだらけだ。
「そういえば若月さんって元十一番隊だったのよね」
今は丁度休憩時間だ。
見た目のわりにとても大人な彼女は、まだ日の浅い自分に様々な仕事を教えてくれる事になった謂わば先輩だ。
例え無席の平隊員とはいえ、自分より長く憧れの職場で働き続けている存在だ。敬意を忘れるわけがない。
窓から中庭を抜けての廊下を通過していった草鹿ぎ見えなくなった頃、彼女はそう呟いた。
淹れたてのお茶を自分が先輩を含めた同期の仕事仲間に配り終わると話は続いた。
「若月さんって、確か日番谷隊長がわざわざ引っ張ってきたっていうあの人ですか?」
「同じ隊だからって必ず会えるわけじゃないからな。どんな人なんですかぶっちゃけ」
そんな話が繰り広げられる。
専らこの休憩時間の話題は決まったようなものだ。
ポニーテールの同期の女性が用意したという最中を摘みながら、どこか誇らしげに口を開いた。
「実はですね、ボク若月さん見たことありますよ!」
「えぇ!?いつ見たんですか?!深見さんズルイです!」
周りから羨ましいと声が投げられる中、ふと先輩と目が合った。
「因みに深見君はどっちに見えたかな?」
「若月君、お客様ですよ」
十番隊の職務体制は基本的に六人一組だ。
少数すぎず、多数すぎず。前任の隊長から継がれる仕組みだ。
元々長く十番隊に所属していた日番谷が跡を継ぎ隊長になったのだ。それが変わる事はなかった。
第二十班から二十五班が配置されている他よりも多少大きい執務室の中を草鹿が行く。
足取りに迷いはない。
元隊の副隊長が移動した部下の心配をして会いに来た。そう思えばこの光景は微笑ましいものだ。
しかし実際は違う。
「あぁ、これはこれは草鹿副隊長じゃないですか。お久し」
続いたであろう台詞は多分、ぶりじゃありませんか、だ。
続いたであろうというのは遮られたからだ。何に?言わずとも分かるだろう。
その場にいた、偶然その場面を目の当たりにした隊士達は目を疑った。
微笑ましいなんてかけ離れたその光景。
近くで一部始終を見ていた女隊士曰く。
若月は近付いてくる草鹿副隊長の存在に気付いたようで、話しかけるのと一緒に体を向けたそうだ。
手を差し伸べ、握手でもしようとしたのかというタイミングだった。草鹿の右膝が若月の顎を打ち抜いたのは…。
打ち抜かれた顎を右手で抑え、思わず前のめりに倒れそうになる体を左手で机を掴み抑えた。
痛いなんてもんじゃすまない。涙が出そうだ。
正直薄ら膜は張ってる。天井を見上げてるから零れていないだけだ。
「ゆいゆいのバカぁぁあっ!!!!!!!」
はい…。いつか来ると思ってました。でもてっきり明日かとばかり思っていたので、意外です。半端じゃありませんこんちくしょう。
買収していた相手から伝令神機へ一報があった。
【目標、予定より早く帰還。】
何とも都合が悪い。
日番谷は受け取ったその内容を見て、心の中で手を合わせた。
(悪い)
腕に抱えていた隊主羽織を羽織り、中庭へ続く縁側から外へ出る。
「あっれー?隊長どっか行くんですか?」
「連絡が回ってたろ。定例隊主会だ」
そういえばそんな連絡があったような、無かったような…なんてわざとらしくとぼけ出す副官を無視して、草履に足を入れた。
(きついな…)
腹に一発。背中に一蹴り。そして最初の顎への一撃。計三発を元上司より喰らった若月の体力はキツかった。
最後の蹴りを入れ終えた草鹿はどこかバツが悪い顔をして青ざめた後、悪いのは自分じゃない的な事を喚きながら執務室を出ていった。背中への蹴りにより床へ伏せる形となった若月は未だ初撃のが響くのか顎を抑えたまま。
左隣の席に座っていた同班の女性に声をかけれた。
「大丈夫、若月さん?」
「見たまんま、大丈夫ではないですね…」
「どっちに見えた、っていうのは。つまり、どういう?」
「男の子なのか、女の子なのかって事」
深見は困った。見たことがあると自慢がてら口にしたのはいいものの、本当に見たのは一瞬なのだ。
男なのか、女なのか。疑問に思う、あまり言いきれる自信の沸かない中性的といえば中性的な印象であった。
そもそもその見た時、彼が気になったのは若月の容姿云々ではなかった。
「あの、先輩」
「日番谷隊長の名前って、とうしろう、ですよね」
『…シロウ君』
ふと耳に届いた声が深く印象に残った。
春先の風の中、風さえも遮りそこに存在するのだと主張するかのような、そんな声だった。
見たのはどこか遠くを見つめる横顔。
視線を追うかのように横へずらすと、桜の木の下で僅かに微笑む自隊の隊長と見知らぬ二つ結びの可憐な少女。
何かあったのかと視線を戻すと、そこにはもう若月の姿はなかった。
可憐な少女=雛森さんになります。
雛森さん大好きです。