ソードアート・オンライン〜フリーライフ・デイズ〜   作:ΣiGMA

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ログイン2日目

「なぁクロウ……さっきのって……」

 

「すまねぇな……ちょいと個人的な事だ。だがまぁ、このゲームをやっていくならこれを先に知っておいた方が良いか」

 

 

 クロウはそう言うと広場にあった噴水に腰かける。

 

 

「このゲームにももちろんギルドってものが存在する。それはセントラル、スィエーヴィル、オリエンタル、インダル、ウェステルといった五大都市それぞれにあるんだが、その中でここセントラルには〝三大ギルド〟と呼ばれる3つの大手ギルドがある」

 

「三大ギルド……」

 

「まず一つは三大ギルドの中で最も大きな勢力を誇る〝秩序の天秤(ライブラオブオーダー)〟、主にこのセントラルの治安維持を目的としているギルドでな。レッドプレイヤーやオレンジプレイヤーといった悪質なプレイヤー達に対して先ず容赦無い事で有名なギルドだ。奴らによって追放された悪質プレイヤーは数知れねぇ……奴らと敵対する事だけは先ず避けた方が良いだろうな」

 

「怖いわね……」

 

「まぁな。お陰で他のギルドやプレイヤー達から相当嫌われてる。次に〝紅眼の鴉(レッドアイズレイヴン)〟……このギルドは主に情報を取り扱うギルドで、奴らの知らない情報は無いってもっぱら噂のギルドだ。ちなみにアルゴ」

 

「ん?なんだい?」

 

「もしここで情報屋やるなら気を付けとけよ?ギルドメンバーじゃないプレイヤーが情報屋をやってると奴らに知られたら潰されるぞ?」

 

「ヒェッ────なんでそうなるのサ?!」

 

「情報力が奴らの専売特許みてぇなもんだから、言うなりゃ同業者には容赦ねぇのさ。もしそれでもやるってんならこっそりやっとけ」

 

「き、肝に銘じておくヨ……」

 

「最後に〝正義の剣(セイバー・ジャスティス)〟。このセントラルで警備関係を行っているギルドだ。憲兵のNPC達とも連携しているからまぁ……言うなりゃ自警団みたいなもんだな。ここだけが三大ギルドの中で比較的まともなプレイヤーに対して温厚なギルドだ。ちなみに現実の警察のように統制の取れたギルドでもある」

 

「つまり余計なことをしなければ仲良くなれるってことか?」

 

「そういう事。ちなみにそのギルドのマスターとはゲーム内での飲み仲間だから、何かあれば俺に言えば伝えておくよ」

 

「あ……もしかしてあの時通話をしていた相手って……」

 

「そのマスターだ」

 

 

 アスナが口にした話はあの時の事に関するものだろう。

 

 確かあの時クロウはそのマスターとやらにあのモルツというプレイヤーをどうにかしろと言っていた気がするから、モルツは今頃そのギルドのメンバー達に追いかけ回されているのだろうな。

 

 

「せっかく楽しみでログインしてきたんだろうが、すまんな……ちょいと居心地悪い思いをさせるとは思う」

 

「そんなのは何処だって一緒ですよ」

 

「そうそう。プレイヤーだって人間なんだから、ゲーム内でもそういったいざこざがあっても不思議じゃないわ」

 

「そう言ってくれると助かるよ……と、それじゃあ街を見て回ろうか」

 

 

 そうして話もそこそこにクロウは街の案内を再開した。

 

 クロウの案内でその日はセントラルの要所を見て回った。

 

 武器屋に言ってオススメの装備を教えてもらったり、最初に必要なアイテムをいくつか見繕って貰ったり、その際に身につけている服装で防御力が増えたりなどなく、防具を装着することによって防御力が上がる事を教わり、それ故に街中では普通にお洒落して歩いているプレイヤーもいることを聞かされた。

 

 ちなみにそれを聞いて目を輝かせていたのはもちろんアスナを始めとした女性陣達だった。

 

 アスナなんて早速買いに行こうと服屋へ突撃して行ったが、手持ちでは到底買えないと知って両肩をガックリと落として戻ってきたりなんてのもあった。

 

 あとはギルドに所属していなくてもクエストを受けられるクエスト受付所の場所を教えてもらったり、セントラルの観光地や綺麗な景色が見られる場所を教えて貰ったり、とても充実した日となった。

 

 そしてその日の夜……ゲーム内での夜なのだが、現実でそれぞれに夕飯の時間だということで今日はここでお開きとなった。

 

 その際にクロウから安く泊まれる宿を紹介してもらい、俺達はそれぞれ部屋を頼んでそこでログアウトする事になった。

 

 ログアウトした後、ふと着信があったのに気が付き折り返してみると、電話の相手は〝セブン〟こと〝七色(なないろ)・アルシャービン〟博士からだった。

 

 

『プリヴィエート、キリト君!』

 

「やぁセブン。すまない、さっきまで皆でFLOやってたから着信に気が付かなかった」

 

『そうだったんだ!いいな〜……な〜んて言って、実は私と虹架(お姉ちゃん)も明日ログインする予定なんだけどね〜』

 

「そうなのか!それじゃあ明日一緒に遊ぼうぜ。二人にも紹介したい人がいるしさ」

 

『それは楽しみね!……と、その話はまたおいおいするとして、今回連絡したのは前に頼まれてたのがやっと出来たからなんだよね』

 

「おお!と言うことは……」

 

『うん!これでユイちゃんやストレアちゃん、あとピナちゃんもFLOの世界に行けるよ!』

 

 

 俺は今回もセブンにユイ、ストレア、そしてピナの転送をお願いしていた。

 

 流石に開発と運営に携わっていないゲームは難しいかと思われたが、そこはやはり天才……今回も何事もなく出来たようだ。

 

 

『という事で明日はせっかくだから私が連れてくるね!ちなみにどこで待ち合わせよっか?』

 

「実は古参のプレイヤーから偶然教えて貰ったんだけど、新規プレイヤーは必ずセントラルって都市のアンカーポイントってポータルに出るらしいんだ。だからログインする時間を教えてくれれば事前にそこで待っておくよ」

 

『オケイ!それじゃあログインする時間が分かったら連絡入れとくね〜。それじゃあダスヴィダーニャ〜』

 

 

 そこで通話が終わる。

 

 明日はセブンとレイン……そしてユイ、ストレアも来るのか。

 

 

(明日ユイが来れると知ったらアスナは喜ぶだろうな)

 

 

 そんな事を思いつつ下へ降りようと俺は部屋を出るのであった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 翌日、約束通りセブンからログイン時間を教えて貰った俺は仲間達と共にアンカーポイントで彼女達が来るのを待った。

 

 

「来た!」

 

 

 アンカーポイントの前で光の柱が現れ、そこから見覚えのある二人のプレイヤーが姿を現す。

 

 

「やっほー皆、お待たせ♪︎」

 

「久しぶり皆!」

 

「久しぶりセブン、それにレインも」

 

 

 セブンもレインもALOで知り合った友人で、天才VR科学者であるセブンは忙しい身である為になかなかこうして一緒に遊べる機会が少ない。

 

 その実の姉であるレインもそんなセブンに申し訳ないのかALOでのログイン回数もかなり減ってきている。

 

 とはいえやはりレインとしても俺達とずっとまた遊びたがっていたのか今日はとても嬉しそうな表情をしていた。

 

 

「それで!紹介したい人ってだれ?あ、その前に例の件が先よね!あ、でも先に何処か落ち着ける場所の方に移った方が良いのかしら?でも今すぐ見せた────あいたっ!」

 

「少し落ち着きなさいって。皆も困惑しちゃってるから」

 

「あ、ごめんなさいね」

 

 

 そう言ってペロッと舌を出すセブン。

 

 その後ろではレインが〝やれやれ〟といった様子で両肩を竦めていた。

 

 

「とりあえず何処か静かな所に移動しようか」

 

 

 セブンが何をするのか知っていた俺はそう促す。

 

 これからする事を他のプレイヤーには到底見せられないし、ALOでアイドル活動をしていたセブンが気付かれたらもうゆっくりしている場合ではなくなるしな。

 

 その後、人気の無い場所へと移動してきた俺達……そしてセブンがコンソールを操作していくと、俺達の間にユイ、ストレア、そしてピナが姿を現した。

 

 

「パパ!ママ!」

 

「ユイ!」

「ユイちゃん!」

 

 

 俺達に飛び込んでくるユイ……それを俺とアスナは二人で受け止め、ここでの再会を喜ぶ。

 

 ストレアもメンバー達と再会を喜びあっているし、ピナと嬉しそうにシリカの腕に止まり身を擦り寄せている。

 

 

「さて!こうして完全にみんな揃ったわけだし、これから何しよっか!」

 

「それなんだけど、今からここでの戦闘について教えて貰おうと思ってるんだ。多分、今頃俺達を待っててくれてると思うからこの街の正門へと向かおう」

 

「昨日言ってた〝紹介したい人〟のこと?」

 

「そうだよ」

 

 

 そして俺達は全員で正門へと向かう……すると正門では先に来ていたクロウが誰かと会話している姿があった。

 

 

「……つーわけで情報ありがとうな」

 

「いえいえ〜。お代もちゃんと貰えるようですし、それがなくとも貴方の頼みとあらば永久無償でお引き受けするつもりですわ」

 

「いやいや、そこは商売なんだからちゃんとしねぇと要らん不評を買うだろ」

 

「流石は……そんなだから誰もが貴方を慕うんですのよ」

 

「はは……SAO時代では思いもしない事だけどな────っと、どうやら来たようだ」

 

 

 俺達に気付いたクロウがこちらに向けて手を挙げる。

 

 目の前まで来た俺はクロウに話しかけた。

 

 

「何か用事でもあったのか?」

 

「いんや丁度終わったところだ。あぁ、紹介しておくな?隣にいるのは前に話してたギルド〝紅眼の鴉〟のマスター、〝レイヴン〟だ」

 

「レイヴンと申します。貴方がかの有名な黒の剣士キリト様ですわね?こうしてお目にかかり光栄ですわ」

 

 

 そう言って華麗な所作でお辞儀をするレイヴンというプレイヤー……確かカーテシーって言うんだっけ?

 

 

「俺のこと知ってるんですね?」

 

「それは勿論。SAOサバイバーの中で貴方のことを知らない方はおりませんから」

 

「……と言うことは、貴方も……?」

 

「えぇ、そのSAOサバイバーの一人です。旦那と共に囚われ明日も分からぬ日々に恐怖しておりましたが、貴方のお陰で今こうして生活できております」

 

「改めてそう言われると……なんだが照れくさいな」

 

 

 思わず頬をかいてしまう。

 

 隣ではアスナがクスクスと笑っていた。

 

 

「ところで……クロウ様の言うには〝アルゴ〟という方も来ているとの話でしたが……」

 

「ん?オレっちがどうかしたのカ?」

 

 

 不意にアルゴの所在を訊ねたレイヴンさんにアルゴが反応し身を乗り出すと、その瞬間レイヴンさんは勢いよくアルゴに詰め寄りその手を取った。

 

 

「うワッ?!」

 

「貴方がアルゴ様ですね!ずっと……ず〜っとお礼がしたくて仕方なかったのです!あぁ、ここでこうして出会えるなんて……超大型アップデートに踏み切った運営には感謝してもし切れませんね」

 

「アルゴ……知り合いか?」

 

「いや……全然知らなイ……」

 

 

 戸惑うアルゴにそう問いかけたがアルゴは首を横へと振ってそれを否定する。

 

 するとそれを見ていたレイヴンさんは途端に手を離すと、恥ずかしそうに口元を隠しながら笑みを浮かべた。

 

 

「あらあらごめんなさいね?もちろんアルゴ様が知らないのも無理は無い事です。私が一方的に知っているというだけでしたから」

 

「じゃあなんでお礼なんて……」

 

「アインクラッド攻略本」

 

 

 レイヴンさんがポツリとそう口にする。

 

 するとそれまで静かに聞いていたクロウが代弁するようにこう言った。

 

 

「レイヴンはアルゴが出していた攻略本のお陰で生き長らえたんだ」

 

「そうなのカ?」

 

「えぇ……あの時は右も左も分からぬ私達は何をすれば良いのか、どう戦えば良いのかさえ分かりませんでした。しかし、そんな時に出会ったのが攻略本でした」

 

 

 レイヴンさんはその攻略本のお陰で武器の扱い方やモンスターの行動パターンなどを知る事が出来たことで安全に資金を稼ぎながら旦那さんと共に生き延びれたのだという。

 

 

「デモ、あれに書いてあったのはベータ版の時のもので、何かと仕様変更があったダロ?」

 

「私達は攻略には参加しておりませんでしたし、参加しようとも思ってはおりませんでした。あの日、SAOがデスゲームへと変わった時、私と旦那はただ生き延びる事を目的としておりました」

 

「確かにベータ版から正式版に移行する際に仕様変更があるのは当たり前……それでも、雑魚モンスターに目立った仕様変更は無かったからこそ生き延びれたってわけだな」

 

「SAOからの帰還後、私は旦那と正式にお付き合いする事になり、そして現実でも夫婦となりました。だからあの時、あの攻略本が無ければ今こうして生きていられなかったと思うんです」

 

「なるほどナ……それじゃあその感謝の気持ちは素直に受けとっておくヨ」

 

「いえ、お礼というのはこれからでして……アルゴ様、貴方はこのゲームでも情報屋をする予定など御座いますか?」

 

「まァ……気が向いたらカナ?」

 

「もしそうする場合、私共の事などお気になさらず自由になさって下さいませ。他の者の場合はこちらに引き入れるか、それとも追いやるかになりますが、アルゴ様だけは特別に情報屋として自由に活動することを許可致します」

 

「い、いいのカ?」

 

「はい、もちろん♪︎それにもし何かしら情報が欲しいのであれば、私にお伝えして下さればどのような情報でも無償でお渡し致しますわ」

 

「えぇ?!」

 

 

 レイヴンさんのこの言葉には流石のアルゴも目を見開いて驚いていた。

 

 

「なんでそこまデ……」

 

「だって……私がこうして情報を取り扱うようになったのは貴方に憧れたからですのよ。勝手ながら心の中で貴方を師匠と思っているのですわ。師匠の活動を制限する弟子などおりませんでしょう?」

 

「ま、まァ……たしかにそうだケド……」

 

「……という事でこれを私からのお礼と致します。では私はこれで……この後用事が御座いますので失礼いたします」

 

 

 そう言って俺達の前から去ってゆくレイヴンさん……その勢いに終始圧倒されていた俺達は彼女の姿が見えなくなるまでそちらを見続けていた。

 

 

「おい……確か〝紅眼の鴉〟って厳しいギルドなんじゃなかったっけ?」

 

「あ〜……実は昨日連絡を取ってさ。どうしても情報屋をやらせてあげたい奴がいるって話したら誰かと問われたんだ。それでアルゴの名前を出したら思いっきり食いついてきてな?そんで理由を聞いたらさっき話していた通りの事を言ってたんだよ」

 

「なるほど……それでか」

 

「その際に明日会うって話したら自分も同席したいと言ってきてな。それを許す代わりにちょいと二つほど情報を貰ってたんだ」

 

「さっきレイヴンさんと話してたのはそれか?いったい何の情報なんだ?」

 

「ひとつは初心者向けのフィールドについて教えて貰ってた。アプデ前だと初心者には上手い狩場についてよく知ってたんだけど、アプデ後にどうなったかは知っておきたかったからな」

 

「もしかして俺達の為にか?」

 

「当たり前だろう」

 

「それはありがたいな……それで、もう一つは?」

 

「それについてはすまん。どうにも教えられねぇんだ。まぁ一つ言えるとすりゃあ、お前達には関係の無い事だよ」

 

 

 どうにも気になるが、これ以上追求しても教えて貰えなさそうだと思い大人しく引き下がる。

 

 

「それにしても昨日の今日でまた知らない顔が増えたな……まぁ、それについては後で紹介してもらうとして、早速狩場へと向かおうか?」

 

『はい!』

 

「おっ、いい返事だ」

 

 

 クロウは笑みを浮かべると先頭に立って俺達に付いてくるように促す。

 

 

「いつもなら乗り物に乗って行くんだが、流石にこの人数が乗れる乗り物はねぇし、目的地の途中途中にあるポータルを登録してゆくのも兼ねて歩いてくぞ」

 

 

 こうして俺達はスケアクロウに連れられて狩場とやらへと徒歩で向かう事になった。

 

 ALOのように飛んで行けないというのは不便で疲れるものがあるが、まぁ今回は歩いてゆくのも良いかもしれないな。

 

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