ソードアート・オンライン〜フリーライフ・デイズ〜 作:ΣiGMA
当時、俺はソロプレイヤーではあったが、ここで知り合ったイサミやレイヴン、あとは〝ソラ〟という女性プレイヤーとよくパーティーを組んでクエストをしたりしていた。
あの時は本当に酷い時期で、セントラルの内外関係なくPKが横行していたんだよ。
「またか……」
「はい……これで今日だけでもう10件目です」
「何が楽しくてこんな事してやがるんだ。楽しむならテメェらだけで楽しめば良いものを……関係の無い一般プレイヤーにまで迷惑かけやがって」
絶えず行われるPK行為に俺は辟易としててな?
その日も10件目のPKが行われていた事にやり場の無い怒りを感じていたよ。
「PKやってた奴らは?」
「イサミさん含めた数人で既に討伐しました。運営にDMも送ったのですが……」
「依然として反応無しか」
あの頃の運営はPK行為もまたプレイヤーの自由だってんでまともに取り合っちゃくれなかった。
ペナルティもまだ〝その日のPK行為の禁止〟って意味あるのかって疑問に思う程の軽い内容だったんだ。
「ちなみに生き残ってる奴は?」
「一人だけ……」
そう言ってレイヴンが視線を向けた先には、ソラの介抱を受けている女性プレイヤーの姿があった。
それがリブラだった。
あいつは当時仲の良かった友人達と共にFLOを始めたらしくてな……そこをPKプレイヤー達による初狩りの被害に遭ったんだ。
「大丈夫か?」
「……クロウさん……?」
その時はまだ気付かなかったが、後々リブラ本人から教えられて彼女がSAOで俺と知り合っていたプレイヤーだと知った。
前に話したろ?
SAOがデスゲームになった際に知り合い、レッドプレイヤー達に襲われ俺がオレンジプレイヤーになっちまったあの話だ。
その時の知り合ったプレイヤー達の一人がリブラだったんだ。
その時の彼女は今とは違う名前だったから気付かなかったんだけどな。
リブラはSAO時代、目の前で弟がレッドプレイヤーに殺されていてな……それがトラウマで暫くゲームからは離れていたらしい。
友人達の勧めでFLOを始めてみたは良かったが、そこでも襲撃を食らった。
そのせいでリブラは暫く怯えたままの状態で、ソラやレイヴンの尽力もあってようやく立ち直る事が出来た。
それからは俺達と行動するようになったんだ。
ちなみにその時一緒に始めた友人達はあの襲撃で嫌気がさしてALOに移っちまったらしいけどな。
「リブラ、お前も友人達と同じくALOに行けば良かったんじゃないか?」
「いえ、私はクロウさんと一緒にやりたいので」
「そ、そうか……まぁお前の自由だから構わねぇんだけどよ」
そんなやり取りをしていたのを、今更ながら懐かしく思うよ。
しかしそれからもレッドプレイヤー達は飽きもせずに襲撃しに来たりしてな……それでも動こうとしない運営……俺はそろそろ我慢の限界が来ていた。
「……つーわけで、あのクソッタレな奴らを叩きのめす為のギルドを立ち上げる事にした。強制はしない。だが我こそはと言うやつはどんどん入ってくれ」
その言葉にいの一番に名乗りを上げたのがリブラ、レイヴン、イサミ、ソラだった。
たった五人の小規模ギルド……しかし積極的にレッドプレイヤー達の討伐を行っていた俺達の活動を知って、続々と他のプレイヤー達も俺達のギルドに入ってくれた。
ちなみにギルドの名前は〝
ギルドマスターとして先陣を切ってレッドプレイヤー達を討伐して行った俺達を前にして、次第にセントラルからはレッドプレイヤー達が徐々に姿を消して行った。
その頃になってようやく運営も重い腰を上げてくれてな……PK行為や非公式な強盗行為を行ったプレイヤーに対し〝アカウントの永久凍結〟という重いペナルティを与えるようになった。
それもあってようやくセントラルに平穏が訪れたってわけだ。
俺としてもようやく肩の荷がおりた感じがして、まぁギルドはそのままにまた仲間とのクエストをこなす日々に戻ったわけだ。
ただそれが良くなかったのかもしれん……その頃からリブラに暴走気味の傾向が見られるようになってな。
何度注意しても一向に聞く耳を持たなかった。
挙句の果てには……。
「私達がプレイヤーを管理していかなければならないのです」
……なんて言い出す始末でな。
そして決定打となる出来事が起こったのはそれから直ぐの事だった。
リブラは……あるプレイヤーを殺したんだ。
そのプレイヤーは始めたばかりの初心者でな?
しかもVRMMO自体初めてだってんで操作がおぼつかなかったらしい。
当時そのプレイヤーを目にしていた他のプレイヤー達からの話を今にして思い返してみれば、その新規プレイヤーは適合障害を起こしていたのかもしれないな。
そのせいなのか分からないが、そのプレイヤーは誤ってNPCを攻撃してしまったらしい。
そのNPCは死ぬことは無かったが大怪我を負ってな……そいつは終始〝誤って攻撃してしまった〟、〝思うように動けず困っている〟と弁明していたんだが、リブラはそれを聞き入れることなくそのプレイヤーを捕縛しようとした。
誤操作によるものなのに捕縛されると知ったそのプレイヤーはパニックを起こしたらしく、その場で逃走を測ったらしい。
落ち着いて話を聞いてやればそんな事にはならなかったはずなのに、リブラは逃走した姿を見て〝やはり故意によるもの〟だと決めつけ、そのプレイヤーを始末した。
その事を目撃していたプレイヤー達から聞かされた時は驚いたよ。
ギルドハウスに戻った俺は直ぐにリブラを問い詰めた。
「新規プレイヤーを殺したって?なんでそんな事をしたんだ!」
「NPCに危害を加えた挙句に逃走を測ったので当然の対応をした迄です」
「そいつは誤って攻撃をしてしまったと言っていたと聞いたぞ?明らかにやり過ぎだ!何故話を聞いてやらなかった?」
「クロウさん……それは〝甘やかし〟というものです。あぁいう人間が後々問題を起こすようになるんです。ならば今のうちにその芽を刈り取っておくのが最適だとは思いませんか?」
「お前……これはゲームだぞ?フリーダムライフ・オンラインというゲームだ!このゲームの世界でプレイヤーは自由だ!運営じゃあるまいし、プレイヤーがプレイヤーの自由に対しどうこうするってぇのは、ただの傲慢以外の何物でもねぇぞ!」
「クロウさん、貴方には失望しました。何故その考えが後々またあの惨状に繋がると思わないのですか?」
「お前……」
「私は貴方の為に行動した迄です。貴方が守ったこのセントラルを守り続ける為に」
そこで俺はようやく悟った。
リブラは既に現実とゲームの区別がつかなくなっていたんだ。
そして俺がギルドに居続ける限りリブラは暴走を続けるだろう……だから俺はギルドを脱退したんだ。
◇
「それ以降、俺はギルドってやつに対して抵抗を覚えるようになってな……だから今の今までギルドの事を考える事はしなかった」
クロウはそう話すと、最後に〝情けない話だよ〟と付け加えた。
「私とレイヴンはその後もギルドに残り続けたが、その頃にはリブラ率いる〝管理派〟と私とレイヴン率いる〝維持派〟で対立が起きていてな。結局、一週間と経たずに私とレイヴンもギルドを脱退した……私達に賛同してくれているメンバーと共にな。それから情報収集を主に行う派と、実際にセントラルの警備活動を行う派に分かれた。これが今の〝正義の剣〟と〝紅眼の鴉〟だ」
「ちなみに〝ソラ〟というプレイヤーさんはどうしてるんですか?」
「彼女は最後の最後まで残ってリブラの説得に尽力したようだが、一番仲の良かったはずのソラの言葉でさえも届かず、結果ソラもまたギルドを離れてしまった。今は北方都市スィエーヴィルで〝聖女〟と呼ばれているようだ」
かつては同じ目的の元に集まったはずの5人……しかし意見の食い違いで今では別々に離れてしまった。
「ギルド立ち上げの件……受けてみても良いんじゃないか?」
不意にクロウがそう話す。
「もしレイヴンの話の通りなら、近いうちにお前達に接触してくる可能性は高い。キリトはSAOではかなりの有名人だ。同じSAOサバイバーであるリブラにとっては欲しい人材だろう。アスナもKoBで副団長を務めていたとあって欲しい人材だ。他の奴らもせめてキリトかアスナさえ引き入れれば自然と入ってきてくれるだろうと踏んでいるだろうな」
「それじゃあギルドさえ立ち上げてしまえば、そういう心配は無いって事か」
「まぁそうなんだが……う〜ん……」
急に歯切れが悪くなるクロウ。
その事に俺は訝しげな表情でクロウを見る。
「なんか歯切れが悪いな?他に何かあるのか?」
「いや……何か忘れてるような気がしているだけだ」
「やめてくれよ……不安になってくるだろ」
「いや、今の時点で思い出せないって事は、それ程重要では無いって事だろう。まぁ思い出せたら伝えるよ」
そうして俺達はギルドを立ち上げる事に決めた。
メンバーはもちろん俺、アスナ、ユイ、アリス、リズ、リーファ、シノン、シリカ、ストレア、ユウキ、エギル、クライン、フィリア、アルゴ、レイン、セブン、そして最初は悩んでいたが最終的に入ってくれることになったクロウを含めて17人だ。
「立ち上げ当初から10人超えてるギルドはなかなか無いぞ」
まぁ元々仲の良かった友人同士によるギルドだしな……しかしいつの間にか俺達の周りも大所帯になったものだ。
SAO時代にアスナとの二人だけで行動していた時と比べれば、だいぶ賑やかになった方だろう。
「ギルド名はどうする?」
リズのその一言に皆がそれぞれ意見を出し合う。
「〝黒剣騎士団〟とか?」
「血盟騎士団にちなんでか?ちょっと嫌な事思い出しそうになったよ」
「それじゃあ〝黒の剣士と愉快な仲間たち〟とかは?」
「……却下で」
「〝チームキリト〟はどうでしょう!」
「安直過ぎ……っていうか皆のギルドなんだからもうちょい皆の要素足そうよ」
「じゃあ〝SAOサバイバーズ〟とかは?」
「そうなるとSAO組以外の人達が含まれてないじゃないの」
「う〜ん……クロウさんは何か案がありますか?」
「いや……特に浮かんでこねぇな。キリト的に何か印象に残ってる単語とかないのか?そういうがあると名前にしやすいだろ」
「印象に残ってる単語か……」
その時、俺の脳裏にふと、あるプレイヤー達の姿が過ぎった。
かつて行動を共にしていた仲間達……。
俺の軽率な考えのせいで去ってしまった仲間達……。
(この名前を俺が使う資格は無いのかもしれない……)
それでも俺は生き残った者として、彼らの分までこの世界を楽しみたい。
(だからケイタ、サチ、テツオ、ダッカー、ササマル……君達のギルドの名前を貰っても良いかな?)
ふと、俺の脳裏で彼らが笑みを浮かべてくれたような気がした。
「〝黒猫〟……」
「え?」
「〝黒猫旅団〟とかはどうかな?」
〝月夜の黒猫団〟────かつて俺が所属していたギルドの名前。
そこから〝黒猫〟の文字を取って〝黒猫旅団〟。
「俺達は旅をするように色んな世界を渡り歩いてきた。ただ生き残る為に戦い続けた
「〝黒猫〟は何なのよ?」
「それは……俺の中で決して忘れてはならない名前だからね」
俺のその言葉に、唯一その名を知っているアスナは何処か悲しそうな表情をしていた。
「良いんじゃねぇか?〝黒猫旅団〟。俺はそれで賛成だな」
クロウのその言葉に他のメンバー達も賛成の意を示す。
こうして俺達のギルドの名前は〝黒猫旅団〟に決定した。
「ギルドを作ったとなるとギルドハウスが必要よね?せっかくならキリト達の家にする?広いし」
「いや、ギルドハウスは別で作った方が良かろう」
リズの言葉に反論したのはイサミさんだった。
それに同意するようにクロウも頷いている。
「キリト達の家があるのは郊外だ。ギルドを作る時は中心部にあるギルド協会に申請を出しに行かなきゃならんし、何かと必要なものは中心部で調達する事になる。そうなると中心部に新たに設けた方が利便性に富んでるんだよ」
「じゃあまた新たに購入しなきゃならないってこと?」
「ギルドハウスにするという理由ならば割引がある。それに……クロウ殿の事だからどうせ貴殿が買うつもりなのだろう?」
「流石は……よく知ってるな」
「なんか……クロウさんに終始おんぶに抱っこしてるみたいで申し訳ないわ」
「いいんだよ。お陰で使い道の無かった金をようやく使えるんだから」
「流石は金持ちだわ……」
そのリズの一言にその場は笑いに包まれた。
その後、ギルドハウスに良さそうな物件をクロウが探してくれるらしいので、俺達はユイも連れてレベリングへと出かけるのであった。
しかしこの後にまさかあんな騒動が起ころうなどとは、この時の俺達は誰も知る由もなかった。
今回、スケアクロウとリブラの確執の原因となった過去の出来事の回を先に書き上げ、その前の回を後に書いたんですよねぇ
流れを自然になるように前回を書くの苦労したァ……