銀狼の涙   作:花暦

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ちょっと、肉体関係を匂わせる描写があります。
苦手な方はご注意を…。
初っ端から飛ばしすぎたのと、後ゆっくりしてきたら全体を書き直します。読みづらい文章ですいません。


一の二話

 

「笑い事じゃないんだよ」

 

そう、笑い事ではないのだ。

容赦のない一撃だった。

それでも彼女なりに多少は抑えてくれたのだろう。

痛みは続くが、言うほど腫れてはいない。

顎を摩りながらもう片手で処理済みの書類の束を抱えて入ってきた若月は、事情説明をするにつれて口元を震わせる上司を前にして、ついにタメ口で応えた。

 

「そんな良いじゃないか。別に三発ぐらい」

 

「良くないよね。痛いことに変わりはないんだし…。そんなこと言うなら同じように喰らってこればいいんだよ。元はといえばお前が勝手に仕出かしてくれた事が原因なんだからさ。ね、ほら、行こうよ一緒に十一番隊にさ。三発ぐらい俺が喰らっても良いとか言うんだ。俺より強い隊長様な日番谷冬獅郎は五発でも六発でも大丈夫なんじゃないかな?」

 

言いたいだけ好きに言い終えた若月は打って変わって日番谷を睨みつけた後、俯いた。

自分の爪先辺りに視線をやる姿に、素直に謝っておけばと若干の後悔の後、ある事を思い出した。

 

「そういえばな…」

 

変な切り出し方だが、もしや気遣って謝ってくれるのでは?、と若月が若干期待し顔をあげると。

 

「草履がちょっとキツくなったから調整するか、新しいの新調しておいてくれ」

 

「えっ、そんだけ?」

 

それだけだ。

 

 

 

頻りに聞こえてくる二つの声。

片方は軽く、片方は低い。

誰かいるのかと、金色のウェーブの掛かった髪の美女が廊下の奥の部屋を見つめる。

誰と誰が中で話しているかは分かっているのだ。更に言えば、どちらがどちらなのかも分らなくない。しかし信じ難し。

片方は10年ほど共にこの隊、十番隊を支えてきた相手だ。普段からしかめっ面を浮かべる、無愛想を引っ提げた、自分より小さい相手だ。昨年度今までいた、彼と共に下から支えてきた自隊の隊長は突然姿を消してしまった。理由は詳しく聞かされていない。落ち込むには落ち込んだが、そんなに長くやってはられない。いざという時自分の立場を理解した。下の多くの者を自分は支えなければならない。

自分より下だった彼も自分同様暫く落ち込んではいたが、全隊長の意思により、新しい隊長になった。

右も左も、いやもしかしたら自分より多くの事を知っているかもしれない。知っていたとして、だとしても彼より大人な自分はちゃんと彼を支えなければならないならない。

十番隊副隊長―松本乱菊は決意を新たに、だからこそ日番谷隊長の事をもっと知らねばと行動に出たのだ。

無理にとは言わない。彼が心の底から軽く接する事の出来る相手を知りたい。共に隊長のことを支えていきたい。そんな所だ。

ぶっちゃけるならば、少々からかってやりたいという気持ちもなくはないが。

柱に上半身を預け、前のめりに隊主室を見つめる様は怪しいだけだ。

渡り廊下を曲がってきた二人の部下の内一人が違う意味で前のめりになる。

男性の彼からすれば、とても豊満なボディをしている松本がその様な体制で、時折お尻を揺する光景は、動じざるを得ない。主にある一部、がだ。

そんな自分より立場が上の上官の姿を軽蔑を込めて見る女性隊士は、

仕事内でもこの上官と二人きりで仕事をするのは止めようと固く胸に誓った。

 

「松本副隊長、私達隊長の確認印が必要なんですけど、通っても宜しいですか?」

 

前のめりで倒れる上官を尻目に彼女は松本へ声を掛けた。

 

「あら曰理!丁度いい所に!え、隊長の確認印?任せなさいよアンタラの、代わりにこの私が貰ってきてあげるわよ!いやあ、本当に良かった…。定例隊主会終わる前に戻ってサボってたの誤魔化すつもりだったんだけど、気付いたらこんな時間だったのよね~。そのまま戻ったら隊長に何してたんだって怒られちゃう所よ!いやぁ、本当にありがとうふたりとも!じゃあ、預かるわね!」

 

本人からすればこれが松本なりの支え方なのである。

口早にそう言って二人の持っていた日番谷の確認が必要だという書類を松本は抱え、隊主室へと向かうのであった。

残された彼女は一人思うのだ。

十番隊、こんなで大丈夫なのかな?と……。

 

 

 

「たっだいま帰りました隊長ー!提出期限の近い書類持っていっときましたよー!後々ぉ、偶然茶菓子にって紅葉堂の饅頭いただいちゃったんですよ!定例隊主会お疲れ様です!どうです一つここで休憩でも………?」

 

ドサッとそれなりの重みのある音に部屋の中央ではなく、音のした入って左側へと視線をやると、そこには日番谷と予想通りの人物がいた。

 

「え?」

 

「あっ…」

 

「なっ…!!!」

 

三者三様のリアクションの後、慌てたように日番谷の胴から起き上がるその人物は、肌蹴た死覇装の前を慌てて掴み引き寄せた。

その隙間から溢れる長いさらし。

平坦なその胸部には自分の知る女性の象徴がどこにも見たあらない。

吊られるかのように渋々と上体を起こした日番谷も隊主羽織だけだがいやに肌蹴ている。

 

「若月って…男?」

 

少し見た目と性格が男寄りだったが、ただそういうだけの女の子じゃないかと勝手に思っていた松本からすれば驚き以外の何物でもない。

一瞬、そうした小さい可愛らしい男の子が甘えたように大人の女性に接してくる様なそんな映像が頭を過ぎったが、自分にそんな趣味はない。自分はただ、若月に日番谷を共に支える協力者になって欲しい。それだけ、それだけなのだ。なのに…

 

「松本…違うんだこれは…」

 

「申し訳ございませんでしたっ!!」

 

脱兎の如く、松本の脇をすり抜け隊主室を飛び出した若月の背中に日番谷は憐れみに視線を送った。

そんなのただ勘違いを引き起こすだけだというのに、と。

 

「あのぅ、松本副隊長?今若月さんが上半身ほぼ裸で廊下突っ切って行ったんですけど、どうかしたんですか?」

 

ほら、言わんこっちゃない。

 

 

 

何度か、誘ってみたことがある。

初めてだからいけないのかと、泣いて抱きついた事もある。

自分からそういった分野の本を手にとって学ぶのはとても恥ずかしかったが、生まれて初めて彼以外に親しくなった友人を自分はそういう目で見ていて、欲しいのだと思ってしまう度に気にはならなかった。

その大きい手に包まれたい。

その大きい胸へ直に触れたい。

その大きい存在で自分を覆って欲しい。

そう、思ったのだ。

しかしその度、彼は言った。

自分には君の事も背負えるだけの強さがない、と。

そして待っていて欲しいとも言った。

『 忘れないから。

 

どうか俺が君の事を背負えるだけ強くなるその時まで。

 

変わらず俺の事を好きでいてくれ。

 

そうしたら、絶対に君の事を……』

 

実際愛してくれたのは友人ではなく、ずっと傍にいた、彼だった。

 




これから全体的に1話あたりが長くなります。
宜しければお付き合いくださいませ。
また一日に何度も投稿すいません。
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