ソードアート・オンライン〜フリーライフ・デイズ〜 作:ΣiGMA
ユナイダル・リングの一件が終わり、この俺〝キリト〟こと〝
そんなある日のこと、現実で朝食を食べていた時に何気なく目を通していたMMOトゥデイにこんな記事が掲載されているのに気づく。
【新たな世界へ一新か?フリーダムライフ・オンライン、前代未聞の超大型アップデート!】
「フリーダムライフ・オンライン?」
聞いた事のない名前に思わず首を傾げてしまう。
どうやら見たところSAOやALO、またGGOと比べてドマイナーなVRMMORPGらしく、クチコミには〝サービス開始当初からオワコンなゲーム〟やら〝今更大型アップデート?〟などと書かれていた。
記事を読み進めていくと広告用のティザーPVが載せられており、俺はその再生ボタンをタップする。
【ティザーPV内容】
さぁ、新たなフリーダムライフの世界へ!
フリーダムライフ・オンライン超大型アップデート情報!
今回の超大型アップデートでこれまでのビジュアルを更に向上させ、完全オープンワールドへ移行!
広大な世界を周りいざ冒険の世界へ旅立とう!
フリーダムライフ・オンラインは冒険だけでなく農業で稼ぐも良し!
警備隊として街の治安を守るも良し!
またはお店の店員として働くも良し!
様々な街を渡り歩いて見て回るも良し!
どのように過ごしてゆくかは正に〝
今回のアップデートにより既存の家ではなく、一から自分の思い描く家を製作可能!
武器の見た目も性能も自由自在!
自分が思い描いた服装を身に包み楽しもう!
アバター作成時の各種設定が更に詳細に!
〝
今なら古参プレイヤーはデータを引き継げます!
新規プレイヤーは初回ログイン時に各種ボーナス特典配布!
さぁ、いざ〝
【ティザーPV終了】
「へぇ〜……ソードスキルだけじゃなくて魔法までオリジナルで作れるのか」
ティザーPVを見終えた俺は少し胸が疼くのを感じていた。
独自に魔法を生み出せるなんてシステムはALOにさえ無かったものだ……これが出来るなら魔法を使いたいプレイヤーはこぞってやり始めるだろうな。
その証拠にクチコミでは辛辣なコメントしか無かったが、ティザーPVのコメント欄には衝撃とそして〝やってみようかな〟というコメントで盛り上がっていた。
そして画面を更に下へとスクロールしてゆくと今度は代表者らしき男性が映る動画が添付されている。
それをタップするとどうやら代表者による挨拶の動画だったらしい。
【開発・運営代表挨拶】
「皆さま初めまして、フリーダムライフ・オンライン開発及び運営代表の
「さて、それまでフリーダムライフ・オンラインを楽しんでくださっているプレイヤーの皆様にとっては今回のアップデートは嬉しい情報でしょう。そんな方々に一つ朗報です。なんと、今回のアップデートにより新たなフィールドが実装されます!その名も……〝地下大迷宮〟!これは地下に広がる巨大な迷宮で、プレイヤーパーティー事にその内部が変わる仕組みの迷宮となっております」
「つまり、ランダムに生成される迷宮が故に情報の共有が意味をなさなくなるのです!」
「ワクワクしませんか?入る度に新たな顔を見せ続けてくれる迷宮……そこに現れるモンスターやボスモンスターも毎回変わります」
「全制覇するとなるといやはやどれ程の時間がかかるでしょうか……」
「迷宮は地下百階まで続いており、最終ボスは全て固定となっておりますがそれに相応しい相手と言えるでしょう!」
「それでは古参プレイヤーの方々はより一層頼んしんで頂きたいと思うと同時に、新規プレイヤーの皆さんを心よりお待ちしております」
【開発・運営代表挨拶終了】
「入る度にその内部が変わってゆく迷宮か……ヤバいな、今すぐにても始めたくなってきた」
「それは良いけど、その前に急がないと遅刻しちゃうよ、お兄ちゃん?」
「えっ?あっ、本当だ!」
慌てて朝食の残りをかき込む俺を見て直葉は呆れながら先に家を出たのであった。
それから辛くも遅刻を免れた俺は教室にて朝に見ていたフリーダムライフ・オンラインの情報に目を通していた。
「おはようキリト君」
『キリト、おはよー♪︎』
そう声をかけてきたのはSAO時代から共に闘ってきた仲であり、ゲーム内での夫婦であり、そして現実での恋人でもある〝アスナ〟こと〝
ユウキはAIDSにより長い闘病生活を続けており、メディキュボイドの被験者としてALOで生活していた。
一時的に危篤状態に陥っていたものの何とか持ち直し、今では回復に向かっているらしい。
ちなみに今はアスナの肩にある装置で病院から一緒に授業を受けており、本人曰く早く退院して一緒に通いたいとの事。
俺もアスナもその事を楽しみにしていた。
「熱心に何か見ていたけど……何を見てたの?」
「あぁ、フリーダムライフ・オンラインっていうゲームに超大型アップデートが来るらしくて、それでネットが大盛り上がりしてるんだよ。それで俺も始めてみようかなって考えてたところだったんだ」
『フリーダムライフ・オンライン?!僕、それ知ってる!というか一時期やってたよ〜』
「えっ、本当か?!」
なんとユウキは既にやった事があるらしい。
しかし俺がその事を訊ねると途端に微妙そうな声が聞こえてきた。
『うん……そうだったんだけど、なんというかちょ〜ビミョーなゲームだったんだよね〜』
「び、びみょ〜……」
ユウキの言葉に思わず頬が引き攣る。
ティザーPVを見た時は興味をそそられるものがあったのだが、経験者であるユウキの言葉も無視は出来ない。
「微妙って、どんな感じだったの?」
『まず、ALOと比べると出来ることが少なくって。それになんと言うか……無法地帯?って感じで、新規プレイヤーに当たりがきつい人達が多かったんだよね。それで僕達も嫌になっちゃってさ……ログインして直ぐに別のゲームに移っちゃったんだよね』
「でもティザーPVではそんな感じしなかったけどなぁ」
『え?PVなんて出てたの?僕知らないや』
「調べたら直ぐに出てくると思うぞ?MMOトゥデイにも掲載されてたし」
『へ〜……後で見てみようかなぁ』
そんな感じの会話をした後、時間が来たので頭を切り替えて授業へと望む。
そしてその日の昼、俺はアスナの他に〝リズベット〟こと〝
「……っていうゲームが超大型アップデートを迎えるらしくてさ、ちょっとやってみたいなって思ってるんだよね」
「あ〜、今話を聞きながらティザーPV見てみたけど、確かにちょっとやってみたいかも」
『僕も確認したよ〜。確かに僕がやってた頃よりも面白そうかも』
リズもユウキもティザーを見て興味を抱いたらしい。
すると話を聞いていたアルゴがこんな事を言い始めた。
「ユーちゃんが昔やってた時は無法地帯だったって言ってたダロ?あれ、実際にそうだったらしいヨ?」
「そうだったのか。よく超大型アップデートなんて切り出せたよな」
「ん〜……実は超大型アップデートの話が出る前の噂なんだけド、なんか無法地帯だったフリーダムライフを立て直したプレイヤーがいたらしいヨ?」
「そうなの?」
「割と有名な話らしいヨ。なんデモ、無法地帯の状態をよく思わなかったプレイヤーが、たった一人デ破壊行為とかしてたプレイヤー達を軒並み叩きのめしたらしいんだヨ」
「それが本当なら凄いな……相当な手練れプレイヤーなんだろうなそいつ」
「なんて言うプレイヤー?」
「それが分からないんだよネ〜。オレっちも独自に調べちゃいるけどサ、まったくびっくりするくらい出てこないんだヨ」
「アルゴでも分からないんじゃ、諦めるしかなさそうだな」
無法地帯だったゲームの世界をたった一人で立て直したというプレイヤーについて興味は尽きないが、情報通のアルゴでさえもその情報が掴めないとなればそれ以上求めるのは諦めるしかないだろう。
今はそれは置いといて……。
「皆はどうする?俺はやろうと思っているけど……」
「私もやってみようかな」
「私もやるわよ」
「私も」
「私も」
『僕もー!』
「オレっちもやるつもりだヨ」
「それじゃあリーファやシノン、クライン達にも声をかけてみるよ。もし全員がやるなら、ログインして直ぐにどこかに集まろうか」
『賛成!』
こうして俺達は超大型アップデートが完了する時を待ち望むのであった。
◇
ここはフルダイブ型VRMMORPGの一つ〝フリーダムライフ・オンライン〟────
その世界に存在する五つの都市の一つ〝セントラル〟の酒場にて、数人のプレイヤー達が酒を片手に会話をしていた。
会話の内容はもちろん、今度行われる超大型アップデートについてである。
プレイヤーとしては期待が高いものではあるが、店内にいたプレイヤー達の表情は何処か曇っていた。
「超大型アップデートか……」
「今までやって来た俺ら古参勢としては嬉しいニュースだけどよ……でもこの超大型アップデートで新規プレイヤーが来るのは……」
「まともな新規勢なら大歓迎だけどよ、素行の悪ぃプレイヤーが来るのは勘弁だな」
「そーそー、せっかくスケさんが良くしてくれたこの街を、余所者にまた滅茶苦茶にされて欲しくはねーわな」
「そうでなくても三大ギルド同士でギスってるってのにな」
「お前ら、今からそんな後ろ向きなことばかり言ってても仕方ねぇだろ。そんなんじゃまた〝新規勢には当たりがきつい〟って書き込みされるぞ?」
「おやっさん、そんな事言ったってよぉ……」
ネガティブな事を口にするプレイヤー達に酒場の店主をしているプレイヤーがそう叱責をする。
彼は顎で自身の背後にいた人物を指し示すと、嘆息しながらこう言った。
「お前らがそんなんでどーすんだ?〝クロウ〟を見てみろ、いつもと変わらんどころか、ここにいる誰よりもワクワクしながらMMOトゥデイを見てるぞ?なぁ、クロウ!」
名を呼ばれた〝クロウ〟というプレイヤーはそちらに顔を向けると、そのまま身体もそちらへと向けて手にしていたグラスを高々と上げる。
「おやっさんの言う通りだって。ここはネガってるよりも両手を広げて来るだろう新規勢を迎え入れてやろうぜ?」
「スケさんがそう言うんならそうするけどよ〜」
「でももし悪質なプレイヤーが暴れたら、またスケさんの負担になんじゃねーのか?」
「そこは〝秩序〟や〝鴉〟、〝正義〟の三大ギルドに任せとこうや。俺らは俺らでいつものように楽しんでればいいんだよ」
「まったく……スケさんには敵わねぇや」
「確かにスケさんの言う通りだな」
「それじゃあ、まだ見ぬ新規勢に向けて乾杯でもしようや」
「お前らなぁ……そろそろ店じまいの時間だってぇの!」
賑やかな笑い声が店内に響く。
それを見ながらカウンター席のプレイヤー……〝スケアクロウ〟という名の男性はシシシと笑いながら酒を飲むのであった。