ソードアート・オンライン〜フリーライフ・デイズ〜 作:ΣiGMA
もう何度目かの大強盗クエストチャレンジ……今回でようやく順調に進めることが出来て、俺はようやく家の購入資金を予定の20万の倍の金額を貯めることが出来た。
「まさか地下4階であれだけ稼げるとは思わなかったなぁ」
「本当にね。2階と3階を探索していたリズ達よりもかなり稼げちゃったんだもん。驚いちゃった」
「今度は私達が4階探索の番ね。荒稼ぎしてやるんだから!」
そんな会話をしているとそれまで真剣な表情で黙りこくっていたシノンがふとある事を言う。
「もしかしてなのだけど……4階が一番稼げること、クロウは知ってそうよね?」
その言葉に俺達はハッとなる。
確かに長年やってるはずのクロウがこの事を知らないわけがない……つまり俺達はそんな重要な事を教えて貰えていなかったわけだ。
「でも……それに文句を言ったところで、〝言ったらつまらないじゃないか〟って言われそう」
「あ〜……確かに」
「まぁまぁ、こうして稼ぐことが出来たんだし、それにラスボスへのカードキーとアイテムもゲット出来たんだから良しとしようぜ?」
「キリの字よぅ……もちろんラスボスへは皆で挑むんだよな?」
「当たり前だろ?どれくらいの強さか分かったもんじゃないし、無謀なことをしてたった一回のチャンスを無駄にしたくはないしな。ちなみに報酬は山分けという事で」
『賛成!』
俺達は大強盗クエストのラスボスに関して話しながら、結果報告のためにエギルの店を目指す。
そしてようやく店に帰ってきたのだが……。
「なに……これ……」
そこには出る際は何ともなかったエギルの店がボロボロになっている光景があった。
それを見て呆然としていた俺達だったが、それに気づいたエギルに声をかけられ我に返る。
「ようやく戻ってきたか皆!」
「おいエギル!いったい何かあったんだ?!」
「それは後で説明する!それよりもキリト、アスナ、お前達はユイを慰めてやってくれないか?すっかり塞ぎ込んでしまって俺じゃ慰めてもどうにもならん!」
「いったい何が……」
「キリト君、とにかくエギルさんの言う通りユイちゃんのとこに行こう!」
「あ、あぁ……そうだな……」
何が起きたのか分からず困惑してしまうが、とにかくエギルの言う通り俺はアスナと共にユイの元へと向かう。
そういえばさっきからクロウの姿が見えないのも気になる。
俺とアスナが駆けつけると、ユイは店の中で小さく蹲って顔を伏せていた。
「ユイ!」
「ユイちゃん!」
「パパ!ママ!」
俺達に気付いたユイはそのまま俺達に抱き着くとそのまま泣き始めてしまった。
そこへ先程ユイの隣に座っていたレイヴンさんが近付いてくる。
「あの……ユイちゃんはどうしたんですか?」
「とてもショックなものを見てしまったらしく……私と旦那が駆けつけてきた時は既にあの状態だったのです」
「旦那……?」
「私だ」
店の奥から姿を現したのは大柄な男性プレイヤーだった。
エギルもなかなか大きいが、この人は更に大きい。
「初めましてと言うべきだな。私の名は〝イサミ〟……ギルド〝
「初めまして……それで、いったい何があったんですか?」
「どうやらレッドプレイヤーに襲撃を受けたらしくてな……詳しいことはこの店のマスターである彼に話て貰った方が良いだろう」
イサミと言うプレイヤーに指名され、エギルは俺達に事の顛末を話し始める。
「お前らがクエストに向かって少ししてからの事だ。俺とクロウは大強盗クエストについて話をしていてな。そんな時に突然クロウが俺に向かってユイを放り投げたもんだから驚いちまってな」
「ユイを……投げた?」
「あぁ……いきなりなんでそんな事をするんだと思ったが、クロウがその時店内にいた全員に〝伏せろ〟と言った直後に銃撃が起こった」
「つまり襲撃者は全員〝
「一人を除いて全てクロウが片付けてたな。だが最後の奴とクロウが対峙していた際、ついユイが顔を出してしまったんだ」
「それは……肝が冷えただろうな」
「俺は慌ててユイを隠そうとしたんだが遅く、そいつはユイに向かってナイフを投げた。クロウはそれを庇ってナイフを受けてな……まぁクロウもお返しに奴に一撃与えてたらしく、そいつは直ぐに逃げてったよ」
「そのプレイヤーの名前は何か分かりますか?」
「慌ててたもんで申し訳ないが確認出来なかった……が、クロウはどうやら確認していたらしい」
「クロウ殿からは名前を伝えられていなかったのか?」
「その前に倒れっちまったからな……ただ、そいつが投げたナイフは残っている。これだ」
エギルはそう言うとアイテム欄から一つのナイフを取り出しカウンターの上へと置く。
その際、それを見たユイはビクッと肩を震わせて顔を背けてしまう。
「困りますな……そういうのは直ぐに提出してもらわないと」
「イサミさん。目の前で親しい者が倒れたのなれば気が動転してしまうものです。だからそう責めないでやって下さいませ」
「う、うむ……そうだな……これは私の配慮が欠けていた」
こうして見ると確かにイサミさんとレイヴンさんは夫婦で間違いない。
いかつい男性であるイサミさんが奥さんであるレイヴンさんに言いくるめられている姿は何処かの誰かに似て────。
「あれ、完全にアスナに怒られてる時のキリトにそっくりよね」
「そうですね〜」
「確かにそっくりだわ」
うん……俺でした。
その場に変な空気が流れ、それを察したイサミさんが咳払いをする。
「改めてナイフを確認させて頂こう。おい、誰か鑑定スキルを持ってる奴はおらんか!」
「はい、私持ってます!」
「よろしい。ならばこのナイフを鑑定してみてくれ」
店内の調査をしていたイサミさんの部下の一人が指示を受けてナイフを手に取り鑑定を行う。
「これ……どうやらプレイヤーが作ったものらしいですね。製作者は……え〜と……ムラマサ?」
『!!!!』
鑑定を行った女性が製作者の名前を口にした瞬間、イサミさんとレイヴンさんの表情が一変する。
目を大きく見開き女性に注目したせいで女性は非常に困惑した様子でいた。
するとそのタイミングで店の外から声がした。
「今、ムラマサって言ったか?」
「クロウ!」
声の主はクロウだった。
姿が見えなかったから、てっきりどこかへ運び込まれたと思っていたが……。
「クロウさん!」
クロウの名前を聞いてユイがそちらへと駆け出す。
そしてそのままクロウへと抱き着くとわんわん泣きながら何度も何度も謝っていた。
「ごめんなさいクロウさん!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
「そう気にするな。あの時、俺を心配してくれてたんだろ?見ての通り俺は無事だ。だから泣きやめ」
「でも……でも……」
それでも泣き止もうとしないユイにクロウは困った表情を浮かべながらユイの頭を優しく撫でていた。
「無事だったのですなクロウ殿」
「イサミか。悪かったな、心配かけて」
「いえ……心配と言うよりも貴方が倒れた驚きの方が勝っております。いったい誰が……?」
「ドッドだ」
「ドッドですって……?」
聞きなれない名前にレイヴンさんが更に目を大きく見開いた。
見ればイサミさんも同様の表情となっている。
「誰なんだドッドって?それにムラマサって奴も……」
「とりあえずユイが落ち着いてから話すよ」
クロウはそう言うとユイをアスナへと預ける。
そしてレイヴンさんの勧めもあり、俺達は話し合いの為にレイヴンさんのギルドのギルドハウスへと移動するのであった。